児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

第二次児童ポルノ排除総合対策

 悪質なのは、性犯罪が伴うわけで、結局児童に対する性犯罪を検挙しろということになるんですが、「児童に対する性犯罪の徹底検挙」が課題としては上がっていないですね。
 H11以来15年運用しているのですから、さぞ調査研究(法14条)も進んでいるし、児童保護の経験(15条)も積まれていると思うのですが、それを生かすという対策はないようです。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第14条(教育、啓発及び調査研究)
国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。
第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

http://www8.cao.go.jp/youth/cp-taisaku/pdf/gaiyo2.pdf
第二次総合対策の策定背景
○ 平成22年7月の総合対策により、協議会やシンポジウムを通じた国民運動が推進されたほか、民間の自主的取組として、インターネット上の児童ポルノ画像の閲覧防止措置(ブロッキング)が開始されるなど、一定の成果。
○ しかし、児童ポルノ事犯の送致件数・人員は増加傾向にあり、平成24年は 1,596 件 1,268人といずれも過去最多。
大部分がインターネット関連であり、ファイル共有ソフト利用事犯が急増。
○ 被害者の約半数は低年齢児童と認められ、その約8割が強姦や強制わいせつの手段によるものであるなど、極めて憂慮すべき事態。
・・・・
留意すべき課題
今後3年間を目途に児童ポルノを排除するための総合的な対策を策定する必要。
※ 特に留意すべき課題
ファイル共有ソフト対策を含めた流通 ・閲覧防止措置の強化
② 被害者支援を強化するための保護対策の充実強化
③ 国際連携を強化するための取組の推進
・・・
被害児童の早期発見及び支援活動の推進
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、「子どもの人権110番」「子どもの人権SOSミニレター」等を活用した相談体制の充実
・専門的知識を有するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを活用した相談体制の整備を支援するとともに、人権問題専用電話「子どもの人権110番」を開設する等、児童ポルノの被害に遭った児童が相談しやすい体制を整備。

http://www8.cao.go.jp/youth/cp-taisaku/pdf/s-gaiyo2.pdf
第二次児童ポルノ排除総合対策
4 被害児童の早期発見及び支援活動の推進
(1) 早期発見・支援活動
① 関係職員の意識啓発
地方公共団体等と連携し、児童ポルノ事犯について学校関係者、児童福祉関係者等の潜在的な被害児童に接する可能性のある職員の意識啓発を図り、児童ポルノ事犯による被害の早期発見に努める。(警察庁厚生労働省文部科学省
② 街頭補導等を通じた被害防止及び被害児童の早期発見・保護活動
警察において、街頭補導時における積極的な声掛け及び補導並びに少年相談受理時における専門職員等による適切な対応等により、児童ポルノ事犯による被害の未然防止及び被害児童の早期発見・保護に努める。(警察庁
③ 被害児童に対する継続的支援の実施
警察において、被害児童の精神的打撃の軽減を図るため、少年補導職員、少年相談専門職員等により、個々の被害児童の特質に応じた計画的なカウンセリングの実施や、家庭、学校、児童相談所等と連携した環境調整等による継続的な支援
を行う。(警察庁文部科学省厚生労働省
④ カウンセリング態勢の充実
警察において、被害児童の精神的打撃の軽減を図るための継続的な支援は、担当の職員のみでは対応が困難な場合も多いことから、あらかじめ臨床心理学、精神医学等の専門家を委嘱しておくなど、必要に応じて部外の専門家の助言を受けることができる態勢を整備する。(警察庁
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、「子どもの人権110番」「子どもの人権SOSミニレター」等を活用した相談体制の充実
文部科学省において、児童の臨床心理に関して高度に専門的な知識や経験を有するスクールカウンセラーや教育分野に関する知識に加えて社会福祉等の専門的な知識や経験を有するスクールソーシャルワーカーを配置し、相談体制の整備を支援することなどにより、児童ポルノの被害に遭った児童が相談しやすい体制を整備し、早期発見等に資する。また、児童ポルノ事犯を含む事件・事故や災害に
よって心のケアが必要になった児童への対応として、学校へのスクールカウンセ
ラーの緊急派遣に係る支援を行う。
法務省において、子どもの人権問題についての専用相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル)を開設することや、全国の小・中学生に「子どもの人権SOSミニレター」(相談用の便箋兼封筒)を配布することなどの活動を通して、児童が相談しやすい環境を整備し、被害児童の早期発見等に資する。(文部科学省法務省
児童相談所における児童等への支援や通報の実施
児童相談所において、性的虐待児童ポルノ事犯による被害等により心身に有害な影響を受けた児童に関する相談があった場合に、次の支援を実施する。
・ 児童心理司によるカウンセリングや児童福祉司による指導・援助
・ 緊急的な保護を必要とする場合における一時保護
・ 医療的なケアが必要な場合における病院等の専門機関の斡旋
・ 児童の生活の立て直しが必要な場合における児童福祉施設への入所措置 また、児童相談所への相談の過程で、児童の意思等を確認した上で、警察への通報を実施する。(厚生労働省警察庁
児童家庭支援センターの運営及び児童福祉施設における心理療法担当職員の配置
児童家庭支援センターの運営において、関係機関と連携し、児童ポルノ事犯による被害に係る相談と支援を実施するほか、心理的治療を必要とする児童への心理療法担当職員による治療、指導等を実施する。また、児童養護施設乳児院児童自立支援施設及び母子生活支援施設に心理療法を行う職員を配置し、虐待等による心的外傷のため心理療法を必要とする児童に、遊戯療法やカウンセリング等の心理療法を実施する。(厚生労働省
(2) 担当職員の能力の向上
① 被害児童の心情に配意した聴取技法の普及
被害児童の心情や特性を理解し、二次的被害の防止に配慮しつつ、被害児童から得られる供述の証拠能力及び証明力を確保する聴取技法について都道府県警察への普及を図る。(警察庁
② 被害児童の支援担当者への教養の充実
警察庁において、都道府県警察の被害児童支援担当者の能力向上を図るため、カウンセリングの実施方法、事案発生時の的確な対処方法、被害からの立ち直り支援方策等児童ポルノ事犯等の特性を踏まえた被害児童支援について教養を充実させる。(警察庁
③ 性的被害児童等に対するケアに関する研修の実施
子どもの虹情報研修センターにおいて、児童相談所職員等を対象に性的虐待への対応について研修を実施する。(厚生労働省
④ 性的被害児童等に対する心のケアに関する対応の充実
性的被害を受けた児童等について、教職員が健康観察や健康相談を通して早期発見・早期対応を行った事例を掲載した指導参考資料を作成するとともに、管理職や養護教諭、学級担任及びスクールカウンセラー等を対象としたシンポジウムや研修会等を開催し、性的被害を含めた心的外傷後ストレス障害PTSD)への適切な対応など、子どもの心のケアの充実を図る。(文部科学省
児童ポルノ事犯の取締りの強化
① 悪質な児童ポルノ事犯の徹底検挙
サイバーパトロールを推進し、インターネット・ホットラインセンター及び匿名通報ダイヤルからの各種情報の積極的な活用を図り、都道府県警察間の合・共同捜査を積極的に推進するなどして、引き続き低年齢児童ポルノ愛好者グループによる事犯やファイル共有ソフト利用事犯等に重点を置いた捜査を強化し、悪質な児童ポルノ事犯の検挙の徹底を図る。(警察庁
② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化
児童ポルノの提供等に加担しているサイト管理者、サーバー管理者といった悪質な関連事業者について、当該関連事業者に対する指導・警告を徹底し、風営適正化法に基づき当該サーバー管理者等に対して勧告を行うほか、刑事責任の追及を図るなど、悪質な関連事業者に対する責任追及を強化する。(警察庁
児童ポルノ関連事犯に対する厳正な対応
児童ポルノ関連事犯に対しては、国外犯規定を含め、児童買春・児童ポルノ禁止法等の積極的な適用を通じて、厳正な科刑の実現に努める。(法務省
児童ポルノ事犯に関する捜査能力等の向上
警察庁において、平成 22 年以降、検挙件数が急増し、かつ、使用されるソフトが多様化しているファイル共有ソフト利用事犯を含む児童ポルノ事犯に対する捜査能力の向上を図るため、引き続き児童ポルノ事犯捜査に特化した教養を実施するほか、児童ポルノ事犯の分析や捜査のために必要な資機材の整備等を行う。
警察庁
⑤ 検察官に対する研修の実施
検察官に対して、その経験年数等に応じた各種研修において、児童に対する配慮等に関する講義を実施するなどして、児童ポルノ事犯に関する知識の取得に努める。(法務省