児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

東京高裁が「直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。」という

 性的欲求を満たすために撮影する奴とか撮影そのもので興奮する奴もいるんでしょ。それは強制わいせつ罪の適用の際にも別個の行為としないと理屈が通りません。

住居侵入,強盗致傷,銃砲刀剣類所持等取締法違反,わいせつ略取,強制わいせつ,強制わいせつ未遂被告事件
宇都宮地方裁判所
平成25年8月30日刑事部判決
       理   由
(罪となるべき事実)
第1 被告人は,A(平成■年■月■日生,当時10歳)が13歳未満の女子であることを知りながら,わいせつな行為をする目的で,平成24年10月21日午後2時過ぎ頃,宇都宮市α×番×号所在の株式会社dβ店1階北側女子トイレ出入口付近において,同女に対し,背後から同女の口を左手で塞ぎ,「静かにしないと殺すぞ。」などと申し向け,右手で同女の体を抱きかかえる暴行,脅迫を加えて同女子トイレ個室内に同女を連れ込み,引き続き,同所において,同女のズボンとパンツを脱がせて,その陰部及び臀部を手でなで回し,同女の唇に接吻し,同女に自己の陰茎をくわえさせ,露出させた同女の陰部をカメラ機能付き携帯電話機で撮影するなどし,もって13歳未満の女子に対して強いてわいせつな行為をした。

東京高裁H24.11.1
2 法令適用の誤りの論旨について
(1)児童ポルノ該当性について
 所論は、原判示第3及び第6の動画は,一般人を基準とすれば性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらない旨主張する。しかし,被告人は,原判示第3については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影,記録し,同第6については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させ,その陰部を被告人が触るなどの姿態をとらせ,これらを撮影,記録したのであるから,これらの動画の上記部分は,各被害児童の年齢が当時6歳であったことを考慮しても,社会通念上,一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに該当する。
(2)罪数関係について
ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いずれも,〔1〕性的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して被告人の性的欲求を満足させる行為であるから,監禁行為とわいせつ行為は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,〔2〕仮に,観念的競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。 
 そこで検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いずれも,わいせつ行為をする目的で公衆トイレ内に誘い込んだ後,内鍵を施錠したり(原判示第4),ドアの前に立ちふさがるなどして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものであるが,わいせつ行為に及んでいること自体がドア前に立ちはだかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行為が終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんど重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのドアの前に立ちふさがるなどして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりながらわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉じこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基づく一体的な動態というべきであるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合の関係にあるものと解される。
イ 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪について,いずれも,〔1〕被告人が,被害児童に陰部を露出させる姿態等をとらせ,これらを撮影した行為は,撮影行為も含めて全体として,児童ポルノ法7条3項に触れる行為であるとともに刑法176条後段にも触れる行為であり,行為の全部が重なり合う上,わいせつ行為として同質であるから観念的競合の関係にある,〔2〕仮に,観念的競合の関係にはないとしても包括一罪である旨主張する。
 そこでまず〔1〕の点について検討すると,その事実の概要は,被告人が,13歳未満の被害児童に対し,そのパンティ等を下ろして陰部を手指で触り,舐めるなどした上,自己の陰茎を握らせるなどする(以下,これらの行為を「直接的なわいせつ行為」という。)際に,性的欲求又はその関心を満足させるために,これらの姿態をとらせてその一部(原判示第2,第3の場合)又はそのほとんど(原判示第5,第6の場合)を携帯電話で撮影して児童ポルノを製造したというものである。
 確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為が児童ポルノ法7条3項の構成要件的行為であることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いがあるといえる。
しかし,本件では,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとしたものではないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当でない。また,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為は,上記のとおり構成要件的行為ではあるが,児童ポルノ製造罪の構成要件的行為の中核は撮影行為(製造行為)にあるのであって,同罪の処罰範囲を限定する趣旨で「姿態をとらせ」という要件が構成要件に規定されたことに鑑みると,そのような姿態をとらせる行為をとらえて,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とが行為の主要な部分において重なり合うといえるかはなお検討の余地がある。
 そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。
 また,児童ポルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広がりを持って行われることが想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものであるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為が同時性を甚だしく欠く場合が想定される。したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとすると,例えば,複製行為による児童ポルノ製造罪の有罪判決が確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効が及ぶ事態など,妥当性を欠く事態が十分生じ得る。一方で,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為がない場合は観念的競合の関係にあるが,複製行為が行われれば併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必ずしもその有無が明らかになるとは限らない上,同じ撮影行為であるにもかかわらず,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価が変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
 以上のとおり,本件において,被告人の刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為は,その行為の重なり合いについて上記のような問題がある上,社会的評価において,直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為は,別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり,一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性は認められず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 次に,〔2〕の点については,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の保護法益の相違や,上記のとおり両行為の性質が相当異なることなどからすると,包括一罪にはならないというべきである。