児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

承諾盗撮の擬律

 客観的には承諾があったが、行為者は承諾がないと認識していたという問題もあります。
 痴漢・盗撮罪の保護法益は専ら社会的法益と解されていますし、府条例6条2号はの「しゅう恥させ」について「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような」とは、社会通念上人に著しく性的恥じらいを感知させ、又は不安を覚えさせるであろう程度のことをいい、被行為者が行われた言動を認識する必要はあるが、当該言動によって実際に性的恥じらいを感知し、又は不安を覚えたか否かは問わない。この場合において、被行為者とは、言動の直接的な対象となった人はもとより、言動の直接的な対象となった人が当該言動の内容を理解できない場合において、それを理解し得る能力があり、かつ、当該言動を認識し得る状態にある間接的な対象となった他の人も含まれる。」という意味なので、承諾があっても形式的には成立すると解されます。
 「盗撮されることを想定しており、同署は男性の行為が「人を著しく羞恥させる」という府迷惑防止条例上の盗撮にはあたらない」というのは警察によるお目こぼしです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140911-00000528-san-soci
同署によると、容疑者は当時、ミニ丈のワンピースに白のハイヒール姿。しゃがんで商品を見ていた男性の近くを横切って、盗撮をあおっていた。男性は「横を向くときれいな足があって、思わず盗撮の衝動に駆られた」と話しているという。男性が同署に相談したことから発覚した。
 容疑者は盗撮されることを想定しており、同署は男性の行為が「人を著しく羞恥させる」という府迷惑防止条例上の盗撮にはあたらないとみている。

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001067.html
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
二 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着を見、又は撮影すること。
三 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
四 みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態を撮影すること。
五 前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解釈及び運用についての全部改正について h17
第6 卑わいな行為の禁止(第6条関係)
1 この条は、痴漢行為、のぞき見行為、隠し撮り等卑わいな行為を規制することにより、人にしゅう恥心又は不安感を抱かせる行為を防止し、個人の意思及び行動の自由を保護しようとするも
のである。
2 第1号関係
(1) 「人」とは、自然人をいい、性別、年齢又は国籍を問わない。
(2) 「著しく」 の程度は、具体的にどの程度と明示することは非常に困難であるが、社会通念上、容認し難い程度のものであれば足りる。
(3) 「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような」とは、社会通念上人に著しく性的恥じらいを感知させ、又は不安を覚えさせるであろう程度のことをいい、被行為者が行われた言動を認識する必要はあるが、当該言動によって実際に性的恥じらいを感知し、又は不安を覚えたか否かは問わない。この場合において、被行為者とは、言動の直接的な対象となった人はもとより、言動の直接的な対象となった人が当該言動の内容を理解できない場合において、それを理解し得る能力があり、かつ、当該言動を認識し得る状態にある間接的な対象となった他の人も含まれる。
(4) 「衣服等」の「等」とは、人が身にまとっているパスタオル等をいう。
3 第2号関係
(1) 「おける」とは、被行為者については公共の場所又は公共の乗物に存在するが、行為者がいずれの場所に存在しているかを問わないことを意味している。例えば、公共の場所である公園のベンチに座っている人の下着を、当該公園に隣接するビルの一室から望遠レンズ付きの写真機で撮影する場合等がこれに当たる。
(2) 「衣服等で覆われている人の身体又は下着」とは、通常、人が衣服等により隠している身体の部分又は下着(以下「下着等」という。)のことをいう。
(3) 「見」とは、下着等をのぞき見る行為をいい、例えば、かがみ込み、寝そべり、若しくはスカート等をまくり上げてのぞき見る行為、又は階段の下から女性のスカート内をのぞき見る行為のほか、手鏡、ファイパースコープ等の器具を使用してのぞき見る行為等がこれに当たる。
(4) 「撮影する」とは、写真機、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の機器(以下「写真機等という。)を利用して、被写体をネガ、フィルム、電磁的記録媒体等に記録することをいう(第8条において同じ。)。
4 第3号関係
(1) 「みだりに」とは、不当にということを意味し、相手方の同意を得ている場合等は含まない(第4号において同じ。)。
(2) 「写真機等を使用して透かして見る」とは、赤外線装置を取り付けた写真機等を使用して、
水着等の薄い衣服を透かして裸体等を見ることをいう。
(3) 「映像を見」とは、赤外線装置を取り付けた写真機等に映し出された、衣服が透けた裸体等を見ることをいう。
6 第5号関係
(1) この号は、第1号から第4号までに具体的に掲げられた行為のほか、「人を著しくしゅう恥させ又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」を規制するものである。
(2) 「卑わいな」とは、いやらしくみだらで、社会通念上、人に性的しゅう恥心を抱かせ、嫌悪感を催させ、又は不安を覚えさせるに足りることをいい、刑法上の「わいせつJよりも広い概念である(第8条及び第9条において同じ。)。

合田悦三「いわゆる迷惑防止条例について」(『小林充・佐藤文哉先生 古稀祝賀刑事裁判論集 上巻』)
念のために痴漢行為や盗撮行為に適用される規定である「卑わい行為の禁止」規定の保護法益に絞って更に述べておけば、文末の一覧表にあるとおり、「ひわい行為の禁止」規定はすべての都道府県条例にあるが、それらはいずれも卑わい行為が禁止される場所を、「公共の場所」又は 「公共の乗物」 に限定している。 この規定が個人法益を寸ろうとしているのであれば、禁止の場所をこのように限定するのはあまりに不徹底で不合理である。このことは、いわゆる性犯罪のうち、個人法益に関する罪であることに異論がないと思われる強姦罪や強制わいせつ罪において成立の場所的限定がないことを指摘するだけで明らかであろう。迷惑防止条例における「卑わい行為の禁止」規定が公共の場所や乗物においてのみ適用されるのは、公共の場所や乗物で卑わい行為が横行しているようでは、「県民生活の平穏」 が保持できない危険があるからであって、逆に言えば、その範囲で卑わい行為を禁止しておけば、一般的、包括的、概括的な意味での、公衆レベルでの 「県民生活の平穏」が寓される危険がないという理由に基くのである。それ故、迷惑防止条例の 「卑わい行為の禁止」規定の保諸法益も社会法益の類型に属するものと言うべきである。