児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

隠し撮りが被告人の当該性犯罪と並行して行われ,その意味で密接に関連しているといえるだけでなく,結局それらの映像が無罪の証明につながるものでなかったとはいえ,被告人としては,Bら4名に対する各犯行状況を撮影して録画するに当たり,自らに有利な証拠を作出し得るという認識を持ち,そのような利用価値を見出していたといえるのであり,そのような撮影行為によって客観的に記録した当該映像を確保できること自体が,被告人の上記各犯行を心理的に容易にし,その実行に積極的に作用するものであったと評価できる。したがって,本件各デジタ

 撮影行為も起訴すればいいんですけど。

強姦未遂,強姦,強制わいせつ被告事件
平成27年12月1日刑事部判決
       主   文
       理   由
【罪となるべき事実】
 被告人は,平成21年2月頃,宮崎市大字α××××番地××の住居地の×階部分にアロマサロン「G」(以下「本件店舗」という。)を開業した上,地元の情報誌に営業時間を午前10時から翌午前2時までなどとする内容の記事を掲載しながら,その利用客らに対し,自らも施術者としてアロマオイルを用いたマッサージ等のサービスを提供してきた者であるが,
第1(平成26年2月17日付け起訴状記載の公訴事実(第28号事件)関係)
 かねてから本件店舗で被告人からアロマに関する指導を受けるなどしていたAの協力を得て,平成22年4月17日午後11時頃から,本件店舗において,その宣伝用としてAが被告人を相手にマッサージを行う様子をビデオカメラで撮影するなどの作業を行ったところ,翌18日午前0時頃,その作業を終えたA(当時27歳)が帰宅の準備を始めようとするや,劣情を催した被告人がAを強いて姦淫しようと考え,Aに対し,同所において,手に持ったガムテープ片をいきなりAの口に近づけて貼り付けようとした上,嫌がるAを強引にソファ上に押し倒してその身体に覆いかぶさり,手でその口を塞ぎ,その陰部に手指を差し入れるなどの暴行を加え,その抵抗を著しく困難にさせてAを強いて姦淫しようとしたが,Aが大声を上げて助けを求めるなどしたため,その目的を遂げず(以下「A事件」ともいう。),
第2(平成26年7月2日付け起訴状記載の公訴事実(第140号事件)関係)
 平成24年6月21日午後9時頃に客としてマッサージを受けに来店したE(当時37歳)を本件店舗のマッサージルーム(以下「本件施術室」という。)に招き入れるなどした上,被告人の指示により,全裸にさせたEをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともにアイマスクを着用させ,更にEに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Eの様子を隠し撮りしてデジタルビデオカセット(平成27年押第7号符号4)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃から同日午後11時30分頃までの間に,Eに対するマッサージを行うなどしたところ,Eがこのような状態になっているのに乗じ,マッサージを装って強いてわいせつな行為をしようと考え,その際,本件施術室において,上記のような状態のEに対し,露わにしたEの乳房を直接もんだり,その乳首を触ったりして,もって強いてわいせつな行為をし(以下「E事件」ともいう。),
第3(平成26年6月2日付け起訴状記載の公訴事実第1(第115号事件)関係)
 平成25年11月24日正午頃に被告人の知人として無料でマッサージを受けに来店したC(当時44歳)を本件施術室に招き入れるなどした上,被告人の指示により,上半身を裸にさせたCをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともに,当該施術の途中からアイマスクを着用させ,更にCに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Cの様子を隠し撮りしてデジタルビデオカセット(同号符号2)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃から同日午後2時30分頃までの間に,Cに対するマッサージを行うなどしたところ,Cがこのような状態になっているのに乗じ,マッサージを装って強いてわいせつな行為をしようと考え,その際,本件施術室において,上記のような状態のCに対し,Cの唇に接ぷんし,露わにしたその乳房を直接もんだり,その乳首を触ったりして,もって強いてわいせつな行為をし(以下「C事件」ともいう。),
第4(平成26年6月2日付け起訴状記載の公訴事実第2(第115号事件)関係)
 平成25年11月26日午後9時頃に客としてマッサージを受けに来店したD(当時25歳)を本件施術室に招き入れるなどした上,被告人の指示により,全裸にさせたDをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともにアイマスクを着用させ,更にDに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Dの様子を隠し取りしてデジタルビデオカセット(同号符号3)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃から同日午後11時50分頃までの間に,Dに対するマッサージを行うなどしたところ,Dがこのような状態になっているのに乗じ,マッサージを装って強いてわいせつな行為をしようと考え,その際,本件施術室において,上記のような状態のDに対し,露わにしたDの乳房を直接もんだり,その乳首を触ったりして,もって強いてわいせつな行為をし(以下「D事件」ともいう。),
第5(平成26年6月2日付け起訴状記載の公訴事実(第114号事件)関係)
 平成25年12月15日午後10時頃に客としてマッサージを受けに来店したB(当時27歳)を本件施術室に招き入れるなどした上,被告人の指示により,全裸にさせたBをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともにアイマスクを着用させ,更にBに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Bの様子を隠し撮りしてデジタルビデオカセット(同号符号1)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃からBに対するマッサージを行うなどしたところ,Bがこのような状態になっているのに乗じ,Bを強いて姦淫しようと考え,翌16日午前1時40分頃,本件施術室において,上記のような状態のBに対し,Bの陰部に手指を差し入れて弄ぶなどするとともに,その両膝に自己の体を押し当てるなどしてBの両足を押し広げ,その身体に覆いかぶさるなどの暴行を加えて,その抵抗を著しく困難にした上,強いてBを姦淫した(以下「B事件」ともいう。)。
【証拠の標目】《略》
【事実認定の補足説明】
【法令の適用】
罰条
 判示第1の行為 刑法179条,177条前段
 判示第2ないし第4の各行為 いずれも刑法176条前段
 判示第5の行為 刑法177条前段
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
没収 刑法19条1項2号,2項本文
訴訟費用の負担 刑訴法181条1項本文
【争点に対する判断(没収の可否)】
 当裁判所は,デジタルビデオカセット原本4点(以下「本件各デジタルビデオカセット」という。)が犯行供用物件に当たり,没収するのが相当であると判断したが,弁護人はこれを争っているので,以下,このように判断した理由を説明する。
1 関係各証拠によれば,当該判断の前提として,以下の事実が認められる。
(1)被告人は,本件施術室においてBら4名の女性に対する判示第2ないし第5の各犯行に及ぶに当たり,アイマスクの着用に応じさせたBらに無断で,自らビデオカメラを操作して各犯行状況等の隠し撮りを行い,本件各デジタルビデオカセットに録画した。なお,この隠し撮りの間に,被告人はビデオカメラの位置や向きを動かすなどして,Bらの胸部等を大きく映し出すようにしていた。
(2)このようにして上記各犯行状況等が録画された本件各デジタルビデオカセットは,被告人の所有物として,被告人によってその貼付に係る紙面上にそれぞれ当該女性の氏名や撮影年月日等が記入され,特定できるようにして保管されていた。
(3)もっとも,被告人は,B事件の翌日である平成25年12月17日午後2時21分にB事件の容疑で逮捕されるに当たり,詳細は明らかでないものの,本件各デジタルビデオカセットをいずれも本件店舗以外の場所に移し,捜査機関からの押収を免れていた。
(4)そして,本件各デジタルビデオカセットのうち,Bに関するものについては,被告人が暴行脅迫を加えていないことが明らかになるなどと考え,主任弁護人を通じ,捜査機関に任意提出された。他方,その余については,Bの場合と異なり,捜査機関に明かされなかったが,起訴後のCら3名の証人尋問終了後に,主任弁護人から,検察官への証拠開示を経て証拠請求されるに至った。なお,これらの映像については,機器の制約等のため,捜査機関による複製物が公判廷で取り調べられた。
(5)なお,被告人は,このような隠し撮りを行った理由につき,後に当該女性らとの間でトラブルになった場合に備えて防御のために撮影したものであり,以上の映像の内容は,自らの無罪を証明するとともに,女性らが虚偽の供述をしていることを示すものであるなどと供述している。
2 そこで,以上の事実等を踏まえて判断すると,本件各デジタルビデオカセットは,被告人が当該性犯罪と並行して意図的にこれを録画したものであることが明らかである。このような録画を行った被告人の意図については,自己の性的興奮を高めることなど,検察官が主張するような事情も,可能性としてはあり得るけれども,少なくとも前記のような被告人の供述を含めて検討すると,被告人としては,本件各犯行に及ぶとともに,その撮影に及んだ当初から,被害者らとの間で後に紛争が生じた場合に,本件各デジタルビデオカセットをその内容が自らにとって有利になる限度で証拠として利用することを想定していたと認めることができ,このことは,前記1の事実関係によっても裏付けられているといえる。
 そして,このような被告人による隠し撮りは,Bら4名に対する実行行為そのものを構成するものでなく,もとより被告人がこうした隠し撮りを行ったことをもって訴追されたわけでもない。しかしながら,これらの隠し撮りが被告人の当該性犯罪と並行して行われ,その意味で密接に関連しているといえるだけでなく,結局それらの映像が無罪の証明につながるものでなかったとはいえ,被告人としては,Bら4名に対する各犯行状況を撮影して録画するに当たり,自らに有利な証拠を作出し得るという認識を持ち,そのような利用価値を見出していたといえるのであり,そのような撮影行為によって客観的に記録した当該映像を確保できること自体が,被告人の上記各犯行を心理的に容易にし,その実行に積極的に作用するものであったと評価できる。したがって,本件各デジタルビデオカセットについては,被告人のBら4名に対する各犯行を促進したものといえ,刑法19条1項2号所定の「犯罪行為の用に供した物」に当たる。
【量刑の理由】
(求刑 懲役13年,デジタルビデオカセット4本の没収)
平成27年12月11日
宮崎地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 瀧岡俊文 裁判官 島田尚人 裁判官 廣瀬智彦