児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

SEXTINGの強要罪と製造罪は併合罪(某地裁H27.1.8)

 田中検事の御著書で「児童ポルノ撮影の際,行為者が遠隔地から電話で被害者を脅してポーズ等を指示し,被害者自身に写真撮影させて自己に送信させるなど,強制わいせつに当たらないものの,「姿態をとらせ」たことが強要に当たる場合は,強要罪と牽連犯になる。(性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック』訂正及び説明追加)」と書いてあったのでそのまま引用したら、間違ってると言われました。

某地裁H27.1.8
判示第2の1の強要罪と判示第2の2の児童ポルメ製造罪の罪数関係、刑法223条1項の強要罪に該当する行為と上記改正前の児童ポルノ法7条3項の児童ポルノ製造罪に該当する行為とは,一部重なる点があるものの,同製造罪において児童に同法2条3項3号に掲げる姿態をとらせる際,脅迫又は暴行によることは要件ではなく,また,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであって,上記両行為が通常伴う関係にあるとはいえない。
また,上記両行為の目的は前者が人に義務のないことを行わせること等,後者が児童ポルノの製造(なお,「姿態をとらせ」る行為は手段としての位置付けはできるものの,単なる製造行為と可罰的製造行為とを分ける要素であって,同製造罪の主要な部分とはいえなし、)という異なったものであり,両行為の性質にも相違があるといえる。
さらに,同製造罪については,複製行為も犯罪を構成し得ると解されるため,かかる場合には,強要罪に該当する行為と同製造罪に該当する行為の同時性が欠けることが甚だしいといえる。
そうすると,同製造罪については,事案によ,つては相当広範囲にわたる行為に(包括)ー罪性を認めざるを得ないことになると考えられるところこれと強要罪との観念的競合の関係を肯定するとすれば,いわゆるかすがい作用により,科刑上一罪とされる範囲が不当に広がるおそれも否定できない。
以上によれば,上記両行為は,自然的観察のもとで社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを1個の行為とみることはできなし、から,上記両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。