児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

女子高生16歳は容疑者に好意を持っていた それなのに誘拐の疑いで男逮捕に疑問噴出

 「甘言をもって相手方の判断を誤らせた」誘拐罪でしょうか。
 高槻署なので。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151013-00000004-jct-soci&p=2
高槻署の副署長が取材に答えたところでは、事件の経緯は次の通りになる。
 7月に女子高生を保護したとき、男に好意を持っており、被害者意識が希薄だったため、任意で捜査していた。その容疑は、10万円以下の罰金に留まる愛知県青少年保護育成条例違反(第17条2項=親の承諾なしの深夜連れ回し行為)だった。
 そのときには、男は、もう女子高生とは会わないと言っていた。

 ところが、10月に女子高生がまたいなくなり、両親が行方不明者届を出して娘を確保してほしいと訴えた。

 高槻署では、前と同じことが繰り返されている可能性があるとみて男と連絡を取り、2日後の5日に事情を聴くため自宅マンションを訪れた。しかし、男は自宅におらず、会社も無断欠勤していた。

 女子高生の自宅の最寄り駅などで防犯カメラの映像を分析すると、2人が大阪市内で会っていたことが分かった。その後は、神戸市内に行った後、松山市内にいることをつかんだ。男がスマホを解約したとき、店員がデータ確認で電源を入れたため、GPS機能で所在が判明したからだ。そして、宿泊先を洗い出した結果、12日朝にホテルを出た男を職務質問し、女子高生を保護した。

 男は、女子高生と駆け落ちしようと話し合っていたという。女子高生は、結婚は意識していなかったが、このときも男が好きで被害者意識も薄かったとしている。

 それでも男を逮捕したことについて、副署長はこう説明する。
  「本人は、親とも連絡を取ったことがなく、未成年者を無断で連れ回すことがいけないことだと知っていました。まだ精神的に不安定な年ごろなのに、甘い言葉でだまして自己の支配下に置いて連れ回すのは、悪質で許されないことだと考えて誘拐容疑に切り替えました」
 さらに、高槻市内で8月に中1少女の遺体が発見されて騒ぎになった殺人事件のことも考慮したと明かす。

条解刑法
他人をその生活環境から離脱させ,自己又は第三者の事実的支配下に置く行為のうち,暴行・脅迫等の強制的手段を用いるなど人の意思を抑制して行う場合が「略取」であり,偽計・誘惑を手段とするなと。人に誤った判断をさせて行う場合が「誘拐」である。これらを合わせて拐取という。
「事実的支配下に置く」とは,被拐取者に対し物理的な作用や心理的な影響を加えて,その自由意思を制圧又は制御する状態に置き,拐取者又は第三者の管理下から離脱することが困難な状態にすることである。被拐取者の自由を完全に拘束した状態に置く必要はないが,拐取手段等として加えられた物理的な作用や心理的な影響のほか,被拐取者の年齢・精神状態本来的な生活場所との距離・文化的環境の相違等も考慮して判断される。
略取における暴行・脅迫は,被拐取者を自己又は第三者の事実的支配下に置き得る程度で足以相手方の反抗を抑圧する程度のものである必要はない。例えば,事態に適切に対応する能力の未熟な子どもの場合その子の携帯品を手中に入れ「これを返して欲しければついて来い」などと言った程度でも,略取の手段としての脅迫になり得る。コンテナ内に入っている者を外部から施錠して閉じ込め,コンテナごとトラックに乗せて運び去った場合は暴行・脅迫以外の手段を用いた略取である。また,麻酔薬を用いて意識を失わせて連れ去るというように,被拐取者を心神喪失・抗拒不能に陥れて事実的支配下に置いた場合や,嬰児やこん睡状態にある者を連れ去るというように,被拐取者の心神喪失・抗拒不能に乗じた場合も,略取に当たる。
誘拐とは,虚偽の事実をもって相手方を錯誤に陥れる場合のほか,その程度に至らないが,甘言をもって相手方の判断を誤らせる場合をいう(大判大12・12・3集2915)。
相手方を心神耗弱に陥れて,あるいは相手方の知慮浅薄・心神耗弱に乗じて,被拐取者を事実的支配下に置いた場合,偽計・誘惑を手段としていなくても誘拐である。したがって,泥酔して適正な判断ができない者を甘言すら用いずに誘導して自動車に乗せて連れ去った場合も誘拐になる。

     未成年者誘拐未遂被告事件
【事件番号】 釧路地方裁判所判決平成24年7月19日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
(罪となるべき事実)
 被告人は,インターネット上のチャットを通じて知り合った北海道根室市内に居住する■■■■(平成■年■■月■■日生,当時14歳)が未成年者であることを知りながら,同女に家出願望があることを利用して同女を自己の下に来させようと考え,平成24年3月1日から同月22日までの間,東京都内において,自己の携帯電話機を使用して,同女使用の携帯電話機に多数回にわたり,「家出することを止めないといけないんだけど理由が理由だしこっちに来ることは大丈夫だよ」,「しばらくは一つの部屋で一緒に過ごすことになるけど平気かな」,「あとはこっちで飛行機の予約と支払いをしてしまう」,「3月23日に予約するけど大丈夫?」,「家事してくれたら十分だよ」などのメールを送信するとともに,同月12日,同女に宛てて,交通費としての現金1万円等在中の封筒を,東京都東村山市本町2丁目1番地2郵便局株式会社東村山郵便局から北海道根室市光洋町2丁目15番地7同社光洋簡易郵便局局留めで郵送し,同月15日,同所において,同女に前記封筒を受領させ,さらに,同月16日,インターネットを利用して,同月23日の中標津空港東京国際空港行きANA840便の航空券を同女名義で予約するなどして,同女に対し,家出をして自己の下に来るように誘惑し,同女にその旨決意させ,同月23日,同女を,その親権者に無断で,東京都大田区羽田空港3丁目4番2号所在の東京国際空港第2ターミナルまで誘い出したが,同日,同所において,同女が警察官に保護されたため,その目的を遂げなかった。
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,起訴状記載の公訴事実について事実関係自体は争わないものの,本件においては,被告人は■■■■(以下「被害者」という。)を誘惑しておらず,未成年者誘拐未遂の実行行為性がない,また,被告人には未成年者誘拐未遂の故意もないとして,被告人は無罪であると主張し,被告人も,自己の行為が未成年者誘拐未遂の罪になるとは思っていない旨を述べている。
2 そこで検討するに,関係各証拠によれば,判示の事実(起訴状記載の公訴事実)を含め,以下の事実が認められる(なお,被告人,弁護人においても事実関係については特段争っていない。)。
 (1) 被害者は,本件当時14歳であり,北海道根室市内に母親らとともに居住していた。被害者は,平成23年4月頃から本件に至るまでの間に,2回ないし3回程度家出をしたことがあったものの,いずれも友人等の家に行ったというものであり,居住する根室市内から出たことはなかった。また,被害者は,これまで飛行機に乗ったこともなかった。
 (2) 被告人は,平成24年2月中旬頃,インターネット上のチャットを通じて被害者と知り合い,チャットのやり取り等を通じて被害者に家出願望があることを知った。
 (3) 平成24年2月21日頃以降,被告人と被害者は,携帯電話機のメール機能を利用して連絡を取り合うようになった。そして,被告人と被害者とのやり取りの中で,被害者が家出をして東京都内の被告人方に来ること,被告人が被害者のため航空券及び交通費の手配をすることとなった。この間の被告人と被害者の具体的なやり取りのうち,主なものは以下のとおりである(特に断らない限り全て平成24年の出来事である。)。
  ア 2月29日深夜から3月1日にかけて,被害者は,被告人に対し,自分が14歳であること,家庭内で暴力を振るわれているが児童相談所や警察は何もしてくれず家出をしたいことを伝えた。これに対し,被告人は,「家出することを止めないといけないんだけど理由が理由だしこっちに来ることは大丈夫だよ」と回答した。なお,被害者に対する家庭内暴力については,被告人からこれ以上詳細を尋ねることはなかった。
  イ 3月2日のやり取りでは,被害者が被告人方に来ることを前提として,被告人から被害者に対し「しばらくは一つの部屋で一緒に過ごすことになるけど平気かな」とメールを送信し,被害者は構わない旨回答した。
  ウ 3月7日のやり取りでは,被告人は,被害者からの有給休暇を取って迎えに来てくれないかという申し出に対し,「7月までは有給取れないんだよね あとはこっちで飛行機の予約と支払いをしてしまうとか・・・飛行機なら一本だし調べてみるよ」と回答した。
  エ その後,被告人は被害者と,空港までの交通費や航空券の予約についてメールのやり取りを行った。
    被害者は東京に行くだけの資金を用意することはできなかったものの,被告人は,3月12日,被害者に宛てて交通費として1万円を光洋簡易郵便局局留めで郵送し,3月15日,被害者はそれを受領した。また,3月16日には,「3月23日に予約するけど大丈夫?念のため確認だけど後戻りできなくなるけど」とのメールを送信し,被害者は大丈夫と答えた。そして,実際,被告人は,3月16日,インターネットを利用して,3月23日の中標津空港東京国際空港行きANA840便の航空券を被害者名義で予約した。
  オ 3月17日に,被告人がなぜこのように資金を提供してくれるのか気になった被害者は,被告人に対し「こんなにしてるのに見返りは求めないの?」とのメールを送った。これに対し,被告人は,「何か求めた方が良かったかな 何か思いついたら言うよ」,「家事してくれたら十分だよ」などと回答した。
 (4) 被害者は,平成24年3月23日,通学する中学校の終業式の終了後,バスに乗って中標津空港に行き,上記航空機に搭乗し,東京国際空港へと向かった。他方,被告人も,被害者と落ち合うため,東京国際空港第2ターミナルへと向かった。
 (5) 被害者の母親は,被害者と被告人との上記やり取りを一切知らず,同月23日の終業式終了後に被害者が帰宅しないことから,中学校に連絡するなどし,被害者の家出の事実を初めて知って警察に相談するなどした。その結果,被害者は,東京国際空港第2ターミナルに到着後,同ターミナルにおいて警察官に発見され保護された。なお,被告人は,被害者と落ち合うことができなかったことから,東京国際空港から帰宅している。
3 以上を前提に,未成年者誘拐未遂の実行行為性について検討する。
 (1) 未成年者誘拐(未遂)罪における「誘拐」とは,欺罔又は誘惑を手段として,未成年者をその保護されている状態から引き離して自己又は第三者の事実的支配の下に置くことであるところ,その手段としての「誘惑」とは甘言をもって未成年者の判断の適正を誤らせることをいう。
   そして,上記認定のとおり,被害者は,被告人とのやり取りの中で,家出願望を伝え,また,被告人に北海道まで迎えに来てほしい旨を伝えた。これに対し,被告人からは,被害者が東京都内の被告人方まで来て一緒に暮らすことが提案され,被害者もこれに応じて家出を具体的に計画するようになった。その後,被告人は,被害者が東京に来るための交通費や航空券を手配した。さらに,被害者が,被告人に対して見返りが必要なのか尋ねたところ,被告人が,被害者に対し,家事をしてくれれば十分だよなどと伝えたため,被害者が家出を実行するに至った。これらの事実経過に照らせば,東京への移動手段を知らず,そのための資金もなかった被害者が,親権者に無断で家出をして東京の被告人方へ行くとの判断をするに当たって,上記2(3)アないしオで認定した被告人の一連の行為が決定的な要因となっていたことは明らかである。したがって,被告人のこれら一連の行為が,甘言をもって被害者の判断の適正を誤らせ,その保護されている状態から引き離して自己の事実的支配下に置くための行為にあたることは明らかであり,未成年者誘拐未遂の実行行為に該当することは優に認められる。
 (2) ところで,弁護人は,本件において被告人は,もともと家出願望のあった被害者の希望を叶えるため,善意から被害者の家出の手助けをしたに過ぎず,被害者の家出の意思は被告人の関与と無関係に存在しており,被告人から積極的に被害者の家出の意思を生じさせたものではないから,被告人が被害者を「誘惑した」と評価すべきでないと主張する。そして,弁護人は,その根拠として,?被告人が被害者の下へ迎えに行くのは難しいと答えたにもかかわらず,被害者が何度も被告人に迎えに来るよう要望したこと,?被害者は,被告人に対し,バスの時間など交通手段の調査を要望していること,?被告人は,被害者に対し,被害者が家出を止めても構わない態度を示していたことなどを指摘している。
   この点,被害者が被告人と接触する以前から家出願望を有していたことや,上記?ないし?の弁護人の指摘する点などを踏まえると,被害者の側に家出についての積極性が一定程度あったことは確かである。しかしながら,?については,結局,被告人が被害者の下へ迎えに行けないという話の中で,被告人から,被害者が東京へ来る方法での家出が提案されている。?については,被害者の要望を受けて,被告人が東京への移動手段を調べた上,交通費や航空券の手配をするに至っている。?についても,被告人から,被害者に対し,家出以外の方法を提案するなど家出を止めさせるための積極的な行動かあったというわけではなく,結局のところ,被告人は被害者の家出のため交通費や航空券の手配をし,家出の実行に至ったという経緯が認められる。そうすると,本件において,もともと被害者に家出の願望があったとはいっても,それが当初から具体的なものであったというわけではなく,被告人とのやり取りの中で,被害者の家出の意思が具体化し,確定的なものとなって実行に移されたものと認められる。
   したがって,弁護人の上記主張やその他縷々指摘する点を踏まえても,既に検討したとおり,被告人の一連の行為が未成年者誘拐未遂の実行行為に該当することは否定されない。
4 さらに,未成年者誘拐未遂の故意について検討する。
 (1) 弁護人は,被告人は被害者の家出をしたいという希望に沿った行動をしただけで,「誘惑した」という気持ちはなく,また,被告人には被害者を継続的に自宅に住まわせることによって被害者を自己の事実的支配下に置く意図はなかったのであるから,未成年者誘拐未遂の故意はなかったと主張する。
 (2) しかしながら,被告人の一連の行為が未成年者誘拐未遂の実行行為にあたることは既に検討したとおりである。そして,被告人において,メールのやり取りや被告人が交通費及び航空券を手配したことといった一連の行為及びそれによって被害者が家出をし東京都内の被告人方に来ることとなったことについての認識,認容があったことは明らかである。そうである以上,被告人が自己の行為について未成年者誘拐未遂の実行行為としての「誘惑」にあたるものと評価していなかったとしても,故意が否定されるものではない。
   また,上記認定事実によれば,被告人と被害者は,被害者が東京に来た後は被告人の住居で同居することを予定していたと認められ,被告人に被害者を自己の事実的支配下に置く認識,認容があったことも明らかである。被害者が帰りたいという意思を示した場合に被告人にそれに応じる意思があったかどうかという点は,未成年者誘拐未遂の故意を認めるに当たり何ら妨げとなるものではない。
 5 したがって,判示行為として摘示した被告人の一連の行為が未成年者誘拐未遂の実行行為に該当するものと認められ,また,被告人に未成年者誘拐未遂の故意があったことも認められる。