児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

買春行為につき児童と知らなかった場合の文献~ 児童を年齢確認を尽くさず買春した場合に青少年条例違反で起訴したらしい事例(那覇地検)

 関係者がいれば奥村に連絡下さい。
 この辺の見出しを見るとそう読めるんだが、沖縄タイムズ読者センターには新聞買って読めとか言われて、未確認です。

教育庁幹部を起訴/県保護育成条例違反で那覇地検 2014.08.20 琉球新報朝刊 31頁 社会 1版 (全0字)

わいせつ行為認める/教育庁幹部、現金渡す/児童買春容疑(本文非公開) 2014.08.01 朝刊 1頁 総1 (全0字) 沖縄タイムズ

教育庁幹部を起訴/青少年条例違反 買春 立証は困難(本文非公開) 2014.08.20 朝刊 沖縄タイムズ

沖縄県教委幹部を起訴
2014.08.20 西部朝刊 34頁 (全220字) 
 那覇地検は、容疑者を、県青少年保護育成条例違反で那覇地裁に起訴した。起訴は18日付。
 沖縄県警は7月30日、女子中学生に金を渡してわいせつな行為をしたとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で容疑者を逮捕した。地検は、同容疑者が相手を18歳未満と認識していたかどうかが不明として、県条例違反を適用した。
読売新聞社

 この年齢知情条項で起訴したのだとすると・・・・

沖縄県青少年保護育成条例
http://www.pref.okinawa.jp/reiki/34790101001100000000/34790101001100000000/34790101001100000000.html
第22条
8 第9条第2項、第10条第3項、第11条第1項、第12条第4項、第13条第3項又は第15条から第18条の4までの規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として前各項の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失のないときは、この限りでない。

 この規定自体、適用しにくいという検事も多いのですが

 児童ポルノ・児童買春法では、条例とかぶった部分は条例が死ぬとされていて、年齢確認を尽くさず18歳未満と知らないで対償供与の約束し性交するという行為については青少年条例違反になるようにみえるけど、条例が死んでいるので適用されません。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
附 則 抄
(条例との関係)
第二条 1
地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

 結局、「対償供与の約束」「18歳未満と知らなかった」を主張すれば、児童買春罪で無罪になります。
 東京高裁h24.07.17で確認しています。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20120728#1343297436
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20120728#1343297240
 実はLEX/DBに載ってます。そちらを御覧下さい。

【文献番号】25482259
群馬県青少年健全育成条例違反,強姦,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告
事件
東京高等裁判所
平成24年7月17日第4刑事部判決

【文献番号】25482258
群馬県青少年健全育成条例違反,強姦,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告
事件
前橋地方裁判所平成24年2月24日刑事第1部判決

追記 2014/08/25
 新聞買ってきましたが、図星でした。那覇地検は国法の無知を反省して、児童買春罪で勝負して下さい。

教育庁幹部を起訴/青少年条例違反 買春 立証は困難(本文非公開) 2014.08.20 朝刊 沖縄タイムズ
那覇地検は19日までに、女子中学生(14)に金銭を渡しみだらな行為をしたとして、児童買春の疑いで逮捕.送検された容疑者を同罪ではなく、
県青少年保護育成条例違反の罪で起訴した。児童買春の罪に問うには、18歳未満だと認識していたかどうかが焦点。被告はこれまで「18歳未満とは知らなかった」と一貫して児童買春の容疑を否認していた。検察側は児童買春の立証は困難と判断したとみられる


起訴状などによると、被告は4月初日、沖縄市内のホテルで、出会い系サイトを通じ知り合った女子生徒の年齢を確認せず、自分の性欲を満たす目的で18歳未満の青少年とみだらな行為をしたとされる
被告は逮捕後の調べに、女子生徒に金銭を渡しわいせつな行為をしたことは認めたが、18歳未満との認識は無かったと一貫して否認していた。検察は証拠を精査し捜査を進めた結果、被告が18歳未満との認識があったとは認められない」と認定、県青少年保護育成条例違反の罪で起訴した。
一方、県青少年保護育成条例は「年齢を知らないことを理由として処罰を免れることはできない」としている。
児童買春は5年以下の懲役か300万円以下の罰金。一方、県青少年保護育成条例は2年以下の懲役か100万円以下の罰金で刑罰が軽い

[ニュース近景遠景]/専門家 法整備求める/県教育庁幹部の買春立証できず(本文非公開) 2014.08.22 朝刊 沖縄タイムズ
那覇地検は18日、児童買春の疑いで逮捕・送検された県教育庁幹部の被告を同罪ではなく、より刑罰の軽い県青少年保護育成条例違反の罪で起訴した。被告は金銭の供与やわいせつ行為を認めながら、「少女が18歳未満との認識はなかった」と一貫して否認。検察側は捜査を進めたが、児童買春での公判維持は困難と判断した。同罪での立件は「18歳未満と知っていたか否か」という被告の主観が最大の焦点だが、専門家は「買春行為そのものを罰する法整備が必要だ」と指摘する。
(社会部・新垣玲央、又吉俊充)
逮捕前の内偵、逮捕後の補充捜査で児童買春の罪を立件できると踏んだが、検察側は違った。処分理由は検察に聞いて」。より軽い罪での起訴に、捜査関係者は言葉少なだった。
事件発覚は5月下旬。県警は逮捕までの約2カ月間、被害少女らの事情聴取や防犯カメラの分析など、慎重に捜査を進めていた。少女は小柄で幼さが残る顔立ちから「誰が見ても中学生」(関係者)。被告は小中学校の校長も務めており、「分からないはずない」との見方もあっだが、被告は一貫してこう否認した。「18歳未満とは知らなかった」
児童買春は、5年以下の懲役か300万円以下の罰金が課せられるが、相手が18歳未満かの認識は立件する上で重要な要件の一つ
一方、県青少年保護育成条例は2年以下の懲役か100万円以下の罰金だが、条文は「年齢を知らないことを理由に処罰を免れることはできない」としている。
捜査関係者からは「被告が否認し続ければ、起訴に持っていくのは難しい」との声もあり、客観的証拠の積み上げは捜査の最重要課題だった。少女と引き合わせた仲介役の被告(売春防止法違反と児童福祉法違反の罪で起訴済み)が被告の内心を立証する「キ−パ−ソン」との期待もあったが、得られた証拠では難しかったとみられる。
刑事法に詳しい琉球大学法科大学院の矢野恵美准教授は「否認なら、例え教育者で経験則があると見込まれでも、客観的な立証は難しい」と指摘。「現行法は相手が児童の場合を除き、買春行為を処罰できない。故意の立証が難しいなら、買春そのものを罰するような法整備をしなければ、抜本的な解決にはならない」と警鐘を鳴らした。


琉球新報も買ってきましたが、同じミスですね

教育庁幹部を起訴/県保護育成条例違反で那覇地検
2014.08.20 琉球新報朝刊 31頁 社会 1版
教育庁幹部が児童買春容疑で逮捕された事件で那覇地検は18目、年齢確認を十分に行わず18歳未満の少女にみだらな行為をしたとして、県教育庁参事のを県青少年保護育成条例違反(みだらな行為の禁止)の罪で那覇地裁に起訴した
県警は7月30日、被告を児童買春容疑で逮捕したが、起訴段階で那覇地検は県青少年保護育成条例違反と判断した。地検は罪名の変化について「客観的証拠に基づいて捜査をした中で、(被告に)18歳未満との認識があったとは認められない」との判断があったとした。

http://www.rbc.co.jp/news_rbc/
2014/08/19 18:58 事件・事故
中学生にみだらな行為 県教育庁幹部を起訴

 女子中学生にみだらな行為をしたとして児童買春の容疑で県教育庁の幹部が先月、逮捕された事件で、那覇地検は18日付けで、この男を県の青少年保護育成条例違反の罪で起訴しました。
 青少年保護育成条例違反の罪で起訴されたのは県教育庁の幹部の59歳の男です。
 起訴状によりますと、男は今年4月、沖縄市内のホテルで14歳の女子中学生に対して年齢を確認することなくみだらな行為をした疑いがもたれています。
 男は、当初18歳未満と知りながらみだらな行為をしたとして児童買春の疑いで逮捕されていましたが、逮捕後から一貫して「18歳未満とは知らなかった」と容疑の一部を否認し続けました。
 このため那覇地検は児童買春の罪での起訴を見送り、18歳未満と知っていたかどうかを問わない青少年保護育成条例違反での起訴に切り替えたとみられます。

http://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/5093912621.html
教育庁幹部を条例違反で起訴
インターネットの出会い系サイトを通じて知り合った中学3年の女子生徒にわいせつな行為をしたとして、沖縄県教育庁の幹部職員が県青少年保護育成条例違反の罪で起訴されました。
起訴されたのは、被告(59)です。
起訴状によりますと、前所長は、ことし4月、沖縄市内のホテルで、インターネットの出会い系サイトを通じて知り合った中学3年の女子生徒にわいせつな行為をしたとして、県青少年保護育成条例違反の罪に問われています。
前所長は、先月30日、女子生徒に現金を渡してわいせつな行為をしたとして児童買春の疑いで逮捕されましたが、警察の調べに対して「相手が18歳未満とは知らなかった」と容疑を否認していました。
児童買春をした者の処罰は、相手が18歳未満と認識していることが要件になっていて、捜査の結果、那覇地方検察庁は、前所長が、女子生徒の年齢を確認していなかったとして、児童買春ではなく、県青少年保護育成条例違反の罪で起訴しました。
前所長は今月7日付けで、中頭教育事務所長の職を解かれ、県教育庁付けの職員となっています。

 訴因の記載は検察官の権限だから「対償供与」は訴因に挙げなければ、裁判所も気付かないというのですよ。周旋者は売春周旋罪で起訴されてるので「対償供与の約束」の証拠はあるんだよね。

http://www.qab.co.jp/news/2014081957401.html
起訴状などによりますと、被告は2014年4月、当時14歳の女子中学生に対し、沖縄市内のホテルでみだらな性行為をした罪に問われています。
被告は、警察の調べに対して、性行為については否認していたものの、体を触るなどの行為をしたことや、現金を渡したことを認めていて、児童買春などの疑いが持たれていました。
一方検察は、被告の金銭のやり取りについては認めず、児童買春の罪よりも軽い県の条例違反での起訴としました。

 検察官への情報

山川景逸「いわゆる児童買春等処罰法と青少年保護育成条例の関係について」研修635号
3 では青少年保護育成条例違反の罪は成立するか。
対償を供与し又はその供与の約束をして性交した場合には,当該行為は児童買春等処罰法附則2条I項の「この法律で規制する行為」に該当し, A県青少年保護育成条例の中の当該行為を処罰する旨の規定部分は既に失効しているため,同条例違反の罪は成立しないこととなる。
対償なしの性交の場合には,当該行為は上記の「この法律で規制する行為」には当たらないため, A県青少年保護育成条例の中の当該行為を処罰する旨の規定部分は失効しておらず,同条例違反の罪が成立することとなる(注3

注3
この点については.児童買春等処罰法で敢えて処罰の対象としていない行為につき,条例で規制の対象とすることには,高度の合理的理由が必要となろう。(木村光江「児章買春等処罰法」(ジュリスト1999.11. 1)) との指摘がある。

栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号
児童買春法と青少年条例とは,その制定の趣旨及び目的において共通するものがあるといわざるを得ない。そのため,買春者において児童青少年の年齢につき認識がある場合,対償の交付等を伴う性交及び性交類似行為が行われたときは,児童買春法上の児童賀春罪と青少年条例上の淫行罪の双方の構成要件を満たすものであるが,
法律と条令とがその目的,趣旨においても重なり合う場合であるから,形式的効力において劣後する青少年条例は,その効力を失うため,児童買春罪のみが成立することになる。
さらに,児童買春法9条が,年齢知情に関する規定の適用について,児童買春罪のみを除外している趣旨にかんがみ,国法たる児童賀春法は,児童買春行為につき買春者に児童の年齢の認識のない場合を処罰しない趣旨を表明しているものともみられるから,前掲最大判昭509. 10の示す基準に照らし,青少年条例の年齢知情に関する規定も,青少年に対する対償の交付等を伴う性交及び性交類似行為に関する限りで,その効力を失ったものと解するのが相当であろう。
したがって,児童買春法附則2条I項により,対償の交付等を伴う限りにおいて, A県青少年条例の淫行罪の処罰規定は,年齢知情に関する規定の適用を含めて,全て失効したと解すべきこととなり,これを適用しなかった原庁のこの点の処理も相当とみるべきである。
4 関連問題年齢知情に関する規定について
以上のように解しても,青少年に対する対償の交付等を伴わない淫行行為については,青少年条例の淫行罪処罰規定が,年齢知情に関する規定を含めて,効力を維持していることになる。この年齢知情に関する規定は,やや特殊な規定であるため,以下若干検討することとしたい。
・・・
 ところで,児福祉60条3項,児童買春法9条は,年齢知情に関する規定の適用対象を「児童を使用する者」に限定している。このような限定が付される理由については,児童を使用しようとする者に児童の年齢に開する調査・確認義務があると考えられるため,使用者が処罰を免れようとするときは,その使用者本人において,年齢の調査確認の手段を尽くしたにもかかわらず. 児童であることを知り得なかったことを主張・立証すべき責任を負うのだと説明されている (小泉祐康一注解特別刑法7 第2版)・。
そして, この義務を尽くしたというためには,最低限,戸籍謄本、住民票の写し、免許証等の公的文書を確認するか児童本人の本籍地の役場に問い合わせる等することが必要であるとするのが裁判例の大勢である(福岡高判昭52,12. 26刑裁資料229.3 25,長崎家裁昭34. 1210下刑集1,12, 2600)。
これに対し,青少年条例の年齢知情に関する規定については,適用対象を使用者に限定するものは見当たらない。そのため,形式的には,全ての行為者につき年齢の調査確認の手段を尽くしたことの挙証責任が課せられているようにみえる。 しかし,淫行しようとする者は当然にその相手方の年齢を調査確認すべき義務があるといえるかどうかは微妙である。 したがって,実務的には,年齢知情に関する規定の適用を前提として,淫行罪により処罰しようとする場合には, 「使用者性」に匹敵する事情を別途立証するのが相当であるろう。すなわち,当該青少年と知り合った経緯,当該青少年の体格,服装,言葉遣い等から,当該行為者において,当該青少年が18歳未満ではないかとの疑いを持ち得る客観的状況があったことを示す証拠を収集しておくべきこととなる。
(法務総合研究所教官)

 島戸説って、理由付けて言い切っちゃうから、あとあと困るんだよね

島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」 研修652号(H14.11)
この点については,児童買春等処罰法の解釈として,次の2とおりの考え方があり得るであろう。
第1 の考え方 本法を制定した際,対償の供与又はその約束を伴う性交等を児童買春と定義し, これを伴わない性交等を同法の枠外としたのであるから,対償の供与又ほその約束を伴うものについては,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められるか否かにかかわらず,法律が制定すべき事項であって,その範囲においては条例の制定権は及ばないことになり,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められない場合において,条例の淫行処罰規定,年齢の知情性推定規定を適用して処罰することはできない。
第2 の考え方 本法は,対償の供与又はその約束が認められかつ,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められる場合の部分) にのみ効力が及ぶのであって,本法が処罰の対象としていない行為については,対価性の有無にかかわらず,すべて条例の効力が及ぶ。すなわち,被害児童の年齢についての認識がない場合は,本法の規制が及ばない結果,対償の供与又はその約束を伴う場合であっても,条例による処罰の対象となる。 ・・・・ (第1)の考え方に立つと、検察官が対償の供与又はその約束、及び買春行為者の被害児童の年齢に関する認識についての証拠が不十分であると思料して条例違反で起訴したところ、公判段階において対償の供与又はその約束が明らかとなった場合には、条例の効力は失われており、かつ知情性の立証もできないことから、本法、本条例のいずれによっても処罰されず、無罪となるという結果になりかねないことになり、これを利用した被告人が対償の供与又はその約束があったとして条例が適用されるべきでないと主張する事態も考えられる。そして、対償の供与又はその約束がなかったと立証するのが極めて困難であることからすると、ひいては、買春行為者の被害児童の年齢に関する認識について証拠が不十分な場合は、本法、本条例のいずれによっても起訴することができないという結果も生じかねない。
 しかし翻って考えると,刑事法上故意犯処罰が原則とされているのであって,児童買春等処罰法第9条が,児童買春罪をその適用対象から外したのは,買春行為については,類型的にみて,使用関係を前提とせず一回性が認められやすいことに基づき,故意犯処罰の原則を貫いたにすぎないものであると考えられる。また,同条が年齢の知情性の推定を児童の使用者に限ったのは 一般に,児童を使用する使用者については児童の年齢に関する調査義務が認められていることから、本法も向様に,このような者について児童の年齢を知らないことのみを理由に処罰を免れさせるのは妥当でないという政策判断を行ったものと考えられる。この趣旨から考えると,そもそも本法の趣旨として, (少なくとも対償の供与又はその約束がある場合においては)児童と性的行為に及んだからといって使用者以外については年齢の知情性の推定を及ぼすことが妥当でないとの価値判断が示されたともいえる。したがって,買春行為者の被害児童の年齢に関する認識について証拠が不十分な場合に,本法,本条例のいずれによっても起訴することができないとの結果となるごとも,児童買春等処罰法第9条が知情性の推定を児童の使用者に限定した趣旨にかんがみれば,決して不当なものとまではいえないであろう。


追記 2014/08/26
制定当時の国会での議論で、年齢知情条項に関するものは、この程度である。

145 - 衆 - 法務委員会 - 12号
平成11年05月14日
坂上委員 ちょっとまた後でそれに関連して質問させてもらいます。
 総務庁、おられますか。
 地方公共団体の条例は、ほとんどその自治青少年健全育成条例などという名称で、児童との性交等の処罰規定をつくっておられるようでございますが、全国的にこういう問題は今まで条例上どんなになっておったのか。それから、児童ポルノ的な問題についてどんな対応になっておったのか。簡単でいいんですが、概括的に御答弁ください。
○久山説明員 お答え申し上げます。
 都道府県の青少年健全育成条例におきますいわゆる淫行処罰規定につきましては、各都道府県によりましてその規制の内容や罰則の軽重に多少の差違はありますけれども、長野県を除きます四十六都道府県で規定されておるというところでございます。
坂上委員 その条例に基づいて児童との性交禁止処罰を受けた件数というのは、統計上どんなになっていますか。何か統計があったらちょっと。
○小林(奉)政府委員 平成十年中の、いわゆる青少年保護育成条例違反の行為であります青少年に対するみだらな性行為等、こういった行為を行った事件で検挙した人員は二千五百八十三人でございます。
坂上委員 私も、二千以上もあるというのに大変びっくりいたしております。
 そこで、この条例は大体有償でなくて、みだらという条件がついて性交の処罰をしておるようでございます。そういたしますと、この法案の中の附則の第二条で、条例と抵触する場合は、この法律施行と同時に、条例の部分が効力を失う、こういうふうにありますが、私は新潟県の出身でございまして、新潟県青少年健全育成条例、私はときどきこの事件の弁護もしたことがあるんでございますが、今の法律が成立されますと、この条例の中で効力を失う条文、何条の目的とか、何条の責務とか、何条の自主活動とか、その条文と項目だけざっと挙げていただけますか、新潟県条例の場合。
○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 今先生が御指摘のございました新潟県青少年健全育成条例でございますが、先生の御指摘のように、附則第二条第一項にその関係が規定されておりまして、その育成条例については、第二十条第一項で、「青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」ということが書いております。第二十一条で、「みだらな性行為又はわいせつな行為」が青少年に対してなされることを知って周旋してはならないと規定しておるところでございまして、我々といたしましては、これらの規定により、児童買春や児童買春周旋をこの条例によっては処罰できなくなる、そのかわりに、我々の今度のこの法案が成立いたしましたら、この法律によって処罰をされることになるということでございます。
坂上委員 ちょっと私が勘違いしているのでしょうか。大変重大なことでございまして、条例では、みだらな行為、わいせつの行為をしてはならない、このことによって処罰をしているんですね。これは有償無償を問わないんです。でありますから、先生方が提案しているのは有償なんですね。有償なんですから、今度はこのためにこれが抵触して効力がなくなったということは、これは大変なことなんです。どうでしょうか。
○林(芳)参議院議員 失礼いたしました。
 こちらの規定には、附則二条一項には、児童買春、児童ポルノに係る行為等、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めている条例の規定の当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うということでございますから、この法律には有償の部分を規定しておりますので、有償の部分についてのみこちらの法律が規定されまして、無償の部分については条例の効力が残るということでございます。
坂上委員 当然なことだと思います。
 そこで、これは当たり前のことなんですが、私はここだけでなくして、新潟県条例が、この法律が適用になることによってどこが効力を失うようになるのか、具体的に条文だけ御指摘いただきたい、こう、きのうから要請をして、これは一々答弁するとなかなか大変だから文書でいただきたいといって質問事項の中にも書いて出してあるんでございますが、どうでしょうかね。先生方、今わかりませんか。ここは無効だよ、ここは無効だよというようなのをお聞きをいたしたい。これは重要な問題でございますから、私はあらかじめ文書でいただきたい、こういって出してあるんでございますが、どうですか。
○林(芳)参議院議員 お答えを申し上げさせていただきたいと思います。
 地方自治の方でそれぞれ条例を決めておられますので、具体的にここの条例のここがこれとやるというのは、我々の方で一義的にここが全部なくなると言うのはなかなか難しいところでございまして、それは、この法律の解釈に従って、それぞれのことにおきましてなされるというふうに解釈をしておるところでございます。
坂上委員 強くは言いませんが、この抵触する部分が、こういう場合、どこが無効になるんだろうということを私は捜査当局から実はお聞きをしようと思ったら、立法者が判断すべき問題だ、こういう御指摘があったものですから、私はわざわざ、私の質問事項の中に、活字が打てなくて、書いてお届けをしたわけでございますが、ぜひひとつ整合していただきたい、こう実は思っておるわけであります。これは本当に、きのう午前中だか、おとといだか出したわけでございますので、ぜひこの点も御検討をいただかないと、やはり県の実施の機関の中であいまいになって、いや、これは抵触して無効だとか無効でないんだとか何だかということになって、結果的にまた県民に影響を及ぼすことが大きゅうございますから、きちっと整理をしておいていただきたい、こう思っておるわけでございます。


○林(芳)参議院議員 失礼いたしました。
 こちらの規定には、附則二条一項には、児童買春、児童ポルノに係る行為等、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めている条例の規定の当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うということでございますから、この法律には有償の部分を規定しておりますので、有償の部分についてのみこちらの法律が規定されまして、無償の部分については条例の効力が残るということでございます。
坂上委員 当然なことだと思います。
 そこで、これは当たり前のことなんですが、私はここだけでなくして、新潟県条例が、この法律が適用になることによってどこが効力を失うようになるのか、具体的に条文だけ御指摘いただきたい、こう、きのうから要請をして、これは一々答弁するとなかなか大変だから文書でいただきたいといって質問事項の中にも書いて出してあるんでございますが、どうでしょうかね。先生方、今わかりませんか。ここは無効だよ、ここは無効だよというようなのをお聞きをいたしたい。これは重要な問題でございますから、私はあらかじめ文書でいただきたい、こういって出してあるんでございますが、どうですか。

○林(芳)参議院議員 お答えを申し上げさせていただきたいと思います。
 地方自治の方でそれぞれ条例を決めておられますので、具体的にここの条例のここがこれとやるというのは、我々の方で一義的にここが全部なくなると言うのはなかなか難しいところでございまして、それは、この法律の解釈に従って、それぞれのことにおきましてなされるというふうに解釈をしておるところでございます。

第145国会衆議院法務委員会平成11年05月14日
001/001] 145 - 衆 - 法務委員会 - 12号 平成11年05月14日

○木島委員 ありがとうございます。
 次に、二つ目の大きな質問になります。
 児童買春罪等、児童ポルノ頒布罪等これらの犯罪の成立要件の一つに、児童の年齢の認識の問題がございます。この犯罪の成立の基本要件として、行為者は、被害児童の年齢が十八歳未満であるという認識が必要だ、故意犯であるというこの法律の基本的な立場であります。そういう御答弁もありました。
 実は私は、一番この法律の実効性が失われてくるんじゃないかという一つの心配は、年齢の認識の問題なんですね。児童買春を犯した加害者、被告人、犯罪者は恐らく、自分はこの子が十七歳以下だとは思わなかった、十八歳以上であると思ったという弁解を必ずしてくるのは間違いありません。ましてや児童ポルノであります。製造した者はともかくとして、製造者以外、販売、頒布、輸入、輸出、そういうことに携わった人間は、写真しか見ていないわけです。その被写体の人物と面接していないわけですから、写された少女が十八歳以上であるか未満であるか、十七歳か十六歳か認識しようがない。
 ましてや、さっき確認しましたが、国外犯が処罰されます。外国の女性が果たして十七歳なのか十八歳なのか、直接接する機会のない人物にとって、たまたま性行為をしたことやら、そういうポルノの販売等に関与したというだけで、その年齢の故意、年齢の認識、十八歳未満であるという認識がなければ処罰できない、そういう法律の立て方というのは、私は、微妙な場合はほとんど立件できないと。
 十三歳とか十四歳の少女に対する加害ならそんな弁解は許されないのでしょうけれども、今、子供たちの成長は早いですから、十五、十六、十七ぐらいになりますと、被疑者は必ずそういう弁解を立ててくるということで、それはやはり脱法行為で、許さないという立場に立ちたいと私は思っているのですよ。
 そんな立場から質問いたします。
 第四条から第八条までの犯罪の成立要件として、児童の年齢が十八歳未満であるということの認識もやはり必要とせざるを得ないのでしょうか。
○木島委員 そう読まざるを得ないのですね、これは。これは検察・法務といえども、この条文を読んだらそう読まざるを得ない、故意犯ですからね。しかし、そうなると、ほとんど脱法で捕まえることができなくなるのじゃないかという私の心配なんですね。まあ、そう聞いておきます。
 ではその次に、それではこの法律の組み立て方で、第四条の児童買春罪、これだけは、児童を使用する者は年齢を知らないことを理由として罪を免れることができないという、要するに、年齢の不知は許さずという立場から除外したのですね。何で第四条だけを除外してしまったのでしょうか。
○吉川(春)参議院議員 お答えいたします。
 これは故意犯ですので、やはり年齢が十八歳未満であるということの認識も必要といたします。
 同時に、ただ、五条から八条については、児童を使用する者については、児童の年齢に関する調査確認の義務があると考えられますので、これらの者が五条から八条までに規定する行為をした場合については、十八歳未満の者であるとの認識がなくても、認識がないことについて過失があれば処罰する、こういう法律の組み立てになっておりまして、したがって、原則として年齢について知らなくてはならない、これがこの法律の原則です。

○木島委員 確かに、この法体系は第四条が基本、児童買春については基本条文なんですね。第四条は児童買春罪です。
 第五条は周旋です。それから、二項は業とした者です。第六条も周旋です。そして、二項は勧誘を業とした者ですから、確かに、使用するということを想定される場合が非常に高いことは事実です。ですから、そういう場合は、知らないことは許さないというのは非常にいいと思うのですね。七条以降もそうですが。だからといって、四条の児童買春罪の基本法について、私は、知らないことを許すというのは理屈が通らないと思うのですね。
 というのは、最近、高校生のアルバイトもふえているのですよ。高校生、どんどんアルバイトに入るわけです。そうすると、使用関係に入っていく高校生は非常に多いのですよ。そういう、たまたまある会社なり業にアルバイトとして入った高校生、高校生は大体十八歳未満ですからね。そうすると、使用関係が生まれるその使用者なり支店長が、地位を利用しなくたっていいですね、お金を渡して性行為に入ったら四条が適用なんですが、その支店長なり使用人が、その子の年齢、おれは知らぬ、十八歳以上だと思ったという弁解を許さなくたっていいんじゃないかな。想定できる。
 四条の場合でも、使用関係に入った女の子が被害者になることは大いに今の日本の社会状況の中で想定されるから、四条は外さなくてもいいんではないかなと思うので、要するに重くするという意味ですよ。年齢の不知は許さないという基本のところでいいんじゃないかなと思うのですが、これ、私、頑張り過ぎますと修正問題になってしまうので、この辺でやめますが、何か御答弁あったら……。
○大森参議院議員 被害者の年齢等が規定されている条文というのはほかにもございます。そのときにその年齢だと思わなかったという否認の弁解というのはよく出てくることでありまして、これをとめることはできません。その場合に、どういう立証ができるかということであると思います。
 それで、やはり原則は故意犯でありまして、児童を使用する者については、別の過失推定のような規定を置いたわけです。これは児童福祉法の規定と同じような内容と理解しておりますけれども、使用する者と言い得るためには、児童の年齢確認義務を課すことが相当と認められる関係のある者、その確認義務を尽くさなかったために児童の年齢を知らなくとも処罰されるのもやむを得ないと見られる者という、この基準から判断されるとしておりますけれども、例えば児童福祉法でも、こういう場合には児童保護のために、特に原則故意犯の一部例外的なものを認めたわけでありまして、これを広く広げるべきではないと思います。
 今回の、どこにこの使用する者の部分を当てはめるかにつきまして、買春者というのは、通常一回性の行為というものが予定されますので、ここからは除外いたしました。確かに、年齢が十八歳未満、十七歳ぐらいになると、故意の内容というものが、十七歳だから、例えば二十歳と思ったと見る場合もあると思います。要するに、その弁解が信用できるかどうかということで、あくまで立証の問題だと思います。
○木島委員 もう論争をこれで私は打ち切りますが、一つだけ披露したいのがあるのです。神奈川県青少年保護育成条例であります。
 この条例は、第十九条で、みだらな性行為、わいせつな性行為の禁止規定があります。「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」「「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、」本件で言う性交のようなものです。「同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為」。わいせつな行為でしょうね。
 これが処罰されるのですが、神奈川県条例の大変ユニークな、画期的な条文は、第三十七条七項で、この十九条一項もしくは二項、今言った青少年に対するみだらな性行為罪、わいせつ行為罪を、その「行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。 ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」といって、使用関係がなくても、神奈川県条例の場合は年齢の不知は許さない、そういう弁解を許さないという条文を置いているので、これは神奈川県、なかなか大したものだなというふうに思っておりますので、ひとつ三年後の見直しのときにはこんな条文もこの法に盛り込めればいいなと私は思います。
 では、一点だけ聞きましょうか。この条例と本法との整合性の問題について御答弁願いたい。
○吉川(春)参議院議員 神奈川県条例の三十七条七項は、確かに本法の四条についても年齢の不知は許さない、こういう立場をとったと思います。今度この法案ができましても、確かにこの部分はまだ処罰として条例としては残るわけです。それは県の条例ですので、県の御判断によって、この法律との整合性のために条例の改正という手続をおとりになるのかあるいはそのまま残されるのかは県の判断だと思いますけれども、私は、立法政策として一つの方法であるということは認めたいと思います。
○木島委員 では、もう一点だけちょっと聞かせてください。
本法の附則二条、先ほど同僚委員も指摘しておりましたが、「地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。」と。そこで一点聞きます。この法律が成立して発効すると、せっかくのすばらしい神奈川県条例の三十七条七項、年齢の不知は許さないというこの規定の効力はどうなってしまうのでしょうか。これはつぶされてしまうのでしょうか、生き残るのでしょうか。それだけはちょっと発議者、答弁してください。
○吉川(春)参議院議員 ですから、この法律と重なる部分は効力を失うけれども、それからはみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である、この立場でございます。

提案者の1人である吉川(春)参議院議員は「はみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である」と言って、あたかも過失の児童買春行為については自治体の判断として青少年条例の淫行処罰規定と年齢知情条項が適用可能であるかのように答弁したのだが、

附 則
(条例との関係)
第二条  
1 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

という規定がある以上、法律の解釈論として、児童買春行為については、条例は全部無効になり、年齢知情条項も適用されないことになった。

 この辺から引用しただけだけど、まとめといた方がわかりやすいかと思いまして。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/okumuratoru/20120927-00021882/
http://bylines.news.yahoo.co.jp/okumuratoru/20120927-00021883/

 にわかに判例・文献くれと言われても、必要な部分は全部引用してあるので新発見はないですよ。この論点については、以前からことあるごとに指摘していますので、実は新しい情報はありません。

2021/02/22 あとから見つけたのも、便宜上、ここにまとめておきます
「新捜査書類全集 捜査書類書式例 第4巻取調」にもありました。
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2019/02/14/000000

栗原「児童買春の罪と青少年保設育成条例の関係について」研修644号107頁,
島戸純「児章買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保設等に関する法律」研修653号105頁
山川「いわゆる児童買春等処罰法と青少年保護育成条例の関係について」研修635号

藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護育成条例」風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版
淫行規制条例と児童買春罪との関係(補訂)
① 法律と条例とが同一とみられる事項を規定している場合について、最高裁判所は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、それぞれの趣旨、日的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する図の法令と条例が併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する日的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同ーの目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨でなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との聞に何らの矛盾抵触はなく、条例が図の法令に違反する問題は生じえないのである (最大判昭50.9.10 刑集29.8.489) としているが、両者の聞に矛盾抵触が生じた場合、法律の規定が優先され、条例の規定が無効となる
② ところで、児童買春・ポルノ法の児童買春罪と淫行規制条例とを比較すると、少なくとも対償の供与又はその約束がなされて性交等に及んだ行為を処罰するという部分に限っては、その趣旨、目的、内容及び効果において完全に重複するものと考えられ、かかる部分に|期する条例の規定は効力を有しないこととなる。児童買春・ポルノ法附則第2 条第1 項も、地方公共団体の条例の規定で、同法で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、同法の施行と同時にその効力を失う旨定めているが、これは、前記の趣旨を確認的に規定したものであると考えられる
③ そして、児童買春・ポルノ法は、「児童買春」について、児童等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせること)としているのに対し、淫行規制条例は、児童に対する「淫行」、「みだらな性行為」等を処罰対象としている。
したがって、淫行規制条例の「淫行」、[みだらな性行為」が児童買春・ポルノ法の「性交等」よりも広い場合には、同法の「性交等」 よりも広い部分について、児童買春・ポルノ法がいかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されないから、条例の効力を認めることになると考えられる。
① なお、この場合、児童買春・ポルノ法上、児童買春罪については年齢の知情性に関する推定規定がないから、行為者に被害児童の年齢についての認識を欠いた場合に、児童買春罪による処罰ができないとしても、淫行規制条例による処罰ができないか問題となる
両者の規制が重なる部分については、児童買春・ポルノ法が児童買春罪について年齢の知情性に関する推定規定をあえて設けず、故意犯処罰の原則を貫いている以上、この法律の判断が優先されるべきであり、淫行規制規定による処罰はできないものと考えられる

新捜査書類全集 捜査書類書式例 第4巻取調
p106
都道府県の制定するいわゆる青少年保護育成条例によっても処罰可能であるから,相互の処罰の関係が問題となる。
特 に,児童買春法4条の罪の成立には買春者において被害児童が18歳未満で あることの認識が必要であるのに対して(同法9条が4条をわざわざ除外してい る。) ,青少年保護育成条例の淫行処罰規定では,被害児童が1 8歳未満であることを知らないことを理由として処罰|を免れることはできない旨の知情性推定規定を設けているため,被疑者に18歳未満であることを知らなかった旨弁解している場合に, 児撞買春罪の適用は困難であるとしても,
青少年保護育成条例違反として処罰することができるかという問題がある。児童買春処罰法附則2条1項が「「地方公共団体の条例の規定で,この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当認行為に係る部分については,この法律の施行と同時に,その効力を失うものどする」と規定していることからすれば,児章買春法が規定する対償の供与又ぱその供仔の約束をした上で行う買春(淫行)行為に関しては,青少年保護育成条例の淫行処罰規定の適用は排除されてれるが,対償の供与又はその約束を要件としない単なる淫行を処罰する部分については青少年保護育成条例のみが適用されると解すべきであろう(栗原「児童買春の罪と青少年保設育成条例の関係について」研修644号107頁,島戸純「児章買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保設等に関する法律」研修653号105頁)。