児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪は強制わいせつ罪(176条後段)との関係では観念的競合になるが、強制わいせつ致傷罪との関係では併合罪になる(松山地裁H26.1.22)

 判示第8の1では撮影行為=児童ポルノ製造をわいせつ行為としつつ、製造行為と強制わいせつ致傷罪とは別個の行為だというのです。
 しかし「甘言を用いて仰向けに寝かせた同女の上に馬乗りになって同女の上半身の着衣をまくり上げる暴行を加え,その胸部を露出させ,その状況をデジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し,さらに,同女の背後から抱きつく暴行を加え,着衣の上から胸や陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をし,」というのは1個のわいせつ行為であって、判示第8の1の法令適用については「判示第8の1の所為は同法181条1項(176条前段)に」ということで単純一罪として
  胸部を露出させ
  デジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し
  着衣の上から胸・陰部さわる
というのは1個の行為だと言っているわけだから、判示第8の2の撮影行為だけを切り離して行為は2個だというのは自己矛盾ですよね。
 こういうのはタダで控訴趣意書書いてあげるんだけどね。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84114&hanreiKbn=04
事件名  強制わいせつ致傷,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ
裁判年月日 平成26年01月22日
裁判所名・部 松山地方裁判所    刑事部
原審結果  
判示事項の要旨
 1 強制わいせつ致傷事件における犯行態様について,被害者の供述を全面的に信用し被告人の供述を虚偽として排斥することはためらわれるなどとして,公訴事実記載のとおりの犯行態様を認定しなかった事例
2 強制わいせつ致傷罪と児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとした事例
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140414131857.pdf
第1 A(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,平成24年8月25日午後3時13分頃,松山市(以下略)路上において,同女の上半身の着衣をまくり上げさせてその胸部を露出させ,その状況をデジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し,もって13歳未満の女子に対しわいせつな行為をするとともに,児童に衣服の一部を着けず性欲を興奮させ,かつ,刺激する姿態をとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。


第8
1 H(当時13歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,同月15日午後6時14分頃,同市(以下略)倉庫南側敷地内において,甘言を用いて仰向けに寝かせた同女の上に馬乗りになって同女の上半身の着衣をまくり上げる暴行を加え,その胸部を露出させ,その状況をデジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し,さらに,同女の背後から抱きつく暴行を加え,着衣の上から胸や陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をし,引き続き,同市(以下略)公園北側通路において,同女から逃れるため,同女に対し,その首を手で押さえ付け,右顔面を拳で殴るなどの暴行を加え,その際,前記暴行により,同女に加療約4日間を要する右眼窩打撲・腫脹,頭部打撲,頚部打撲の傷害を負わせた。
2 同日午後6時14分頃,前記倉庫南側敷地内において,同女が18歳未満の児童であることを知りながら,前記1のとおり,甘言を用いて仰向けに寝かせた同女の上に馬乗りになって同女の上半身の着衣をまくり上げて胸部を露出させ,その状況をデジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し,もって児童に衣服の一部を着けず性欲を興奮させ,かつ,刺激する姿態をとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。

法令適用
なお,判示第8の罪数関係について付言するに,判示第8の1におけるわいせつ行為には,判示第1及び第3ないし第7における場合と異なり,児童の胸部を露出させた上での撮影行為だけでなく,胸や陰部を触るという児童ポルノ製造罪の実行行為ではない行為が含まれており,加えて,被告人が児童から逃げるための暴行にも及んでいることからすると,強制わいせつ致傷と児童ポルノ製造は,その行為の一部に重なる点があるに過ぎず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,強制わいせつ致傷罪と児童ポルノ製造罪は刑法45条前段の併合罪の関係にあると判断した。