児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「少女たちが、全裸で四肢を切断され(両手は手首より先が、両足は膝より先が切断されている)、その切断部分に包帯が巻かれた状態で、首輪をつけられ、四つんばいなどの姿勢をとらされている絵」は児童ポルノではない。

 「児童ポルノ」というのは法律用語ですから、誤解がないように、誤解を招かないように使いましょう。
 実在の児童を描写したもので無い限り、児童ポルノではありません。児童=自然人ですから。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

 判例もたくさんあります
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050302#1109754922

 「現在、実写ではない児童ポルノは違法とされていません」「日本でもやがて違法とされるでしょう」っていうのは、現時点では日本では合法ということだから、説得力を減殺します。
 適用されっこない法律なんか持ち出さないで、「大嫌いだ」とか「唾棄すべき表現だ」とか、もっとどぎつい言葉で攻撃した方が、気持ちは伝わります。

http://paps-jp.org/action/mori-art-museum/group-statement/
この「犬」シリーズで描かれている少女たちは、全裸で四肢を切断され(両手は手首より先が、両足は膝より先が切断されている)、その切断部分に包帯が巻かれた状態で、首輪をつけられ、四つんばいなどの姿勢をとらされ、作品名もずばり「犬」となっています。さらに、これらの作品の中で少女は微笑んでおり、このような性的拷問を楽しんでいるように、あたかもそれが自分にふさわしい扱いであるかのように描かれています。またこの「犬」シリーズ以外でも、少女が食べ物として体を開かれ、焼かれているもの、大量の少女ないし女性がジューサーの中でつぶされているもの、などが多数展示されています。
これらはまず第一に、作画によるあからさまな児童ポルノであり、少女に対する性的虐待、商業的性搾取です。日本の児童ポルノ禁止法においては現在、実写ではない児童ポルノは違法とされていませんが、カナダ、EU諸国、オーストラリアなどの主要先進国においてはすべて、これらは違法な児童ポルノとして処罰の対象になっています。日本でもやがて違法とされるでしょう。このようなものを貴美術館は堂々と公開しており、これは少女に対する性的搾取に積極的に関与するものです。

 立法段階では、児童には非実在も含むと思ってた関係者もいたみたいだね。いまだに。
 
 こんなのは警察に通報しておけばいい。売ってるのは有償頒布罪。「少女の局部をあからさまに描写しているもの」は冒頭の主張でいえば、「児童ポルノだ」って言い切らないと。

 第五に、作品の中には、少女の局部をあからさまに描写しているものもあり、これは刑法のわいせつ物頒布罪ないしわいせつ物陳列罪にあたる可能性があります。これらの作品は18禁部屋として特設コーナーに入ってはいますが、広く公開されていることに何ら変わりはありません。また18禁コーナー以外でもキングギドラの頭部が女性の局部に挿入されている作品などがあり、子どもでも鑑賞することのできる状態で展示されており、これは青少年健全育成条例違反にあたる可能性があります。また、「犬」シリーズを含む諸作品は、森美術館の正式のホームページに掲載されており、それは何らゾーニングされておらず、子どもでも簡単にアクセスできるものです。

 東京都の条例では、不健全図書も、知事が指定しないと制約を受けないようです。知事に上申するのが先ですね。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html
(不健全な図書類等の指定)
第八条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
三 販売され、又は頒布されているがん具類で、その構造又は機能が東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
四 販売され、又は頒布されている刃物で、その構造又は機能が東京都規則で定める基準に該当し、青少年又はその他の者の生命又は身体に対し、危険又は被害を誘発するおそれがあると認められるもの
2 前項の指定は、指定するものの名称、指定の理由その他必要な事項を告示することによつてこれを行わなければならない。
3 知事は、前二項の規定により指定したときは、直ちに関係者にこの旨を周知しなければならない。
(平一三条例三〇・平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(指定図書類の販売等の制限)
第九条 図書類の販売又は貸付けを業とする者及びその代理人、使用人その他の従業者並びに営業に関して図書類を頒布する者及びその代理人、使用人その他の従業者(以下「図書類販売業者等」という。)は、前条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した図書類(以下「指定図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けてはならない。
2 図書類の販売又は貸付けを業とする者及び営業に関して図書類を頒布する者は、指定図書類を陳列するとき(自動販売機等により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。以下この条において同じ。)は、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装しなければならない。
3 図書類販売業者等は、指定図書類を陳列するときは、東京都規則で定めるところにより当該指定図書類を他の図書類と明確に区分し、営業の場所の容易に監視することのできる場所に置かなければならない。
4 何人も、青少年に指定図書類を閲覧させ、又は観覧させないように努めなければならない。
(平四条例一九・平一三条例三〇・平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(表示図書類の販売等の制限)
第九条の二 図書類の発行を業とする者(以下「図書類発行業者」という。)は、図書類の発行、販売若しくは貸付けを業とする者により構成する団体で倫理綱領等により自主規制を行うもの(以下「自主規制団体」という。)又は自らが、次の各号に掲げる基準に照らし、それぞれ当該各号に定める内容に該当すると認める図書類に、青少年が閲覧し、又は観覧することが適当でない旨の表示をするように努めなければならない。
一 第八条第一項第一号の東京都規則で定める基準 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
二 第八条第一項第二号の東京都規則で定める基準 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
2 図書類販売業者等は、前項に定める表示をした図書類(指定図書類を除く。以下「表示図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けないように努めなければならない。
3 図書類発行業者は、表示図書類について、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装するように努めなければならない。
4 図書類販売業者等は、表示図書類を陳列するとき(自動販売機等により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。)は、東京都規則で定めるところにより当該表示図書類を他の図書類と明確に区分し、営業の場所の容易に監視することのできる場所に置くように努めなければならない。
5 何人も、青少年に表示図書類を閲覧させ、又は観覧させないように努めなければならない。
(平一六条例四三・全改、平二二条例九七・一部改正)
(表示図書類に関する勧告等)
第九条の三 知事は、指定図書類のうち定期的に刊行されるものについて、当該指定の日以後直近の時期に発行されるものから表示図書類とするように自主規制団体又は図書類発行業者に勧告することができる。
2 知事は、図書類発行業者であつて、その発行する図書類が第八条第一項第一号又は第二号の規定による指定(以下この条において「不健全指定」という。)を受けた日から起算して過去一年間にこの項の規定による勧告を受けていない場合にあつては当該過去一年間に、過去一年間にこの項の規定による勧告を受けている場合にあつては当該勧告を受けた日(当該勧告を受けた日が二以上あるときは、最後に当該勧告を受けた日)の翌日までの間に、不健全指定を六回受けたもの又はその属する自主規制団体に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
3 知事は、前項の勧告を受けた図書類発行業者の発行する図書類が、同項の勧告を行つた日の翌日から起算して六月以内に不健全指定を受けた場合は、その旨を公表することができる。
4 知事は、前項の規定による公表をしようとする場合は、第二項の勧告を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えなければならない。
5 知事は、表示図書類について、前条第二項から第四項までの規定が遵守されていないと認めるときは、図書類販売業者等又は図書類発行業者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
(平一六条例四三・追加、平二二条例九七・一部改正)
(東京都青少年健全育成協力員)
第九条の四 知事は、都民の協力を得て、第九条及び第九条の二の規定による指定図書類及び表示図書類の陳列がより適切に行われるように、知事が定めるところにより、東京都青少年健全育成協力員を置くことができる。
(平一六条例四三・追加)
(指定映画の観覧の制限)
第十条 興行場において、第八条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した映画(以下「指定映画」という。)を上映するときは、当該興行場を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、これを青少年に観覧させてはならない。
2 何人も、青少年に指定映画を観覧させないように努めなければならない。
(平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(指定演劇等の観覧の制限)
第十一条 興行場において、第八条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した演劇、演芸又は見せもの(以下「指定演劇等」という。)を上演し、又は観覧に供するときは、当該興行場を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、これを青少年に観覧させてはならない。
(平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(観覧等の制限の掲示)
第十二条 指定映画または指定演劇等を上映し、上演し、または観覧に供している興行場を経営する者は、当該興行場の入口の見やすいところに、東京都規則で定める様式による掲示をしておかなければならない。

 御主張に口をはさむつもりはありませんし、そういう御主張の存在を否定するつもりはありませんが、法律を持ち出すんなら、専門家に添削してもらった方がいいですね。説得力が減りますやん。

追記2/6
 弁護士ドットコムの編集部から、この展示会の問題で「芸術性と児童ポルノについて解説してくれ」と言われたのだが、この展示会は児童ポルノに該当しないので(そもそも書くことがないので)、一般論として起案した。
 この展示会について「児童ポルノ」を持ち出すこと自体が、誤解というか、誤導であり、奥村にコメントを求めてくるのもピント外れです。

●会田さんの作品は「児童ポルノだ」という指摘がありますが、法的に問題はないのでしょうか?
 展示内容を拝見していないのでなんとも言えませんが、内容によってはわいせつ図画(刑法175条1項)や不健全図書類(東京都青少年の健全な育成に関する条例8条)に該当する可能性があります。
 「児童ポルノではないか?」という指摘については、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律にいう児童ポルノというのは、実在する児童の姿態を描写したものですので(児童ポルノ法2条1項 大阪高判H12.10.24 大阪高判H15.9.18 大阪高判H21.9.2))、想像上の人物であれば、「児童ポルノ」には該当しません。児童ポルノ法は児童の性的な姿態を描写するという態様による性的虐待を規制して被害児童を救済するという趣旨の法律ですので(児童ポルノ法1条)、モデルの実在性が要件になっています。

●もし、法的に「児童ポルノ」だと認められた場合、会田さんや美術館は罰せられるのでしょうか?
 今回話題になっている、会田さんや美術館が児童ポルノ関係の罪に問われることは無いと考えますが、一般論としては、児童ポルノを展示する行為は、児童ポルノ公然陳列罪(7条4項 最高懲役5年)、展示するために所持する行為は児童ポルノ公然陳列目的所持罪(7条5項 最高懲役5年)になります。
 また、画家等が児童ポルノを作成した場合には、公然陳列目的製造罪(7条5項 最高懲役5年)ないし提供目的製造罪(7条4項 最高懲役5年)になると予想します。

●芸術と児童ポルノに法的な線引きはできるのでしょうか?
「・・・200字・・・」
 児童ポルノ法は第3条で「この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」とはいうものの、児童ポルノの要件は2条3項で厳格に規定されていますので、芸術作品であれば常に児童ポルノに該当しないということにはなりません。この点について京都地判H12.7.17は「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(以下「児童の裸体等」という。)を描写した写真または映像に児童ポルノ法二条二項にいう」性器等」、すなわち、性器、肛門、乳首が描写されているか否か、児童の裸体等の描写が当該写真またはビテオテープ等ガ全体に占める割合(時間や枚数)等の客観的要素に加え、児童の裸体等の描写叙述方法(具体的には、(1)性器等の描写について、これらを大きく描写したり、長時間描写しているか、(2)着衣の一部をめくって性器等を描写するなどして性器等を強調していないか、3児童のとっているポーズや動作等に扇情的な要素がないか、(4)児童の発育過程を記録するために海水浴や水浴びの様子などを写真やホームビデオに収録する場合のように、児童の裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性があるか等)をも検討し、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを一般通常人を基準として判断すべきである。そして、当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められないことがあるというべきである。」という基準を示しています。
また、京都地判H14.4.24は「弁護人は,前記a,b,cの各作品は芸術作品であるから児童ポルノに該当しないと主張する。しかしながら,芸術的価値のあるものであっても,これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えないから,弁護人の主張は,その余について判断するまでもなく理由がない。」と判示しており、その控訴審である大阪高判H14.9.12は「所論は・・・本件各写真集はいずれも芸術作品であり,児童ポルノに当たらない・・・というのである。所論は,芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響について,個々の写真ごとに検討すべきであるとの前提に立った上,本件各写真集は,いずれも,①表現方法に性器等を強調する傾向がない,②性欲を興奮又は刺激する内容がない,③児童のポーズに扇情的な要素がない,④児童の純真さを表現するという撮影者の意図が明らかである,⑤装丁も芸術作品に相応しいものであるから,児童ポルノに当たらないと主張する。しかしながら,芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響については,本件各写真集をそれぞれ全体的に見て検討すべきである上,本件各写真集は,いずれも,全裸あるいは半裸姿の児童が乳房,陰部等を露出している写真が相当部分を占めており,上記①②及び④は妥当しないし,また,そのため,仮に,上記③及び⑤が妥当するとしても,本件各写真集が児童ポルノに当たらないとはいえない。」と判示して、一定の場合には児童ポルノ該当性が否定される場合があることを認めています。

追記2/7
 お互い表現の自由ですよね。騒いでればいい。どっかの国の法律を持ち出してこれを「児童ポルノ」だからとかいうと、差し止めの根拠がないと言ってるようなものです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130207-00000092-mai-soci
市民団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」は、1月25日付で抗議文を発送。「公共性を持った施設が公開するのは差別と暴力を正当化することだ」などと批判している。
 南條史生館長は今月5日付で回答を同団体へ郵送。「諧謔(かいぎゃく)と洞察に満ちた会田芸術の本質は、彼の作品の総合的な紹介によってのみ、理解することができる」との見解をホームページ上に発表した。
 また、会田さんも「『人を不快な気分にさせないこと』という制限を芸術に課してはならない」とコメントしている。【岸桂子】

奇才の話題作、堪能 会田誠 回顧展
2013.02.06 産経新聞
 さらにきわどい作品は、「十八禁」という部屋に集められた。18歳未満は入れない展示室で、首輪でつながれ、手足が切断された少女像を描いた「犬」シリーズなどの作品がある。1月末、「女性の尊厳を著しく侵害し、傷つけている」などとして「ポルノ被害と性暴力を考える会」から撤去すべきとの抗議を受けている。これに対し、森美術館では、「多様な価値観が共存する現代社会で、われわれが忘却している、あるいは見ないようにしてきた現実に対峙(たいじ)し、日本の未来をともに考える機会とすることに、本展の開催意義があると考えています」などとコメントしている。一部の人しか行かないギャラリーならまだしも、公的な美術館での開催だったため、批判は当然あるべくして起こった。

 会田は常にタブーに挑み、常識に疑問を投げかける。それゆえ、批判が出るのは当たり前のこと。“要注意作家”なのだから。
 展覧会「会田誠展 天才でごめんなさい」は3月31日まで(会期中無休)。一般1500円。

産経新聞

http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/message.html
2013年2月6日

会田誠展について

みなさまへ
森美術館館長
南條史生

日頃より森美術館をご愛顧、ご支援いただき誠にありがとうございます。

 現在、弊館で開催中の「会田誠展:天才でごめんなさい」では、既にご案内のとおり、展示内容に性的表現を含む刺激の強い作品が含まれております。これらの作品は特定ギャラリーに展示し、18歳未満の方や、このような傾向の作品を不快に感じる方のご入場をご遠慮いただいておりますが、この展示内容についてさまざまなご意見が寄せられていることから、あらためて、本展の開催趣旨について、これらの作品の展示意図を含めお伝えしたいと思います。

 森美術館は、開館以来、内外の現代美術の重要なアーティストを日本、および世界に紹介することを一つの使命としてきました。現代美術は、我々の生きる現代社会の諸問題を実験的・批判的・挑発的に取り上げる場合も多く、まだ評価の定まらない多様な視点が登場することになります。森美術館は、法に抵触しない限り、そうした新しい視点をできるだけ広く紹介する立場を取っています。
 森美術館が、日本の重要な現代美術作家である会田誠の展覧会を構成するにあたって考慮したことは、これまで会田が制作した多様な作品を、偏ること無く、できる限り網羅的に紹介することでした。彼の作品は戦争、国家、愛、欲望、芸術などについて、しばしば常識にとらわれない独自の視点を開示しています。そして諧謔(かいぎゃく)と洞察に満ちた会田芸術の本質は、彼の作品の総合的な紹介によってのみ、理解することができると考えています。
 美術館は、美術を通して表現される様々な考え方の発表の場であり、それによって対話と議論の契機を生み出します。本展に関しても、多くの異なった意見を持つ方々が議論を交わすことが重要であると思われます。また日本の良さは、そのような個々人の多様な意見を自由に表現・発表できる社会となっていることではないでしょうか。森美術館は、今後も様々な現代美術の作品を、広く社会に紹介し、議論と対話の基盤となる役割を果たしていきたいと考えています。

みなさまへ

会田 誠
 僕の作品群の中には、性的なテーマとは限りませんが、人によってショッキングと受け取られる表現があると思います。そういう場合、僕は必ず、芸術における屈折表現――僕はそれをアイロニーと呼んでいますが――として使用しています(あるいは、僕個人はこの言葉をあまり使いませんが、『批評的に使用しています』と言い直してもいいのかもしれません)。けして単線的に、性的嗜好の満足、あるいは悪意の発露などを目的とすることはありません。また「万人に愛されること」「人を不快な気分にさせないこと」という制限を芸術に課してはいけないとも考えています。発表する場所や方法は法律に則ります。

追記2/10
 取材に来る人には失礼だが、こんな絵が児童ポルノに当たるわけがないので、取材自体がずれている。「お〜ま〜え〜は〜あ〜ほ〜か〜」とmusic sawに言わせたいくらい。それだと原稿にならないので、わいせつ図画や有害図書を検討しているのだが、どうせ消極的な結論になるので蛇足だ。
 通常の判断能力を持っている人に読ませても、「児童=生身の人間」だ。

「全裸の少女の絵」を展示した会田誠展は「児童ポルノ」にあたるのか?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130210-00000301-bengocom-soci
http://news.mynavi.jp/c_cobs/news/bengo4/2013/02/post-128.html
http://www.bengo4.com/topics/186/

園田寿 『解説 児童買春・児童ポルノ法』p29
写真、ビデオテープなど視覚によって認識できる媒体が規制対象となっている。
刑法175条のわいせつ物頒布等の罪と違って、規制対象に「文書」は合まれていない。したがって、小説などの文章や言葉による表現については、「児童ホルノ」ではない。視覚によって認識できるものであっても、絵については、法案の段階で議論があったが、最終的には制定されなかった。ただし、実在する児童を特定可能な程度にリアルに描写したような絵については、「その他の物」に該当する場合がある。
・・・・「絵」について
 写真やビデオは、生きた人聞の描写で-ある。児童ポルノでも半身の子供が被写体となる。たとえそれが演技であったとしても、撮影の際に子供に対する性的虐待がなされたことは間違いない。何よりもこの点が、児童ポルノをいかなる観点からも正当化できない点となる。
法案段階では児童ポルノの媒体として「絵|が含まれていた。しかし、児童を素材とするポルノチックな絵で表現されているものは、児童を性的な対象とする性癖そのものである。被写体が実存するケースとこれらは区別して考えなければならない。たとえどこの誰とは特定できないが、ランドセルを背負った女児との性行為をリアルに書いたようなイラスト類であっても、それは本法にいう「児童ポルノ」ではなく、「その他の物」にも含まれない
 確かに被害児童をリアルに描写した絵は存在しうるが、写真と同程度のリアルな描写の場合には「その他の物」に該当すると解釈することは可能であるし、今後も現実の性的虐待の現場を記録する手段としては、ほとんどが写真やビデオであるだろうから、ことさら「絵」を規定する必要性はない([文献110-57 は、今後「何らかの対応は迫られるのではないか」とする)

文献110. 坪井節子「子ども買春・子どもポルノ禁止法」法学セミナ537号54頁(1999年)

森山真弓 よくわかる児童買春、児童ポルノ禁止法p121
Q35
かつて衆議院に提案されていたいわゆる自社さ案では、児童ポルノの定義に「絵」が例示されていましたが、この法律では絵が規定されていません。絵は児童ポルノには含まれないのでしょうか。
A
この法律では、児童ポルノの定義に「絵」を明記していませんが、「絵」は児童ポルノの定義の中の「その他の物」に含まれ、児童ポルノに該当することもあり得ると考えます。
この法律では、児童ポルノとは児童の一定の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものとされており、ここにいう「児童」とは、18歳未満の実在する児童をいうものです。したがって、絵についても実在する児童の姿態を描写したものと認められるなら、児童ポルノに当たり得ることになります。
自社さ案は、例示として「絵jを掲げていましたが、実在しない架空の児童を描写したポルノコミックのようなものが児童ポルノに該当するといった誤解を生ずるおそれがありましたので、この法律では例示から落としています。

自社さ三党合意法案
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案
第二条この法律において「児童Jとは、十八歳に満たない者をいう
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、性器、肛門若しくは乳首に接触することをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、絵、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう
一 性交等に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの
二 衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
三 専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)

追記2/13
 積極的評価が出てきた。

<ウエーブ 美術>村田真森美術館の<ウエーブ 美術>村田真森美術館会田誠展*過激な表現 隔離と抗議と
2013.02.11 北海道新聞朝刊全道 11頁 朝文 (全1,068字) 

 手足を切断され犬の首輪をつけられた全裸の女性、宇宙空間を漂う長大なウンコ、ゼロ戦空爆で火の海と化したニューヨーク…。東京・六本木の森美術館で開かれている会田誠の個展「会田誠展:天才でごめんなさい」(3月31日まで)には、エロ・グロ・ナンセンスにあふれる過激な作品が並んでいる。

 会田誠は1990年代初めから、日本社会の歪(ひず)みを映し出す刺激的な絵画を発表。その卓越した描写力と不謹慎なまでの諧謔(かいぎゃく)精神により評価を高めてきたが、あまりの過激さゆえか美術館での展示の機会は少なかった。したがって20年におよぶ画業を振り返る今回の個展は快挙といっていい。ただ個人的な感想を述べれば、人間の暗部をえぐるような毒々しい作品が体よく美術館に収まってしまったことに若干のものたりなさを感じたのも事実だ。

 ところが、まったく反対の立場から、主催した同館などに抗議する団体が現れた。「ポルノ被害と性暴力を考える会」だ。冒頭の手足を切断され首輪をつけられた少女を描いた「犬」シリーズを例に挙げて問題視し、「残虐な児童ポルノ」「下劣な性差別」と糾弾している。たしかに「残虐」を絵に描いたような作品だが、文字どおりこれは絵であって写真でも動画でもない。実在のモデルもいないから被害者もいないし、そもそも「少女」とも特定できない。こういうのを「児童ポルノ」というのだろうか。

 百歩譲ってこれを「ポルノ」「性差別」だとしても、森美術館はあらかじめ「性的表現を含む刺激の強い作品が含まれている」旨の注意書きを掲げ、しかも当該作品を「18禁」の展示室に隔離するなど配慮しているのだ。しかし一方で「隔離」したとはいっても、美術館という公共的な場所で公開していることに変わりはない。しかも超高層ビルの最上階にある森美術館は展望台と同じチケットで入れるので、観光に訪れた善男善女が展覧会の内容も知らずに立ち寄ることも多いはず。よくも悪くも一般の美術館以上に公に開かれているのだから、こうしたリスクがつきまとうのは避けられない。南條史生館長は「多くの異なった意見を持つ方々が議論を交わすことが重要」との立場だ。
 ところで、この騒動のおかげで「体よく美術館に収まってしまった」という当初の感想はチャラになり、ようやく会田誠らしい展覧会になったというべきだろう。
(むらた・まこと=バンカートスクール校長、美術ジャーナリスト)

http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/130213/cpd1302130504009-n1.htm
 黒いカーテンに覆われ、18歳未満は入れない特定のギャラリーには、手足を切断された少女や、北斎の浮世絵を思わせる、複数の頭を持つ怪獣と少女のセックスを描いた作品がある。
 会田作品には多くの作風や様式が見られ、分類は不可能だ。畑の土の中から、ヴィトンのバッグを収穫する着物姿の農民の絵。サクラの花の代わりに、少女の笑った顔がいくつもついた盆栽の像は、日本の「カワイイ」文化を揶揄(やゆ)している。

屏風の大画面に描かれているのは、倒れかけた電信柱に止まったカラスだ。くちばしに人体の一部をくわえている。大震災後を暗示するような情景は、等伯の屏風絵を思い出させる。

 会田の描くポルノ的なものは、鑑賞者を刺激する多彩な表現手段の一つにすぎない。見る者に、日本文化のありふれた側面を見直し、一見平穏なこの国に潜んでいる何かに気づかせようとしている。

 会田ほどの力量がなければ、こうした展覧会は、稚拙でただわいせつなものという印象を与えるだろう。卓越した技量によって描かれた画面は端正で、一見しただけでは、恐ろしさを見落としてしまう。

 SM的な手足を切断された少女の絵は、和紙にアクリル絵の具で描かれ、抑えた色調は伝統的な日本画の様式だ。古典的な日本の山の風景も近づいてよく見ると、サラリーマンの死体が累々と積み重なっている。
 「会田誠展:天才でごめんなさい」は、東京・六本木の森美術館で3月31日まで開催中。(ブルームバーグ Frederik Balfour)