児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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福岡県青少年保護育成条例違反被告事件(最高裁判所大法廷判決S60.20.23)がみだらな性行為とした行為の内容

 結局、事例判決なので、同種事案が争われる場合には「未だ中学を卒業したばかりの初対面の同女を、それと知りながらドライブに誘い、海岸で駐車さぜた白動車の中で「俺の女にならんか」と言って、いきなり性交をしたのを手始めに、本件までに少なくとも一五回以上も、主に車の中、ときに被告人方で同女と性交を重ねていること、しかも二人が会っている聞は専ら性交に終始しており、結婚の話しなどしたことは全くなかったこと」とかいう判例の事案との比較になります。
 真剣交際の弁解をさせないために、実際の事件でも交際終了後に、最初の性的行為を切り取って立件されることが多くなっています。
 初対面での性交は治癒しがたく、婚姻に至っても青少年淫行罪のままという変な結果になります。

最高裁判所刑事判例集 39巻6号 462頁 福岡高等裁判所
被告人の控訴趣意について。
要するに、所論は、本件の場合、被告人は、Nと婚姻を暗黙の前提とし真剣な恋愛関係において性交をしたものであり、同女に対し有形無形何らの害も与えておらず、又同女にしても被告人との交際を末ながく望んでいたから、右性交はみだらなものとは言えず、淫行に該当しない、かような関係にある者同志間の性交についてまでも本条例を適用するならば、憲法一一条、一一一一条、一九条、二一条が保障する国民の基本的人権を侵害することになるから許されない、又本条例一〇条一項、一六条一項は児童福祉法や刑法では処罰されていない合意による性交を罰するなど法律の範囲を超えているから憲法九四条に違反し、さらに各地で処罰がまちまちであるから憲法一四条にも違反する等主張し、以上の点で原判決には事実誤認、法令適用の誤り、憲法違反があるというのである。
所論に鑑み記録を精査し、当審における事実取調の結果を参酌すると、確に被告人は、原審及び当審の各公判ではNと結婚することを前提として交際していたなどと、所論にそう弁明をしているが、他の証拠によれば、被告人は、昭和五六年三月下旬ころ、未だ中学を卒業したばかりの初対面の同女を、それと知りながらドライブに誘い、海岸で駐車さぜた白動車の中で「俺の女にならんか」と言って、いきなり性交をしたのを手始めに、本件までに少なくとも一五回以上も、主に車の中、ときに被告人方で同女と性交を重ねていること、しかも二人が会っている聞は専ら性交に終始しており、結婚の話しなどしたことは全くなかったこと、本件の場合も同様であり、その後も五、六回性交していること、本件当時Nは高校一年に在学中のやっと一六歳になったばかりの少女であったこと等の事情が認められるのであって、以上の事情に徴すれば、被告人は、同女を単なる自己の性欲の対象としてしか扱っていなかったものと認めるほかはなく、被告人の弁明は措信し難い。この様な態様での性交が青少年を傷つけ、その健全な育成を図るうえで重大な障害となることは明らかであり、本件性交が本条例一〇条一項にいう「淫行」に該当すると認めるのが相当である