児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

サーパコンビュータからのダウンロードという顧客らの行為を介して,わいせつ動画等のデータファイルを顧客らのパソコン等の記録媒体上に取得させる行為が,刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録等の「頒布」に当たるとした事例東京高判平25.2.22(上告中)判時2194号144頁警察実務重要裁判例 平成26年版(立花書房)

 外国のアダルトサイト(日本語・日本刑法上のわいせつ)の動画を転送したりすると、外国サイトの代理人の弁護士から、著作権侵害で、刑事告訴もちらつかせながら、多額の請求をされることがありますが、日本警察に、告訴してもらえばいいですよね。その外国サイトにも日本刑法が適用されて、そっちも犯罪だというのですから。司法は手を貸さないはずです。

解説
コンピュータネットワーク上のわいせつ画像(動画)公開行為については.最決平13.7.16刑集55巻5号317頁において.わいせつな画像データを記録・蔵置したハードディスク自体を「わいせつ物」に該当するとし,不特定多数の者に同ハードディスクにアクセスさせ.ダウンロードさせたわいせつ画像データを画像表示ソフトを使用させて再生閲覧できる状態を設定した行為が,「わいせつ物を公然と陳列した」ことに当たるとされていた。
その後.平成23年の刑法改正により,刑法175条1項後段のわいせつ電磁的記録等送信頒布罪が新設され,電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した行為が処罰されることとなったが,本件では,ダウンロード自体が顧客によってなされていたことから,当該顧客の行為を介する場合でも,同項の「頒布」に当たるかが問題とされた。また,わいせつ動画ファイル等の記録・保存が外国で行われていたことから,国内犯として処罰されるかが問題とされた。
本判決は,まず.顧客によるダウンロード行為は,サイト運営側に当初から計画されてインターネット上に組み込まれたわいせつな電磁的記録の送信手段にほかならないから,頒布という実行行為の一部を構成するとした上,構成要件に該当する事実の一部が圏内で発生していれば,囲内犯として我が国の刑法を適用できるとして.弁護人の主張をいずれも排斥したものである。外国に設置したサーバコンピュータに記録・保存したわいせつ動画ファイル等について,圏内顧客にダウンロードさせる方法により配信する行為は後を絶たないところ.本判決は,かかる行為が刑法175条1項後段の「頒布」に当たり,国内犯として処罰できることを明らかにしたものであり,その意義は大きいと思われる。