児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

リベンジポルノの処罰に使えそうな文献

浦田検事「盗撮と名誉毀損罪」警察公論2003.2

島田聡一郎「インターネット上に専用掲示板を開設し、いわゆるアイドル・コラージュの投稿を呼びかけた者が、名誉棄損罪の共同正犯とされた事例」刑事法ジャーナル 2007 第9号

木村光代「盗撮と名誉毀損罪」現代刑事法63号P90

前田雅英罪刑法定主義と実質的構成要件解釈」現代刑事法31号P27
6 実質的解釈の限界……盗撮公表の名誉鍍損罪該当性について……
 言葉の可能な語義の範囲内でどこまでの処罰を認め得るのかという点で興味深い問題が起こってきている。
盗撮した内容を被害者が誰であるかわかる形で公表した場合に、名誉駿損罪を構成するのかという問題である。
従来の「名誉」の理解からは、構成要件該当性が否定されるようにも思われる。
便所内での排世行為や風呂場での裸体等を盗撮しそのビデオを販売したり、インターネットにアップロードする行為そのものについて名誉殻損罪に該当するとした公刊判例は見あたらない。
しかし、そのこと自体は、当該行為が名誉鍛損罪に該当しないということを示す根拠とは必ずしもならない。
 盗撮機材が巧妙化し、盗撮結果が広く販売されたりインターネットに載せられる事態は比較的新しいことだと言えよう(1)。
そして、現在の男女共同参画会議などの動きにも示されている「女性被害犯罪」を重視する国民の意識の中で、入浴中やトイレ内での、まさに「あられもない姿」を勝手に撮影して公衆に販売する行為は、強く非難されるべき破廉恥な行為とされていることに争いはない。
もとより、処罰の必要性が高くても、犯罪構成要件に該当しない以上処罰は絶対に許されないが、盗撮ビデオを多数に販売する行為は、刑法230条の名誉を毅損する行為に該当するとも考えられる。
刑法230条の名誉とは「被害者の人格の社会的・外部的評価」と解されている。
そこで、「裸体の画像を公衆の目にさらすことは、本人の差恥心を害し名誉感情をも害することは考えられるが、人格の社会的評価を害するとはいえない」という形式的な法解釈も成り立たないわけではない。
プライヴアシー侵害と名誉毅損は明確に区別すべきであり、裸の映像をばらまく行為は被害者の名誉(社会的評価)を庭めるものではないという主張も考えられないことはない。
しかし、通説が名誉の意義として用いてきた「人格の社会的・外部的評価」とは、本罪の保護法益の中核部分を説明するためのものであり、人格の社会的評価とは直接関係のない事実の摘示も、名誉毅損罪を構成する行為として処罰してきた。
プライヴァシーに属することが異論のない「異性関係」の摘示に関しても、刑法230条を適用してきたのである(2)。
名誉鍛損罪の保護法益は、人格の社会的評価を中心とするものの、それに限定されるわけではないのである。
さらに近時は、名誉鍛損罪に関し、「外部的名誉とともに被害者の名誉感情も保護の対象とされているというべき」との学説が有力化している(3)。
このような考え方によれば、若い女性の裸身を公衆が見得る状態におくことは、被害者の恥辱の感情を著しく害するものとして名誉殻損罪の保護法益を侵害することになる。
そして、個人の顔写真と他人の身体画像(わいせつ画像)を合成して摘示する行為については、裁判所も刑法230条を構成すると判示している(横浜地判平5年8月4日判タ831号244頁(4))。
学説上も、このような合成画像の摘示が名誉毅損罪を構成することには異論がない(5)。
性交などの写真と合成した場合には、一般人に「性的に淫らな者である」と誤信させるから、被害者の名誉を害すると考えられるかもしれない。
しかし、単なる他人の全裸写真と合成しても、名誉毅損罪は成立するであろう。
その場合、顔から推定される被害者が、白からのものと異なる身体的特徴を有すると誤信されるおそれがあるから、名誉が害されたことになるのではない。
例えば、トイレに入っている時の所為を撮影して顔を含め公表した行為を、「被害者の名誉を駿損した」と解釈しても、「名誉殻損」の日本語としての語義を無理に拡大したことにならない。
被害者の見せたくない姿態を映像で公表した場合も、当然名誉既存であろう。一般公衆、特に異性から見られないことが前提となっており、くつろいでいられるはずの風呂場を盗撮した画像を公開する行為も、名誉毀損罪を構成し得ると解すべきである。
新しい問題は、常に発生し続けている。
一方で現実に存在する刑罰法規は、特に日本の場合は固定的である。
そのギャップを埋めるために、可能な実質的解釈を認めていかざるを得ない。
しかし、その処罰は、国民の目から見て「意外」なものであってはならない。
さらに、国民の行動を萎縮させるようなものであってもならない。
そして、犯罪の発生直後は、処罰欲求がデフォルメされがちである。
その意味で、罪刑法定主義を重視することは、現在でも重要なのである。


 被害者が児童の場合については、実は児童については、承諾があって撮影された場合でも後日流出する危険性を考慮して、7条3項の製造罪が設けられていて、撮影行為=撮らせる行為も処罰されている。
 裏返せば、18歳以上の場合については、自己責任でということになる。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
P99
「姿態をとらせj とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しません。
他人に提供する目的を伴わない児童ポルノの製造であっても、児童に第2 条第3 項各号に掲げる(児童ポルノに骸当するような)姿態をとらせ、これを写真撮影等して児童ポルノを製造する行為については、これが、強制によるものでなくても、その児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を制出する点でも非難に値します。
児童の権利条約選択議定書においては、「製造」(producing) を犯罪化の対象としており、「製造j については、「所持」について目的要件を係らせているのとは異なり、目的のいかんにかかわらず、犯罪とじて処罰することを求めています。
そこで、複製を除き、児童に一定の姿態をとらせ、これを写真等に描写し、よって児童ポルノを製造する行為については処罰する規定を新設したものです。
なお、既に存在する児童ポルノを複製する行為それ自体は、全く新たに製造する場合に比べて、児童の心身に与える影響の程度に差異がある上、電子データを他の記録媒体に複写する行為など容易に行うことができ、むしろ他人に提供する目的を伴わない児童ポルノの所持との均衡を考慮すれば、犯罪として処罰することが求められているとまでは必ずしもいえないと考えられることから処罰の対象とはしていません。
「製造」 とは、児童ポルノを作成することをいいますが、第3項では、「児童に第2 条第3 項各号のいずれかに拘げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより」との手段の限定がありますので、複製は除外されます。。0) 「第1 項とと同様とする」 とは、第3 項の法定刑は、第l 項前段と同様に、3 年以下の懲役又は30 万円以下の罰金だということです。
第7 条第3 項の罪は、児童に第2 条第3 唄各号に掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写して当該児童に係る児童ポルノを製造する行為について、描与される児童の尊厳を害することにかんがみ、新たに処罰の対象とするものです。
この場合において、たとえ描写される児童が当該製造について同意していたとしても、当該児童の尊厳が害されていることは否定できず、また、児童を性的行為の対象とする風潮が助長され、抽象的一般的な児童の人格権が害されるといえますので、第7 条第3 項の罪が成立します。
もっとも、ごくごく例外的に児童と真撃な交際をしている者が、児童の承諾のもとでその楳体の写真を撮影する等、児童の承諾があり、かつこの承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には、違法性が阻却、犯罪が成立しない場合もあり得ます

P197
Q47 児童ポルノの製造については、どのような場合が処罰されるのですか。
A
児童ポルノの製造については、2 つの面から処罰の規定を置いています。
まずーっ目は、児童に児童ポルノの姿態をとらせ、これを写真撮影等して児童ポルノを製造する行為についてです。この場合、行為者がどのような目的であっても(他人に提供等する日的がなくても)、処罰されることになります(第7 条第3 項)。
このような行為は、当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を創出する点でも非難に値するので、2004 年の改正で、このような行為について処罰する風定を新設しました。
これは、児童に第2 条第3項各号に掲げる姿態をとらせた上、これを写真等に描写し、よって当該児童についての児童ポルノを製造する行為が、児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為に他ならないことから、これを処罰するものであり、第一次的には描写対象となる児童の人格権を守ろうとするものです。
加えて、ひとたび児童ポルノが製造された場合には、流通の可能性が新たに生ずることとなり、このような場合には児童を性的行為の対象とする社会的風潮が助長されることになるので、このような意味において、抽象的一般的な児童の人格権もその保護の対象とするものです。
なお、ここにいう「姿態をとらせ」 とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しません

P199
Q48
被写体となる児童が児童ポルノの製造に同意していたとしでも、第7 条第3 項の罪は成立するのですか。目的を問わず、児童ポルノの製造(いわゆる単純製造)を処罰することにすると、交際中の高校生どうしが相手の裸体の写真を撮影する行為まで処罰されることになってしまいませんか。
A
第7 条第3 項の罪は、児童に第2 条第3 項各号に規定する姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写してその児童についての児童ポルノを製造する行為について、その児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を創出する点でも非難に値するので、新たに処罰の対象とするものです。
この場合において、たとえ捕写される児童がその製造について同意していたとしても、その児童の尊厳が害されているといえますし、そもそも、この児童の同意は、この児童の判断能力が未成熟なことに基づくものであると考えられますので、当罰性が認められ、第7 条第3項の罪が成立すると解されます。
お示しの事例のように、児童が、真撃な交際をする相手による写真撮影を承諾する場合のように、製造者と描写される児童との関係、描写される児童の承諾の有無及びその経緯(社会的相当性)等から、刑法上の違法性が認められない等の理由により、犯罪が成立しない場合もあると考えられます。
このことは、法案の中で具体的な文言として明記されているものではありませんが、刑法の一般理論によって犯罪が成立しないとされる問題です。つまり、児童ポルノに限らず他の刑罰規定に関して犯罪が成立しない事由を具体的な文言として明記されていなくても、刑法の一般理論によって犯罪が成立しない場合があります。この点、犯罪が成立しない個々具体的な場合を明記することは困難であり、また実際的でもありません。したがって、ことさら犯罪が成立しない場合を明記しなくても、刑法上の違法性が認められない等との理由により犯罪が成立しないとの解釈が当然に導かれると考えています。


追記 2013年10月24日
 法務大臣の答弁も同様になっています。
 現行法で対応できない点を指摘しないと動かないと思います

http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/23/revange-porno_n_4152793.html
「リベンジポルノ、現行法で対応できる」谷垣法相
か?
櫻井議員と谷垣法相の詳しいやり取りは以下の通り。

櫻井議員:カリフォルニア州で、離婚した元配偶者とか別れた恋人の裸の写真をネットに掲載する「リベンジポルノ」という嫌がらせがあるらいしいんですが、こういった物を非合法化、もしくは罰則規定をきちんと設けた上で規制をしてきたということなんです。今の日本の環境を考えていくと、こういった規制をかけていくべきではないかと思いますが、この点についていかがでしょうか?

谷垣法相:いわゆるリベンジポルノとかサイバーリベンジとか呼ばれるのが、最近しばしば見受けられます。我が国の現在の法制でも、ある程度想定される事案は大体、処理できることはできるんです。たとえば、具体例は私の立場から申し上げにくいですが、公然事実の摘示があれば名誉毀損罪が適用できます。それから被害者が18歳未満であれば、児童ポルノ禁止法が適用される可能性がございますね。刑法175条のわいせつ物に関する罪も数年前に電磁的記録が適用できるように改正させていただきましたので、これも使える可能性が高い。だから、かなりの部分は覆われていると思います。そうしますと、今の法体制で何が足りないのか、あるいは今起こってきているこういう犯罪の中で、今の考え方と違う体系で処罰することがあるのか。それを支える立法事実は何なのかというについては、まだ私どもも十分に情報がございません。したがって、そのあたりについてはしっかり調査する必要があって、そういった前提のもとで、慎重に考えていく必要があるのではないかと考えております。

櫻井議員:はい、ありがとうございます。確かに名誉毀損なら名誉毀損で訴えられるんだろうとは思います。ただ、その画像がすでに(ネットに)出てしまっていて、取り返しのつかないことになっていると思います。私も娘を持つ父親からすれば、「(三鷹市の事件のような)こんなことをやられてしまったら、本当にたまらないな」と。皆さん、同じ思いではないんでしょうか。こうしたことに規制をかけていくことの方が大事かと思いますが、改めて前向きなご答弁をいただければと思います。

谷垣法相:確かに今までの事態と違う部分があるのだと思います。ただ、ことは刑事規制に関わる問題ですから、その可能性はあまり安直に考えてはいけないんで。しっかり支える立法事実を私も調査したいと思っております。

櫻井議員:「安直に考えられない」ってどういうことですか?もっと前向きに(答弁を)いただけると思ってたんですが。

谷垣法相:安直に考えているわけではありません。今の日本の刑事法体系でも……私もブレーンストーミングしてみたんだけど、かなりの部分はこれでできます。これで、できないところを探すのは、むしろ難しいくらいです。もう一つ、先ほどカリフォルニアの例をおっしゃいました。カリフォルニアと日本の法定刑を比べてみると、むしろ日本の法定刑の方が厳しくなっているように私は思います。そういう前提がある上で、あと何をすべきかと。私も後ろ向きであるわけではありません。私も娘を持つ人間として、桜井さんのおっしゃることはよく分かります。で、また個別的事件を言ってはいけませんが、まことに卑劣で痛ましい事件だったと思っております。従いまして、その気持ちのもとで、今、何が起こっているのか私どももキチっと考えてみたいと思います。

櫻井議員:ありがとうございます。やはり終わってから何か措置するという、そういうことができないように。それから被害者の方が相当増えてきているのでご検討いただきたいと思います。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013102400425
古屋圭司国家公安委員長は24日午前の参院予算委員会で、元交際相手のプライベートな写真や動画をネット上に掲載する「リベンジポルノ」への対応について、「米国では一部の州で規制しているが、日本の場合はわいせつ物陳列罪や名誉毀損(きそん)罪で対応できる」と述べ、現行法で対処する考えを示した。
 その上で、「被害者の救済が第一だ。積極的な取り締まりやサイト管理者への削除要請で保護に当たることが大切だ」と強調した。公明党の魚住裕一郎氏への答弁

追記 2013/11/02
 三原先生に「名誉毀損罪・公然陳列罪の既遂時期は、upした時点(誰かが閲覧する前)だ」って教えてあげて下さい。
 三原先生に言わせれば「こんな卑劣な犯罪を許してしまう日本社会」ですが、現行法でもいろいろ犯罪になります。
 児童の場合の3項製造罪の対比からいえば、現行法で対応してないのは、陳列等の目的がないわいせつ画像(非児童ポルノ)の製造罪とか所持罪いうことになると思うので、三原先生は、是非そこを追求してください。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20131102/plt1311021449000-n1.htm
自民党三原じゅん子女性局長が、この問題に取り組み始めた。
 「女性が一番見られたくない姿を流すなんて、絶対に許せない。リベンジポルノの被害は予想以上に多い。泣き寝入りの事例も含めると、かなりの数になると思います」
 三原氏は怒りに声を震わせる。三鷹市の犯人は殺害後に映像を流しており、女子高生の命だけでなく、名誉まで傷つける悪質さだ。
 現行法では、わいせつ物頒布罪や名誉棄損罪、被害者が18歳未満の場合は児童ポルノ禁止法違反などによる対処となるが、三原氏は「新たな法整備が必要です」といい、こう続ける。
 「ネット犯罪の恐ろしさは、繰り返してコピーされることです。加害者が無制限に増えていく。既存の法律を適用するだけでは抑止効果は十分とはいえません。例えば、映像のアップロードだけで処罰できるように、法規制すべきでしょう」
 米カリフォルニア州では、写った人の同意なく個人的な写真を散布することを禁じる法律があるという。日本でも今年、ストーカー規制法が改正され、迷惑メールを繰り返し送ることを「つきまとい行為」の対象に加えるなど、少しずつ法整備は進んでいる。
 ただ、限界がある。
 三原氏は「法律をきめ細かくしても、すべては書き込めません。まず、自分の恥ずかしい写真や映像を、安易に他人に渡さないでほしい。好きな相手の要求だとしても、冷静になって考えるべきです。そして、こんな卑劣な犯罪を許してしまう日本社会を変えたい。『他人が嫌がることをしない』という風潮をもっと広めていきたい」と語っている。 


国会の会議録

第185回国会 予算委員会 第1号
平成二十五年十月二十三日(水曜日)
   午前八時五十五分開会
○櫻井充君 
 済みません、時間がなくなりましたので、最後に一つ。
 これは、カリフォルニア州でこういうことになったらしいんですが、離婚した元配偶者とか、それから別れた恋人の裸の写真をインターネット上に流出させる、いわゆるリベンジポルノと言われる嫌がらせがあるんだそうですが、こういったものを非合法化した、つまり罰則規定をきちんと設けた上で規制をしてきたということなんです。
 今の日本の環境を考えてくると、こういった規制を掛けていくべきではないのかと思いますが、この点についていかがでしょうか。
国務大臣谷垣禎一君) いわゆるリベンジポルノとかあるいはサイバーリベンジと言われるものがこのごろしばしば見受けられるようでございます。
 これ、我が国の現在の法制でも、ある程度想定される事案は大体処理はできることはできるんです。例えば、今、具体例は私の立場から申し上げにくいですが、公然事実の摘示があれば名誉毀損罪が適用できます。それから、被害者が十八歳未満であれば児童ポルノ禁止法が適用される可能性がございますね。それから、刑法百七十五条、つまりわいせつ物に関する罪も、数年前に電磁的記録が適用できるように改正していただきましたので、これも使える可能性が高い。だから、かなりの部分は覆われていると思います。
 そうしますと、それ以外、その今の法体制で何が足らないのか、あるいは今起こってきているこういう犯罪の中で今までの考え方と違う体系で処罰する必要があるのか、それを支える立法事実は何なのかということについては、まだ私どもも十分に情報がございません。したがって、その辺りについてはしっかり調査をする必要があって、そういった前提の下で慎重に考えていく必要があるのではないかと考えております。
○櫻井充君 ありがとうございます。
 確かに例えば名誉毀損なら名誉毀損で訴えられるんだろうとは思います。しかし、その画像はもう既に出てしまっていて取り返しの付かないことになっていると思っています。私も娘を持つ父親からすれば、こんなことをやられてしまったら本当たまらないなと。これは多分皆さん同じ思いなんじゃないかと思っていて、こういったところに対してきちんとした規制を掛けていくことの方が大事ではないかと思いますが、改めて前向きな御答弁いただければと思います。
国務大臣谷垣禎一君) 確かに今までの事態と違う部分があるのかもしれません。ただ、事は刑事規制に関する問題ですから、その必要性は余り安直に考えてはいけないんで、しっかり支える立法事実を私も調査したいと思っております。
○櫻井充君 安直に考えられないってどういうことですか。
 いや、ちょっと私は、だからもう少し前向きにいただけるのかと思ったんですが。
国務大臣谷垣禎一君) 安直に考えているわけではありません。今の刑法体系、日本の刑事法体系でも、ちょっと私いろいろブレーンストーミングしてみますと、かなりの部分はこれでできます。できないところを探すのはむしろ難しいぐらいです。
 それからもう一つ、今カリフォルニアの例をおっしゃいました。カリフォルニアの法定刑と日本の法定刑を比べてみますと、むしろ日本の法定刑の方が厳しくなっているように私は思います。
 そういう前提がある上で、あと何をすればいいのかということは、私別に後ろ向きでいるわけじゃありません。私も娘を持つ人間として、櫻井さんのおっしゃることはよく分かります。また、個別的事件を言ってはいけませんが、誠に卑劣な事件であり、痛ましい事件であったと私は思っております。
 したがいまして、そういう気持ちの下で、今何が起こっているのかきちっと私どもも考えてみたいと思っております。
○櫻井充君 ありがとうございます。
 やはり、終わってから何か処置するということではなくて、そういうことができないように、それから、被害者の方々が相当増えてきていますので御検討いただきたいと思います。
 経済対策を中心に今日は質問させていただきました。お願いは、我々も別に何かを邪魔しようなどということは全く思っていなくて、経済を良くしていかなきゃいけないとか、それから社会保障を維持していかなきゃいけないということについては全く同じ立場に立っております。
 ただ、今回申し上げたかったのは何かというと……(発言する者あり)
○委員長(山崎力君) お静かに願います。
○櫻井充君 やはり副作用が強い政策だと私は思っておりますので、その副作用についてきちんきちんとチェックをしていただいて、それをいかに早く対処していくのかということが極めて大切なことだと思っておりますので、我々はそういったことについてもこれからきちんとした形でチェックさせていただくということを申し上げまして、質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
○委員長(山崎力君) 以上で吉川沙織君の質疑は終了いたしました。(拍手)

魚住議員も聞いただけで、規制すべき点を指摘できていません。

[001/005] 185 - 参 - 予算委員会 - 2号
平成25年10月24日
○魚住裕一郎君 どうぞよろしくお願いをします。
 続いて、ストーカーに関連して質問をさせていただきます。
 今月の八日、三鷹トーカー殺人事件が発生しました。衝撃でした。この六月にストーカー規制法改正をやったばかりですね。これは付きまとい行為にメールを入れたり、あるいは駆け込める警察も増やして、もっともっとしっかり警察で対応していただけるように、今までの事案を検証すると余りにも警察の初動の鈍さということが目立っていたわけでございまして、被害者を守るためにも積極的な姿勢でやっていただきたい、こういうことで改正になったわけでございますが、全面施行がこの十月の三日ですか、それで五日ですから、だけど、その施行のために準備をしっかりしていただいていたのではないのか。
 それにしても、テレビでも報道していましたね、あの兵庫県警のずっと取組。例えば相談に来た場合、同性の警察官が対応する、一対一で。今回のこの三鷹の件は御両親同席で、話できないじゃありませんか。そういうようなノウハウもなかったのかと、この東京においては。あるいは、ストーカー行為のチェック表まで兵庫県警あったわけでございますが、この危険性のチェックを客観性を持ってしっかり判断していこう。危ないときには避難しなきゃいけないわけですね。ところが、今回はそうはいかなかった。それで、警察に行った後、数時間でこの事件が発生になってしまった。
 施行になったばかりでございますけれども、徹底した警察において検証をしていただきたいし、その際、警察の内部だけではなくして第三者も含めて被害者保護の観点から徹底的にこの検証を行うべきであると思いますが、当局の御説明をいただきたいと思います。

国務大臣古屋圭司君) 今回の三鷹トーカー事件、本当にショッキングな事件でございました。被害者の御冥福をお祈りします。また、御家族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げます。
 その上で、今委員御指摘の第三者による検証ということで、実は来月一日から、ストーカー行為等の規制の在り方に関する有識者検討会、これを立ち上げます。ここで幅広く検討をしていただきます。そして、今後、この事件を教訓に、二度とこういうことが起こらないよう、被害者の安全確保、万全を期するように警察を督励をしてまいりたいというふうに思っております。

○魚住裕一郎君 このストーカーとちょっと離れますけれども、昨日も質問に出ておりましたけれども、最近リベンジポルノというのが、法務大臣にお聞きしようとは思っておりませんけれども、実際に投稿されてしまってどうやって消すのか、これにつきまして、また、もちろん表現の自由ということもあると思いますけれども、公安委員長とそれから総務大臣にお聞きしたいと思います。

国務大臣古屋圭司君) いわゆるリベンジポルノでございますけれども、これはアメリカで一部の州で規制していますけれども、日本の場合は、やはり成人の場合はわいせつ物陳列罪とか名誉毀損で対応することができますので、必ずしもこういったものの規制というものは、事情が違うということですね。
 まず何といっても、今申し上げましたように、やっぱり被害者の救済を第一にするということが大切です。そのために、違法情報とか有害情報、これはネットを通じてありますので、この積極的な取締りとか、あるいはサイトの管理者に削除の徹底要請、こういったことをして、やはり保護に当たっていくということが極めて大切だというふうに思います。しっかり警察を督励してまいりたいと思います。

国務大臣新藤義孝君) このリベンジポルノも含まれますいわゆる違法・有害情報、こういった対策につきましては、ただいま委員が御指摘いただきましたように憲法との問題もございます。表現の自由の保障と、こういった関係も踏まえた上で民間における自主的な取組というものが今推進されているわけです。
 特に、違法情報につきましては民間団体においてガイドラインを作って、削除できる場合、そういったものをきちんと明確にしているということです。それから、有害情報につきましても、これまた契約の約款モデルの条項というものを作りまして、トラブルが起きたときには速やかに対応ができるようにと。
 また、総務省としても、違法・有害情報相談センターというものを設置、運営いたしまして、我々とすればできる限りの取組、また民間への取組を支援させていただいていると、こういう状態でございます。
○魚住裕一郎君 終わります。ありがとうございました。