児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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強制わいせつ罪(176条後段)の少年に定期刑を言い渡した事例(神戸地裁H25.2.21)

 処断刑期を基準にするということです。
 処断刑期の計算に無頓着な裁判官もいるようですね。
 弁護人も気付いていないということですが、被告人の利益という面で、指摘すべきかどうか迷いますね。

「不定期」を「定期」刑言い渡し 神戸地裁が違法判決 検察控訴
2013.03.09 神戸新聞
「不定期」を「定期」刑言い渡し 神戸地裁が違法判決 検察控訴
 本来は不定期刑が言い渡されるべきだった少年事件で定期刑を出した神戸地裁の判決に違法性があったとし、神戸地検が今月5日付で控訴したことが、関係者への取材で分かった。
 神戸市垂水区で昨年6月10日、通行中の5歳の女児に下半身を触らせたとして、アルバイト男性(19)が強制わいせつ罪に問われた事件の判決が先月21日、神戸地裁であった。
 少年法では、少年事件で特別な事情がない限り、法定刑の上限が3年以上の懲役または禁錮刑については不定期刑を言い渡すと定められている。強制わいせつ罪は法定刑の上限が10年以下のため、この条文が適用され検察側は懲役2年6月以上3年6月以下の不定期刑を求刑。しかし、同地裁の小林礼子裁判官は不定期刑ではなく、定期刑の懲役1年10月を言い渡していた。言い渡し後も検察側、弁護側双方が気付かなかったため、そのまま閉廷してしまったという。
 同地裁は「個別の事件としてはコメントはできない」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130310-OYT1T00130.htm?from=tw
 少年法では「少年に対して3年以上の懲役または禁錮をもって処断すべきときは、長期と短期を定めて言い渡す」などと規定。地検はこの規定が、法定刑を基に再犯や未遂といった事情を加味して決める「処断刑」の上限が3年以上の場合を指すとし、同罪の法定刑の上限が10年で減刑される事情もないため、今回の事件では懲役2年6月以上3年6月以下の不定期刑を求刑していた。しかし、地裁は2月21日、懲役1年10月を言い渡した。判決後に訂正の申し立てはなく、地検が協議後、控訴を決めた。
 丸山雅夫・南山大法科大学院教授(刑事法)は「少年法の規定は検察と同様に解釈するのが通常。裁判官は『3年以上の懲役または禁錮を言い渡すべきとき』と規定を勘違いし、定期刑を言い渡したのではないか」と指摘する。

少年法
 第三節 処分
(不定期刑)
第五十二条  少年に対して長期三年以上の有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、その刑の範囲内において、長期と短期を定めてこれを言い渡す。但し、短期が五年を越える刑をもつて処断すべきときは、短期を五年に短縮する。
2  前項の規定によつて言い渡すべき刑については、短期は五年、長期は十年を越えることはできない。
3  刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、これを適用しない。