児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

文献にみえる慰謝料の金額

 有用な文献はないですね。
 むしろ、確定記録の判決書に出てくる行為態様と示談金額を集計した方が早いです。

斎藤修「慰謝料算定の理論」P299
刑事事件においては、実務上は被害者が慰謝料を請求し示談によって支払われる場合が多い。とりわけ性犯罪やセクシユアルハラスメノ卜の事件ではこの傾向が
見られる。このため公表される機会が限られており、慰謝料算定の基準がかなり不明確であるのが原状である。刑事事件における慰謝料の場合には、被疑者又は被告人が被害者と早期にに交渉し決着決する必要性が高いことから、通常の示談交渉の場合の基準を適用することが困難であるという事情もあり、個別的具体的な解決とならざるを得ない。
この分野における近時の研究によれば、実務上次のような現状であることが指摘されている。すなわち、
?被疑者ー被告人のために有利な処分(判決)を得るため、被告者からの過大とも思える要求制に応えさるをえないことは、弁護士が時として経験することである。
?被疑者や被告人の資力が乏しいため、僅かな示談額しか提示できないこともある。
?被害者の被害感情が非常に強い時は、金額にかかわらず示談は成立しないこともある(千葉県弁護士会編『慰謝料算定の実務344頁)

千葉県弁護士会編「慰謝料算定の実務」P344
1 総論
性犯罪においては財産的な損害を観念することが困難である。したがって、ここで支払われる全員は、そのまま被害者の精神的損害を償うもの、すなわち慰謝料ということができる。
性犯罪における慰謝料額が民事裁判を通じて算定される場合、犯行態様がもっとも大きな要素として考慮されるが、刑事事件における性犯罪の示談額を見た場合、加害者の支払能力が重要な要素となっている。青少年保護育成条例違反を除き、各犯罪において一定の金額分布は認められるものの、同一罪名においては犯行態様と示談金額の明確な均衡は認められない。



(3) 青少年保護育成条例
アンケート回収結果のすべてが示談成立事案である。分布を見ると、0円が2件、30万円が1件、70万円がI件、と様々であって一定の傾向を認めがたい。
本罪の保護法益に対する理解や事案によっては、果たして金銭賠償による示談になじむかどうか微妙なこともある。援助交際事案において、「被害者」である女干生徒に示談金として金員を交付することが二次的な援助交際になるのではないかとの問題意識から、示談金額を0円としたという報告があった。