児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「強姦致傷罪における被害者の落ち度」量刑実務体系5

 こういうことに言及すると抗議を受けるんですが、裁判官たちが書いた本を紹介しておきます
 考慮されるのであれば、弁護人は主張することになります。

量刑実務体系5p165
強姦致傷罪 並木 正男/石川 恭司/丸田 顕
ウ被害者の落ち度
ここで,被害者の落ち度に関する問題を検討しておく。
強姦の罪においては,犯行に至るまでの被害者の不注意ないし軽率な行動が,被害者の落ち度として.被告人に有利な量刑事情とされる例が多い。このことは,当研究会でも既に議論されており,その当否や理論的根拠については研究員の中でも意見の違いが見られるところである6)。
検討の対象とした被害者l名の事案中,⑦(姦淫既遂懲役3年.1被害者にも,深夜に自宅付近で被告人と待ち合わせた上、一緒にカラオケ店に行き,その後自宅に送ってもらうなど,軽率な点があったことは否定できないこと」).⑨(姦淫既遂,懲役3年6月, [被害者は,被告人が本件の直前に被害者方を訪れた際,被告人からキスをされたにもかかわらず,再度夜間に自宅に上がるのを許しており,その結果として本件が発生したという経緯もあること」),⑩(姦淫既遂,懲役3年6月, 「深夜男子寮をひとりで訪れており,いささか軽率な面があった」),⑩(姦淫未遂,懲役6年, 「他の用事にかこつけられたとはいえ, 1人で、被告人方に赴いた被害者側にもやや不用意な点がなかったわけではない」) において,いずれも,被告人と二人だけの状況に至ったことについて被害者に相応の落ち度がある旨の指摘をしているが,⑩と同一事件の共犯者に対する⑪においては,被害者の落ち度については何も触れられていなしい。
被害者複数事案や強姦,強姦未遂事案にも目を転じてみると,上記同様,被告人を自宅に招き入れあるいは被告人宅に上がり,あるいは被告人の車に乗ったことを指摘する事例がある反面,深夜初対面の被告人の車に同乗し,誘われでもいったんは断ったり警戒心を示していたものの,結局被告人を信用したものであり,落ち度と評価すべきではないとしている例もある。
最近目立つのは,いわゆる出会い系サイトで知り合った男性の誘いに応じて会った結果,被害に遭った被害者について,そのような経緯自体に「軽率な面があった」などと指摘する例である(被害者複数事案における例としては別表2M8。強姦事例でも数例ある。)が出会い系サイト等がきっかけであっても,落ち度として指摘していない例もある。他方自動車内で仮眠中に襲われた女性について,車を運転して出掛けて友人と真夜中まで飲酒し,早朝の大通りに車を駐車して, ドアロックをしないで仮眠していた点について.「軽率な面があったことは否定できない」とした事案(強姦事例),アルバイト先の経営者から被害を受けた17歳の女性について,繰り返しセクハラを受けながら,アルバイトを辞めることなく継続し,両親や同僚らに相談したか被告人と二人きりにならないように努めるなどしておらず,被害者の年齢や社会経験を考えると,これを被害者の落ち度と評価することは適当でないが,被告人を増長させ,ひいては本件犯行に至らせた面もある旨の指摘をしている例(強姦事例)もある。
以上,具体的な事例をみると,被害者の落ち度に関わる評価は,事案に応じ,あるいは裁判体によって,かなり違いがあるものと思われる。また,それがどの程度現実の量刑に影響しているかについては,これを推し量ることが困難ではあるが,各事案における他の重要な量刑要素と対照すると,被害者の落ち度が決定的な量刑要因となったと認めるべき事例は見いだし難いように思われる7)。