児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

公然と性行為した事件で被害者に175万円を支払った事例

 民事訴訟で約2年

大阪府警巡査長の海水浴場でわいせつ事件、和解…女性に謝罪し175万円支払う
http://www.sankei.com/west/news/160520/wst1605200048-n1.html
 大阪府貝塚市の海水浴場で一方的に性行為を強いられたとして、府内の女性が大阪府警布施署の元巡査長の男性(30)に約2千万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁(佐伯良子裁判官)で和解していたことが20日分かった。和解は13日付で、女性に175万円を支払い、謝罪する内容。

 訴状などによると、2012年7月、10代後半だった女性は元巡査長に泡盛を一気飲みさせられ、抵抗できない酩酊状態のまま砂浜に置いたゴムボートの上で性行為をされた。元巡査長は「行為には合意があった」として争っていた。

 元巡査長は公然わいせつ罪で罰金30万円の判決が確定していた。

http://www.sankei.com/west/news/140710/wst1407100053-n1.html
原告側は、元巡査長からアルコール度数の高い泡盛を紙コップに2杯注がれ、一気飲みさせられたことで「酩酊(めいてい)状態で抵抗不能になった」と主張。元巡査長が準強姦容疑で逮捕されながら同罪で不起訴となったことには「同意があったとの誤解が広がり、甚大な苦痛を受けた」としている。
 元巡査長は公然わいせつ罪のみで在宅起訴。1、2審とも罰金30万円の判決を受け、確定している。

       公然わいせつ被告事件

大阪地方裁判所判決平成26年1月31日
 被告人を罰金30万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成24年7月31日午後4時20分頃,大阪府貝塚市澤無番地大阪府営二色の浜公園海水浴場の砂浜に置かれたゴムボート上において,海水浴客ら不特定多数の者が容易に認識し得る状態で女性と性交し,もって公然とわいせつな行為をしたものである。
(証拠の標目)
 [括弧内の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求の証拠番号を示す。]
 被告人の当公判廷における供述
 証人A,同B及び同Cの当公判廷における各供述
 警察官作成の捜査報告書謄本(甲3),写真撮影報告書謄本(甲6,7−抄本),実況見分調書(甲5−謄本,9−抄本。甲9は撤回部分を除く。)
 写真25葉(甲15)
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,被告人が公訴事実記載の日時,場所において性的行為をした事実はあるが,不特定多数の者が容易に認識し得る状態であったとはいえないので公然性がないから,また,少なくとも,被告人には他人がその性的行為を見ることのできる状態にあるという認識はなかったので,公然性の認識がなく故意がないから,無罪であると主張し,被告人もこれにそう供述をする。
2 そこで検討すると,関係各証拠によれば,被告人が女性と性交したのは,7月下旬の午後4時20分頃という明るい時間帯の,二色の浜公園海水浴場の砂浜上に置かれたゴムボート内であり,そのゴムボートの周囲には,陸側にゴムボートに接するように立て看板が設置されていた以外には見通しを遮る物はなかった(その立て看板も完全に見通しを遮るものではなかった)こと,被告人と女性は2人とも水着を着けたままであったが,海水浴客の中に,海側からそのゴムボート内にいる被告人と女性の体勢や動きを見て,性交しているのではないかと考え,同じグループの男性数名と一緒に,興味本位で被告人と女性のいるゴムボートの間近までいき,その様子を見始めた男性もいることが明らかに認められる。なお,夕刻に近づきつつある時刻ではあったが,その海水浴場には一定数の海水浴客がまだ残っていたことは,ある程度推認することができ,通報で現場に来たA警察官が午後5時45分頃に撮影し始めた写真にも複数の一般客と思われる人影が撮影されている。
  以上のような被告人の性交した場所の客観的状況や被告人の行為に気付いて近寄って来た者が存在することからだけでも,そのわいせつ行為は,不特定又は多数の人が認識することのできる状態で行われたと認めることができ,公然性に欠けるところはないというべきである。
  海水浴場内での犯行の具体的な地点について,前記のA警察官は,先に現場に来て現場保存を始めていた警察官の報告や,被告人と一緒に遊びに来ていた者らの指示説明に基づいて,南北に延びる海水浴場の遊泳可能区域内の南端近くに位置し,レストハウス近くの立て看板付近に置かれたゴムボートを犯行現場として特定し写真撮影している。これに対し,被告人は,女性とゴムボート内で性交したのはその場所ではなく,その立て看板より更に南方のレストハウスから相当離れた位置にある立て看板付近であると供述している。しかし,被告人の供述のとおりであれば,何者かがA警察官が写真撮影を開始した時までにゴムボートやそれと一緒に撮影されているバーベキューセット等一式を移動させたことになるが,そのようなことを想定するのは困難である。その上に,ゴムボートにいる被告人の様子を見に来た前記男性と,その近くのビニールシートの辺りにいた被告人と一緒に遊びに来ていた男性とが,一致して,現場はレストハウス近くの立て看板付近である旨証言している。特に被告人と一緒に遊びに来ていた男性の証言は,遊泳可能区域を区切るブイとの位置関係も踏まえて地点を特定するものである。以上から,海水浴場内での犯行の具体的な地点は,A警察官の写真撮影したレストハウス近くの立て看板付近であると認められる。
  弁護人は,被告人が性交をしたのは短時間であり,別のグループの男性らが近づいてきたときには,女性と身体を密着させてはいたが,既に性交は終わっていたのであって,公然性はなく,近づいてきたその男性がまさに性交する場面を見たと証言しているのは,事実を過大に述べたもので信用できないと主張する。
  しかし,そもそも,被告人が,はいていた海水パンツの前面を押し下げるような形で性交しようとしたためそれがうまくいかず,性器を挿入した時間そのものは短時間にとどまり,被告人の供述するように性器を挿入した場面そのものを実際に目撃した者はいなかったとしても,他人の目に触れる可能性のある状態でわいせつな行為をしていれば,そのことが公然性の認定の妨げとなるものではない。被告人の供述する性交は,性器挿入のための直前の性器を露出させる行為を含めて,他人の目に触れることがおよそ不可能なほど瞬時に行われたというわけではなく,不特定又は多数の人がそれを認識する可能性のある行為であることは優に肯定することができる。弁護人の主張は,それ自体犯罪の成否を左右するものではない。
  のみならず,ゴムボートに近づいてきた前記男性は,被告人と女性が水着を着たまま,水着の股間部分をずらしてまさに性交している場面を見たと証言している。そして,被告人と一緒に遊びに来ていた男性も,位置関係から性器そのものは見えていないが,被告人が女性と性交していると思われる体勢で腰を振る動きをしているときに,別のグループの男性たちが来て「やってんちゃう。」などと言って被告人と女性をちゃかすようにざわつくので,恥ずかしくなって,「見んとったってくれませんか。」などと言いながら,そのゴムボートの横にパラソルを置いたと証言している。別のグループの男性らが被告人と女性を指して「やってんちゃう。」と声を上げたことは,発言時の状況を考えれば,性交場面を目撃したうえで,それを冷やかすような言い方をしたものと理解することができ,弁護人の主張するように性交場面を見ていないからこその発言であるなどとはいえない。弁護人の指摘するように,別のグループの男性の証言については,性交している被告人に声を掛けたのに対して被告人が返事をしたかどうか等の,被告人とのやりとりの場面について供述が変わっていることがうかがわれるから,その男性と被告人とのやりとりの細部について認定することはできないものの,そのことで,被告人が実際に性交をしていたという出来事の大枠についての証言まで信用できなくなるとはいえない。弁護人は,さらに,別のグループの男性は,被告人と性交をした女性のグループとの海水浴場での事前接触の有無に関して明確な供述を避けていること等を合わせて,その男性が過大に証言している可能性がある旨を主張する。しかし,その男性の証言は,前記のように被告人と一緒に遊びに来ていた男性の供述とも整合していることを踏まえれば,基本的な内容において虚偽であるということはできない。なお,弁護人は,被告人の性交した女性が,被告人と一緒に遊びに来ていた男性を誘うような声を掛けた時点を基準に,それよりも前に被告人は女性と性交をしようとしていたはずであるから,その後に来た別のグループの男性が被告人の性交場面を目撃することはあり得ないと主張する。しかし,女性の発言からそのような前後関係になるとは必ずしもいえないほか,その発言がどの段階についてなされたのかについて確定することも困難である。したがって,別のグループの男性の証言の信用性を疑わせる根拠とはならない。
  以上のとおり,別のグループの男性の証言は信用することができ,被告人はその男性が目撃したときに水着をずらすやり方で性交していたことも認めることができる。
3 次に,公然性の認識については,被告人が性交をしたときの状態からすれば,被告人は,行為の行われる客観的状況について,一般通常人の理解する程度に,そこがどのような場所であるかといった意味合いを明らかに認識していたと認められる。実際に,被告人が,性交をしにくいのに海水パンツを脱がず,女性の水着も脱がさずに性交していたことは,自分の行為が他人の目に触れる可能性のあることを分かっていて,そのことを気にしていたからにほかならない。したがって,公然性の認識も認められ,公然わいせつの故意に欠けるところはない。
4 したがって,被告人には公然わいせつ罪が成立すると判断した(なお,弁護人は,検察官が性交相手の女性を起訴せずに被告人のみを起訴し,また本件は本来起訴猶予となるべき事案であるのに起訴したことは,その訴追裁量を逸脱する不平等で恣意的なものであるから,公訴権の濫用として公訴棄却されるべきであると主張するが,弁護人の主張を検討しても,検察官の公訴提起が職務犯罪を構成するような極限的な場合であるとはいえない。したがって,公訴権濫用の主張は採用しない。)。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法174条に該当するところ,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で被告人を罰金30万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により全部被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)