児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「みだらな行為?」被告名伏せ公判、宇都宮地裁 児福法違反事件の元教諭

 佐賀地裁H23.8.16に児童淫行罪の前例があるが、結局、教員免状の失効公告で実名が公表されたので実効性は疑わしい。
 現時点で官報に氏名が載りました。

論説 被害者、被告の匿名化 ルール作りの議論を 
2013.08.08 佐賀新聞
 性犯罪事件などで検察が被害者の実名を伏せて起訴するケースが相次いでいる。被害者の特定や加害者からの再度の被害を防ぐためだが、情報が過度に秘匿されると被告の「防御権」という権利を保障する点で問題も起きる。裁判官の対処もばらついている。一定のルールが必要ではないか。
〈分かれる判断〉
 東京地検はこのほど、女児が見知らぬ男に公園のトイレに連れ込まれた強制わいせつ事件の起訴状で被害者を匿名にした。これに対し、東京地裁は起訴内容の特定が不十分として、氏名の明記を求めた。地検は対応を検討しているが、このままだと公訴が棄却される可能性もある。
 地検の判断は被害者保護に軸足を置いたものだ。親の要望に加え、女児と面識もない被告に氏名を明らかにして、二次被害の可能性を残す必要はないと考えたのだろう。
 一方、地裁は被告の権利を重視した。被告には検察の攻撃(主張)から身を守る「防御権」があるが、それを保障するには主張の詳細が特定されていなければならない。
 秘匿する内容は違うが、佐賀では2年前、教え子の女子生徒にみだらな行為をしたとして、高校教諭が児童福祉法違反の罪に問われた裁判で、被告の実名が伏せられた。佐賀地検は被告の氏名から被害者が特定されることを懸念。佐賀地裁に関係者の氏名や犯行時期、現場の学校名なども含めて秘匿事項とすることを申し入れ、認められた。
 ただ、控訴審福岡高裁は被告の実名と住所を秘匿事項から外した。裁判所によって判断が分かれた。

 根拠条文は299条の3。
 起訴状とか証拠では隠されていなくて、法廷で読まないという話なので、裁判公開の要請と対立するが、ここでごねても益無し。ごねたことあるけど。

刑訴法第299条の3〔被害者等特定事項の秘匿措置〕
検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/130822/tcg13082215490004-n2.htm
また、県教委は今月、元教諭を懲戒免職処分にした。
 ◇
 21日に初公判があった元宇都宮市立中学校教諭の男(32)の児童福祉法違反事件に関して、宇都宮地裁は法廷で被告の氏名を明らかにしない決定をした。同地裁は「過去に同様のケースがあったかは統計を取っていないため分からない」としているが、少年事件を除く公判で被害者の氏名だけでなく、被告の氏名まで伏せるのは異例だ。

 初公判では、冒頭で水上周裁判官が元教諭らに対して「被害者保護のため、被害者の特定につながる事項を明らかにしない決定が出ている」と説明。冒頭陳述や被告人質問が進められる前に「被害者が特定されることを口にしないよう注意してください」と呼びかけた。通常、口頭で確認する被告の氏名や住所については傍聴人に分からないように書面で示して「間違いありませんか」「間違いありません」とやり取り。被害者を「被害児童」、元教諭が勤めていた中学校を「A中学校」とするなど呼称も統一された。
 この裁判に関して、栃木県司法記者クラブは、宇都宮地裁に対し、被告の氏名を匿名とする例外を認めた理由を説明するよう要望したが、地裁は「被告の名前は被害者特定につながる事項であると、裁判官が判断したものと推察されるが、事務局(地裁総務課)として判断の理由を把握していない」と回答した。