児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

承諾無い性交・意に反する性交と強姦罪

 事前事後にメールで承諾したことが明らかな17歳児童に対する青少年条例違反被告事件で、「承諾無い性交・意に反する性交だったから強姦罪だ」という告訴状(弁護士)がある。
 法文見れば、「暴行・脅迫」が要件になってますから、文面上はそう書いてもらわないと、強姦罪が成立しませんよ。もし余裕があれば、暴行・脅迫の定義・程度を満たすような事実関係も盛り込んで下さい。

刑法第177条(強姦)
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

条解刑法
2)暴行・脅迫
(ア)意義
暴行は身体に向けられた不法な有形力の行使を,脅迫は害悪の告知をいう(208条注l 222条注5参照)。暴行・脅迫は姦淫しようとする相手方に対してされる必要がある。もっとも,暴行については,暴行罪における暴行と同様,身体に向けられた不法な有形力の行使をいうとする見解(注釈(4)299)と,それよりやや広く,強要罪等の場合と同様,被害者の身体に物理的に感応を与え得るものであれば第三者又は物に対するものも含むとする見解(大コンメ2版(9169)がある。しかし前者によっても,第三者又は物に対する暴行は脅迫として評価されるのであるから具体的適用の場での結論の差違はほとんどないものと考えられる。
脅迫は,その告知した内容が虚偽のものであってもよい。犯人自身によって告知される必要はなく,犯人自身が加害するものとして告知される必要もなく,犯人が害悪の実現に影響力を有するものとして告知されれば足りる。
(イ)程度
被害者の反抗を著しく困難にする程度のもので足り,反抗を抑圧する程度に達する必要はない(最判昭24・5・10集36 711)。その程度については,暴行・脅迫の態様のほか,時間的・場所的状況,被害者の年齢・精神状態等の諸般の事情を考慮して客観的に判断されることになる(最判昭33・6・6裁判集126171)。知的能力に障害のある被害者の場合には通常人の場合よりも軽度の暴行・脅迫で足りることがあり得る。
なお,暴行・脅迫によって反抗を著しく困難にしただけでなく,被害者を心神喪失又は抗拒不能の状態にして姦淫した場合も,本罪が成立し,次条の問題とはならない(最判昭24・7・9集38 1174)。

注釈刑法(4)各則2 初版p297
IV 「暴行」「脅迫」
「暴行」は身体に対する不法な有形力の行使〈沢登・刑法学会・講出5巻227頁は身体に対することを要しないとする), 「脅迫」は寄忠の告知をいうであろう。
(1) いずれも抗拒を著しく困難ならしめる程度のものたることを要し,かつ,それで足りる。。。。。。。。。。。。
他方,程度を問わないとする説もある(泉二・各402頁;植松・概Ⅱ190頁)が,姦淫は強・和姦を問わず多少とも有形力の行使を伴うのが常である〈首に手を掛け押し倒し,馬乗りになり,ズロースを引き脱がせる行為につき,山口地判昭34・3・2下級刑集1・3・611)から,この説によるときは怠に反するか否かが唯一の標準になり,法的安定を損う〈とくに女心の微妙さを考慮に入れよ。たとえば, 東京地判昭35・12・22判タ117・111の事案参照〉。些細な暴行・脅迫の前にたやすく屈する貞操の如きは本条によって保護されるに値しないというべきであろうか

コンメンタール刑法第二版第9巻p70
また,程度を問わないとする説もあるが,ごく軽度な暴行で足りることになると,被害者の真意に反したかどうかという内面的事情のみが犯罪の成否の標準となりかねず,やはり妥当ではあるまい.ただし,暴行・脅迫が被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものであるかどうかは,被害者の年齢,精神状態,行為の場所,時間等諸般の事情を考慮して,社会通念に従って客観的に判断されなければならないものであるから,具体的状況によっては,通常の場合より軽度の暴行・脅迫で足りる場合があることは当然である


 承諾はないが、暴行・脅迫もなく性交に至ったという無罪判決もあります。

強姦被告事件
大阪地方裁判所平成20年6月27日
当時14歳の中学生を強姦したとされる事案において,少女の供述する犯行状況,犯行前後の状況を踏まえて,少女が性交に同意していなかったことは認められるが,被告人が,少女に対して,反抗を著しく困難にする程度の暴行を加えたとは認められず,また,少女が性交を受け入れたと誤信した疑いは払拭できないとして,無罪を言い渡した事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

 4 争点に対する判断
   以上を前提に,強姦の成立について検討する。
  (1) 争点①(Dの同意について)
    上記のとおり,Dは,被告人に対して今日は性交をやめておこうという発言をし,また,足に力を入れて閉じるなど拒絶する態度を示していることが認められる。Dが14歳の中学生であり,被告人とは本件前日に初めて知り合い,付き合い始めたのも本件当日であることなどにかんがみれば,Dが性交に同意していなかったことは認められる。
  (2) 争点②(反抗を著しく困難にする程度の暴行について)及び争点③(強姦の故意)について
   ① 認定に積極的に働く事情
   Ⅰ Dは,性交しようとしていた被告人に対し,本件性交前に「今日はやめとかへん。」などと言っていた。
   Ⅱ 被告人は,Dの陰部に手を伸ばした際,閉じていたDの足を開き,Dが足を閉じているにもかかわらず,ジャージのズボンとパンツを脱がせ,Dの閉じている足を開いた。
   Ⅲ Dは,本件当時14歳であり,性交が行われた時刻は午後9時ころで,場所は,神社横の路上に停めた自動車内であった。
   ② 認定に消極的に働く事情
   Ⅰ Dから,被告人に本件当日の昼に電話をかけ,なぜ前日の夜連絡をしてこなかったのか尋ねており,Dも被告人との交際に対して積極的であった。
   Ⅱ Dは,本件当日,被告人に会う前に,化粧,着替え及び入浴をして身支度を整えており,被告人もそのことを認識していた。
   Ⅲ 本件直前,被告人は,車の中で,Dに付き合うか尋ね,Dがこれを承諾しており,性交を受け入れたものと被告人が考えても不自然ではない人的関係にあった。
   Ⅳ 被告人は,本件現場に行くまでの間にDとキスをし,本件現場において,後部座席にDを誘い,後部座席を倒した後に,Dは後部座席に移動して,任意に寝転がり,被告人とキスをしている。そうすると,Dは,被告人とは,強く抵抗することが困難な関係にはなく,被告人の方も,Dの抵抗に対して多少強引に迫れば,Dもあきらめ,同意により性交できると期待しても不自然ではない。
   Ⅴ Dの公判供述によっても,「やめて。」というのは,被告人に聞こえる程度の声であり,叫ぶなど強い拒絶の様子を示したとまでは認められない。
   Ⅵ その抵抗の態様は,被告人の肩ないし腕を手で押さえたり,上記のとおり,容易に開かれる程度に足を閉じていたと言うに止まる。ジャージのズボンとパンツを脱がされる際も,ズボンを軽く持っていたと言うにとどまり,パンツを脱がされるときには,パンツを持っていない。
   Ⅶ ジャージのズボンとパンツには,脱がされるに際して破れた形跡はなく,D自身「あっさりと私の両足を開き」と供述しており,足を固く閉じていたとまでは認められないし,開かれた後,必死で抵抗したとの状況ではなかった。
   Ⅷ 本件自動車を運転し,本件現場に停車した被告人は,本件現場がDと待ち合わせをした場所やDの通う中学校から1キロメートル前後の距離にある,南側は住宅地となっている公道上であることは認識していたとみられる。
   ③ 結論
     前記②によれば,前記①の諸点を考慮しても,被告人がDの足を開く行為及びDに覆い被さる行為が,反抗を著しく困難にする程度の有形力の行使であるとは認めがたい(被告人が性交前にDに「入れるまではせえへん。」と言ったとしても,それは,Dの抵抗を弱める意味があり,非難されるべき言動ではあるが,この言葉自体が反抗を著しく困難にする脅迫あるいは,前記有形力の行使をして反抗を著しく困難にする暴行にまで至らしめるものとはいえず,上記認定を左右するものではない。)。被告人は,Dが拒否的な態度を示しつつも,最終的には大きな抵抗もないことから,自己との性交を消極的ながら受け入れていたと誤信していた疑いは払拭できない。
第3 結論
  以上によれば,被告人の行為は,前日に知り合ったばかりの14歳の中学生に公道上に停めた自動車内で性交するという社会的には不相当な行為であり,人間として深く反省すべき点があるのは明らかであるが,刑法上の強姦罪の成否という観点からは,被告人がDに対してその反抗を著しく困難にする暴行を加えたとは認められず,また,強姦の故意があったとも認めることはできない。よって,結局本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。