児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

メール内にパスワードが記載されていたら、利用権者は、当該識別符号を使って当該メールアカウントにアクセスすることを誰に対しても広く承諾していたことになるという弁解

 利用権者に確認しないとなんともいえないんじゃないでしょうか?

http://www.asahi.com/national/update/0625/TKY201306250088.html
朝日新聞記者の不正アクセス容疑について
 パソコン(PC)遠隔操作事件で、「真犯人」と名乗る人物が報道機関や弁護士へ送り付けた犯行声明メールのアカウント(以下:当該メールアカウント)への当社記者のアクセス(以下:当該アクセス)についての当社の見解は以下の通りです。
     ◇
 当社は、顧問弁護士とともに詳細に事実関係を調べ、検討した結果、当該アクセスについて「不正アクセス禁止違反の犯罪は成立しないことが明らか」と判断しています。

 以下、その理由をご説明します。

【1】「不正アクセス禁止法」違反罪の構成要件に該当しない

■「当該識別符号の利用権者」がアクセスを承諾していた

 「不正アクセス行為」の構成要件を定めた不正アクセス禁止法第2条4項は「当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く」と明記しています。

 当該メールアカウントを使用した犯行声明メールは昨年10月9日、報道機関や弁護士に送信されました。その中に当該メールアカウントの識別符号(パスワード、以下:当該識別符号)が記載されていました。

 この犯行声明メールは「【遠隔操作事件】私が真犯人です」と題し、「このメールを警察に持っていって照会してもらえば、私が本物の犯人であることの証明になるはずです」「ある程度のタイミングで誰かにこの告白を送って、捕まった人たちを助けるつもりでした」「これを明るみにしてくれそうな人なら誰でも良かった」などと記したうえで、同メールの送信者が関与したという遠隔操作ウイルスを使った事件の内容を記しています。

 以上のことから、当該メールアカウントの利用権者(「真犯人」を名乗る犯行声明メールの送信者)が、犯行声明メールの送付先の弁護士や報道機関を通じて同メールの内容が公表されることを望んでいたのは明白です。

 さらに、犯行声明メールの中で当該識別符号を公表し、それが使われて当該メールアカウントにアクセスされ、自分が真犯人であることが証明されることによって、遠隔操作事件で警察から犯人と誤認された人たちの容疑が晴れることを明確に求めていました。

 このように、利用権者は、当該識別符号を使って当該メールアカウントにアクセスすることを誰に対しても広く承諾していたことが明らかです。当社記者もそう認識しており、「不正アクセスの故意」は全くありませんでした

不正アクセス行為の禁止等に関する法律
2条
4  この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一  アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
。。。。

逐条 不正アクセス行為の禁止等に関する法律[補訂] P82
入力される識別符号に係る利用権者の承諾を得てするもの
入力される識別符号に係る利用権者がその入力について承諾している場合は、その入力を誰が行っているかは容易に特定することがでさることから、アクセス管理者による識別を困難にして犯罪を助長するおそれを生じさせ、又はネットワークを無秩序な状態にするとまではいえない。そこで、本条第二項第一号において入力される「識別符号に係る利用権者の承諾を得てするもの」を不正アクセス行為から除外しているものである。アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号を除く) 又は指令の入力をすることが利用権者に許諾されることは考えられないため、その入力について利用権者が承諾することも想定されず、同項第二号及び第三号では除外されていない。
具体的にはISPのユーザである親の承諾を得て子が親のID・パスワードを入力する場合等がこれに当たる。
利用権者がこのような承諾をすることについてアクセス管理者が認めていない場合も、利用権者の承諾を得てする行為は不正アクセス行為とならない。これは、本条第二項の規定は単なる禁止規定ではなく、不正アクセス罪の犯罪構成要件となっていることからアクセス管理者の主観的意図やアクセス管理者と利用権者内部の契約関係によって犯罪の成否に差を設けることが適当ではないためである。ただし、このことは承諾したことについて利用権者が民事上の責任を問われることを否定するものではない。