児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

その上で「児童ポルノ法」が存在する意味は、その商品的価値により児童虐待が誘発されることを防ぐためだと僕は思います。だから「買春の実行、周旋、勧誘」および「ポルノの所持、提供、製造」が罰則つきで禁止されているのであり、虐待そのものではなくその誘因となる周囲に対して罰則つきの規制対象を拡大することが本法のポイントなのです という国会議員

 児童ポルノ罪の立法趣旨は従前から「これらの行為による児童に対する性的搾取及び性的虐待が、児童ポルノの対象となった児童の心身に有害な彰響を与え続け、児童の権利を著し侵害するからに他ならない」と説明されてきたと思いますが、平成26年になるとついに「「児童ポルノ法」が存在する意味は、その商品的価値により児童虐待が誘発されることを防ぐためだと僕は思います。だから「買春の実行、周旋、勧誘」および「ポルノの所持、提供、製造」が罰則つきで禁止されているのであり、虐待そのものではなくその誘因となる周囲に対して罰則つきの規制対象を拡大することが本法のポイントなのです」と言い出す国会議員が出てきて、当然のように漫画・CGの規制に向かっている感じです。

「第1条(目的) この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。」という法文からは、「これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置をとること」がもう一個のポイントだと言って欲しいところ。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
P152
児童買春、児童ポルノの提供等の行為は、児童に対する性的搾取及び性的虐待であると解され、児童の心身に有害な影響を与えるものであると考えられます。このことは国際的にも認識されてきたところであり、児童の権利条約をはじめとして、国際的にも様々な取組が進められてきたところです。そこで、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等によって心身に有害な影響を受けた児童については、その保護のための各種の措置について定めることとしています。これらがあいまって、性的搾取 ・性的虐待を受けず、そこから保護される児童の権利を擁護することとなると考えられます。

P178
そもそも児童ポルノの販売等が禁止され、さらに、これらの目的での児童ポルノの製造、所持等が禁止されているのは、これらの行為による児童に対する性的搾取及び性的虐待が、児童ポルノの対象となった児童の心身に有害な彰響を与え続け、児童の権利を著し侵害するからに他ならない(児童買春・児童ポルノ禁止法1 条参照)。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P121
現行法
第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
本条は、第1項で、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対する保護のための措置を関係行政機関が適切に講ずることを、第2 項で、当該児童の保漉者に対l し関係行政機関が指導等の措置を講ずるものとすることを規定しています。
児童は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けますが、この場合には、児童福祉法等に基づく各種の保護のための措置を講ずることが必要となる場合も多くあります。そこで、第l 項は、関係行政機関に、相互に連携を保ちつつ保護のための措慣を適切に講ずるよう規定しています。また、児童の保漣者か適切にその責務を果たしていないことが、児童が児童買春の相手方となったり児竜ポルノに描写される原因となっていることもあります。そこで、第2 項は、保護のための措置を講ずべき児童の保護者に対しても必要に応じ、関係行政機関が指導等の捕置を講ずるものとすると規定しています。
(1) 「関係行政機関」 とは、本条に規定されている保護のための措置を講ずる機関をいいます。これには、国及び地方公共団体の行政機関が広く含まれます。具体的な例としては、犯罪被害にあった児童を最初に保護することが多い警察、児童福祉法で保護に関する権能が与えられている都道府県知事、福祉事務所長及び児童相談所長が挙げられます。
(2)児童が心身に受けた有害な影響とは、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により児童が心身に受けた有害な影響のことをいいます。具体的には、性欲の対象とされ、自己の尊厳を害されたことによる肉体的精神的な悪影響や、児童ポルノが流通に置かれることにより、性欲の対象とされた事実が永続的に残かこれが社会に広まっていくことから生ずる精神的な悪影響が考えられます。
(3)関係行政機関が心身に有害な影響を受けた児童に対し保護のための措置を講ずる場合は、単独で行うより、複数の関係行政機関が連携して行えぽ、更に効果が上がることになります。
(4) 関係行政機関が心身に有害な影響を受けた児童に対し保護のための措置を講ずる場合は、有害な影響を受けた児童の心身の状況、その置かれている環境等に応じて行う必要があります。
(5) 「個人の尊厳を保って成長する」とは、心身に有害な影響を受けた児童が、その影響から回復し、他の児童と同様に、社会の構成員として受け入れられて成長していくという意味です。

http://blogos.com/article/88145/
まず、児童に対する虐待は多くの場合刑法上の傷害罪や強制わいせつ罪、強姦罪などにあたります。さらに児童虐待防止法があり、保護者による暴行、わいせつ行為、育児放棄、暴言、絶食、配偶者間暴力等心理的外傷を与える暴力まで、禁止されています(ただし児童虐待防止法は虐待に対する行政の対応を定めたものであり、虐待そのものに対する刑罰はありません)。一義的にはこれらの法律によって規制され防止されるべきものです。

 その上で「児童ポルノ法」が存在する意味は、その商品的価値により児童虐待が誘発されることを防ぐためだと僕は思います。だから「買春の実行、周旋、勧誘」および「ポルノの所持、提供、製造」が罰則つきで禁止されているのであり、虐待そのものではなくその誘因となる周囲に対して罰則つきの規制対象を拡大することが本法のポイントなのです(もちろん、児童買春の実行や児童ポルノの製造は、同時に刑法犯となる場合も多いと思います)。「児童ポルノ法では虐待は防げない」みたいな議論を見かけますが、刑法等と組み合わせて考えて頂くべきことですし、「暴力的虐待」の画像等は「性的虐待」の画像と比較してネット等での流通量がそもそも少なく、画像の所持や製造等を規制しても虐待を減らす効果が期待できません。当然ながら明らかな刑法犯として取り締りの対象となる行為の動かぬ証拠となる画像を流通させる人もあまりいません。そのために本法の対象となっていないものと思います。

 その上で「マンガ、アニメ、CG等の児童ポルノに類するもの(以下マンガ等)」をどう扱うかで大きな議論があります。

 こういう思想でやってるから被害児童の存在が忘れられる。

児童相談所における被害児童の保護
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001034573&requestSender=dsearch

福祉行政報告例
総数 面接指導
総数 助言指導 継続指導 他機関あっせん
H20児童買春等被害相談 16 14 10 4 -
H21児童買春等被害相談 57 51 13 35 3
H22児童買春等被害相談 44 34 24 9 1
H23児童買春等被害相談 37 35 22 13 0
H24児童買春等被害相談 142 119 23 -- 0