児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童を「犯罪少年」として検察官に送致した京都府警

「女子生徒の書類送検容疑は、昨年10月28日、自身の裸を撮影した動画1点を同様に公開した疑い。」「女子生徒は約1万円相当のギフト券に交換したという。」ということで、被害児童(15)は犯罪少年(被疑者)として送検されたようです。
http://www.kensatsu.go.jp/gyoumu/shonen_jiken.htm

 形式的に適用すると、公然陳列罪と公然陳列目的製造罪とで、大人なら最高懲役7年6月になるような重罪ですが、

第7条
6  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 他方で、被害児童でもあって、法律にも厚い保護規定が置かれているわけですから、児童の保護が先行するはずです。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第三章 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置
(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条  厚生労働省法務省都道府県警察、児童相談所、福祉事務所その他の国、都道府県又は市町村の関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2  前項の関係行政機関は、同項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
第十六条  国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。
(心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等)
第十六条の二  社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとする。
2  社会保障審議会又は犯罪被害者等施策推進会議は、前項の検証及び評価の結果を勘案し、必要があると認めるときは、当該児童の保護に関する施策の在り方について、それぞれ厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べるものとする。
3  厚生労働大臣又は関係行政機関は、前項の意見があった場合において必要があると認めるときは、当該児童の保護を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 しかも、京都府は、国法に上乗せして、心身に有害な影響を受けた児童に対する支援を徹底することを宣言しています。

京都府児童ポルノの規制等に関する条例 逐条解説
(心身に有害な影響を受けた児童に対する支援)
第11条 府は、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、関係機関と連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長し、生活することができるよう、相談体制の充実を図ること等により必要な支援を行うものとする。
2 府は、前項の支援のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、必要な支援を行うものとする。
【解説】
 本条は、本条例第1条の目的を達成する上での「府の責務」のうち、被害児童の支援について特別に規定したものである。
 子どもの時に受けた性的被害は、その子どもの将来や人生のあり方に深刻なダメージを与えるものであり、児童ポルノの被害をなくしていくという観点においても、最優先事項として被害に遭った児童の支援を充実させることが重要であることを明記したものである。
 被害児童の支援に当たっては、児童ポルノ被害に関する相談については、被害者自身からなかなか言い出しにくい面があるので、身近な専門相談窓口を設置し、あらゆる機会をとらえて広く周知に努めるなど、気軽に相談しやすい環境をつくることが大切である。
 あわせて、相談に際して二次被害(被害後に周囲の言動によってさらに傷つけられてしまうこと)が生じることがないよう十分配慮するなど、安心して相談できる環境をつくることも大切である。
 また、子どもは家族の一員であり、被害児童の支援においては、保護者も含めて家族に対するサポートができる体制も必要である。

【具体的な取組方策】
 専門的な知識に基づく迅速かつ適切な支援(助言・指導・一時保護・施設入所など)が行えるようにするなど、相談体制の強化を図るとともに、保護者も含めて家族に対するサポートができる体制づくりを検討していく。
 家族に対するサポートとは、例えば、「自分の子どもが児童ポルノ被害を受けたのは、自分が親としての責務を果たしていなかったから」等と自分を責めるケースも想定されることから、児童と同様、心に傷を負った家族に対しても助言・指導等のサポートを行おうとするもの。
また、保健所や市町村、警察、学校などの関係機関との相互の連携・協力により、家庭支援総合センターを中心に被害児童支援のためのネットワークを府域全体に拡げるとともに、(社)京都犯罪被害者支援センター等の民間支援団体との連携も強化し、個々のケースに応じたきめ細やかな支援体制の構築についても検討していく。

 だとすると、送致先は、検察官じゃなくて、条例の「専門相談窓口」であるべきですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150508-00000024-kyt-l26
課金型の写真共有アプリ「写真カプセル」で、女児の裸の画像などを公開したとして、京都府警少年課と山科署は8日、児童買春・ポルノ禁止法違反(公然陳列)などの疑いで、東京都立川市の高校3年の男子生徒(17)と、大阪市西成区の高校1年の女子生徒(15)を、それぞれ書類送検した。
 男子生徒の書類送検容疑は、昨年9月4〜11日、女児(7〜13歳)の裸の画像3点を同アプリに投稿し、不特定多数が閲覧可能な状態にした疑い。
 女子生徒の書類送検容疑は、昨年10月28日、自身の裸を撮影した動画1点を同様に公開した疑い。
 山科署によると、同アプリは、投稿者が合言葉を設定して写真や動画を特定のファイルに保存できる仕組み。合言葉とアプリ内で購入できる「カギ」を使えば第三者も特定のファイルに保存された動画や写真を受信できる。カギの購入費の15%が投稿者にポイントとして与えられ、男子生徒は集めたポイントを約10万円相当のギフト券に、女子生徒は約1万円相当のギフト券に交換したという。