児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

処断刑期を誤って上限を超えた刑を宣告した事例(福岡地裁小倉支部h26)→最判h28.7.4

 罪数処理にこだわる弁護人なんていないので、実刑でも見逃しちゃうんでしょうね。奥村が担当している事件で処断刑期を間違えようものなら、鬼の首を取った感じの控訴になります。
 弁護人もそのためにいるわけで、終結時点で、弁護人も宣告刑(処断刑期は○年以上○年以下で、宣告刑は○年くらいか)を予想して弁論するじゃないですか。そこを外れた求刑だと、「検察官、その求刑違法じゃ無いですか!」ということになるし、それをはずれた宣告だと法令適用の誤りで控訴することになるよね。

http://digital.asahi.com/articles/ASJ4V64P8J4VTIPE03V.html
福岡地検は26日、福岡地裁小倉支部で2014年にあった刑事裁判で、検察官が誤って上限を超える求刑をし、裁判所も気づかずに上限より2カ月長い懲役刑を言い渡していたと発表した。元被告は刑期を終えており、検事総長最高裁に確定判決の誤りを正す非常上告を申し立てた。

 発表によると、元被告に求刑できる上限は1年だったが、地検小倉支部の検察官が刑法で定められた刑の減軽の計算を間違えて懲役1年6カ月を求刑。地裁小倉支部は14年3月に懲役1年2カ月の判決を言い渡し、確定した。元被告はその翌月から昨年5月まで服役したという。

追記
 最判h28.7.4を入手しました。D1-Law.com判例体系
 罪となるべき事実で心神耗弱を認めたのに、法令適用で刑法39条2項、68条3号を忘れて、減軽せずに判決したようです
 弁護人も心神喪失とか耗弱の主張をしてたのに、主文がおかしいのに気付いていません。

最高裁判所第二小法廷平成28年07月04日
上記の者に対する福岡県迷惑行為防止条例違反被告事件について、平成26年3月17日福岡地方裁判所小倉支部が言い渡した判決に対し、検事総長から非常上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役8月に処する。

理由
 福岡地方裁判所小倉支部は、平成26年3月17日、被告人に対する福岡県迷惑行為防止条例違反被告事件について、犯罪事実として、「被告人は、常習として、正当な理由がないのに、平成26年1月25日午前9時ころ、北九州市(以下省略)『a』店内で、B(当時38歳)に対し、その臀部を着衣の上から手で触って、公共の場所で、人を著しくしゅう恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、他人の身体に衣服の上から触れる行為をした。なお、被告人は、犯行当時中等度精神遅滞及び飲酒酩酊のため心神耗弱の状態にあったものである。」との事実を認定した。そして、累犯前科として、「被告人は、いずれも福岡地方裁判所小倉支部で、〈1〉平成21年2月12日公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反罪により懲役10か月に処せられ、平成21年11月6日刑の執行を受け終わり、〈2〉その後に犯した福岡県迷惑行為防止条例違反、公然わいせつ罪により平成22年8月17日懲役1年に処せられ、平成23年7月17日刑の執行を受け終わり、〈3〉更にその後に犯した強制わいせつ罪により同年11月24日懲役2年に処せられ、平成25年10月24日刑の執行を受け終わっている。」との事実を認定した。その上で、被告人の所為につき、福岡県迷惑行為防止条例(平成26年福岡県条例第56号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)12条1項、11条1項、6条1号を適用し、所定刑中懲役刑を選択し、刑法59条、56条1項、57条により4犯の加重をした上、刑訴法181条1項ただし書を適用して、「被告人を懲役1年2か月に処する。」との判決を言い渡し、この判決は、平成26年4月1日確定した。
 しかし、原判決認定の罪は心神耗弱者の行為であるから、刑法39条2項、68条3号を適用して必要的減軽をすべきところ、本件条例12条1項、11条1項、6条1号によれば、原判決認定の罪の法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金であり、懲役刑を選択し、累犯加重をした上で、刑法39条2項、68条3号により法律上の減軽をすると、その処断刑の長期は懲役1年となる。そうすると、これを超過して被告人を懲役1年2月に処した原判決は、法令に違反し、かつ、被告人のため不利益であることが明らかである。
 よって、本件非常上告は理由があるから、刑訴法458条1号により、原判決を破棄し、本件被告事件について更に判決することとする。
 原判決の確定した事実に法令を適用すると、被告人の所為は、平成26年福岡県条例第56号附則2項により本件条例12条1項、11条1項、6条1号に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、刑法59条、56条1項、57条により4犯の加重をし、原判決認定の罪は心神耗弱者の行為であるから同法39条2項、68条3号により法律上の減軽をし、その刑期の範囲内で被告人を懲役8月に処することとし、原審における訴訟費用の不負担につき刑訴法181条1項ただし書を適用し、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 鬼丸かおる 裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 山本庸幸)