児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

写真を模写しただけで「児ポ違反」で逮捕!?「CG」でも児童ポルノなのか?

 ドットコムの編集者が簡単に書けというので、書いてみました。
 
追記
 相談者から現物をみせてもらったんだが、「模写」じゃないんだよなこれが。

今回の場合は、「写真を精密に模写したCG」ということだが、このような「CG」であっても、「児童ポルノ」に該当するのだろうか。今回のデザイン業の男は、雑誌の写真などを参考にしたとのことで、少女と直接的な接触があったわけではないようだが、ただ写真を参考にしてCGを描いただけで逮捕されてしまうのか。この問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。

●今回、CGなのに児童ポルノと認定された理由について、ポイントをご解説ください。読者にわかりやすく伝えるため
に、500字程度でコメントを賜れましたら、幸いです。

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)では「『児童ポルノ』とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、・・・児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」と定義されており、「視覚により認識することができる方法」であれば、描写する手段は限定されていませんので、絵画、写真(銀塩写真・デジタル写真)、動画のような平面でも、銅像のような立体でも、児童ポルノに当たりうることになります。この意味では、法文の普通の解釈によってもCGという描写方法も児童ポルノに当たりうることになります。
 むしろCGの場合に問題になるのは、モデルになった児童がするかどうかという点です。児童ポルノ法では「この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。」とされていることから、モデルとされた児童が実在することが必要です(大阪高裁H12.10.24、名古屋高裁金沢支部H14.3.28)。写真・ビデオの場合は児童が実在しないと児童の姿態を描写することができないので、写真・ビデオの存在から児童の実在性を認定することは容易ですが、銅像・絵画・CGの場合は必ずしも児童が実在しなくても児童らしき人物の姿態を描写することができますので、児童の実在性があきらかでないため、必ずしも法律上の「児童ポルノ」にはなりません。今回のCGの摘発は、元になった写真が明らかになっていて、写真によって写真とCGに描写された児童の実在性が認められるため、捜査機関がCGについても「実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」と判断したためだと思われます。
 通常、写真ではなくCGを用いる場合には、実在しないものの実在の児童よりもはるかに性欲を興奮させ又は刺激するような像が描かれることが多く、CGで単に児童ポルノ写真を模写することは珍しいので、CGの検挙例が少ないのだと思います。