国会の会議録ベースなので、奥村の解説(法セミ)とだいたい一緒です。これで実務が回るかですよ
併せて読もう拙稿 法セミ pic.twitter.com/lwqH4G0Lb3
(4)自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持等についての罰則(7条1項)
自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる者に限る)は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとされた
また,同様の目的で,児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も,同様とされた。
ア「自己の性的好奇心を満たす目的」の意義
いわゆる単純所持といっても,
?嫌がらせなどによりメールで送り付けられた場合
?ネットサーフインによる意図しないアクセス
?パソコンがウイルスに感染し勝手にダウンロードした場合
?インターネットの掲示板上に児童ポルノが掲載された場合における当該掲示板の管理者やサーバーの管理者
等の事例も想定されることから,処罰範囲を合理的に限定するため,「自己の性的好奇心を満たす目的」による所持を対象としたものである。
したがって上記?から?のような事例は,処罰の対象とはされない。
「自己の性的好奇心を満たす目的」のように,人の内心に関する要件を課することに問題はないのかとの論点については「自己の性的好奇心を満たす目的」との文言は,従来も2条2項の児童買春の定義に用いられている。
また,所持の目的については,所持の態様,分量,所持している対象の内容等の客観的事情からの推認により立証されるものであること,さらに,上記のとおり,既に現行法制上用いられている概念であり,解釈上も確立されていることから,恋意的な運用を招くこともないと考えられる。
イ「所持」及び「保管」の意義
児童ポルノの「所持」とは,有体物(写真,DVD,ハードディスク(記録媒体)等)である児童ポルノを,自己の事実上の支配下に置くことをいう。
これに対し電磁的記録の「保管」とは,電磁的記録を自己の実力支配内に置くことをいう。
具体的には,当該電磁的記録をコンピュータのレンタル・サーバに保存したり,自己が自由にダウンロードすることができるリモートの記録媒体に保存する行為が該当する。
これに対し,自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合は,ハードディスク(有体物)の所持罪に該当する。
ウ故意について所持罪が成立するためには,児童ポルノであることを認識しかっ,所持について認容している必要がある。
したがって,メールで児童ポルノを送り付けられた場合や,パソコンがウイルスに感染し勝手に児童ポルノをダウンロードしたといった場合でも,そのことを知らないならば所持罪は成立しない。
エ「自己の意思に基づいて所持・保管するに至った」の意義
「自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノを所持・保管した者」を限定する趣旨で付加されたものである。
これは,所持・保管開始の時点において,「自己の意思に基づいて所持・保管するに至った」ことが必要であり,この点を証拠により立証することを要するという趣旨である。
オ「当該者であることが明らかに認められる」の意義
児童ポルノの取得の時期などを含めて「自己の意思に基づいて所持するに至った」時期や経緯などについて,できるだけ客観的・外形的な証拠により確定すべきとの趣旨を明らかにするものである。
力適用の猶予期間の設定(附則1条2項)
改正法附則1条2項において,7条l項の罰則については,この法律の施行の日から1年間は適用しないこととされた。
このような猶予期間を設けた趣旨は,当該期間において,施行前から所持している児童ポルノを適切に廃棄する等の措置を講じてもらうことにある。