児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

会わないと裸写真をばらまくという強要未遂で懲役1年執行猶予3年(東京地裁H26.5.14)

 ほんとは会って性行為するつもりなら「裁判官「あなたが書いた通りに、呼び出してセックスしてたら強姦ですよ。」ということなんですが、強姦未遂ではなく強要未遂で起訴されています。
 検察官がわざわざ軽い強要罪を選択しているんだから、実刑なんてありません

http://www5.nikkansports.com/general/column/asozan/archives/44024.html
 起訴されたのは、平成26年9月30日、被告人がカカオトークで被害児童に「結局は約束破るんですね。いろんなところに画像貼っておきますね。今から会えますか?」とメッセージを送ったが、児童が応じず未遂に終わったという内容。
 県圧管の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後に法律事務所で働き、犯行時も同所で働いていたという。
 被告人はネットで知り合った女性に裸の画像を送らせたり、会って不特定多数の女性と性交するなどしていたらしい。そんな中、去年の9月25日に被害児童と知り合い、犯行日である9月30日までカカオトークで連絡をとっていたとのこと。
 そして、被害児童からの会えないという旨のメッセージを見て、被告人は立腹。事前に送信されていた、胸の画像を流出すると脅したが、被害児童が警察に被害を訴えたというのが事件の詳細です。
 知り合いとか言われると、直接会ったりしているのかと勘違いしそうだけど、無料通話アプリのIDを教えあって、会話する仲を知り合いというんですね。なんか、不思議。

 検察官が証拠の提出を終えると、
裁判官「では、弁護人の立証は?」
と、白髪の男性弁護人に用意した証拠を訊くと、
弁護人「え〜、被害児童の弁護士と連絡をとって、示談の話を進めてたんですけど、あと少しの所で連絡がですね〜、あの......」
裁判官「弁護人!まだ、証拠は採用されてないので、中身じゃなくて、標題だけですよ!」
と、注意される弁護人。検察官が同意か不同意か言ってないのに、内容を朗読する弁護人がいるなんて、あんまり、刑事裁判は慣れていないのかな。

弁護人「あぁ、標題ね。全部で8点ありまして、ひとつ目は反省文を送ったというのを被害児童の弁護士に伝えた報告書。二つ目がですね、こちらも報告書で被告人が保釈されたことを被害児童の弁護士に伝えて......」
と、請求した書証のほとんどが報告書。こんなの初めて見た!珍しい立証、と思ってたら、
裁判官「あの〜ですね〜......弁護人。報告書と言われましてもですね、その辺の経緯は検察官の証拠でもわかってるわけなんで、そのうちの反省文だけにしてもらえますか」
と、またもや、注意される弁護人。なに、このグダグダな弁護人の準備は。

 法廷には被告人の母親が情状証人として出廷。被告人が保釈されてからは、上京して被告人と同居しているらしく、今後の監督も約束していました。

 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

弁護人「あなたが私の事務所に勤めるようになったのは、平成23年12月、と」
と、いきなり衝撃的な一言。元勤務先の弁護士さんが弁護人をやってるんですね。


弁護人「なぜ、うちに来たんですか?」
被告人「実務を学んで、将来活かせればと」
弁護人「事務所で仕事が終わって、夕方5時以降は何をしていましたか?」
被告人「週に3回、司法試験の学校に通って、勉強していました」
必死に学んで、法曹界で働こうとしていたようです。

 この後は、被害者や家族に謝罪の言葉を述べ、再犯しないことを誓っていました。

・・・・
裁判官「カカオトークのやり取り見るとね、相当しつこくやってますよね。そんなに被害児童と会いたかった?」
被告人「......会いたかった......」
裁判官「なんでこんなに?」
被告人「彼氏ができると言われたのが信じられなくて、感情的に」
裁判官「あなたが書いた通りに、呼び出してセックスしてたら強姦ですよ。それはわかりますよね?強姦したかったんですか?」
被告人「いえ......。前日まで仲良く話させていただいてて、会って話せば元に戻れるかなというのがありまして」
裁判官「はぁ〜......、自己中心としか言いようがないね」
と、呆れたところで質問終了。

 一時は、社会正義のために人生を賭けようと思っていた時期もあったのにねぇ。自己犠牲ができるから、社会のためになれるのに、法曹界の頂点である裁判官に、自己中なんて言われるとは。

 この後、検察官が懲役1年を求刑。数日後に判決かと思ったら、
裁判官「本人も認めて争いもありませんので、10分ほどお時間をいただければ、この後に判決出したいのですが......」
と、即決です。

 10分ほど休廷して、判決です。結果は、懲役1年執行猶予3年でした。

 裁判官が被告人に対し、主文に続いて判決の理由を読み終えると、
裁判官「では、執行猶予の意味を......」
と、説明を始めていました。いくらなんでも、被告人は知ってるでしょ。その後の控訴手続きについても。これ以上ない皮肉だよなぁ。法曹関係者は法曹関係者になろうとしてた人の失敗に対しては、厳しいものだ。