児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「強制わいせつ罪は傾向犯ではなく性的意図が不要である」という上告理由

 刑法学者は「最決S45.1.29以降は傾向犯説の判例は出てない」というのですが、奥村は
  広島高裁岡山支部h22.12.15
  東京高裁H27.12.22
で、立て続けに傾向犯説の判決をもらいました。
 傾向犯説の理由は保護法益が風俗だからで、非傾向犯の理由は保護法益が個人の自由だからということですが、最近の判例は、保護法益は個人自由としつつ傾向犯説という理解不能の立場です。

 強制わいせつ罪のわいせつの定義は
   わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、
   善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)
とされていますが、風俗犯だという理解から一般人基準になっています。
 強制わいせつ罪の保護法益が個人の権利だとするとこの定義も変える必要が出てきます。

上告理由第○ 法令違反〜強制わいせつ罪は傾向犯ではなく性的意図が不要であること
2 強制わいせつ罪の保護法益は個人の自由であるから性的意図は不要である
日高刑法各論講義ノート第3版
瀧川・竹内「刑法各論講義」S40 P92
川崎一夫 演習ノート刑法各論全訂第2版
宮内 新訂刑法各論講義S43
3 学説は不要説
 平川宗信『刑法各論』(有斐閣、一九九五年)P200
条解刑法第2版P467
判例コンメンタール第2巻P295
コンメンタール刑法第2版第9巻P63
4 検察官・検察庁の意見=必要説(傾向犯説)
鈴木義男「判例研究 強制わいせつ罪の主観的要素」(研修263号61頁)
コンメンタール刑法7巻 62頁
強制わいせつ罪における性的意図 _研修808号
4 最決S45.1.29*3の射程外であること
東京高裁H21.3.23
5 不要説の判例判例
千葉地裁八日市場支部H20.11.4*4
東京高裁H21.3.23
東京高裁h26.2.13
6 原判決は必要説
7 まとめ