児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童ポルノとわいせつ物とネット犯罪」刑事法最新判例分析P220

 弁護人はそんな主張はしてなくて、外国からの販売は、単なる販売罪であって、販売目的輸出罪ではないと主張したつもりでした。

第31講児童ポルノとわいせつ物とネット犯罪
論点
児童ポルノのDVDを日本国内で運営されているインターネット・オークションに出品し、外国から、日本に居住する落札者にあてて落札された児童ポルノを郵便に付して送付する行為は、児童ポルノを外国から輸出したものといえるか。
わいせつ画像データそのものと、刑法175条の改正。
[基本判例1] 最2小決平成20年3月4日(刑集62巻3号85頁・判タ1289号96頁)
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解説
ネット利用と犯罪行為の幅の拡大
ネット販売の利用により、たとえばわいせつ物の有償頒布行為などの実行が容易になる面がある。そして児童ポルノは、わいせつ物以上に重要な法益主侵害性を有すると認識されているが、その国境を越えた流通が容易になる。日本人が外国から児童ポルノを輸出する行為も、ネット販売の道がなければ、例外的なものとなっていたと思われる。
本件事案の場合は、そこにインターネット・オークシヨンを介在させることにより、児童ポルノを外国から輸出した日本国民を処罰する構成要件を僭脱する可能性があったのである。具体的には、インターネット・オークションに出品して不特定の者から入札を募り、入札期間の終了時点で最高値の入札者を自動的に落札者とし、その後当該落札者にあてて落札されたDVDを送付した行為が、「児童ポルノを不特定の者に提供する目的で児童ポルノを外国から輸出した」とはいえないと主張されたのである。
児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項は、同条4項に掲げる行為の目的で児童ポルノを外国から輸出した日本国民を処罰する。そして同条4項には、児童ポルノを不特定の者に提供する行為が規定されている。そこで、本件実行行為時、すなわち、児童ポルノDVDの入った封筒等をタイの郵便局で国際スピード郵便に付した時点では、送付先が特定の相手(ネットオークション落札者)に確定しており、「不特定の者に提供する目的」が欠けるので構成要件該当性が認められないようにも見えるのである。