児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

逮捕以来年齢不知の主張をしていたら、犯行日時が違うということで無罪になった事例(大阪地裁H14.12.13)

検察官の弁録では「第一・第二事実とも私の記憶では平成一二年一二月に入ってからで、第一事実と第二事実は一、二週間の間隔があった。年齢の点ですが、本人が一九歳だと言っており、私も容姿から一九歳だと思っていた。第一・第二事実とも性交したが、いずれの事実も金は渡していない。」と弁解してたのが、「本件の証拠関係の下では、被害者の年齢を一八歳未満と認識していたか否かの点はともかく、被告人が、平成一二年一一月中旬ころ対価を支払って被害者と一回目の性交渉を持ち、同年一二月上旬ころ同様に対価を支払って被害者と二回目の性交渉を持った、とそれぞれ認めることにはなお合理的な疑いが残るというべきである。」という結論になっています。

 「被告人は、平成一三年九月二五日午前八時ころ通勤するため自宅の玄関を出たところ、大阪府○○警察署の警察官らに声を掛けられ、捜索差押令状に基づき自宅と自動車の捜索が実施された後同警察署に任意同行された。そして、同日午後一時過ぎ通常逮捕され」というのも典型的な通常逮捕のパターンです。午後に来ることもあって、朝に限らないんですが、朝が多いですね。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
大阪地方裁判所
平成一四年一二月一三日第五刑事部判決
弁護人 秋田真志
       主   文

被告人は無罪。
       理   由

第一 公訴事実、弁護人の主張、争点等
一 本件公訴事実(変更後の訴因に従う。)は、「被告人は、第一 平成一二年一一月中旬ころ、○○市○○区○○町△番△号所在のホテルS客室において、H田Y美(昭和六一年九月一八日生、当時一四歳)が一八歳に満たない児童であることを知りながら、同児童に対し、対償として現金一万円を供与して、同児童と性交等をし、第二 同年一二月上旬ころ、上記ホテルS客室において、上記H田Y美が一八歳に満たない児童であることを知りながら、同児童に対し、対償として現金五〇〇〇円を供与して、同児童と性交等をし、もってそれぞれ児童買春をしたものである。」というものである(なお、検察官は懲役一年六月を求刑した。)。
二 これに対し、弁護人は、被告人の供述を受けて、次のとおり主張する。
 確かに、被告人が、二回にわたり、ホテルSで、本件の被害者とされるH田Y美(以下、便宜上単に「被害者」という。)と性交渉を持った事実はある。しかし、被告人が被害者と性交渉を持ったのは、平成一二年一二月四日未明にテレホンクラブ(以下「テレクラ」という。)で知り合ったことがきっかけであって、被害者が供述するような経緯、日時とはおよそ状況が異なるし、被告人が被害者を一八歳未満であると認識していた事実もなければ、性交渉を持つに当たって対価を支払った事実もなく、被告人は無罪である。
三 そうすると、本件の争点は、〔1〕二回にわたって性交渉を持ったのは、平成一二年一一月中旬ころと同年一二月上旬ころであったかどうか、〔2〕いずれの性交渉においても対価を支払ったかどうか、〔3〕被告人は被害者が一八歳未満であることを認識していたかどうか、ということになるが、争点に関する直接的な関係証拠(なお、以下においては、適宜、検察官及び弁護人請求の証拠番号を括弧内に引用して示すこともあるが、その場合、検察官請求証拠は甲乙の算用数字、弁護人請求証拠は弁の算用数字による。)は、被害者と被告人の各供述しかなく、各供述の信用性を慎重に吟味する必要があるのはいうまでもない。
四 ところで、弁護人は、本件公訴事実第二の事実は訴因が不特定でその公訴提起は無効であるとして、刑事訴訟法三三八条四号に基づいて公訴棄却の判決を求めているので、まずこの点を検討するに、後記のとおり被告人は被害者と二回にわたって性交渉を持った日付を平成一二年一二月四日及び同月一一日と特定して供述するところ、前記第二事実中の「一二月上旬ころ」との記載は一見すると被告人が特定する日をいずれも含み得るほど幅のあるものとなっているが、この第二事実につき検察官があくまで二回目の性交渉のみを対象としたもので初回のそれを含まない旨釈明(第一六回公判)しており(なお、検察官は、第一回公判で第一、第二の各犯行時刻を「午後二時ころ」と釈明するが、もともとその釈明事実は必要的なものではないので、釈明した内容が当然に訴因を構成するわけではない。)、法の要求する訴因特定の趣意に反するとはいえない。
第二 当裁判所の判断
一 被害者の供述要旨等
(一)公判供述の要旨
ア 主尋問(主として主尋問における供述要旨を掲げ、必要に応じて反対尋問等でのそれを付記する。)
 被告人の名前は「T人」と聞いた。初めて知り合ったのは、家出中(なお、その家出期間が平成一二年一一月一二日から二四日までであることは争いなく認められる。)である。家出はこれが初めてで、約三〇〇〇円を所持して家を出て、公園等で野宿をしていた(なお、野宿場所に関する証言は、弁護人の反対尋問で変転を繰り返した後、ようやく○○のCM内に落ち着いている。)。家出後所持金を使い果たし二日ほど飲まず食わずでいたところ(家出から自宅に戻る一週間くらい前)、○○で被告人に誘われた(なお、誘われた日につき、弁護人の反対尋問では、日にちは全然覚えていないが平日であった旨証言する。)。その際の自分の服装は、上がオレンジ色のフリース、下が革パンで、家出中に○○で買って着替えたものである。化粧は落ちており、家出中に化粧を直したり、風呂に入ったことはなかった。声を掛けてきた被告人が、名前を聞いてきたので「U」と答え、「年は二三歳やねん、年幾つなん」と言ってきたので、「一四歳やねん」と答えた。被告人からは年齢については特に反応がなく、「おれ美容師やねん」と言っていた。家出中であることも伝えた。その後、喫茶店「F」に入ったところ、隣に女子中学生が座っており、被告人から「Uの制服どんなんやった」「今度着たところ見せてな」と言われ自分の制服の話になったり、数学が苦手などと学校の勉強が話題になった。被告人が店内にあったナプキンのようなものに自分の携帯電話の番号をメモし、それを渡してきた。最初に声を掛けられた際に一四歳と言っていたが聞こえなかったかもしれないので、店内でも一四歳であることを話したが、被告人は聞かない振りをしているように感じた。二人で喫茶店を出てゲームセンターで一緒に遊んでから被告人と別れ、その日の寝床を探すなどしてぶらぶらしていると、「A美」という女の子と知り合って友達となり、○○にあるその家に泊めてもらうことになった。その夜、A美からプリペード式の携帯電話を譲ってもらい、深夜被告人に電話をして携帯電話の番号を教えた。被告人はおもしろく、優しいところがあったので「ちょっといいな」と思っていた。朝になって午前中もそのままA美の家にいると被告人から電話があり、その日の午後一時ころ○○で会う約束をした。A美の父から五〇〇〇円をもらい、化粧をしてA美の家を出た。○○のP前で落ち合った被告人から「行こうか」と言われたのでどこに行くか聞いたところ「分かっているやろう」みたいなことを言われ、セックスの経験はなかったし、ホテルに行ったこともなかったので嫌だなと思い、ちょっと拒むと、被告人から「好きやねん、後でええもの上げる」などと言われて,ホテルに行ってもいいかなという気持ちになった。ホテルの部屋の前で中に入るのを拒んだところ、被告人から「これ上げる。後でええもん上げるって言っていたやろう」と言われて壱万円札一枚を渡された(なお、被告人が壱万円札をどこから取出したかは見ていない〔反対・補充尋問〕。)ので、中に入った。タオルで手を後ろに縛られ、目隠しをされ、陰毛をそられた上で二回セックスをした。被告人から「普通恋人同士ならすることだ」と言われちょっと納得する感じになった。ホテルを出た後、被告人から「仕事や」と言われて別れた。もらった一万円はBという店で買い物をしたりして使った。家出をやめて自宅に戻ってからも被告人からは公衆電話で電話がかかってきたが、怖かったのでほとんど電話に出なかった。一二月四日ころにかかってきた被告人からの電話に出たところ、当日の午後零時過ぎに○○のP前で会うことになった。怖いという気持ちがある反面、いじめが原因で学校に余り通っていなかった(なお、反対尋問では、平成一二年の夏休み明けから不登校の状態にあったがその代わりに教育実習センターに通うようになった旨証言する。)自分を励ましてくれていたので好きな気持ちもあった。落ち合うと、被告人から「また行こうか」と言われ、ちょっと嫌だなと思いながらも一緒に行った。ホテルの部屋に入る前にちょっと拒むと、被告人が「これ拾ってん」と言いながらくしゃくしゃの五千円札一枚を渡してきた。このときは陰毛はそられなかったが、手を後ろに縛られ、目隠しをされたまま一回セックスをした。帰りにホテル代の不足分として自分の所持金から二〇〇〇円を出した。その後、借金の返済としてA美に二〇〇〇円、友達の母親に三〇〇〇円を持っていき、また、自分の貯金箱に入っていた二〇〇〇円を、お金に困っていた自分の母親に、生活費の趣旨で、彼氏からもらったと言って渡した。母親には被告人のことを優しくて励ましてくれる人と説明していた。その後も被告人から公衆電話や携帯電話で電話がかかっていたが、電話にはそれほど出なかった。電話に出たときに、被告人から「Uから性病を移された。五万貸してくれ」と言われた。平成一三年一月中旬ころに被告人から電話があり、最後に会ってはっきりと別れを言おうと思って会うことにした。母親に被告人と会う旨を伝えて夜中の午前二時ころ車で来た被告人と合流した。車内で一回セックスをし、被告人から「おれ性病やねん。」「援助交際して五万稼いでくれ」などと言われたりした後、別れ話をした。テレホンクラブを利用したことはない。
イ 反対尋問(主要部分に限って挙示する。)
 被告人と一回目に会ってセックスをして受け取った一万円のうち八九〇〇円くらいを文房具の買い物に使い、その日もう一度A美の家に戻って泊まった。自宅に帰るまでに何日かはA美の家に泊めてもらった。A美と最後に連絡を取ったのは平成一三年一月終わりくらいである。家出から自宅に帰った後もA美と一、二回会った。平成一二年一二月中に父親が怒って自分の携帯電話のメモリーを消去し、被告人の携帯電話の番号は用紙にメモしていたが、A美の携帯電話の番号はメモリーから消えて不明となった。A美の住所も分からない。 
(二)証拠調べ等の審理状況、供述経過・要旨
 検察官は、被害者の証人尋問の結果を受けて本件公訴事実第一に関する訴因を変更し(起訴事実は「対償の供与を約束して」という内容であったが、前記のとおり「対償として現金一万円を供与して」に変更された。)、その請求にかかる被害者の検察官・警察官調書をすべて撤回したため、罪体立証に供される被害者の供述は前記証言以外に存在しない。
 公判における証拠調べの状況や、捜査公判を通じての変転状況を踏まえた被害者の供述経過・要旨は、別紙に記載したとおりである。
二 被告人の供述要旨等
(一)逮捕勾留時の弁解経過
 逮捕勾留の際の弁解状況やその経過は、関係証拠(証人T上Y男、同N山T夫、甲三九、五二、乙一七〜一九等)上、次のとおりである。
 すなわち、被告人は、平成一三年九月二五日午前八時ころ通勤するため自宅の玄関を出たところ、大阪府○○警察署の警察官らに声を掛けられ、捜索差押令状に基づき自宅と自動車の捜索が実施された後同警察署に任意同行された。そして、同日午後一時過ぎ通常逮捕され、その弁解録取の際に、要旨「確かに、平成一二年末ころにRと言う名前の若い女の子と○○のラブホテルSで二回誘ってセックスをした。しかし、これは覚えている限りどちらも一二月のことであった。女の子と会った時は、若いな、高校在学中くらいの年かな、と思った。お金のことについては渡した覚えはない。弁護人を選任できることは分かりましたが、だれでもいいですからお願いします。」と述べ、翌二六日午後一時五五分ころ大阪地方検察庁で行われた弁解録取の際に、要旨「第一・第二事実とも私の記憶では平成一二年一二月に入ってからで、第一事実と第二事実は一、二週間の間隔があった。年齢の点ですが、本人が一九歳だと言っており、私も容姿から一九歳だと思っていた。第一・第二事実とも性交したが、いずれの事実も金は渡していない。」と述べ、その後大阪簡易裁判所令状係に勾留請求され、派遣依頼を受けて駆けつけた当番弁護士と同日午後三時ころから約一〇分間仮監で接見し(その際同弁護士を弁護人として選任)、引き続き行われた勾留質問では、検察庁の弁解録取のとおりである旨述べている。
(二)捜査公判における供述要旨
 その後も捜査公判を通じほぼ一貫して次のとおり供述(要旨)する。
 平成九年四月に結婚した妻と二人暮らしをしながら、平成一二年一〇月七日に化粧品卸会社(株式会社OK)に営業員として入社し、同年一一月初めころから直属の上司であったA田U郎と共に営業回りをするようになった。被害者と最初に会ったのは、平成一二年一二月四日の月曜日である。その前日の日曜日は前記A田のロックバンドの演奏を聴き終わってからA田夫婦らと夜の食事をして別れ、日が変わった四日午前零時過ぎころから二時間コースで入店した「KY」というテレクラで「R」と名乗る女性(被害者)と電話で話をした。彼女とは気が合い、テレクラで遊ぶときによく使っていた名前であるが、当時私が読んでいた漫画の主人公の「T人」と名乗り、二五歳か二六歳くらいの年齢で、職業は美容師と自己紹介した。彼女のほうは、年齢は一九歳、職業はフリーターで今は居酒屋でアルバイトをしていると言っていた。月曜日は仕事が休みであったことから会えるかどうか誘ってみると、会える旨の返事であったので相手の携帯電話の番号を教えてもらってテレクラ備付けのメモ紙に書き取った。その後自宅に帰って就寝し、その日の午前一一時ころ起きて彼女との約束を思い出して電話をかけ、午後一時過ぎころUHで彼女と初めてあった。彼女は、黒のミニスカート、紫色の上着、肩くらいの長さの茶髪、化粧をした容姿で、一九歳に見えた。当時の私の服装は、トレーナー様の上着、紺色ジーパンであった。彼女は会うなり腕を組んできた。喫茶店で雑談をして時間をつぶした後、「二人きりになりに行く?」とホテルに行くことを誘ったところ、彼女は嫌がる素振りもなく簡単にこの誘いに応じてくれた。内心ほっとしたが、すぐにホテルに直行するのは最初からそれが目当てと思われかねないので、偶然を装いながらホテルが所在する方向へ彼女を連れて行った。午後二時か二時三〇分ころ○○のラブホテルSに到着し、料金の一番安い部屋を選んでその中に入った。お互いに服を脱ぐなどしたが、彼女は上下とも黒の下着で陰毛は既にそられており、自ら風呂の用意をするなど手慣れた様子であった。一緒に風呂に入り、体を洗ってベッドに戻ると、二回セックスをした。セックスを終えた後、私は彼女が気に入り「つき合おうか」と言うと、彼女が照れたように「私でいいの」と聞いてくるなどし、私の携帯電話の番号を彼女に教えたところ、彼女は自身の携帯電話に登録していた。ホテルには二時間ほどいたが、金銭のことが話題になったことはないし、その授受も一切なかった。
 彼女と二回目に会ってセックスをした日は、一二月一一日の月曜日である。私の会社は基本的に日曜日と月曜日が休みとなっているが、月曜日は大概会社の得意先が出席する講習会(研修)が開かれており、一一日も自社でデミの商品の研修があったが午後三時ころには研修が終わったので彼女とセックスをしたいと考え、電話をかけて前回分かれた○○にある「Iの広場」で午後五時ころに会う約束をし、彼女と会った。その日は仕事に出ていたので服装は黒色の上下のスーツであった。前回同様ホテルSを利用するつもりでいたが、五時までに入ると割引サービスがあるのですぐにホテルに入ることを誘ったところ、彼女はごく普通に了解してくれた。前回よりも少し小さめの部屋を選び、風呂に入ってから一回セックスをした。彼女の下着は白のハイレグ風のパンツであった。セックスを終えた後、彼女から、兄弟が五人いる、昔は横浜で暮らしていた、両親が別居しており母親と暮らしている、一つ違いの妹が援助交際をしていることが親に知れて家族会議になった、自分も昔は援助交際をしていたなどの身の上話を聞いた。この日所持金が少なかったのでホテル代を割り勘にしてもらい、彼女から二〇〇〇円を受け取って会計の支払を済ませた。その際彼女は「お金がなかったらいつでも言って、援交して稼ぐから」などと言った。午後六時過ぎころホテルを出た。用事があるので帰らないといけない旨告げると、彼女が「終電まで一緒におれると思ったのに」と不満そうな様子だったので、いたずら電話、つまり会う気もないのにテレクラに電話をかけて男性を呼び出すという遊びで三〇分くらい時間をつぶしてから別れた。
 テレクラの電話で一九歳と聞いた後は年齢について一度も尋ねておらず、最初に会ってセックスした際、陰毛は既にそってあり、痛がったり出血することもなかったので処女とは思わなかった。入室をちゅうちょする素振りはなかった。セックスする際、相手に目隠ししたり、後ろ手に縛ったりしたこともない。
 性病の症状があったので、一二月二〇日にクリニックを受診し、もらった薬を飲んで治した。治療費が五万円であったが、所持金が二、三万円しかなかったので、一週間以内に支払う約束をしてその日は帰り、翌日から二五日くらいまでの間に当時付き合っていたホステス嬢から二万円くらいを借り受けて治療費を支払った。その間に電話で自分が性病にかかっているのでR(被害者)に移しているかもしれない旨伝えると、心配しないような口ぶりであった。
 仕事納めも済んで休みに入った一二月末ころの深夜、車を運転して彼女の住んでいる○○市内で彼女と落ち合い、車の中で、彼女が持っていたコンドームを受取ってセックスした。これまで彼女とは計三回セックスしたが、いずれも彼女に現金を渡したことはない。平成一三年一月に入ると彼女の父親と名乗る人物から電話がかかってくるようになり、留守番電話にするなどして無視していたが、余りにも執ようなものであったため一度だけ電話に出たところ、父親が「娘は中学生や。二人で会おうか」などと言ってきたので金目当てだと考えて会うのを拒否した。その後彼女から「お父さんから逃げて」「本当は中学生だったの、ごめんなさい」などのメールが送信された。彼女の父親らしき者から非通知の電話等が同年二月中旬ころまで続いたが、そのころ彼女から「もう安心して、ごめんなさい、さようなら」などのメールが届き、その後は音信が途絶えた。
三 各供述の信用性の検討
・・・・

四 検討の総括
 結局、知情に係る前記供述部分の信用性を肯定しこれを根拠に一八歳未満についての(未必的な意味も含めて)認識があったと断ずるかどうかは結論の別れ得るところであろうが、いずれにしても、争点ごとの検討内容から明らかなように、各争点に関する被害者証言の信用性を肯定するのは困難というほかない。
 さらに、被告人の供述については、知情に係る前期供述部分の信用性はさておき、初めて会った際に被害者が一九歳に見えた旨の認識部分を除いた弁解供述(前掲「捜査公判における供述要旨」)を排斥できないこともまた自明といえる。
 そうすると、本件の証拠関係の下では、被害者の年齢を一八歳未満と認識していたか否かの点はともかく、被告人が、平成一二年一一月中旬ころ対価を支払って被害者と一回目の性交渉を持ち、同年一二月上旬ころ同様に対価を支払って被害者と二回目の性交渉を持った、とそれぞれ認めることにはなお合理的な疑いが残るというべきである。
第三 結論
 したがって、本件公訴事実については、その証明が十分でなく、犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法三三六条により被告人に対し主文のとおり無罪の言渡しをする。

平成一三年一二月一三日
大阪地方裁判所第五刑事部
裁判官 本間敏広