児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「勾留状に記載する被疑事実については、他事件と識別し、被疑者の防御権を保障する必要があることから、個人的法益に係る罪についての被害者の氏名は、これが判明している限り、実名を記載するのが原則であり(?)、これを匿名として記載するのが許容されるのは、被疑者に被害者の実名を知られることにより被害者が再度被害に遭う具体的現実的危険性が認められるなどの特段の事情がある場合に限られる(?)と解するのが相当である。(土浦支部決定h26.2.18公刊物未掲載)

 未掲載の裁判例は確認の方法がありません。
 文献が乏しい中、こっちは控訴審に向かうわけです。

初澤由紀子「起訴状の公訴事実における被害者の氏名秘匿と訴因の特定について
勾留請求の際の被疑事実において被害者の氏名を秘匿して実名以外の方法で被害者を表示して勾留請求を行ったのに対し、被害者の実名を記載した勾留状が発付された事案において、検察官が準抗告を申し立てた準抗告審の判断には、水戸地方裁判所土浦支部平成26年2月18日決定37)がある。
同決定では、被疑者が通行中の女子中学生に対してわいせつ行為に及んだ強制わいせつ事件において、検察官が被害者を匿名とした被疑事実を記載した勾留状の発付を請求したのに対し、被疑事実に被害者の実名を記載した勾留状を発付した原裁判について、「勾留状に記載する被疑事実については、他事件と識別し、被疑者の防御権を保障する必要があることから、個人的法益に係る罪についての被害者の氏名は、これが判明している限り、実名を記載するのが原則であり(?)、これを匿名として記載するのが許容されるのは、被疑者に被害者の実名を知られることにより被害者が再度被害に遭う具体的現実的危険性が認められるなどの特段の事情がある場合に限られる(?)と解するのが相当である。
そして、上記特段の事情がある場合であっても、勾留担当裁判官の裁
量により、被害者の実名を記載した勾留状を発付することは当然に許容されるというべきであり、したがって、被疑事実に被害者の実名を記載した勾留状を発付したことによって勾留の裁判が違法となる余地は一切ないというべきである。」と判断して、検察官による準抗告の申立てを棄却した38 )。
この準抗告審で判断された内容は、公訴事実に被害者の氏名を秘匿し実名以外の方法で記載して起訴した事例において、各地の裁判所において口頭で提示される内容と同じであり、未だ判決に見解が示された裁判例はないものの、同様の見解を取っている裁判所が複数あるようである。