児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「東御市で発生した前記2事件は、閲覧可能な刑事確定記録、公表された長野県教育委員会の懲戒処分一覧及び新聞報道から読み取れる事実によれば、中学校教師若しくは高校教師とその教え子という関係を背景に事実上の影響力を及ぼして児童に淫行をさせたと評価しうる事案であって、東御市青少年健全育成条例の淫行処罰規定でなく、児童福祉法上の児童淫行罪による立件も可能であった」長野県弁護士会会長声明

 児童淫行罪だと実刑になっちゃうわけですが、中学教諭の事件は、元教え子の高校生に対する淫行なので、児童淫行罪は無理だと思います。高校教諭の事件は現教え子の事件でした。淫行事件が少ないので、詳しい弁護士も居ないんだ
 
 17歳と15歳のカップルが淫行していたとして、2年経つと、19歳と17歳になって、19歳が検挙されるというのもおかしいね。
 婚姻前提だと淫行にならないのだが、婚姻前提に至る前は淫行になるから、
  交際当初・・・青少年淫行罪
(ここで別れて検挙される例多い)
  婚姻前提・・・犯罪不成立
  婚姻後・・・ 犯罪不成立 セックスレスが離婚事由になりうる
という段階に分類できるね。

http://nagaben.jp/index.php?id=101#type001_101_20
淫行処罰条例の制定に反対する会長声明
1 長野県は、「子どもを性被害等から守る専門委員会」を設置し、本年5月31日、淫行処罰条例の制定の是非について検討を始めた。報道によると、同日の初会合では、同条例の制定に積極的な意見が相次いだとされている。
ここに、淫行処罰条例とは、青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為を広く処罰する規定(以下、淫行処罰規定という。)を盛り込んだ条例と定義する。長野県内では、東御市青少年健全育成条例がこれにあたる。すなわち、東御市青少年健全育成条例は、第24条1項で「何人も青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない」と定め、同条項に違反した場合の罰則として、第30条1項2号で「30万円以下の罰金」を定めており、これらの規定が、淫行処罰規定である。
このような淫行処罰規定は、その文言の曖昧さ、不明確性において、憲法31条の要請である刑罰法規の明確性の観点から重大な問題を孕むものである。そのため、当会は、東御市青少年健全育成条例の全面施行前、平成19年9月4日付会長声明で、同条例の見直しと慎重な運用を強く要請した。

2 ところが、昨年3月から4月にかけて、東御市の学校教諭2名が東御市青少年健全育成条例(淫行処罰規定)違反の疑いで相次いで逮捕されるという事件が発生し、このことを契機に、県内全域で子どもを性犯罪から守る必要性が強く訴えられるようになり、現在、淫行処罰条例の制定を求める動きが活発化している。

3 しかし、淫行処罰規定による規制は、上記声明で明らかにしたとおり、その問題性が極めて大きいものである。淫行処罰規定は、「みだらな」性行為、「わいせつ」な行為という曖昧な文言により、罰則をもって、青少年との性的関係を規制するものであって、捜査機関による解釈次第で、本来規制されるべきでない青少年の真摯な恋愛や性行為が広く処罰の対象とされるおそれが多分に存する。青少年の側からみれば、真摯な恋愛の萎縮につながるだけでなく、交際相手が一方的に摘発、処罰されることで、却って青少年が精神的に傷つき、被害救済からは程遠い結果となることも容易に想像できる。青少年を狙う一部の悪質な大人を処罰するという目的は正当であるとしても、その目的達成のために、淫行処罰規定による規制という手段が相当であるとは到底いえるものではない。

4 また、そもそも、現状において、淫行処罰条例を制定すべき立法事実(淫行処罰規定の必要性を基礎付ける社会的事実)が存在するとは認めがたい。
すなわち、現行法令には、刑法に規定される強制わいせつ罪(同法176条)、準強制わいせつ罪(同178条、同176条)、強姦罪(同177条)及び準強姦罪(同178条、同177条)、児童福祉法に規定される児童淫行罪(同法34条1項6号、同60条1項)、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(いわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法)に規定される児童買春罪(同法4条)及び児童ポルノ製造罪(同7条2項3項)、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(いわゆる出会い系サイト規制法)に規定される児童に係る誘引の禁止(同法6条、同33条)、長野県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(いわゆる迷惑防止条例)に規定される卑わいな行為の禁止(同条例4条、同14条1項2項)等、罰則規定が種々存在し、青少年に対する性犯罪に対し多角的な規制がなされているところである。
また、長野県以外の全ての都道府県では淫行処罰を内容とする条例が制定されているが、平成24年版犯罪白書によれば、青少年保護育成条例による検察庁新規受理人員が、平成11年から平成12年にかけてはいわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法の制定により減少しているものの、平成13年以降は年々増加若しくは横ばい傾向にあり、淫行処罰条例が青少年に対する性犯罪を有効に抑止しているという実証結果は得られていない。
5 東御市で発生した前記2事件は、閲覧可能な刑事確定記録、公表された長野県教育委員会の懲戒処分一覧及び新聞報道から読み取れる事実によれば、中学校教師若しくは高校教師とその教え子という関係を背景に事実上の影響力を及ぼして児童に淫行をさせたと評価しうる事案であって、東御市青少年健全育成条例の淫行処罰規定でなく、児童福祉法上の児童淫行罪による立件も可能であったと解されるところである。
したがって、これらの事案をもって、淫行処罰条例を制定すべき立法事実と捉えることは適切でない。

6 また、昨今のインターネットの普及により、青少年がインターネットを通じて大人から誘惑され、青少年が大人と直接会って性被害を受けるという事案が発生しており、そのような大人の行為を摘発する必要性も指摘されている。
確かに、インターネットには、顔の見えない関係にありながら、メール等の頻繁なやりとりや文章表現により巧妙に相手の心の隙間に入り込むことが出来るという側面があり、このような特質が青少年に対する性犯罪に利用されている可能性は否定できない。しかし、出会いの過程でインターネットを介していたとしても、青少年と大人が直接接触する場面では、やはり現行の罰則規定が適用されうるのであって、例えば、青少年の同意なくわいせつ行為に及べば強制わいせつ罪で摘発、処罰されうるのである。
したがって、インターネット社会の発展が、直ちに淫行処罰規定の必要性、合理性を基礎付けるということも出来ない。

7 以上のとおり、淫行処罰規定は、それ自体憲法規範に違反するおそれのある重大な問題を孕んでいるだけでなく、現状において、同規定を条例で制定すべき十分な立法事実も認められないのであるから、淫行処罰条例を制定する正当性はないと言わざるをえない。

8 長野県は、全国の都道府県で唯一淫行処罰を内容とする条例を制定せず、これまで、家庭、学校、関係団体及び行政が一体となって、地域全体で子どもを支え育てていくという取り組みを行ってきた。性犯罪から子どもを守るために真に必要なのは、さらなる刑罰による規制ではなく、子どもが自己決定権に基づき性的意思決定を主体的に行い、また自己の判断で犯罪や社会の危険性から身を守ることができるよう、その成長発達を支援することである。そのためには、これまでの取り組みをさらに推し進め、子どもに対し、自己の性を大事に考えるための「性教育」や、インターネットの利用方法、危険性等に関する「情報教育」、「リテラシー教育」を施すことが重要である。
当会は、昨年7月9日付の長野県知事宛の要望書において、刑罰による規制によって子どもの性被害等の問題を一挙に解決することはおよそ不可能であり、また、安易に規制を拡大・強化することは、子どもの成長発達の機会を奪うことになりかねないことや、仮に淫行処罰規定の適用により、成人を検挙したとしても、一方の子どもにとっては、なぜその交際が条例によって規制され、交際相手が処罰されなければならないのかを理解しなければ問題の根本的な解決にはならないことなどを訴えた。刑罰を重罰化しても犯罪がなくならないことに表れていることからも分かるとおり、処罰のみによって社会内に生起している問題は解決しない。時間はかかるように見えても、問題の根本に遡って丁寧に社会を変えていくことこそ肝要であり、子どものみならず大人に対しても「性教育」や「情報教育」等を実施して、自己や他人を理解し、いたわれる社会を目指す必要がある。
安易に罰則制定や厳罰化を求めれば、これまで地域全体で行われてきた子どもの育ちを支えていく取り組みを一挙に後退させてしまうことになりかねない。

9 もとより、子どもを性被害から守るという目的は正当であり、これに何ら異を唱えるものではない。問題は、どのような方法で子どもを守るかということである。淫行処罰規定は、既に述べてきたとおり、それ自体問題性が大きく、また条例化の立法事実が希薄であって、子どもを性被害から守る手段として相当でないことは明らかである。長野県は、安易に刑罰に頼ることなく、長野県らしい子ども支援の方策を模索していくべきである。

以上のとおりであるから、当会は、ここに淫行処罰条例の制定に反対する意思を表明し、長野県に対し淫行処罰条例を制定しないよう強く求める次第である。

平成25年7月16日
長野県弁護士会  
会長  諏 訪 雅 顕