起訴状に書いていない認定があるのに、控訴審の弁護人も気付いていなかったようです。
(なお原判示の犯行態様・結果について、起訴状は「パンツを脱がせて下半身を裸にするなどし」というものであったところ、原判決は罪となるべき事実において上記などの具体的内容として「同児童の口に陰茎を押し当てるなどし」との事実を認定した。
しかしながら検察官は冒頭陳述においてこの点について「被告人は自己の陰茎を露出させて被害者の口に近づけた」と説明し(文脈からも陰茎を接触させては居ない趣旨であると認めるほかない)、論告においても同じ前提に立っていたのであり、原判決はこれよりも重い態様・結果を半裁事実として認定したのである。
冒頭陳述の内容がただちに訴因となるものではなく 訴因逸脱認定をしたとは言いがたいこと、被告人も陰茎を口につけた旨公判でみとめており、犯行態様・結果の程度の差自体も大きくないからすると、被告人の防御上の不意打ちも小さいとはいえ、原判決の認定手続きに判決に影響を与えることが起きらかな違法があるとはいえないが、それにしても、検察官が陰茎を近づけたとの限度で主張を展開していたことは被告人に対しても審判対象がその限度に限られているとの一定の期待を抱かせるものであるから、原審としては検察官に「陰茎を押しつけた」との事実までを主張するのかどうかを釈明して冒頭陳述を改めさせるなどの措置をとるのが本来は適切だったと思われる