児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

小学生に「パンツ脱げば100点」 寺のゲームで全裸に

 「わいせつ行為」= いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、その露骨な行為によって社会通念上性的に蓋恥嫌悪の情を及ぼす行為とすると、保護者が抗議することを考慮すると、わいせつ行為でしょうね。
 通説や八日市場支部の性的傾向不要説によれば、告訴されれば強制わいせつ罪(176条後段)でしょうし、告訴無くても青少年条例違反(わいせつ行為)
 大分県警がこれを看過するのであれば、次から、13歳未満にパンツ脱がせた事件は強制わいせつ罪(176条後段)・青少年条例違反に当たらないと主張しますよ。

http://digital.asahi.com/articles/SEB201307290071.html
小学生に「パンツ脱げば100点」 寺のゲームで全裸に
 大分県津久見市の寺が開いた小学生向けの合宿で、パンツを脱げば高得点を与えるルールのゲームをしていた。男女合わせて約20人が全裸になったという。保護者の抗議を受けて寺は27日に説明会を開き、謝罪した。取材に「子どもは喜んでいると思っていた。認識が甘かったと反省している」と話している。
 合宿は22〜23日の1泊2日。寺を母体とする学校法人が運営する幼稚園の卒園生が対象で、1〜5年生59人が参加した。
 寺の説明によると、本堂で班対抗のゲームをし、その一つに、服やベルト、ハンカチなどをつなぎ合わせて、その長さで得点を競うものがあった。パンツを脱げば男児に100点、女児に200点を与えるルールで、パンツを脱いだ全員に紙製の金メダルを贈った。寺が確認しただけでも21人が全裸になったという。
 幼稚園の教諭らが運営にかかわり、全裸になった子にはすぐ新聞紙を体に巻かせて隠したが、5分程度は新聞紙に身を包んだ状態だった。ほとんどが1〜2年生で、3年生以上の女児ではいなかった。寺は「恥ずかしがって脱がない子もいた。強制はしていない」と説明している。
 寺の住職は取材に「盛り上がるので20年ほど前から続けており、全く違和感なくやらせてしまった。子どもは喜んでいると思っていたが、保護者にいやな思いをさせ申し訳ない」と話した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130730-OYT1T00657.htm?from=main6
大分県津久見市の寺が開いた小学生対象の合宿で、脱いだ服の長さを競うゲームが行われ、男女約20人が全裸になっていたことが30日、寺への取材で分かった。
 寺側は抗議を受けて保護者に謝罪。住職は「約20年前から行っており、子供は喜んでいると思っていたが、配慮が足りなかった」と話している。
 住職によると、合宿は22、23日に行われ、住職が園長を務める幼稚園の卒園児を中心に1〜5年生の約60人が参加した。問題となったのは班対抗のゲーム。身に着けているものを脱いだり外したりしてつなげ、長さを競うルールで行われ、1〜4年の約20人が下着も脱ぎ全裸になったという。
 幼稚園の教諭らもボランティアで運営に関わり、全裸になった児童には新聞紙で体を隠させた。来年から、このゲームは取りやめ、合宿自体についても継続するか検討するという。
(2013年7月30日13時45分 読売新聞)

http://www.pref.oita.jp/10400/advice/bosyu/h17/ikusei/data/jyourei.pdf
青少年の健全な育成に関する条例
(昭和41年大分県条例第40号)
(定義)
第3条
1この条例で「青少年」とは、小学校就学の始期から満十八歳に達するまでの者 (他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除く )。 をいう。
(いん行又はわいせつ行為の禁止)
第37条
1何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつ行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、見せ、又は聞かせてはならない。
(罰則)
第47条 第37条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以 下の罰金に処する。

青少年のための環境浄化に関する条例解説書
〔解説〕
1 本条は、青少年を相手とする売買春行為等、青少年の福祉を害する行為の防止を図る規定である。
2 「いん行」とは、社会通念上不純とされる性行為をいい、結婚を前提としない欲望を満たすためにのみ行う性行為がこれに当たる。
3 「わいせつ行為j」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、その露骨な行為によって社会通念上性的に蓋恥嫌悪の情を及ぼす行為をいう0
4 「教え」とは、当該行為の方法ゃ解説等を写真やビデオ等によって、直接具体的に教示することをいい、単なるわい談の一般的な教示は含まない。
5 「見せ」とは、自己又は他人のいん行又はわいせつ行為を直接青少年に見せることをいい、写真やビデオ等によって間接的に見せることは、本条でいう「見せるjには当たらない。しかし、「教え」に該当する場合がある。
6 「聞かせ」とは、いん行又はわいせつ行為の音声を直接青少年に聞かせることをいい、いわゆる盗聴器を使って聞かせることも含まれる。


 判例によれば性的傾向が必要なので、伝統行事の場合は、強制わいせつ罪(176条後段)は成立しにくいと思われます。

強制わいせつ被告事件
最高裁判所第1小法廷判決昭和45年1月29日
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集24巻1号1頁
       最高裁判所裁判集刑事175号57頁
       判例タイムズ244号230頁
       判例時報583号88頁
【評釈論文】 警察学論集23巻8号132頁
       警察研究42巻6号121頁
       研修263号61頁
       別冊ジュリスト58号110頁
       別冊ジュリスト83号36頁
       別冊ジュリスト117号32頁
       捜査研究38巻4号81頁
       法学研究(慶応大)45巻10号132頁
       法曹時報22巻4号142頁
       法律のひろば23巻6号41頁

       主   文

 原判決を破棄する。
 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

       理   由

 弁護人塩谷千冬の上告趣意中判例違反をいう点は、所論引用の判決は性欲の刺戟興奮以外の目的で婦女に暴行脅迫を加え裸体写真を撮つた行為が強制わいせつの罪を構成するか否かについては何ら判示していないから、本件に適切でなく、所論は不適法であり、その余の論旨及び弁護人高橋良祐の上告趣意は、いづれも単なる法令違反の主張で適法な上告理由にあたらない。
 しかし、職権により調査するに、刑法一七六条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには、その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し、婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であつても、これが専らその婦女に報復し、または、これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しないものというべきである。本件第一審判決は、被告人は、内妻Aが本件被害者Bの手引により東京方面に逃げたものと信じ、これを詰問すべく判示日時、判示アパート内の自室にBを呼び出し、同所で右Aと共にBに対し「よくも俺を騙したな、俺は東京の病院に行つていたけれど何もかも捨ててあんたに仕返しに来た。硫酸もある。お前の顔に硫酸をかければ醜くなる。」 ……と申し向けるなどして、約二時間にわたり右Bを脅迫し、同女が許しを請うのに対し同女の裸体写真を撮つてその仕返しをしようと考え、「五分間裸で立つておれ。」と申し向け、畏怖している同女をして裸体にさせてこれを写真撮影したとの事実を認定し、これを刑法一七六条前段の強制わいせつ罪にあたると判示し、弁護入の主張に対し、「成程本件は前記判示のとおり報復の目的で行われたものであることが認められるが、強制わいせつ罪の被害法益は、相手の性的自由であり、同罪はこれの侵害を処罰する趣旨である点に鑑みれば、行為者の性欲を興奮、刺戟、満足させる目的に出たことを要する所謂目的犯と解すべきではなく、報復、侮辱のためになされても同罪が成立するものと解するのが相当である」旨判示しているのである。そして、右判決に対する控訴審たる原審の判決もまた、弁護人の法令適用の誤りをいう論旨に対し、「報復侮辱の手段とはいえ、本件のような裸体写真の撮影を行なつた被告人に、その性欲を刺戟興奮させる意図が全くなかつたとは俄かに断定し難いものがあるのみならず、たとえかかる目的意思がなかつたとしても本罪が成立することは、原判決がその理由中に説示するとおりであるから、論旨は採用することができない。」と判示して、第一審判決の前示判断を是認しているのである。
 してみれば、性欲を刺戟興奮させ、または満足させる等の性的意図がなくても強制わいせつ罪が成立するとした第一審判決および原判決は、ともに刑法一七六条の解釈適用を誤つたものである。
 もつとも、年若い婦女(本件被害者は本件当時二三年であつた)を脅迫して裸体にさせることは、性欲の刺戟、興奮等性的意図に出ることが多いと考えられるので、本件の場合においても、審理を尽くせば、報復の意図のほかに右性的意図の存在も認められるかもしれない。しかし、第一審判決は、報復の意図に出た事実だけを認定し、右性的意図の存したことは認定していないし、また、自己の内妻と共同してその面前で他の婦女を裸体にし、単にその立つているところを写真に撮影した本件のような行為は、その行為自体が直ちに行為者に前記性的意図の存することを示すものともいえないのである。しかるに、控訴審たる原審判決は、前記の如く「報復侮辱の手段とはいえ、本件のような裸体写真の撮影を行つた被告人に、その性欲を刺戟興奮させる意図が全くなかつたとは俄かに断定し難いものがある」と判示しているけれども、何ら証拠を示していないし、また右意図の存在を認める理由を説示していないのみならず、他の弁護人の論旨に対し本件第一審判決には、事実誤認はないと判示し控訴を棄却しているのであるから、原判決は、本件被告人に報復の手段とする意図のほかに、性欲を刺戟興奮させる意図の存した事実を認定したものでないこと明らかである。してみれば、原判決は、強制わいせつ罪の成否に関する第一審判決の判断を是認し維持したものといわなければならない。
 要するに、原判決には刑法一七六条の解釈適用を誤つた違法があり、判決の結果に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
 そして、第一審判決の確定した事実は強制わいせつ罪にはあたらないとしても、所要の訴訟手続を踏めば他の罪に問い得ることも考えられ、また原判決の示唆するごとく、もし被告人に前記性的意図の存したことが証明されれば、被告人を強制わいせつ罪によつて処断することもできる次第であるから、さらにこれらの点につき審理させるため刑訴法四一一条一号四一三条により原判決を破棄し、本件を原裁判所に差し戻すべきものとする。