児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

罰則の必要性・要件 議論 淫行処罰是非判断 条例モデル検討会

 著書では淫行条例不要論を唱える安部先生が座長をやってるのがよくわからない委員会です。

「淫行」の概念を解釈した1985年の最高裁判例を部分的に採用し、「専ら性的欲望を満足させる目的で、性行為を行うこと」などを列記するべきだとした。」というのは「福岡県青少年保護育成条例11条1項の規定にいう「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔しまたは困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交または性交類似行為をいうものと解すべきである。」 (福岡県青少年保護育成条例違反被告事件最高裁判所大法廷昭和60年10月23日)という最高裁判例を逸脱しようとしているように読めますね。
「単に」を「専ら」に広げるというのですよ。
 「単に」であれば、少しでも真剣交際性が入れば、淫行が否定されるのですが、「専ら」だと真剣交際性が過半じゃないと、淫行が否定されません。

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/140500/m0u/
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[副](あとに「だけ」「のみ」などの語を伴って)その事柄だけに限られるさま。

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/219480/m0u/%E5%B0%82%E3%82%89/
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《「もはら」の音変化》
[副]他はさしおいて、ある一つの事に集中するさま。また、ある一つの事を主とするさま。ひたすら。ただただ。「―練習に励む」「休日は―子供の相手をする」「―のうわさだ」
[形動ナリ]専念するさま。また、主要・肝要なさま。
「人倫において―なり」〈謡・忠度〉

 例えば、兵庫県条例をみても、最高裁s60をはさんで「もっぱら」→「単に」と狭まっています。

兵庫県少年愛護条例解説s42
( みだらな性行為等の禁止)
第8条の2
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
〔解説〕
l 第1項は、青少年に対してなされるみだらな性行為、わいせつな行為の禁止規定であるo
2 「みだらな性行為」とは、児童福祉法に規定されている「淫行」と同意義である。すなわち、健全な常識を有する一般祉会人からみて不純とされる性行為をいい、結婚を前提としないもっぱら情欲を満足させることを目的とする性行為もこれに当たり、性交類似行為でわいせつな行為の範囲をこえるものも含まれる。


兵庫県少年愛護条例解説S63
(みだらな性行為等の禁止)
第8条の2
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
追加〔昭和42年条例30号〕
3 「みだらな性行為」とは、いわゆる「淫行」と同意義であり、具体的には
・青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し、又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為
・青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又はは性交類似行為の行為をいう(福岡県条例違反事件最高裁昭和60年10月23日判決)。


兵庫県少年愛護条例の解説H24
(みだらな性行為等の禁止)
第21条何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 「みだらな性行為」とは、青少年を誘惑し、威迫し、若しくは困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為、又は青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為のことをいう。
4 第1項の例としては、成人が結婚の意思もないのに青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の性的欲望を満足させるためだけにしたみだらな性行為及び青少年の性器をもてあそぶなどしたわいせつな行為がこれにあたるが、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との関係で行われる性行為等、社会通念上およそ罰則の対象として考えがたいものは、これらに該当しない。

http://www.shinmai.co.jp/news/20150509/KT150508ATI090032000.php
県が、子どもの性被害を防ぐ上で、青少年との性行為に何らかの規制を盛り込む条例が必要かどうか、県民の判断材料にするための条例モデルを考える検討会(座長・安部哲夫独協大教授)は8日、3回目の会合を県庁で開いた。子どもに性被害を与えた大人への罰則を設ける必要性があるとした一方、警察の恣意的な捜査を防ぐなどの観点から、罰するための構成要件は「できるだけ明確化を目指す」とする意見が出た。

 委員からは「(子どもに性被害を与える)常習性がある例もある」との指摘があり、安部座長を除く3人の委員は、最高刑の2年以下の懲役か100万円以下の罰金を科すことが妥当だとした。

 何をもって大人が子どもに性被害を与えたかを示す構成要件については、警察の恣意的な捜査を防ぐなどの観点が必要との指摘があった。「淫行」の概念を解釈した1985年の最高裁判例を部分的に採用し、「専ら性的欲望を満足させる目的で、性行為を行うこと」などを列記するべきだとした。

 他県の青少年健全育成条例の多くに盛られている「深夜外出の規制」についても検討。保護者が「深夜に青少年を外出させないように努めなければならない」との規定を設ける一方、大人が保護者に無断で子どもを深夜に連れ出すなどの行為には30万円以下の罰金を設けるべきだとした。

 条例モデルには、被害者支援の条項が盛り込まれる予定。検討委は「できるだけ幅広い被害者支援につなげるため」とし、性被害の定義を広くするべきだとした。