児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

みだらな行為の早稲田高元教諭、諭旨解雇は無効(東京地裁H27.2.18)

 東京都条例では淫行については過失処罰規定がないので(わいせつ行為については罰則もないので)、違法じゃないですよね。

参考資料
 横浜地裁h240830 
 東京高裁h250411 
 横浜市人事委員会裁決書23人(不)第1号事案

http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html
東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処す
第二十八条 第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。(18条の6、24条の3には適用されない)

http://www.yomiuri.co.jp/national/20150219-OYT1T50020.html
8歳未満の女子高生にみだらな行為をしたとして諭旨解雇された早稲田高校の元男性教諭が、解雇は無効として同校側に未払い賃金の支払いなどを求めた訴訟で、東京地裁(吉川健治裁判官)は18日、約246万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 判決によると、男性は2012年9月、都青少年健全育成条例違反容疑で逮捕された。学校は翌10月、「広く報道され、学校の信用を傷付けた」として男性を諭旨解雇にしたが、13年3月、男性は不起訴(嫌疑不十分)となった。
 判決は、男性がみだらな行為をしたことは認定した上で、「男性が当時、女子高生が18歳未満だと認識していたとは認められない」として諭旨解雇を無効と判断した。

地位確認等請求事件
東京地方裁判所平成25年(ワ)第19688号
平成27年2月18日民事第36部判決
口頭弁論終結日 平成27年2月4日

       判   決

原告 A
同訴訟代理人弁護士 脇田敬志
同 吉村健一郎
被告 学校法人B高等学校
同代表者理事長 C
同訴訟代理人弁護士 石田武
同 浦崎寛泰
同 木村康之
同 長田悠希
同訴訟復代理人弁護士 村上亜喜央


       主   文

1 被告は,原告に対し,246万3809円及びうち244万3930円に対する平成25年3月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実(第2の1記載の事実)のほか,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)原告が行った行為
ア 原告は,4月2日午後7時頃,αの家電量販店の前で,面識のない17歳の本件女性に声をかけて,カラオケ店の個室に入った(甲17)。
イ 原告は,4月5日,本件女性を原告の自宅マンションに宿泊させ,本件女性と性行為をした。原告は,本件女性と性行為をした後,本件女性の言動から,本件女性の年齢が17歳であることを知った。(甲17,原告本人尋問の結果(以下「原告」と表記する。)・3頁,19頁,28頁)。
(2)原告が逮捕されてから第1回目の接見までの状況
ア 原告は,9月20日,前記認定事実(1)イと同一の事実である本件被疑事実により,巣鴨署に通常逮捕された。原告から当番弁護士の派遣依頼を受けた武田弁護士と、原告の知人であるマスコミ記者から弁護依頼を受けた吉村弁護士は,巣鴨署に赴き,原告の了解を得て,原告の弁護人を共同で受任した。(甲11,14,16,17,証人武田健太郎の証言(以下「証人武田」と表記する。)・3頁,原告・30頁)
イ 武田弁護士と吉村弁護士(以下「武田弁護士ら」ということがある。)は,9月20日,原告と1回目の接見をした。原告は,武田弁護士らに対し,警察官の取調べに対して,本件女性と性行為をしたこと,その際,本件女性が18歳未満であると認識していたこと,目的は性的欲求を満たすためであったことを供述し,その旨の自白調書が作成されたことを話し,本当は本件女性が18歳未満であることを認識しておらず,本件女性とは真剣な交際をしていたと弁解した。その一方で,原告は,4月5日に,本件女性と性行為をしたにもかかわらず,本件女性の陰部にアラビックヤマト(液体のり)の容器を挿入しようとする性交類似行為をしたが,性行為はしていないとの虚偽の弁解をした。
 原告は,武田弁護士らに対し,本件学校に連絡を取り,原告が逮捕されたことなどを連絡して欲しい旨を依頼した。武田弁護士らは,まずは,原告が勾留請求されないようにするための弁護人活動を行うこととし,本件刑事事件がマスコミ報道された場合に,被告において,原告が本件学校を退職済みである旨の対応を採ることができるように,辞表(乙9)を作成し,原告はこれに指印した。 
(甲14,17,乙9,証人武田・3頁,9頁,原告・3頁から6頁まで,24頁,25頁,29頁。なお,原告は,1回目の接見の際に,武田弁護士らに対しても,本件女性と性行為をしたことを話したと供述し,陳述書(甲17)にはこれに沿う供述部分があるが,反対証拠の趣旨に照らして採用し難い。)
(3)第1回目の接見から原告が釈放されるまでの状況
ア 武田弁護士らは,接見終了後に協議し,主として,武田弁護士が本件学校との連絡等を担当し,吉村弁護士が検察官との折衝等を担当する旨の役割分担とした(甲16,証人武田・4頁,原告・7頁)。
イ 吉村弁護士は,帰宅後に裁判例を調査し,真剣な交際であれば,本件被疑事実について都条例18条の6違反の犯罪が成立しない可能性があることを確認した。そこで,吉村弁護士は,この点に関する原告の弁解を証拠化するために聴取メモ(甲14)を作成し,9月21日午前1時58分頃,武田弁護士に電子メール(甲15の1及び2)で送付した。(甲14,甲15の1及び2,甲23,証人武田4頁,5頁)
ウ 武田弁護士は,原告を勾留請求しないこと等を求める旨の検察官に対する申入書(甲18)を作成し,その中で,原告が犯行態様については一部否認しているものの,本件女性と性交類似行為をしたことを認めていること,原告が本件女性の電話番号や住所などの連絡先を知らないこと,原告が本件女性とは別の交際相手と同居しており,12月に入籍予定であることなどを指摘した。
 武田弁護士は,9月21日午前5時2分頃,上記申入書を吉村弁護士に電子メール(甲16)で送信したが,その際,吉村弁護士が本件刑事事件について無罪を争うことができると判断する場合には,上記の指摘を削除するよう依頼した。
(甲14,16,18,証人武田・5頁,6頁,18頁,19頁)
エ 吉村弁護士は,9月21日午前中,単独で原告と2回目の接見をし,原告に対し,本件女性と真剣な交際をしていたのであれば,本件被疑事実が都条例18条の6違反の犯罪にならないことを説明した上で,原告が勾留請求されないようにするため,前日に原告が警察官にした,本件女性との交際が真剣なものではなく,性的欲求を満たすためであった旨の自白を,維持することを原告と確認した。(甲14,18,証人武田・18頁・19頁)
オ 武田弁護士は,9月21日午前8時34分頃,本件学校に電話をかけて,E副校長に,原告が未成年者との性交類似行為をしたことを内容とする都条例違反の被疑事実で前日に逮捕され,本日,検察官が勾留請求をするか否か判断すること,吉村弁護士と弁護人を共同受任したこと,本件刑事事件が報道される可能性があり,このことで原告が本件学校に迷惑をかけることについて謝罪しており,作成済みの辞表(乙9)を提出する準備があることなどを連絡した(乙9,22,42,49,証人武田・6頁,証人Eの証言(以下「証人E」と表記する。)・3頁,23頁,24頁)。
カ E副校長は,9月21日午前9時から開催された被告常務会(常任理事会。校長,E副校長,両教頭,事務長及び副事務長が出席)において,武田弁護士からの上記連絡を報告した(乙38,乙43の1から5まで,乙44の1から6まで,乙49,証人E・4頁)。
キ E副校長は,石田弁護士の助言を受け,9月21日午前11時46分頃,武田弁護士に電話をかけ,原告が逮捕されたことが冤罪である可能性はないか尋ねた。これに対し,武田弁護士は,原告と接見をした際,原告が本件女性と性交類似行為をしたことは認めたが,性行為まではしてないと弁解していたことから,原告の話を聞く限りでは,冤罪ということはないと思う旨を述べた。しかし,武田弁護士は,本件被疑事実に関し,原告が本件女性の年齢を18歳未満であると認識しておらず,本件女性と真剣な交際をしていたとの原告の弁解を伝えなかった。(乙23,49,50,証人武田・6頁から8頁まで,証人E・4頁,5頁,証人石田武臣の証言(以下「証人石田」と表記する。)・4頁)
ク 9月21日の昼に開催された本件学校の臨時教職員会議において,本件刑事事件の概要及びマスコミ取材への対応方針が説明された(乙42,証人E・5頁)。
ケ 原告は,9月21日,東京地方検察庁に送致されたが,勾留請求されることなく,同日,釈放された。武田弁護士は,同日午後5時頃,E副校長に電話をかけ,原告が勾留請求されることなく,釈放される見通しであること,今後,在宅捜査がされ,1,2か月で検察庁が結論を出す見込みであること,原告が釈放されたので,実名報道はされないと予想している旨を連絡した。原告は,釈放された後,武田弁護士らに,辞表(乙9)を被告に送付しないように依頼した。(前記前提事実(3)ウ,甲14,17,乙31,42,証人武田・9頁,原告・7頁,8頁)
(4)原告が釈放された後,本件刑事事件がマスコミ報道されるまでの状況
ア 原告は,9月21日午後7時過ぎ頃,E副校長に電話をかけて面会を求め,新宿の飲食店で,同副校長及び原告の知人のマスコミ記者と1時間程度食事をした。原告らの席は個室ではなく,周囲にも別の客がおり,E副校長は,飲酒をしなかったが,原告は,ビールを飲んだ。
 原告は,E副校長に対し,〔1〕本件女性をαでナンパした。本件女性は原告に年齢を伝えたと述べているが,高校生とは知らなかった,〔2〕本件女性は複数回の性行為があったと述べているが,性行為は1回もしていない。カラオケで本件女性の体(胸など)を触るぐらいのことはあったかもしれない,〔3〕本件女性は,原告の部屋に連れて行かれたと述べているが,一緒に遊びに行った場所はカラオケの個室である。その日は,原告の自宅マンションには同棲している女性がいた,〔4〕性行為を最後までできなかったのは,本件女性が痛がったため,途中で止めたからであるなどと,4月2日と同月5日の出来事について混乱のある弁解をした。
 原告は,E副校長に対し,4月5日に本件女性と性行為をしたことを話すことはせず,「触っただけでも性交類似行為になるみたいですね」等と話すにとどまり,本件女性と真剣な交際をしていた旨の弁解をすることはなかった。
 他方で,E副校長は,原告が本件学校の教員であるにもかかわらず,本件学校の生徒と同年代の本件女性を高校生であると知らなかったと弁解することに不自然さを感じたが,それ以上の追及をしなかった。
(甲17,乙32,49,証人E・6頁から11頁まで,原告・8頁から10頁まで)
イ E副校長は,9月24日に原告からの聴取内容を「ご連絡(その3)」と題する文書(乙32)に取りまとめ,石田弁護士にファクシミリ送付した(乙32,46から49まで,証人E・10頁から12頁まで,16頁,18頁)。
ウ 9月24日昼に開催された本件学校の臨時教職員会議において,原告が釈放されたことが報告され,現時点では,本件刑事事件についてマスコミに取上げられていないが,このことについての発言を控えて欲しい旨の要請がされた(乙32,42,証人E・11頁)。
(5)本件刑事事件がマスコミ報道された後,調査委員会が設置されるまでの状況
ア ○月○○日午前××時××分からのテレビ局のニュースで「B高等学校の37歳の男性教諭」が都条例違反の疑いで逮捕された旨の報道がされた。この報道では,原告が,4月に東京都文京区内の自宅マンションで,18歳未満と知りながら17歳の本件女性とみだらな行為をしたことを内容とする都条例違反の疑いがもたれており,原告は容疑を認めているとされた。(乙3,乙4の1,乙42)
イ 上記の報道がされた後,他のマスコミでも,同様の報道がされたが,本件被疑事実に対する原告の認否に関して,容疑を認めているとしたもの(乙4の9,乙4の10中の3記事のうち2記事)のほか,容疑を大筋で認めているとしたもの(乙4の2から4,7,8,乙4の10中の3記事のうち1記事,乙11,12),容疑を一部否認しているとしたもの(乙4の5,6),認否を明らかにしないもの(乙4の13)があったが,その詳細は明らかではなかった。
 また,インターネット上の掲示板サイトに,上記報道に関し,原告の実名が書き込まれるなどした(甲31,乙4の2から13まで)。
ウ 被告は,9月25日以降,上記の報道について,マスコミ対応に追われたほか,本件学校の保護者及び生徒,本件学校と留学派遣プログラムを実施している海外の高等学校に対して謝罪をし,インターネット上に開設する本件学校のホームページにも謝罪文書を掲載することを余儀なくされた(乙5から7まで,乙40の1及び2,乙42)。
エ 被告は,9月25日に開催された常務会で,原告の懲戒処分について,調査委員会を設置することを決定した(証人E・12頁)。
オ 武田弁護士は,9月26日頃,被告に対し,辞表(乙9)を送付し,同封した連絡文書(乙8)において,今後,本件女性との示談交渉を中心に,起訴猶予に向けた弁護活動を継続していく旨の意向を伝えた。これに対し,被告は,原告の処分が調査委員会で決定されるまでの間,辞表を預かることとし,武田弁護士に対し預かり証を送付するとともに,原告の署名・押印のある退職願の提出を求めた。(乙8,9,33,42,45,49,証人武田・9頁,14頁から16頁まで)
カ 原告は,9月28日,E副校長と電話で話をし,吉村弁護士から本件女性が示談に応じる意向であると聞いており,示談ができれば不起訴となる公算が高いことを伝えた(乙25)。
(6)調査委員会設置後,本件諭旨解雇までの状況
ア 被告は,10月5日頃,石田弁護士のほか,被告理事長が指名する本件学校関係者2名及び教職員組合委員長が推薦する組合関係者2名に委員を委嘱し,原告の懲戒処分について諮問した(乙10,49,50,証人石田・5頁)。
イ 10月10日に開催された第1回調査委員会では,被告就業規則,本件刑事事件に関する新聞報道の一部(乙4の5,8,9,11及び13)及び辞表(乙9)等が参考資料として提供され,これまでの状況等について説明がされた。石田弁護士は,報道から推測される原告の非違行為の内容,E副校長からの報告内容を解説し,原告について都条例18条6違反の犯罪が成立するか否か,あるいは,本件刑事事件で原告が起訴されるか否かにかかわらず,原告のした行為が被告の就業規則に反するものであり,社会的信用を傷つけたことは十分に懲戒に該当するとの意見を述べた。
(乙4の5,8,9,11及び13,乙9,20,34,35,42,50,証人石田・5頁,6頁,12頁,18頁,19頁,26頁,27頁)
ウ 石田弁護士は,第1回調査委員会終了後,武田弁護士と電話で話をし,調査委員会が設置され,調査委員会の結果を被告理事会に報告し,10月末頃までに原告の懲戒処分を決定する予定であること,本件刑事事件が報道されたことから,原告を処分しないことは難しい旨を伝えた(甲19,乙50,証人武田・9頁,10頁,証人石田・6頁,7頁)。
エ 原告は,武田弁護士からの連絡を受けて,退職年月日を空欄とし,全文を自筆で書き,押印した退職願(乙11)を作成して被告に送付し,10月13日頃,同退職願が被告に到達した。原告は,武田弁護士に対し,被告との間で,退職年月日を平成25年3月31日とする旨の交渉を依頼し,E副校長に対しても,上記の年月日を退職日とできるのであれば,賃金は1円もいらないなどと記載した手紙を送付した。(甲17,乙11,26,証人武田・14頁,16頁,17頁,原告・11頁,12頁)
オ 石田弁護士は,10月18日,武田弁護士に電話をかけ,調査委員会が設置されたので,本件刑事事件に関し事情聴取したいと告げて,事情聴取をした。武田弁護士は,原告が本件女性と性交類似行為をしたことを認めているが,性行為をしていないことを話したが,それ以上の点は,弁護人として回答することができない旨を話した。
 石田弁護士は,原告の懲戒処分を決定するに当たり調査すべき事項としては,原告の否認の部分の特定及び本件女性との性行為又は性交類似行為の程度であると考えていたが,原告が本件女性の年齢を18歳未満であると認識していたか否か,あるいは,原告が本件女性と真剣な交際をしていたか否かについて,武田弁護士に確認することはなかった。また,石田弁護士は,武田弁護士から,本件女性との性行為又は性交類似行為の程度を聴取することができたとして,原告から直接事情聴取をする必要がないと判断した。
(乙50,証人武田・9頁から11頁,17頁,21頁,証人石田・7頁から9頁まで,15頁,16頁,23頁,24頁)
カ 10月22日に開催された第2回調査委員会では,退職願(乙11)が参考資料として提供された。石田弁護士は,武田弁護士から事実確認をした内容として,原告は性行為をしていないと述べているが,本件女性は性行為をしたと述べていること,性行為又は性交類似行為をした場所について,原告は言葉を濁しているが,本件女性は原告の自宅であると述べていることを報告した。
 調査委員会は,答申書(乙13)で,原告について諭旨解雇が相当であると答申した。その理由として,石田弁護士の意見に従い,原告が都条例違反の容疑で逮捕されたことは,起訴されるか否かにかかわらず,本件学校の信用及び名誉を傷つけたことに加え,本件女性が未成年者であり,同年代の生徒を教育する本件学校の教員として,あってはならないことであるから,本来は懲戒解雇に値する行為であるが,原告が自発的に退職願を提出し,深く反省していると判断されること,37歳という将来のある年齢であることに鑑みて,懲戒処分を一段階免じて,諭旨解雇が相当であるとの結論に至ったとした。また,調査委員会が,原告から事情聴取を行わなかったことについて,石田弁護士による武田弁護士からの事情聴取及び新聞報道等から,原告の違反行為は明白であると判断した旨を答申した。(乙13,36,37,50,証人石田・9頁,10頁)
キ 10月22日に開催された被告常務会(校長,E副校長,教頭,事務長及び副事務長が出席)には,被告理事長も出席し,答申書(乙13)のとおり,原告を同月31日付けで諭旨解雇とすることが全員一致で決定され,同月23日に開催された被告理事会及び評議員会で,その旨承認された(乙39,49,証人E・13頁)。
ク 被告は,10月24日,本件諭旨解雇をし,その旨記載された懲戒処分通知書(甲1)を武田弁護士に宛てて発送した。同通知書は,同月25日,同弁護士に到達し,同月29日頃,原告に交付された。また,被告は,同月30日頃,原告に対し,退職金を支払った。(甲17,25,乙14,59,原告・13頁,弁論の全趣旨)
(7)本件諭旨解雇後の状況
ア 被告は,10月26日頃,原告に対し,退職手続書類(乙16から18まで)を送付し,これを受領した原告は,上記の各書面に必要事項を記入して返送した(乙16から18まで,乙49)。
イ 原告は,11月5日,E副校長に電話をかけ,本件女性の供述が変遷していることから,検察官の取調べに対し,逮捕された際に認めていた内容を翻し,本件女性に対して何もしていないと弁解しており,不起訴処分となる可能性が非常に高いこと,不起訴処分がされた場合には本件学校に復職したいこと,それができないのであれば,本件諭旨解雇を撤回し,本件学校のホームページに訂正文を掲載することなどを求めるとともに,原告が調査委員会で査問されることなく,本件諭旨解雇とされたことに対する不満を述べた。これに対し,E副校長は,11月6日,原告と電話で話をし,本件諭旨解雇に係る決定が覆らないことを伝えた。(甲12の1,2,甲17,乙28,乙29の1及び2,乙49,証人E・14頁)
ウ 原告は,平成25年3月15日,平成22年から交際していた女性と婚姻して同女性の氏を称し,平成25年4月1日から,名について,本来と異なる漢字を用いて,本件学校とは別の高等学校において,常勤講師として勤務し,平成26年4月からは,常勤専任講師として勤務しており,同校の社会保険にも加入している。なお,原告は,同年7月29日に離婚し,その後,婚姻前の氏を称している。(甲29,30,32,乙51,乙52の1及び2,乙53,原告・15頁から18頁まで,31頁)
エ 原告は,平成25年5月2日,被告に対し,被告の就業規則及び解雇理由書等の送付を求めるとともに,退職願(乙11)の提出を取り消す旨を通知した(甲24の1及び2,乙11,19)。
オ 原告は,平成26年9月3日の第2回口頭弁論期日において,4月5日に本件女性と性行為をしたこと,平成25年4月1日以降,本件学校とは別の高等学校で勤務していることを認める供述を初めてした(原告・3頁・15頁から19頁まで,28頁,31頁)。
カ 被告は,平成27年1月28日,原告に対し,本件諭旨解雇の解雇予告手当として(本件諭旨解雇が無効である場合には,本件普通解雇の解雇予告手当として),39万1029円を振込送金した(乙60,弁論の全趣旨)。
2 争点(1)(本件諭旨解雇の効力)についての判断
(1)本件諭旨解雇事由の存否について
ア 被告は,本件非違行為には,都条例18条の6違反の犯罪が成立する旨主張する。しかし,本件非違行為は,本件被疑事実とは,日時,場所及び態様を異にする行為であり,本件諭旨解雇事由における都条例18条の6に違反する行為であると認めることはできない。したがって,この点に関する被告の主張は,前提を欠くものであるから,採用することはできない。
イ 被告は,本件非違行為2には,都条例18条の6違反の犯罪が成立し,この行為を本件諭旨解雇事由の非違行為として追加主張する。
 これに対し,原告は,本件非違行為2の追加主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下することを求める。しかし,前記認定事実(7)オによれば,原告は平成26年9月3日の第2回口頭弁論期日において,4月5日に本件女性と性行為をしたことを認める供述を初めてしたことが認められ(原告の陳述書(甲17)にも,原告が本件女性と性行為をしたことを直接認める供述部分はない。),被告が原告の上記供述に基づいて,平成26年10月26日付け準備書面(6)において,本件非違行為2の追加主張をすることが,時機に後れたものであると評価することはできない。したがって,この点に関する原告の主張は,採用することはできない。
 もっとも,本件非違行為2の追加主張が時機に後れた攻撃防御方法には当たらず,本件非違行為と密接に関連しているから,上記の追加主張ができる特段の事情があるとしても,原告が4月5日に本件女性と性行為をした際に,本件女性が18歳未満であると認識していたことを認めるに足りる証拠はない。
 すなわち,原告は,9月21日に飲食店でE副校長と面会した際,本件女性が高校生とは知らなかったなどと弁解しているところ,E副校長は,そのような弁解に不自然さを感じたが,それ以上の追及をしておらず(前記認定事実(4)ア),石田弁護士は,10月18日に武田弁護士と電話で話をした際,原告が本件女性の年齢を18歳未満であると認識していたか否かについて確認をしていない(前記認定事実(6)オ)。また,本件刑事事件のマスコミ報道における本件被疑事実に関する原告の認否も必ずしも容疑を全面的に認めているとするものではなかった(前記認定事実(5)ア及びイ)ことからずれば,E副校長の供述及び「ご連絡(その3)」と題する文書(乙32),石田弁護士の電話聴取報告(乙12)及びマスコミ報道(乙3,乙4の1及び9)から,原告が本件女性の年齢を18歳未満であると認識していたことを認めることはできないのであって,他にこのことを認めるに足りる証拠はない。東京地方検察庁の検察官が本件被疑事実について嫌疑不十分を理由として不起訴処分をしたこと(前記前提事実(5)ア)も,そのような事情を考慮したものとみることができる。
 したがって,本件非違行為2には,都条例18条の6違反の犯罪が成立すると認めることはできないものであり,本件非違行為2の追加主張は,その前提を欠くものであるから,採用することができない。
ウ 以上の検討によれば,本件各非違行為が都条例18条の6違反の犯罪が成立する旨の被告の主張を採用することはできないから,そのことを前提とする本件諭旨解雇事由は,その存在を認めることができない。
(2)本件諭旨解雇の手続について
ア 被告就業規則72条1項ただし書は,出勤停止以上の懲戒に該当すると判断されるときは,査問のため調査委員会を設ける旨を定める。この点,懲戒が,被告の懲戒権の発動として行われる不利益な処分であり,これが正当化されるためには,当該懲戒を受ける者に対し,特段の支障なき限り,弁明の機会が与えられる必要があるというべきであり,そのような観点からすれば,被告就業規則が定める調査委員会の査問は,特段の支障なき限り,原告に対して直接なされることを要求しているものと解するのが自然かつ妥当であると解される。
イ これを本件についてみると,調査委員会は,本件諭旨解雇に当たり,原告に対する査問を行っておらず,本件諭旨解雇には,被告就業規則72条1項ただし書が規定する手続違反があるというべきである。
 これに対し,被告は,調査委員会が原告に対し直接事情聴取を行う必要はないと判断した旨主張する。しかし,E副校長が,9月21日に飲食店において,飲酒している原告から本件刑事事件に関する話を聞いたことをもって,そもそも,原告に対する事情聴取がされたと評価することはできない上,その聴取内容をみても,武田弁護士がしたE副校長に対する連絡内容と異なる,本件女性が18歳未満であることを認識していなかった旨の具体的な弁解が含まれていたにもかかわらず,そのことが調査委員会において問題とされた形跡がない(前記認定事実(3)キ,同(4)ア)。
 また,石田弁護士がした武田弁護士からの事情聴取も都条例18条の6の構成要件の主観面への配慮を欠くものである上,武田弁護士は,原告が当時認めていたとする性交類似行為の内容についても回答を拒んでおり(前記認定事実(6)オ),原告の弁解が反映されたものと評価することはできない。さらに,本件刑事事件のマスコミ報道における本件被疑事実に関する原告の認否は様々なものがあった(前記認定事実(5)ア及びイ)ことに照らせば、調査委員会が原告に対し直接事情聴取を行う必要はないと判断したことについて,本件諭旨解雇の手続面における相当性を認めることはできない。したがって,この点に関する被告の主張を採用することはできない。
ウ 加えて,被告が懲戒処分通知書(甲1)において,本件諭旨解雇事由における非違行為の内容を明らかにしておらず,本件訴訟で,当初,本件諭旨解雇事由として主張した本件非違行為が,本件被疑事実とは,日時,場所及び態様を異にする行為であったことからすれば,被告(調査委員会)は,本件諭旨解雇を決定する手続において,本件被疑事実自体を把握しておらず,原告が実際に行った行為を確定しないままに,本件諭旨解雇をしたことが強く推認され,そのことからも,本件諭旨解雇の手続面における相当性を認めることはできないというべきである。 
(3)小括
 以上の検討によれば,本件諭旨解雇は,客観的に合理的な理由がなく,社会通念上も相当であるということはできないから,権利を濫用したものであって,無効であるというべきである。
3 争点(2)(本件普通解雇の効力)についての判断
(1)本件普通解雇が時機に後れた攻撃防御方法であるとの原告の主張について
 原告は,本件普通解雇が時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下することを求めるが,この主張を採用することができないことは,本件諭旨解雇における本件非違行為2の追加主張のところで判断したとおりである。
(2)原告は,4月5日,本件女性を原告の自宅マンションに宿泊させ,本件女性と性行為をしたことを内容とする本件非違行為2を自認しているところ(前記認定事実(1)イ),37歳の成人男性として相応の社会経験を有し,本件学校の教員として,基本的かつ常識的な価値観を本件学校の生徒に教え,その模範となるべき立場である原告が,本件学校の生徒と同年代である17歳の本件女性と性行為に及んだことは,前記のとおり,原告において,本件女性が18歳未満であると認識していたことを認めるに足りる証拠はなく,本件非違行為2について都条例18条の6に違反する犯罪が成立すると認めることができないとしても,他方で,原告が本件女性の年齢を十分に確認したことを認めるに足りる証拠もないことに照らせば,本件非違行為2は,極めて不適切で,倫理的,道義的に非難されるべきものであり,被告の教員としての適格を欠くことを示す行為であるというべきである。
 これに対し,原告は,本件女性と真剣な交際をしていたと主張し,これに沿う供述をするとともに陳述書(甲17)にも同旨の供述部分があるが,原告が平成22年から交際していた女性と平成25年3月15日に婚姻しており(前記認定事実(7)ウ),E副校長に対して本件女性とカラオケに行ったことの根拠として,原告の自宅マンションには同棲している女性がいたと弁解していたこと(前記認定事実(4)ア),武田弁護士が,検察官に対する申入書(甲18)中で,原告が本件女性の電話番号や住所などの連絡先を知らないことを指摘していることに照らしても,原告の上記供述及び供述部分を信用することができないのであって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。また,原告は,本件非違行為2は,都条例18条の6違反の犯罪ではなく,倫理的にも問題がないものであるから,生徒や保護者に不快感を与えるものではない旨主張するが,およそ採用することができない。
(3)そして,結果として不起訴処分となっているが,原告が本件非違行為2を行ったこと自体は事実であり,そのことにより,原告が逮捕されたことがマスコミ報道され,被告がマスコミ対応に追われたほか,本件学校の保護者及び生徒等に謝罪をし,インターネット上に開設する本件学校のホームページにも謝罪文書を掲載することを余儀なくされている(前記認定事実(5)ウ)。
 これに対し,原告は,本件被疑事実について,嫌疑不十分を理由として不起訴処分を受けており,警察の逮捕及び報道が誤っていたのであるから,被告に生じたとする損害は容易に回復し得るとも主張する。しかし,原告が本件非違行為2を行ったこと自体は事実であり,一旦傷つけられた被告の信用や名誉を回復することは容易なものではないといえるから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
 それにもかかわらず,原告は,インターネット上に,本件訴訟で被告に勝訴した等の虚偽の事実を掲示するなど(乙54の1及び2,乙55の1及び2,乙57の1から3まで),更に被告の信用や名誉を傷つける行為を行っており,原告が以前にも,当時交際していた20歳の女子大学生との別れ話を巡るトラブルとなり,女性の父親らしき者から被告に対して抗議と善処を求める手紙が送られるなど(乙1の1及び2),その行状について芳しくない側面もうかがわれる。このような原告が被告の教員としての適格を欠くことを示す事情も加味すれば,原告と被告との間の信頼関係は,本件雇用契約の継続を困難とする程度に破壊されていると評価するほかない。
(4)原告は,被告が教職員にセクシャル・ハラスメント等の規律違反があっても,その事実が公になっていない場合には懲戒あるいは普通解雇をしていないから,他の教職員との間の処分の均衡を欠く旨主張する。しかし,原告が主張するような事実関係が認めるに足りる的確な証拠はないから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(5)そうすると,原告が本件諭旨解雇前に,辞表(乙9)及び退職願(乙11)を被告に自発的に提出し,インターネット上の記事についても,被告の指摘を受けて削除するなど(乙56),反省の態度を示していることや,これまで懲戒歴がなく,被告の教員や原告の教え子から,原告の復職を求める嘆願書(甲20,21,甲22の1から29まで)が提出されていることなどの事情を考慮しても,本件普通解雇について,客観的に合理的な理由がなく,社会通念上も相当でないということはできないから,権利を濫用したものであって,無効であるということはできないというべきである。
(6)以上の検討によれば,本件普通解雇は有効であり,本件普通解雇の意思表示を記載した平成26年10月26日付け被告準備書面(6)が原告訴訟代理人に到達した同月27日から30日を経過した同年11月27日に,本件普通解雇の効力が生じたものと認められる。
4 争点(3)(原告が本件諭旨解雇後に賃金を請求することの可否)についての判断
(1)本件諭旨解雇は無効であり,本件普通解雇は有効であることは前記説示のとおりであり,原告は,民法536条2項により,本件諭旨解雇から本件普通解雇の効力が生ずるまでの賃金を請求することができる。そして,本件諭旨解雇後の原告の賃金額は,月額48万8786円であると認められる。
(2)ところで,原告が民法536条2項により,本件諭旨解雇後の賃金を請求するためには,原告が被告に対する就労の能力及び意思を保持していることが必要であるところ,前記認定事実(7)ウのとおり,原告は,平成25年4月1日から,本件学校とは別の高等学校において,常勤講師として勤務し,平成26年4月からは,常勤専任講師として勤務しており,同校の社会保険にも加入していることが認められ,このことからすれば,原告は,被告が主張するとおり,平成25年4月1日の時点で,被告に対する就労の意思と能力を保持していたと認めることはできない。
 これに対し,原告は,被告の上記主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下することを求める。しかし,前記認定事実(7)オによれば,原告は平成26年9月3日の第2回口頭弁論期日において,平成25年4月1日以降,本件学校とは別の高等学校で勤務していることを認める供述を初めてしたことが認められ,被告が原告の上記供述に基づいて,平成26年10月26日付け準備書面(6)において,上記主張をすることが,時機に後れたものと評価することはできない。したがって,この点に関する原告の主張は,採用することはできない。
 なお,被告は,原告が本件諭旨解雇前に,被告に対する賃金請求権を放棄したと主張する。しかし,この主張が訴訟を遅延させるものではなく,原告が主張するように時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきものであるとはいえないとしても,原告が本件諭旨解雇前に,被告に対し,辞表(乙9)及び退職願(乙11)を提出したほか,給料は1円も要らないので退職の日付を平成25年3月31日にしてほしい旨を嘆願する手紙を送付したことのみでは、原告が賃金請求権を放棄したと認めることはできない。したがって,この点に関する被告の主張を採用することはできない。
(3)以上の検討によれば,原告が本件諭旨解雇後に請求することができる賃金は,平成24年11月21日支払期日分から平成25年3月21日支払期日分までの244万3930円及びこれらに対する各支払期日から同年3月21日までの確定遅延損害金1万9879円及び上記元金に対する同月22日から支払済みまでの遅延損害金となる。 
5 結論
 よって,原告の請求は主文1項の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第36部
裁判官 吉川健治

別紙1
別紙2 原告主張遅延損害金計算書