児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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強制わいせつ,強姦事件の再審事件について,再審公判において新たに取り調べた証拠によれば,確定判決の根拠となった確定審における被害者及び目撃者の各供述について信用性が認められず,虚偽のものであることが明らかになったとして被告人を無罪にした事例(大阪地裁H27.10.16)

 被害者供述は信用される。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85443
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/443/085443_hanrei.pdf
事件番号  平成26(た)22
事件名  強制わいせつ,強姦(再審)被告事件
裁判年月日  平成27年10月16日
裁判所名・部  大阪地方裁判所  第1刑事部
判示事項の要旨  強制わいせつ,強姦事件の再審事件について,再審公判において新たに取り調べた証拠によれば,確定判決の根拠となった確定審における被害者及び目撃者の各供述について信用性が認められず,虚偽のものであることが明らかになったとして被告人を無罪にした事例
主 文
被告人は無罪。
理 由
第1 本件各公訴事実
本件各公訴事実は,「被告人は,強いてわいせつな行為をしようと企て,平成20年7月上旬ころ,a市b区cd丁目e番fg棟h号室の被告人方において,同居している養女であるA(当時14年)に対し,その背後から両腕でその身体に抱き付き,両手で衣服の上から両乳房をつかんで揉み,もって強いてわいせつな行為をしたものである。」(平成20年9月30日付け起訴状記載の公訴事実),「被告人は,a市b区cd丁目e番fg棟h号室の被告人方でAと同居していたものであるが,第1 平成16年11月21日ころ,前記被告人方において,A(当時11年)が13歳未満であることを知りながら,同女を強いて姦淫しようと企て,同女に対し,その肩等をつかんであお向けに押し倒し,無理やり衣服をはぎ取るなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫し,第2 平成20年4月14日ころ,前記被告人方において,前記犯行及びその後繰り返し行った虐待行為等によりA(当時14年)が被告人を極度に畏怖しているのに乗じ,同女を強いて姦淫しようと企て,同女に対し,前同様の暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫したものである。」(平成20年11月12日付け起訴状記載の各公訴事実)というものである。
第2 再審公判に至るまでの経緯
1 確定審における判決等
(1) 確定審第一審は,被告人が本件各犯行を行った旨のAの捜査段階及び公判廷での供述(以下「Aの旧供述」という。)について,①Aには養父である被告人から強姦被害等を受けたとの虚偽告訴をする特段の事情がないこと,②被害を打ち明けるまでに数年を要していたり,実母に問い詰められるまでは尻や胸を触られた旨打ち明けるに留まっていたなどの事情も存するが,当時のAの年齢や境遇からすれば,被害を打ち明けるまでの経過に何ら不自然・不合理な点はないこと,③虚偽被害のでっち上げを行う動機がなく信用できる兄であるBの目撃供述(以下「Bの旧供述」という。)と一致していること,④供述内容に自然性・合理性が認められること,⑤供述態度も真摯であったことなどを理由に,信用性が認められると説示し,他方,被告人の供述についてはAの供述に疑問をさしはさむ程度の信用性を認めることができないとして,平成21年5月15日,本件各公訴事実についていずれも有罪であると認定し,被告人を懲役12年に処するとの判決を言い渡した。
(2) 被告人は,第一審判決を不服として,大阪高等裁判所控訴の申立てをしたが,控訴審は,第一審判決と同様にA及びBの各旧供述には信用性が認められるとして,平成22年7月21日,控訴を棄却した。被告人は,上告申立てをしたが,最高裁判所は,平成23年4月21日,上告を棄却する決定をした。
2 再審開始決定等
(1) 被告人は,平成26年9月12日,確定審における供述は虚偽であり,Aが被告人から強姦等の被害を受けた事実も,Bがそれらを目撃した事実もない旨のA及びBの新たな供述は,新たに発見した無罪を言い渡すべき明らかな証拠にあたるとして,大阪地方裁判所に対して再審請求を行った。これに対し,検察官は両名の前記各供述を踏まえ,再度補充捜査を実施した結果,Aが強姦されたとする時期より後に受診した産婦人科において,「処女膜は破れていない」という診断が記載されたカルテ(以下「本件カルテ」という。)の存在が新たに判明したことから,A及びBの前記各供述並びに本件カルテの記載が,無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する蓋然性が高いとして,速やかに再審開始決定をされたい旨の意見を述べた。
(2) 大阪地方裁判は,事実の取調べとして,A及びBらの証人尋問を実施した。Aは,再審請求審において,①被害を受けたとの確定審での供述は虚偽であり,本件各犯行の事実は存在しない,②被告人からお尻を触られる旨大伯母であるCに話したところ,それを伝え聞いた実母であるD及びその夫であるEから他にも何かされたのではないかと何日間も深夜に及んで問い詰められたため,最後には,胸を揉まれたと認めた,その後,強姦されたのではないかとの問いに対しても,これを否定することができなかった,③また,産婦人科に三度連れて行かれ,診察を受けさせられた,④取調べではDが怖くて虚偽であることを打ち明けられなかった,⑤就職しDから距離を置いたことを契機にして,これまでの供述が虚偽であることを弁護人に告白することにした旨供述した(以下「Aの新供述」という。)。
また,Bは,再審請求審において,①本件各犯行の事実は見たことがなく,これらを目撃した旨の確定審での供述は虚偽である,②D及びEから被害を見ていないはずはないなどと問い詰められ,被害を目撃したと話してしまった,③自分が嘘だと打ち明けても信じてもらえないと思い,取調べでも本当のことを話さなかった旨供述した(以下「Bの新供述」という。)。
大阪地方裁判所は,①再審請求審において検察官から提出された本件カルテには「処女膜は破れていない」との記載があり,Aの新供述を強く裏付けること,②再審請求審における事実の取調べでのEの供述内容や,再審請求審において検察官が提出したAに関する病院の診療記録に記載されている内容が同人の新供述と整合すること,③A及びBが偽証罪等の処罰を受けるおそれがあるにもかかわらず確定審での供述が虚偽であった旨認めていること等を考慮すると,両名の各新供述は信用することができ,これらの供述は確定判決が有罪認定の根拠とした両名の各尋問調書及び各検察官調書の内容の信用性に疑問を抱かせるものであるから,新たに発見した無罪を言い渡すべき明らかな証拠にあたるとし,平成27年2月27日,再審を開始する旨の決定をし,同決定は確定した。
第3 当裁判所の判断
1 証拠構造
前記のとおり,確定判決が,被告人のAに対する強姦及び強制わいせつ行為(以下,併せて「強姦等」という。)を認定した中心的な証拠は,被告人から強姦等された旨のAの旧供述及びそれらを目撃した旨のBの旧供述である。そこで,A及びBの各旧供述が,新たな証拠が取り調べられた現時点においてもなお信用性を有するかについて,以下検討する。