児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

岡田志乃布検事「強制わいせつ及び強姦の犯行状況を隠し撮りしたデジタルビデオカセットを犯行供用物件として没収した事例(宮崎地裁h27.12.1)研修813号

第1 はじめに
最近,強制わいせつや強姦等のいわゆる性犯罪の事件において,犯人がわいせつ行為等の状況をデジタルビデオカメラや携帯電話・スマートフォン等で撮影し,その画像が保存されているケースが多く見られるようになっている。
そのような事件の性犯罪の被害者から,被害に遭ったことによる精神的なダメージだけでも大変な苦しみを感じているにもかかわらず,その被害状況が映像として保存され,犯人の手元に残っていることによって,更に大きな精神的苦痛を負わされているといった訴えを受けたことのある捜査官も少なくないと思われる。
本判決は,強制わいせつ及び強姦事件の犯人がその犯行状況を隠し撮りしたデジタルビデオカセットを,刑法第19条第1項第2号の「犯罪行為の用に供した物件」として没収した事例である。
従来の運用では,このような犯行状況を隠し撮りしたビデオ等について,検察官が没収を求刑することが少なかったものと思われるが,前述のような近時の状況に鑑みると,今後の捜査・公判に参考となるものと思われるため,ここに紹介するものである。
なお,本稿中,意見にわたる部分は,もとより私見である。
2本判決の要旨等
事案の概要
本件は,アロマサロンを経営していた被告人による,マッサージの指導を受けに来ていた女性1名に対する強姦未遂事件,アロママッサージの施術を受けに来た女性3名に対する強制わいせつ事件3件,同じくアロママッサージの施術を受けに来た女性1名に対する強姦事件1件の合計5件の事案である。

・・・

5 また,本件では,「被告人による隠し撮りは, Bら4名に対する実行行為そのものではなく,もとより被告人がこうした隠し撮りを行ったことをもって訴追されたわけでもない。」とされているとおり,撮影行為自体は実行行為の一部となっているものではない。しかし,被害者を裸にして写真を撮る行為はわいせつ行為に当たるとした裁判例(東京地判昭和62年9月16日・公刊物未登載,判例評釈として松下裕子「警察公論第58巻第1号」59頁がある。)や,被害者の寝姿をビデオ撮影しながら自慰行為を行い射精して着衣に精液をかけた一連の行為をわいせつ行為と認めた裁判例(福岡地判平成13年10月17日・公刊物未登載,判例評釈として前掲松下)などからすれば,事案によっては, わいせつ行為や姦淫行為を撮影する行為自体も,強制わいせつ等の実行行為の一部として評価し,公訴事実に含めることも可能である場合もあると思われる。そして,撮影行為自体が実行行為の一部と認められる場合,録画したビデオテープ等の記録媒体は,刑法第19条第1項第3号の「犯罪行為により生じた物」に該当すると考えることも可能であるように思われる(前記平成22年東京高判の事例では,撮影行為自体は実行行為の一部となっていなかったものと思われる。)。
第4おわりに
本判決は,性犯罪の犯行状況を隠し撮りした記録媒体を,刑法第19条第1項第2号の「犯罪行為の用に供した物」に該当するものとして没収したという意味で,重要な意義を有するものとともに,被害者保護の観点からも,重要な判決であると思われる。
もっとも,刑法第19条により没収することができるのは,犯行の際に撮影された記録媒体の原本のみであると解されるため,犯人が犯行後に作成した複製物等がある場合には,没収のみでは被害者の保護として十分なものとならない場合もあると思われる。また,被害者が事件が公になることを望まないため公訴提起に至らなかった事件においては,没収という方法を採ることができない。
このような場合には,民事訴訟による解決が必要となる場合もあると思われる。高松高判平成17年12月8日判例時報1939号36頁は,刑事事件としては不起訴処分となった事件の被害者の裸体を撮影したフイルムについて,被害者が写真撮影に同意していたものではなく,存在すること自体が被害者のプライバシーを侵害し又は侵害するおそれのある物であるとして,人格権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求としてフイルムの廃棄を認めたものであり,参考になるものと思われる。
本稿が,今後の実務の参考となれば幸いである