児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

Amazonマーケットプレイスで児童ポルノが売買された場合、アマゾンは注文の取次・代金回収だけを担当しているので、児童ポルノ提供の実行行為はなく、幇助の問題だけになるんだが、中立的幇助の論点なので、よくわかんないんだけど、アマゾンが具体的な商品について児童ポルノだという認識がなければ、幇助には問えないと思います。

 全品チェック義務があるとも思えませんが、残るとすれば、不注意で見逃したという道義的責任の問題だけですよね。

https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201451370
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永井善之「「中立的行為による幇助」について −Winny事件最高裁決定を中心に―」
(1)客観的帰属論に基づく見解
松生光正教授は、中立的行為による不可罰な常助の範囲を画するには行為の表現的意味に着目せざるをえず、正犯行為を促進するとの社会的意味をもつ関与行為のみが幇助犯として処罰されるべきであるとされ、そのような意味に係る具体的基準として、業務的行為のような社会的に通常的で行為予期の存在する行為については、行為がなされた具体的状況下でそのような通常的業務行為を逸脱しているとみられるか否か、を挙げられる
山中敬一教授は、この問題の本質は関与者と正犯者の各行為聞の客観的帰属関係にあるとの観点から、どのような事実的要素にどのような意味づけが与えられるかの検討が重要であるとされ、本論点に係る場合の具体的類型化、即ち、正犯が実行に至る以前の、原則として意思の連絡のない、正犯者が関与者の幇助の故意を知らない場合であることを前提とした、関与者が偶然に正犯の犯意を知った場合と単にそれを予測したのみの場合との区別をされ、後者の場合でも正犯の実行が切迫し明白であれば関与は可罰的であり、明白でなければ関与者の提供する物や役務による類型化が必要である、とされる
松宮孝明教授は、例えば恐喝のための脅迫状の内容を偶然に認識したがこれを配達した郵便係員が恐喝罪の共犯に問われないのは郵便配達が社会における当然の出来事だからであるとされ、このような日常取引は因果関係を超える帰属基準のーつたる許されない危険の創出を欠くとされる。よって、日常的な取引行為は外見上平穏である限り、犯罪に利用される未必的な認識が取引行為者にある場合でも幇助にならない、あるいはこのような取引行為は所与の前提として、その犯罪惹起力は無視されるという帰属ルールがあると解すべきこととなる、とされる
豊田兼彦教授は、許きれない危険の創出を共犯の一般的成立要件とされたうえで、正犯の犯罪計画ないし犯罪行為に適合すべ〈関与者が自己の行為を形成すること、即ち「正犯行為との特別な適合」が肯定される場合に可罰的幇助を基礎付ける許きれない危険の創出が認められる、とされる
上野幸彦講師は、職業的な交換取引の円滑性のためには提供者は容による適法行為への信頼を法的に保証されるべきであるとされ、提供者にはこの意味で、の行為予知の保護、即ち信頼の原則の適用があるべきとされる。また、提供者が正犯の犯行決意を知っている場合や認識可能な犯罪傾向が客観的に存在する場合には本原則は適用されず、この場合には犯罪意味連関、即ち正犯の犯罪目的への促進的寄与があれば可罰的制助となるとされる
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西貝吉晃 中立的行為による幇助における現代的課題
認識の具体性をどこから獲得するか,という問題もある。例えば,運送配達人が配達物の内容について,具体的に認識していることは稀であろう。一般的には,運送配達人には,運送品として記載されている物が入っていることの具体的認識ができるとしてよい場合もあろうが,それ以外の場合には,認識の具体性を肯定することは困難である。
中身を見てもいないのに,送り主から「この宅配物の中身は実は拳銃なのです。」といわれたからといって,直ちに運送人に運送品が銃であることの具体的な認識を肯定することは困難だろう。冗談かもしれないし,運送人にわざわざ言うべきことでもないからである。しかし,運送人が,「銃を今来た宅配便で送った」という電話を偶然聞くなどしたときには,実際に当該銃を見なかったとしても,発言の真摯性から,事実認識の具体性を認められる場合もある。このような場合には,現実の占有の移転(譲渡)を処罰する類型の犯罪の故意が認められることになる169)。
ただし,拳銃の存在についての具体的認識が肯定された場合において,その拳銃が強盗に使われる予定であることを聞いたとしても,運送自体が強盗罪の幇助になるか否かについては,別問題である。自力で拳銃の譲渡は可能であるとすれば,拳銃の到達時点の問
題に帰着されるため,原則的にはいつ拳銃が届くかという問題と,強盗罪の容易性とは関係がないことであるから,物理的促進を肯定
するためには,機会の提供として機会を基礎づける事実の認識も要求されるというべきであるため,強盗罪の幇助の故意を肯定しづら
いと思われる。

 利用者からのクレームを以て、児童ポルノ性の認識があるというわけにはなりませんからね。
 不注意があっても過失の幇助は処罰されません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150125-00000009-mai-soci
<アマゾン>児童ポルノ出品、09年に指摘 東京のNPO
毎日新聞 1月25日(日)7時26分配信
 自社の商品サイトへの児童ポルノ写真集出品を放置し、販売を手助けした疑いがあるとして、愛知県警がネット通販大手「アマゾンジャパン」(東京都目黒区)を児童ポルノ禁止法違反(提供)のほう助容疑で家宅捜索した事件で、同社が2009年、性的被害の救済活動をするNPOから児童ポルノの可能性がある商品の販売取りやめを要請されていたことが24日、分かった。県警は昨夏以降、アマゾンに出品された児童ポルノ写真集を発見しており、NPOは同社の対応が不十分だと指摘している。

 NPO法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」(東京都)は09年、アマゾンの出品状況を調べ、水着姿の女児や半裸の男児の写真集、DVDなど136点を見つけ、アマゾンジャパンに対し、児童ポルノに該当する疑いがあると指摘した。同社から正式な回答はなかったが、後日、商品の約6割がサイトから削除されたのを確認した。

 アマゾンは個人や商店が出品した商品を販売し、出品規約で「商品は児童買春・児童ポルノ禁止法等、日本の法令を順守しているものでなければならない」と定めている。

 しかし、県警は、アマゾンのサイトに複数の児童ポルノ写真集の出品を発見し、昨年9月に出品していた古書店の経営者の男ら2人を児童ポルノ禁止法違反容疑で現行犯逮捕するなど全国約10業者を摘発した。捜査関係者は「児童ポルノに該当すると認識しながら出品を放置していれば、ほう助容疑にあたる可能性が高い」としている。

 NPOの藤原志帆子代表は「09年に要請したにもかかわらず、状況は変わっていない。違法かどうかの線引きは難しいが、子どもが性的商品にされ、大人が利益を得ている状況だ。出品への規制をもっと厳しくすべきだ」と話した

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150125-00000040-mai-soci
販売を手助けした疑いがあるとして、愛知県警がネット通販大手「アマゾンジャパン」(東京都目黒区)を児童ポルノ禁止法違反(提供)のほう助容疑で家宅捜索した事件で、摘発された業者が「他の通販サイトでは出品できなかったのでアマゾンに出した」と供述していたことが捜査関係者への取材で分かった。

 県警は昨年夏、アマゾンのサイトに児童ポルノ写真集があるのを発見。9月以降、出品した古書店など約10業者を同法違反容疑で摘発した。捜査関係者によると、「アマゾンのチェックが甘い」との趣旨の供述をする業者がいたという。

 アマゾンは「商品は日本の法令を順守しているものでなければならない」と規約で定めている。同社は毎日新聞の取材に「独自のシステム・プロセスを通じて当サイトにおける規約に違反する商品の販売を禁止し、該当商品を排除している」と説明したが、家宅捜索について「捜査中につき、コメントは控える」としている。

 県警は押収した資料などから、出品商品のチェック体制や児童ポルノの出品が放置された背景を調べている。