児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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栃木県議会


平成24年定例会第315回通常会議−12月21日-05号
◆二十一番(金子裕議員) 
 次に、子どもを犯罪の被害から守る条例の制定についてお伺いをいたします。とちぎの未来を担う子どもたちが、犯罪の被害に遭うことなく、安全に安心して暮らしていくことのできる社会の構築は県民共通の願いでもあり、その実現のため、各種取り締まりの強化はもとより、地域社会との連携が極めて重要であると考えます。
 しかしながら、平成十七年十二月に旧今市市で発生した吉田有希ちゃんの殺人・死体遺棄事件については、事件発生から七年が経過し、警察の懸命な捜査にもかかわらず、いまだ解決には至っておりません。亡くなられた有希ちゃんやご両親の無念さを思うと強い怒りを禁じ得ません。この事件を風化させないためにも、機会あるごとに県民に対して貴重な情報の提供をお願いするとともに、残虐非道な犯人を逮捕し、一刻も早い事件の解決に向けて一層の努力をお願いするものであります。
 また、県内では、心身に有害な影響を与える性犯罪や子供をねらった凶悪犯罪の前兆事案と見られる悪質な声かけやつきまといなどの事案が後を絶たず、十三歳未満の子供を対象にした声かけ事案についても、平成二十二年以降、年間百五十件もの届け出が警察に寄せられています。その中には、現行法で規制がされていない行為もあると聞きます。さらに、児童への性犯罪を誘発するおそれのある児童ポルノの単純所持についても法的に規制されていないため、効果的な対応が阻まれている現状にあります。
 こうした現状を踏まえて文教警察委員会では、特定テーマの一つに「子どもの安全・安心の確保について」を設定し調査研究した結果、子どもを犯罪の被害から守る条例(仮称)を制定し、子供の安全を脅かす各種行為を規制すべきであるとの提言をさせていただいたところであります。
 そこで、県警察においては、こうした提言を受けて新たな条例を制定し、現行法で規制がされていない子供に対する犯罪を増長するおそれのある各種行為を規制すべきであると考えますが、警察本部長の所見を伺います。
◎坪田眞明 警察本部長 ただいまのご質問にお答えいたします。いわゆる今市事件につきましては、県警察の最重要課題といたしまして、これまで懸命な捜査を続けてまいりましたけれども、残念ながら七年がたった現在も、いまだ解決に至っておりません。今後とも、県警察では、組織を挙げて事件の解決に向けた捜査を継続してまいりたいと考えております。
 一方、このような中で、子供や女性をねらった性犯罪など悪質な犯罪は後を絶っておりません。そればかりか、その前兆と見られる子供に対する悪質な声かけ、つきまといなどの事案が頻発しておりまして、これらが今市事件のような凶悪事件につながるおそれがないとは言い切れない状況にございます。
 県警察では、これらの前兆行為がエスカレートすることがないように、行為者を特定して指導警告・検挙を行ってきましたが、前兆行為の多くは現行法で規制されておりません。そのために、検挙に至らず警告にとどめざるを得なかった者が同種行為を繰り返したり、さらには、性犯罪等に及んだりした結果、子供に取り返しのつかない傷跡を残すような事例も少なくありません。また、児童ポルノにつきましても、子供に対する異常な性的欲求を刺激し、ひいては子供に対する性犯罪等を引き起こすおそれが高く、県内でもこうした欲求に駆られた児童ポルノ所持者による性犯罪が現に発生をいたしております。
 こうした現状を踏まえ、現行法で規制がされておりません、例えばお母さんが事故に遭ったから一緒においでなどと虚言、甘言を弄して子供を惑わし欺く行為、子供の前に立ちふさがったり、つきまとったりするなどの子供を威迫する行為、さらには子供を被写体とするポルノを所持する行為などを規制する新たな条例が必要であると認識いたしまして、有識者による審議会を設けて検討を進めてまいりました。
 一方、文教警察委員会におきましては、「子どもの安全・安心の確保」を特定テーマとして調査研究を進めていただきまして、過日、提出された報告書におきましては、子どもの犯罪被害防止に向けた条例制定のご提言をいただいたところであります。
 今後、こうしたご提言、そして、現在行っておりますパブリックコメントにおける県民のご意見などを踏まえまして、これらの規制を盛り込んだ条例の早期制定に向けて準備を進めますとともに、地域社会と連携しながら子供の犯罪被害の防止、子供の安全・安心の確保に努めてまいりたいと考えております。

◆二十一番(金子裕議員) それでは、再質問をさせていただきます。この条例については、制定に向かっているというお話にとりましたので、ひとつよろしくお願いしますが、このような条例は、犯罪被害から守るという条例でありますから、栃木県ばかりではなくて、他県でも制定されていると思います。
 そこで、その条例の特徴的な内容は何か端的に、そして、条例制定までのスケジュールはどのようになるのか、そのあたりの考え方を警察本部長に伺います。
◎坪田眞明 警察本部長 ただいまの再質問にお答えいたします。子どもを犯罪の被害から守る条例でございますけど、全国的には、奈良県大阪府の二府県が制定いたしております。そして、京都府におきましては、児童ポルノだけに着目をいたしまして、児童ポルノを規制する条例が制定されております。
 現在、県警察におきましては、これら二府県の条例を参考としつつ、栃木県内における子供の安全を脅かす行為の現状、実態でありますとか、先ほども申しました有識者による審議会、そして、文教警察委員会のご提言などを踏まえまして今、条例案の策定を進めております。したがいまして、まだ検討段階ということでございますけれども、例えば子供を惑わし欺く行為の常習者への罰則の付与でありますとか、あるいは児童ポルノの単純所持者への廃棄命令などが特徴と言えようかと思っております。
 また、この条例案につきましては、現在、十二月二十六日までの予定ですが、パブリックコメントを実施させていただいております。ここでいただいた県民のご意見などを踏まえまして、さらに検討を進めて、できるだけ早期のタイミングで県議会に条例案を提出させていただきたいと考えております。
 なお、可決成立した場合にも、罰則を含む条例でございますので、条例の内容に応じまして、県民の皆様に必要な周知を行う期間を設けた上で、速やかに施行させていただきたいと考えております。






平成25年 1月文教警察委員会(平成24年度)−01月22日-01号
◎古川 生活安全部長 子どもと女性の安全対策の強化についてご報告をいたします。
 お手元の資料、2ページをごらんください。
 初めに、項目1の性犯罪及び子供に対する声かけ事案等の認知件数の推移について申し上げます。
 県内の刑法犯認知件数は、平成15年に4万件を超えてピークに達しましたが、その後は青色の折れ線グラフで示したとおり徐々に減少し、昨年は、暫定値ではありますが、2万369件とピーク時の約半数まで減少しております。しかしながら、犯罪の総数が順調に減少している中にあって、子供や女性を狙った性犯罪は、紺色の折れ線グラフで示したとおり、平成22年以降増加に転じており、昨年も暫定値で217件と依然として高い状況にあります。
 また、これら性犯罪等の前兆である子供に対する声かけやつきまとい等の事案につきましては、棒グラフで示したとおり、統計を取り始めた平成18年以降減少傾向にありましたが、平成22年に大幅に増加し、昨年は18歳未満の子供に対するもので446件、13歳未満に対するもので169件といずれも高どまりの状況であります。
 次に、項目2の声かけ事案等の内訳であります。
 声かけ事案等のうち、13歳未満の子供に対する行為の内訳では、声かけや誘い込み等が最も多く、次につきまといや立ちふさがり等の行為が続いており、毎年同じような傾向を示しております。警察では、これらの行為の凶悪化を防止する観点から、行為者を特定して警告や検挙を行っておりますが、これらの行為の多くが現行法で規制されていないため、検挙に至らず警告にとどめざるを得なかった者が同種行為を繰り返したり、さらには性犯罪等に及んだりする事例も少なくないのが実情であり、子供の安全対策上の大きな課題となっております。
 次に、項目3の児童ポルノ検挙件数の推移についてであります。
 県内における児童ポルノ事件の検挙件数は、平成19年までは年間6件程度でありましたが、平成21年以降は11件から15件で推移しており、昨年は14件を検挙しております。児童ポルノは、被写体となった子供の人権を侵害するだけでなく、子供に対する異常な性的欲求を刺激し、ひいては子供に対する性犯罪等を引き起こすおそれのある危険なものであると考えており、現に県内でもこうした欲求に駆られた児童ポルノ所有者による子供に対する性犯罪が発生しております。しかしながら、現在の法律では、児童ポルノを自分で見る目的で所有する行為を規制していないため、児童ポルノの存在を確認できた場合であっても、所有者を取り締まることはもちろん、発見した児童ポルノを取り上げることすらできない状況にあり、子供の安全対策を進める上での課題であると考えております。
 次に、項目4の栃木県子どもを犯罪の被害から守る条例(仮称)の制定についてであります。
 県警察では、これまでご説明したとおり、子供に対する声かけ、つきまとい等の行為や児童ポルノを所有する行為が子供の安全対策上の大きな課題であるとの認識のもと、これらの行為を規制する新たな条例について、有識者による審議会や文教警察委員会からご提言をいただくとともに、パブリックコメントを行って県民のご意見をいただく等、検討を進めてきたところであります。現在、ご提言やご意見を尊重しながら条例案を策定中でありますが、現段階での条例案の概要について資料の項目4によりご説明させていただきます。
 まず、条例で保護する対象につきましては、一般に判断能力や危険回避能力が乏しい小学生以下の子供を重点的に保護するとの理由から、13歳未満の子供とすることを考えております。
 規制につきましては、まず甘言を用いた惑わし、虚言を用いた欺き等の子供に不安を与える行為を規制したいと考えております。これらの行為は、いわゆる声かけ行為であり、行為による身体的な被害はありませんが、子供や保護者が不安を感じている実態や誘拐等の重大事犯に発展する危険性があることから、規制が必要と考えております。
 罰則につきましては、警告後も同種行為を繰り返す者に対する抑止効果を高めるため、常習的に行う者に対して罰則を設けたいと考えております。
 次に、子供に対する言いがかりやつきまとい等の子供を威迫する行為についても、現行法を適用できない場合でもあることから、条例で規制したいと考えております。これらの行為は、不安を与える行為よりも悪質性や犯罪性が強いことから、単発的に行った者に対しても罰則を設けたいと考えております。
 児童ポルノにつきましては、児童ポルノの中でも特に子供への性犯罪を誘発するおそれの高い低年齢の子供を被写体とする子どもポルノを所有する行為を規制したいと考えております。罰則につきましては、この条例での規制目的が所持者の取り締まりではなく、子供に対する性犯罪を誘発するおそれのある子どもポルノの根絶であることから、所持する行為を直接に処罰の対象とするのではなく、所持者を発見した場合に廃棄を命令できるものとし、命令の実効性を担保するため、命令に従わなかった場合の罰則を設けたいと考えております。
 また、条例には、これらの規制だけではなく、子供の安全に対する県民の意識を高めるため、県、県民、事業者の責務や条例に違反する行為を発見した者の警察等への通報義務などを盛り込みたいと考えております。
 次に、項目5の栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例の一部改正についてであります。
 本県では、平成14年12月に現行法で規制のない公共の場所や乗り物における痴漢行為、スカート内の盗撮行為等に対する規制を盛り込んだ栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例を制定しているところであります。しかしながら、近年の映像機器の小型化・高性能化等に伴い、こうした機器を利用して公衆浴場や公衆便所を盗撮する事案が県内でも発生しているところであり、またインターネット上ではこれらの機器を利用したと思われる盗撮映像や盗撮方法に対する情報等が氾濫している状況にあります。盗撮行為は、盗撮された映像がインターネット上で頒布されるなど被害者の被害程度は単なるのぞき見よりも極めて高い上、本県は温泉利用の公衆浴場数が全国でも上位に位置するなど被害対象となり得る施設も多い県であることから、早急に対策をとる必要があると考えております。
 また、卑わいな映像を見せつけたり、卑わいな言葉をかける等の卑わいな言動につきましても、性犯罪にエスカレートするおそれが高い行為である上、その被害に関する届け出が数多く警察に寄せられるなど、女性や子供に著しい羞恥心や不安感を与えている現状にあります。県警察では、これら盗撮や卑わいな言動に対しましても、行為者を特定して検挙・警告等の措置を講じているところでありますが、行為の対応によっては既存の法律や条例の規制が及ばないこともあることから、栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例を一部改正して、これら行為に対する規制を追加し、女性の安全対策を強化してまいりたいと考えております。
 県警察といたしましては、これらの条例案をできるだけ早期に上程させていただくとともに、関係機関・団体と連携・協力した活動の充実を図り、検挙と抑止の両面から子供と女性の安全確保に全力で取り組んでまいりますので、引き続きご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 以上で生活安全部関係の報告を終わります。

◆三森文徳 委員 ただいま子供と女性の安全対策の強化ということで、条例の制定を含めてのご説明をいただきました。
 なかなか難しいのだろうと思うのですが、いわゆる第三者、全く見知らぬ人から受けるいろいろな被害等の防止は、警察の皆さんがしっかり取り組んでいただいていることはよくわかるのですが、知っている身内、家庭内暴力、そしてまた児童虐待です。特に、家庭内暴力だと被害者が女性になることが多いわけで、もちろん家庭内の子供に対する暴力等の行為、これらは、いろいろな部局またがりの課題であって、保健福祉部も関係しますし、教育委員会も関係しますし、警察も関係しています。連携はとっておられると思うのですが、この子供と女性の安全対策の強化の中に家庭内で起こる女性・子供への被害というのですか、これはどうなるのだろうという思いがあるのですが、お答えするのは難しいでしょうか。

◎古川 生活安全部長 ただ今ご説明いたしました子供を犯罪の被害から守る条例につきましては、基本的には街頭で行われる犯罪を想定しているものであります。家庭内暴力等につきましては、この条例によらずにその他の刑法の暴行罪、あるいは傷害罪等を適用して対応をするとともに、関係機関等と連携を強化し、適切な措置をとっていくという方針であります。

◆三森文徳 委員 例えば児童相談所に警察官が常駐していただいたりという具体的な政策の面での前進は我々も私も認識をしているところなのですが、ただやはり難しいと思うのは、警察の皆さんが事件として認識して家庭内に入るのは、どの時点でいうのか非常に判断が難しいのだろうと思うのです。ただ、全国の例を見ますと、もっと早くそういう措置がされていれば命を落とすことなどなかった事件もあるわけで、その辺についてはぜひ今後も部局横断的な対応をお願いしたいと思いますので、要望として申し上げたいと思います。

◆鶴貝大祐 委員 私も子供と女性の安全対策の強化について1つお伺いしたいのですが、4番の栃木県子どもを犯罪の被害から守る条例をご説明いただきました。今わかる範囲で結構なのですが、この中で罰則は、どの程度の罰則を考えていらっしゃるのか。今古川生活安全部長からもご説明がありましたように、大きな犯罪につながる可能性のある人物だと思いますので、今後そういう大きな犯罪につながらないような罰則というか是正をさせることも必要かとも思うのですが、教えていただければと思います。


◎古川 生活安全部長 罰則につきましても、現在、宇都宮地方検察庁等と協議を進めているところであります。既に同様の条例が成立しているところは、具体的に申し上げますと奈良県は制定されておりますが、罰金刑です。この罰金額につきましては、どの程度にするかは、現在検察庁と協議を進めているところであります。

◆鶴貝大祐 委員 ありがとうございます。条例ですから、この罰則もなかなか難しい部分があると思うのですが、先ほどご説明いただきましたように、こういう行動をする人物は、どうしてもその後エスカレートしてしまうことがあるように思いますので、大きな犯罪につながらない、そのための罰則なのでしょうから、ぜひそういうところも勘案していただきたいと思います。以上です