児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪について、現行法の解釈としては、性的自由の保護という側面のほかに、風俗犯罪としての性格が依然、として残されていることを、出発点とせざるをえない。日高刑法各論講義ノート第3版

 化石みたいな主張なんですが、平成になっても高裁判決で確認されています。

日高刑法各論講義ノート第3版
P198
強制わいせつ罪や強姦罪などの保護法益については、個人の性的自由の保護だけを考えれば足りるとして、個人的法益に還元して理論構成すべきだとの見解も近時有力である。ドイツ刑法では、1973年の改正で従来の風俗犯を「性的自己決定に対する犯罪行為」として捉えなおし、強制わいせつ罪を性的強要罪として再構成している。この方法は、今後の立法論としては一考に価する。しかし、わが国の現行法の解釈としては、性的自由の保護という側面のほかに、風俗犯罪としての性格が依然、として残されていることを、出発点とせざるをえない。
・・・
P204
強制わいせつ罪の構成要件的故意としては、相手方が13歳未満である場合には、その年齢についての認識(意味の認識)がなければならない。さらに、本罪が傾向犯であることから、主観的傾向の現れとして行為者に「性的意図」(性欲を刺激または興奮させようとする意図)が必要であるかについては、見解が対立している。
?必要説(通説・判例)……性的意図が欠ける場合には、主観的違法要素ひいては主観的構成要件要素が欠けることになる。
最判昭和45・1・29刑集24・1. 1
「刑法176条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには、その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し、婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても、これが専らその婦女に報復し、または、これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しないものというべきである。」
?不要説……被害者の性的自由を侵害することを認識していれば足り、性的意図は構成要件的故意の内容をなさない。
−結果反価値論に依拠して主観的違法要素を全面的に否定する立場からの主張。
−強制わいせつ罪の保護法益を被害者の性的自由に求める立場からの主張。
<私見>
・必要説に依拠した解決(現代刑法論争I [2 版] 67頁)。
・本罪の保護法益は、被害者の性的自由のほかに、健全な性風俗環境の維持が考えられる。さらに、主観的違法要素は全面的に排斥しえない。