児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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被告の1審判決(懲役22年)を破棄 「リベンジポルノの過大評価は誤り」(東京高裁H27.2.6)

 職権判断ですかね。
「裸の画像等を拡散させて被害者の名誉を傷つけた被告人の行為は,それ自体が起訴されていたとしても名誉毀損罪を構成するにとどまるから,その法定刑も踏まえると,」なんて起訴されてない名誉毀損罪をもろに考慮していますね。
 

http://www.sankei.com/affairs/news/150206/afr1502060025-n2.html
 高裁判決が確定すると、改めて裁判員を選任し1審をやり直す。
 大島裁判長は、被告が交際中に撮影した生徒のプライベートな画像を事件前後に流出させた「リベンジポルノ」と呼ばれる行為に着目。量刑を考慮する要素に取り入れること自体は否定しなかったが、裁判開始前に裁判官と検察・弁護側の三者で行われる公判前整理手続きについて「(リベンジポルノについて)主張・立証を行うことの当否、範囲や程度が議論された形跡は見当たらない」と指摘。裁判官による論点整理や審理の進め方に誤りがあったとして、論点を整理した上で改めて1審裁判員裁判で量刑を検討することが必要とした。
 弁護側は「同種事案に比べて、1審判決は重すぎる」と主張、検察側は控訴棄却を求めていた。
 1審で検察側は無期懲役を求刑したが、地裁支部は被害者1人の刃物を使用した殺人事件の量刑を考慮。「生育歴が一定程度影響した。若くて更生可能性がある」と指摘し、有期刑の上限が相当と判断した。
 1審判決によると、被告は平成25年10月8日午前、生徒宅に侵入し、午後4時55分ごろ、生徒の首や腹部をペティナイフで刺して殺害した。

1審判決
住居侵入,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
東京地方裁判所立川支部判決平成26年8月1日
       主   文
 被告人を懲役22年に処する。
 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
 押収してあるペティナイフ1丁(平成26年押第27号の2)を没収する。
(犯行に至る経緯)
一方で,被害者の裸の画像等についてはこの時被害者の面前で一部を消去したものの,残りは手元に残しておいた。
 被告人は,その後も被害者に対する未練を断てず,残しておいた被害者の裸の画像等を流出させるなどと言って被害者に連絡を強要していたところ,同年6月2日に,被害者から相談を受けた被害者の父親から直接注意を受けるに至った。被告人は,その後,被害者への連絡をあきらめたものの,被害者に対する思いを断てず,次第に,自分の存在を全否定され拒絶されたなどとして苦痛を感じると共に,被害者に対する恨みや怒りの感情を抱き,また,被害者が他の男性と交際することに強い嫉妬心を覚えて,上記恨み等を募らせるなどした結果,同年7月頃には,被害者の殺害を企図するようになった。さらに,被告人は,同年8月頃までには,被害者を殺すだけでは飽き足らない,被害者がこれまで築いてきたすべてを壊してやろうなどと考えて,被害者の裸の画像等をインターネット上の動画サイトに投稿し,殺害当日に公開することも考えた。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,殺人の点は同法199条に,判示第2の所為は銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第3号,22条にそれぞれ該当するところ,判示第1の住居侵入と殺人との間には手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により1罪として重い殺人罪の刑で処断し,判示第1の罪については所定刑中有期懲役刑を,判示第2の罪については所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役22年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中200日をその刑に算入し,押収してあるペティナイフ1丁(平成26年押第27号の2)は,判示第1の殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 なお,判示第1の住居侵入罪と殺人罪については,併合罪として起訴されているが,被告人は,被害者を殺害する目的で,同人の父親方に侵入し,その囲繞された敷地内で殺人の実行行為に着手しているのであるから,両罪を牽連犯と解するのが相当である。
(量刑の理由)
 犯行の態様は,被害者方家屋内に侵入して少なくとも6時間以上にわたり被害者の帰宅を待ち伏せた上,逃げる被害者を追いかけ,急所をねらって,頸部や胸部,腹部等を鋭利な刃物で多数回突き刺すなどしたという,強固な殺意に基づく執拗で残忍なものである。また,被告人は,犯行の2か月以上前に被害者の殺害を決意すると様々な準備を重ね,上京後は,同行した友人に途中で翻意するよう説得されながらも殺害の決意を変えることなく,1週間以上にわたって殺害の機会をうかがっていた。本件は高い計画性の認められる犯行であり,被告人が犯行の直前等に葛藤の気持ちを抱いていたとしても,被害者殺害の犯意は非常に強いものであったといえる。
 犯行の経緯は判示のとおりであるが,被告人が被害者に強く執着していた背景には,臨床心理学等の専門家であるE証人が証言するとおり,被告人が幼少期から母親によるネグレクトや母親の交際相手による暴行等の深刻な虐待を受けていたことに起因して,自己感の形成不全や愛情欲求飢餓の状態といった心理学的問題点を抱えており,被害者との関係において自己感に類似する感覚を抱いていたことがあることなどを否定できず,この意味で,被告人の成育歴が犯行動機に一定程度影響を与えていたと考えられる。しかし,この点を考慮しても,被告人への対応につき被害者に落ち度はなく,犯行動機は余りに一方的かつ身勝手であって,同情の余地はごく乏しいというほかない。さらに,被告人が,被害者の裸の画像等の流出を材料にするなどして長期間にわたり被害者に恐怖を与えていた点も悪質である。
 加えて,被告人は,本件犯行後,インターネット上の掲示板に画像の投稿先URLを書き込んで,広く閲覧,ダウンロードできる状態にしており,その後被害者の裸の画像等は広く拡散し,インターネット上から完全に削除することが極めて困難な状況になっている。被告人が,被害者の生命を奪うのみでは飽き足らず,社会的存在としても手ひどく傷つけたことは極めて卑劣というほかなく,この点は,殺害行為に密接に関連し,被告人に対する非難を高める事情として考慮する必要がある。被告人は,画像の公開に当たり,被告人と被害者が交際していた事実を社会に知らしめたいという自己の存在証明の目的を持っていた旨述べるが,同供述を前提としても,画像の拡散行為の悪質性が減じるとはいえない。
 このような被告人の行為に対する責任は,上記の犯行態様,高い計画性,強固な犯意,犯行の経緯や動機の点に加え,特に被害者の裸の画像等の拡散により被害者の名誉をも傷つけたという悪質な事情を伴っている点で,男女関係のトラブルによる刃物を用いた被害者1名の殺人事件の類型の中では,量刑傾向の幅の上限付近に位置付けられる重いものといえる。もっとも,裸の画像等を拡散させて被害者の名誉を傷つけた被告人の行為は,それ自体が起訴されていたとしても名誉毀損罪を構成するにとどまるから,その法定刑も踏まえると,本件の悪質性が,刃物を用いた被害者1名の殺人事件全般の量刑傾向に照らし,有期懲役刑と質的に異なる無期懲役刑の選択を基礎づけるものとまではいいがたい。本件については,判示第1の罪について有期懲役刑を選択し,併合罪の加重をした上限の刑を基本とするのが相当である。
 そして,被告人は,事実自体は認めているが,前述の成育歴の影響による共感性の欠如が背景にあることが否定できないとはいえ,反省を深めているとは認められず,被害者やその遺族に対する謝罪の言葉すら述べていない。当然のことながら,遺族の処罰感情は極めて厳しく,被告人に対して極刑を求めている。また,画像拡散を含む被告人の行為が社会の耳目を集めたことからすれば,量刑に当たっては一般予防の観点も考慮すべきといえる。一方,被告人が若年であり,前科前歴もなく,母親が帰りを待つ旨述べるとともに,犯行前から被告人の相談相手であった母親の知人が今後も被告人と手紙のやり取りを続ける旨述べているなどの,更生可能性に関わる事情もある。
 これらの情状事実を検討すると,前述の併合罪加重後の有期懲役刑の上限の刑から刑期を減じせしめるべきものとはいえず,本件については,有期懲役刑の上限の刑を科するのが相当である。
 よって,主文のとおり刑を量定した。
(求刑 無期懲役 ペティナイフの没収,弁護人の意見 懲役15年)
  平成26年8月1日
    東京地方裁判所立川支部刑事第2部
        裁判長裁判官  林 正彦
           裁判官  諸徳寺聡子
           裁判官  前澤利明