児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

以前交際していた20代の女性に対して、「言うことを聞かないと困るのはあなたですよ」などと脅して裸の写真を送らせたという強制わいせつ被疑事実で逮捕された事案(東京地裁h27)

 高検金沢支部の検察官は「脅して撮影させて送らせるのは、脅して撮影するのとは程度が違うので、わいせつ行為に当たらない」と主張してましたけどね。東京では強制わいせつ罪のようですね。
 刑事確定記録で判決書(強制わいせつ罪)を確認しました

http://www.sankei.com/affairs/news/150831/afr1508310010-n1.html
同庁によると、メールの脅迫に関して強制わいせつ容疑を適用するのは珍しいという。
 逮捕容疑は、平成25年10月、元交際相手の女性に「言うこと聞かないと困るのはあなたです」などと携帯電話のメールで脅迫し下着姿などの画像を送らせたうえ、27年6月、ツイッターで女性の知人に女性の16歳当時の裸の画像を送りつけたなどとしている。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150831/k10010210421000.html
警視庁の調べによりますと、容疑者はおととし、以前交際していた20代の女性に対して、「言うことを聞かないと困るのはあなたですよ」などと脅して裸の写真を送らせたほか、ことし6月、女性が10代のときの裸の写真5枚を知り合いの男性に送ったとして、強制わいせつや児童ポルノ法違反などの疑いが持たれています。
これまでの調べで、容疑者は女性と別れたあと、3年前から「画像をばらまく」などとメールを送り、女性が連絡先を変えたため、ツイッターで知り合いの男性に写真を送って連絡先を聞き出そうとしたとみられています。
警視庁によりますと、容疑者は調べに対して容疑を認め、「女性のことが忘れられなかった」などと供述しているということで、警視庁は女性に再び交際を迫ろうとしたとみて調べています。


弁護人はこう主張すればいい

名古屋高検金沢支部検察官の答弁書h27.6.2
イ弁護人は,多数の判例を挙げて,本件においても,これらの判例同様に,被告人が被害児童らをして自らの写真撮影行為が強制わいせつ罪における「わいせつ行為」に該当する旨主張する。しかしながら,弁護人が掲げる判例は,いずれも,被告人自らが「撮影する行為」に関する判断であって,被害者自身に「撮影させる行為」に関するものではないし,他の裁判例の事案においても同様である。例えば
① 東京高判昭 29.5.29(特報 40号 138頁)
② 東京地判昭 62.9.16(判時 1294号 143頁)
③静岡地浜松支判平 11.12.l(判タ 1041号 293頁)
などについても,撮影に至る経緯や撮影状況については若干の差異はあるものの,いずれも,被告人自らが「撮影する行為」を強制わいせつ罪における「わいせつ行為」として認定したものであって,被害者自身に「撮影させる行為」に関する判断ではない。
被告人自らが撮影する場合と,被害者に撮影させる場合とでは,被害者にとってみれば,他人に自らの恥ずかしい姿態を撮影されることと,自らがそれと知りつつ撮影することの違いが生じているのであって,その性的差恥心の程度には格段の差があり,必然的に強制わいせつ罪の保護法益である「性的自由」の侵害の程度も両態様を比較すれば大きく異なる。。
かかる差は強制わいせつ罪における「わいせつ行為」か否かの判断においては重要な要素を占めているものと思われるのであり,被害者の恥ずかしい姿態を被告人自ら撮影する行為がわいせつ行為であると認定されたとしても,被害者に恥ずかしい姿態を撮影させる行為をもって,直ちに強制わいせつ行為であると認定するには躊躇せざるを得ない。弁護人が緯々掲げる判例,裁判例の存在のみならず,これまで,暴行脅迫により被害者自らに恥ずかしい姿態を「撮影させた」事案は多数件にわたり発生しているものと思われるところ,かかる事案を強制わいせつ罪として積極的に処断した事例は極めて少ない。これは,おおいに事案の内容によることであるが,仮に「撮影する行為」であっても,その行為態様によって被害者の性的自由を害した程度に差があり,一概に全ての撮影行為がわいせつ行為であるといえないのと同じように,すべての「撮影させる行為」が一概にわいせつ行為であるとは到底認定できず,前記理由から,むしろ「撮影する行為」の場合に比べてもハードルは高いのであり,そのことに起因するものと思われる。
したがって,弁護人が主張するように,「撮影させた行為」につき全てわいせつ行為として立件起訴できるものではない。この点は,仮に弁護人が,撮影させる行為をわいせつ行為として認定した裁判例の存在を指摘しても同様であり,同裁判例の存在をもって,本件において強制わいせつ罪が成立する根拠とはなり得ないことは,後記エのとおり,判例が具体的事案に対する判断である以上当然である。