児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

栃木県子どもを犯罪の被害から守る条例(仮称)案の概要に対するパブリック・コメント(県民意見の募集)の実施結果について

http://www.pref.tochigi.lg.jp/n01/houdou/pabukomekekka.html
提出意見とそれに対する栃木県警察の考え方

栃木県子どもを犯罪の被害から守る条例(仮称)案の概要に対する意見募集を行った結果、17名の方から計51件の御意見を頂きました。貴重な御意見ありがとうございました。
提出された御意見を十分検討の上、それに対する栃木県警察の考え方を次のとおりまとめました。
なお、類似の意見については、内容ごとにまとめさせていただきました。

http://www.pref.tochigi.lg.jp/n01/houdou/documents/siryou1-3.jtd
意見
 児童ポルノを欲しがる人がいるから作る人がいる。所持を禁止すべき。
 単純所持を規制したところで、誰が所持しているかもわからず、所有者が処分する保証もないので、規制の実効性がない。愛好者のポルノ所持を禁止しても、性欲は消えず、需要は止まらない。

栃木県警察の考え方
子どもポルノの所持を規制することにより、子どもを犯罪の被害から守れるよう、条例の適正な運用に努めます。

意見
 被疑者に対する捜査は慎重でなければならず、今後、他者に画像を送りつけるウィルス等により冤罪が増える可能性があることなどから、条例での規制には反対する。
 犯罪被害者人権保護上、児童ポルノ対策は必要ですが、冤罪を引き起こした事例もある「情報体」としての単純所持禁止には反対。冤罪の危険性を考慮した京都府の条例は優れたものだと評価される。
 閲覧、ダウンロード、取得、所持の区別がつかないインターネットにおいては、情報の単純所持の規制は有害無益且つ危険。
 情報の単純所持規制は極めて危険な規制であり、行うべきではない。

栃木県警察の考え方
本条例での子どもポルノの所持規制については、冤罪の危険性等を考慮し、所持する行為に罰則は設けず、規制に違反して子どもポルノを所持等する者に対して公安委員会が廃棄等を命令できることとし、この命令に従わなかった場合の罰則を設けることとしました。
 なお、廃棄命令違反の捜査に当たっても、適正かつ慎重な運用と捜査に努めます。

意見
情報の単純所持を規制し、実質的な罰となる調査権限等を警察等に与えることは、法律を超える規制となり、違憲である。

栃木県警察の考え方
条例で子どもポルノの所持を規制することや、立入調査等の権限を公安委員会に付与することについては、法律の範囲内であると考えます。

意見
 「○○は犯罪を誘発する可能性があるから禁止」という前例ができると、格闘技、カーレース等多様なものを禁止することも可能になる危険性を感じる。
 被害児童が精神的被害を受け続けるという理由での規制は賛成だが、犯罪を誘発する可能性が理由では、児童を助けるという目的からかけ離れた運用になりそうで反対。

栃木県警察の考え方
本条例の運用は、「子どもを犯罪の被害から守る」という条例の目的に沿って運用します

意見
国でも議論が続いている単純所持禁止を、地方自治体が安易に決めるべきではない。

栃木県警察の考え方
子どもポルノの単純所持の規制については、有識者の意見等を聴きながら慎重に検討した結果、子どもを犯罪の被害から守るため、子どもポルノの所持を規制する必要があると判断しました。


意見
 定義や理念をわかり易くし、誤解を生みにくくするよう、定義を明確にした上で「児童虐待記録物」等の名称にすべき。
 定義を細かく記載し、子どもポルノではなく、「実在する児童に対する性的虐待の証拠物(記録物)」という言い方を使用すべき。また、創作物は除外されることを記載すべき。
 単純所持を禁止する場合、限定的な範囲で定義を厳格にする必要性を感じる。
 子どもポルノという名称は、聞いただけで何を示しているのかよくわからないので、児童性虐待記録物と変えるべきで、創作物などの架空の児童を取り扱ったものは除外してほしい。
 児童の裸が記録されているものに関する規制は、児童が望まぬ形で且つ性的搾取目的で作成された物等に限定すべき。
 単純所持を規制する場合でも、人権の存在しない創作物は除外すると明記すべき。
 子どもポルノの定義を厳格・明確にし、間違ってもゲームや漫画などの創作物、過去に合法に出版された穏当なヌード写真集などが対象にならないようにしてください。
 アニメ、ゲームなどの架空の表現に対する児童の描写を理由とした規制の拡大は、現実の児童保護という目的を逸脱している。
 単純所持規制は、冤罪リスクが非常に大きく、所持罪を新設するなら、定義を厳格にすべき。
 「衣服の一部を着けない」は基準がないことから、「衣服の全部を着けない児童の姿態」に限定すべき。
 児童ポルノの内容によって分類し、分類によって規制の強弱をつけるべき。
 創作物については、人権を侵害される対象が実在しないため、規制の対象外とすべき。

栃木県警察の考え方
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「児童ポルノ法」という。)の制定後13年が経過し、同法の定義が国民に定着している状況にあることから、本条例での定義を同法と異なる定義とすることは、県民の間に混乱が生じるおそれがあると考えます。
 よって、本条例での子どもポルノの定義については、対象を「子ども(13歳に満たない者)」とするほかは、児童ポルノ法と同じ定義とすることとし、名称についても、対象が「子ども」であることを明確にするため、「子どもポルノ」とすることとしました。
 また、本条例で規制する子どもポルノについては、児童ポルノ法と同様に、実在する子どもの姿態を描写したものに限定し、アニメやゲーム等の実在しない架空の児童を描写したものについては、規制の対象に含まないものとします。
 過去に合法に出版された写真集等については、一律に本条例の適用外とすることは、規制の目的に反することとなるため、個々の写真集等について、子どもポルノに該当するか否かを慎重に判断することとします。


意見
 報告書に「児童への性犯罪を誘発するおそれのある児童ポルノを所持する行為等が法的に規制されていない」とあるが、いかなる根拠があって「犯罪を誘発する」と断言するのかが疑問。
 児童ポルノが犯罪を誘発するかどうかは、誘発するという意見、誘発しないという意見、犯罪を減らしているという意見などもあり、根拠不足なところがみられるので、犯罪を誘発する可能性を考慮するのは現状ではやめてほしい。
 児童ポルノが性犯罪を誘発するとの主張は全く根拠がない。
 児童ポルノが性犯罪を誘発するというのは科学的に否定されている。
 ネットやメディアが性犯罪を誘引する等のいいかげんな思想等を条例に組み込むことは、やめてもらいたい。

栃木県警察の考え方
子どもポルノは、児童ポルノの中でも、刑法が性的同意を認めていない13歳未満の子どもに対する性的虐待や性的犯罪を記録した特に悪質なものであります。
 子どもポルノを所持する行為は、こうした性的虐待や性的犯罪行為を容認し、又は支える行為であり、更には、子どもポルノを製造することに起因する性的犯罪行為を誘発する行為であると考えます。
 また、過去に検挙した性犯罪者の供述や犯行の状況、押収した証拠品等から、子どもポルノは、一部の人間の子どもに対する異常な性的欲求を刺激し、ひいては性犯罪を誘発するおそれがあるものであると考えます。
 子どもポルノの所持を規制することで、本条例の目的である子どもを犯罪の被害から守ることにつながるものと考えます。


意見
 児童ポルノ規制に厳しい国ほど、児童への性的虐待等の犯罪が多いのが現実であり、条例で規制することによって、児童ポルノによって犯罪を思いとどまってきた一部の人々の犯罪指向性を顕在化させ、かえって実在児童の安全を脅かしかねないと危惧する。
 所持や思想まで禁じることは、海外と同様に子どもたちが誘拐や強姦の犠牲になる機会が増えることになる。

栃木県警察の考え方
子どもポルノは一部の人間が性犯罪に走ることを思いとどまらせているとの説があることは承知していますが、子どもポルノを必要悪として容認することは、子どもポルノの製造等も認めることにつながり、結果的に子どもに対する性犯罪等が増加するおそれが高いものと考えます。

意見
 立入、調査等をする場合はどのような場合か具体的に例示することを希望する。

栃木県警察の考え方
 立入、調査等をする場合を条例内で具体的に例示することは、適用範囲について過度の狭いものとの誤解を招く危険があることから、記載しないこととしました。

意見
 公権力による廃棄命令は、ともすれば財産権の侵害にもつながるため、抗弁の機会や裁定の場を設けるなど、十分な配慮が必要だと思う。

栃木県警察の考え方
 廃棄命令等に当たっては、所持者に抗弁の機会を与えるため、聴聞を行わなければならないこととします。

意見
 子どもポルノの所持者を罰しても撮影された児童は救えないことから、廃棄以上の罰則は無意味と感じる。

栃木県警察の考え方
 廃棄命令等の実効性を担保するため、廃棄命令等に従わなかった者に対する罰則は必要であると考えます。

意見
 子どもポルノの捜査に当たっては、遠隔操作事件のような冤罪につながらないように、慎重で確実な捜査を願う。
 捜査や通報に関し、慎重に行動するような条例にすべきである。
 慎重な運用を条例に明記すべき。

栃木県警察の考え方
この条例の適用に当たっては、県民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないことを、条例に明記します。
 また、条例違反の捜査については、慎重かつ適正な捜査に努めます。

意見
 インターネットに行政庁が追いついていない現状で、比較的容易に手に入る子どもポルノに関して「所持の確認及び廃棄」という広範囲な権限を認めていることに疑問を感じる。子どもポルノの定義が曖昧で範囲が広いため「なんでもできる」ようなイメージが拭いきれない。

栃木県警察の考え方
 この条例の適用に当たっては、条例を厳格に解釈するとともに、県民の権利を不当に侵害しないよう、慎重かつ適正な捜査に努めます。

意見
 通報制度は、県民による的外れな通報により、警察の業務に支障をきたすことがないように、条例の趣旨が周知徹底された後に導入すべき。
 子どもに対する声かけを規制する場合には、過度な通報行為とならないようにして欲しい。

栃木県警察の考え方
条例の施行までに、条例を県民に周知するために必要な期間を置いた上で、この間に各種広報活動等を行うことにより、条例の趣旨、規制内容等について県民への周知徹底を図ります

意見
 子どもポルノの所持に関する通報は、通報者が所持者の私的領域に踏み込む必要があり、通信の秘密やプライバシー等の侵害である。

栃木県警察の考え方
 禁止行為の通報は、所持者の私的領域に踏み込むことまでを求めるものではなく、日常の生活等において違反者を発見した場合に、警察への通報を求めるものであり、通信の秘密やプライバシー等の侵害にはあたらないものと考えます。

意見
 被害児童のケアに関する言及がないのは遺憾。被害児童のケアに関する規定を入れるか、別条例を制定することを希望する。
 処罰や大義名分が先行して、被害児童の保護やケアが疎かになっており、保護予算もない。

栃木県警察の考え方
 犯罪被害者のための施策については、犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)や栃木県安全で安心なまちづくり推進条例(平成17年栃木県条例第8号)において既に規定されて推進中であるため、本条例では規定しないこととしました。