児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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「医師として,予防接種の診察を行い,その診察行為の一環として,各被害女児の着衣をずらして乳房を露出させた際,各被害女児及びその親権者の同意を得ることなく,自動車の鍵のように見せかけて机上に設置した小型カメラで,乳房を露出した状態の場面」を3号ポルノとした事例(広島高裁H23.6.26)

 そういう医療行為の場面もあるし、医学写真としてそんな写真もあると思うのですが。「性欲を興奮させ又は刺激するもの」だと認定されています。 

広島高裁H23.6.26
 本件控訴の趣意は,主任弁護人福永宏及び弁護人福永孝連名作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。
1 控訴趣意中,事実誤認の主張について
 論旨は,原判示第1の1ないし3の各事実について,その外形行為はいずれも診療行為であり,被告人には性的意図もなかったのであるから,強制わいせつ罪は成立せず,また,各撮影行為の対象は,いずれも女児に対する予防接種の診察行為であり,このような診察行為の撮影画像は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項3号の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」に該当することはなく,児童ポルノ製造罪も成立せず,被告人は無罪であるにもかかわらず,原判示第1の1ないし3の各事実を認定し,強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪の成立を認め,被告人を有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。
 そこで,記録を調査し,検討する。
(1)関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告人は,原判示第1の1ないし3の各日時及び場所において,いずれも当時13歳未満の各被害女児(原判示第1の1の被害女児については当時12歳,原判示第1の2の被害女児については当時11歳,原判示第1の3の被害女児については当時8歳)に対し,医師として,予防接種の診察を行い,その診察行為の一環として,各被害女児の着衣をずらして乳房を露出させた際,各被害女児及びその親権者の同意を得ることなく,自動車の鍵のように見せかけて机上に設置した小型カメラで,乳房を露出した状態の場面を含めて各被害女児をそれぞれビデオ撮影し,その電磁的記録を小型カメラ内蔵のマイクロSDカードに記録した。
イ 前記アの各撮影及び記録行為は,被告人が女児の裸や下着姿等の映像を個人的に収集することを主な目的として行われたものであり,診療上の必要性は全くなかった。
ウ 被告人は,原判示第1の1の被害女児を撮影,記録した映像について,乳房を露出している場面を抜き出して編集し,そのデータを,女性のスカート内を盗撮した動画を編集したデータとともに,パソコンや携帯ゲーム機に保存していた。
エ 被告人は,ポータブルハードディスクやDVD等に,女児の裸や下着姿等が撮影された児童ポルノに該当すると認められる動画ないし静止画のデータを相当数保存していた。
(2)前記(1)ア及びイの各事実によれば,被告人は,診療上の必要性とは全く無関係に,乳房を露出させた状態の各被害女児をそれぞれ盗撮したものであり,このような行為が診療行為に当たらないことは明白であり,その行為態様自体から,被告人のわいせつ意図が強く推認されるところ,前記(1)ウ及びエの各事実は,この推認を裏付けるものであり,被告人の各撮影行為について,強制わいせつ罪の成立が優に認められる。また,前記(1)アに認定した診察行為の際に着衣をずらして乳房を露出させた各被害女児を盗撮して記録された電磁的記録の画像が,児童ポルノ法2条3項3号の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」に該当することは,原判決が「事実認定の補足説明」の項2に認定,説示するとおりであり,着衣をずらして乳房を露出させた各被害女児を盗撮し,その電磁的記録をマイクロSDカードに記録した行為(以下,「被告人の盗撮行為」という。)について,児童ポルノ製造罪が成立するというべきである。
(3)所論は,〔1〕被告人の行った外形行為は,診察室において予防接種の診察をした際,各被害女児に上衣を上にずらしてもらって,5ないし11秒間のわずかな時間内に,各被害女児の胸に聴診器をあてた状況を小型カメラで撮影したというだけであり,乳房を弄ぶなどの行為は皆無である上,各被害女児はもちろん,診察に立ち会った各被害女児の保護者や看護師も,診察行為以外の変な行為をしているというような思いを持った者はいなかったのであり,外形的に見てわいせつ行為は存しないのであり,着衣をずらして乳房を露出させたのは,正当な診療行為であって,わいせつ行為ではなく,わいせつ行為でないものを撮影したからといって,わいせつ行為でないものがわいせつ行為になるということはあり得ず,今日の社会的状況においては,常識的に見て,ほとんどの人が,女性の乳房写真をわいせつ写真であるとは考えておらず,わいせつ行為であるか否かは,客観的かつ外形的に評価すべきもので,動機等によって左右されることはないのであるから,被告人の行為について,強制わいせつ罪は成立せず,〔2〕被告人は,女児の裸等の写真を収集すること自体に目的があり,撮影行為に及んでいる最中に性的意図を持つことがなかったのに,性的意図があったと認めるのは矛盾しており,原審公判廷において,心理学者であるA保証人が証言するように,盗撮を行った者が撮影対象に性的興奮を感じて盗撮行為をしているという一般的見方は,誤解と偏見に基づくものであり,被告人が性的意図に基づいて撮影行為に及んだということは考え難く,被告人の行為について、強制わいせつ罪は成立しないと主張する。
 しかし,〔1〕については,そもそも,診察中であっても,被告人の盗撮行為が診察行為に当たらないことは明白であり,診療上の必要性もないのに,乳房を露出させた状態の各被害女児を盗撮する行為が,各被害女児の性的自由及び性的感情を侵害するものであることは論ずるまでもなく,被告人の盗撮行為が強制わいせつ罪に当たることは明らかであり,盗撮の時間がわずかな時間であったこと,各被害女児のみならず,被告人以外の周囲の者が盗撮に気付かなかったことは,強制わいせつ罪の成立を何ら左右するものではない。〔2〕については,被告人の盗撮行為は,その態様自体から,被告人のわいせつ意図が強く推認され,前記(1)ウ及びエの各事実にも照らせば,被告人において,盗撮によって撮影,記録した画像を閲覧することにより,自身の性欲を刺激ないし満足させるというわいせつ意図を有していたことに疑いを差し挟む余地はなく,なお,各被害女児の性的自由及び性的感情を侵害する盗撮行為時に性的興奮ないし刺激そのものを感じ,あるいは,受けることがなかったとしても,盗撮により得られた画像を閲覧することによって,自身の性欲を刺激し,あるいは,満足させることを目的として,盗撮行為に及んでいれば,わいせつ意図を有していたものと認定できることは言を俟たない。その他所論にかんがみ,検討しても,前記認定は左右されない。 
(4)他方,被告人が,診察行為の一環として,各被害女児の着衣をずらして乳房を露出させた行為については,正当な診療行為であったことを否定できず,その乳房を露出させた状態を利用した,強制わいせつ行為に当たる被告人の盗撮行為により児童ポルノが製造されたと認定するのが相当であり,診察行為の一環として乳房を露出させた行為を盗撮行為と併せた一連の行為としてわいせつ行為と捉えるのが相当であるとする原判決の認定,説示は肯認できない。
 しかし,原判決においても,強制わいせつ行為の核心部分が被告人の盗撮行為にあると解していることは,原判決が「事実認定の補足説明」の項及び「量刑の理由」の項に説示するところから明らかであり,また,強制わいせつ行為が被告人の盗撮行為に限られることを前提にしても,原判決の刑の量定は正当であることに照らせば,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
 論旨は理由がない。