児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者の氏名部分を「女性」とし、犯行場所と年齢の記載にとどめた起訴状につき、「被告が事実を認め、争いがなかったため、匿名に同意する意見を出した」という強姦罪の弁護人

 奥村なら、公訴棄却になるかもしれない訴訟上の争点を公判前に潰してしまうのはもったいないと考えて食い下がってますけど。裁判所に判断させないと。
 参考文献は刑弁情報くらいしかないけど。

参考文献
「起訴状匿名化をめぐる議論について」大阪弁護士会 刑弁情報46号
 初澤由紀子「起訴状の公訴事実における被害者の氏名秘匿と訴因の特定について」 安富退職記念号慶応法学31号p61
「性犯罪事犯等の刑事手続における被害者氏名等の秘匿 警察学論集67巻9号」
 酒巻「被害者氏名の秘匿と罪となるべき事実の特定」町野朔先生古稀記念 刑事法・医事法の新たな展開
 名古屋高裁金沢支部h27.7.23(福井の事件)
 名古屋高裁金沢支部h27.7.23(富山の事件)

性犯罪、被害者匿名で起訴/鹿児島地検、保護を優先し先月2件
2015.08.08 朝刊  
 鹿児島地検が、女性暴行罪で7月に起訴した男の起訴状で、被害者の氏名を匿名にしていたことが7日、分かった。性犯罪などの二次被害防止のため、全国の地検が被害者名を記述しないケースが相次ぐ中、県内では初めてとみられる。県警は男の逮捕状で被害者の氏名を匿名にしており、足並みをそろえた形となった。

 地検によると、起訴は7月3日付。起訴状は被害者の氏名部分を「女性」とし、犯行場所と年齢の記載にとどめた。7月29日には、強制わいせつ致傷事件でも被害者を匿名で起訴し、裁判員裁判で審理される。

 地検は「被告と被害者に面識がない場合や、被害者から申し出があった場合などに匿名とする」と説明。女性暴行罪で起訴された男の担当弁護士は「被告が事実を認め、争いがなかったため、匿名に同意する意見を出した」と述べた。

 最高検は被害者の匿名化について、指針は示さず、各地検が状況に応じ事件ごとに柔軟に対応することにしている。県警は2013年から被害者の氏名を記載しない逮捕状を執行。今年7月までに少なくとも22件に上る。

 被害者の匿名化は、12年の神奈川県逗子市のストーカー殺人事件がきっかけ。警察が逮捕状執行時に読み上げた内容などから元交際相手の男が被害者の住所を特定、犯行に及んだ可能性が浮上した。

 刑事訴訟法256条は起訴状に犯罪の日時や場所、犯行手段などを可能な限り明示するよう求めている。被告に反論の材料を提供したり、犯罪事実を特定させたりするためだ。

 鹿児島大学法科大学院の中島宏教授(刑事訴訟法)は「起訴状は審理する範囲を決める裁判の大前提。被害者保護も重要だが、匿名ではどの事実を起訴したのか特定できない場合もある。安易に特例を広げず、慎重な運用が必要」と指摘した。県弁護士会犯罪被害者支援委員会副委員長の溝川慎二弁護士は「逮捕状や起訴状などで各機関が足並みをそろえないと、被害者は守れない。法による規定が必要」と話した。(山下翔吾、西悠宇)
南日本新聞