児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

放火罪につき犯行後警察に出頭したが「自首」にならなかった事例(高知地裁h24.9.26)

 量刑上考慮されるにとどまっています。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121217125808.pdf
【自首の主張について】
弁護人は,被告人に自首が成立すると主張するので検討する。
まず,捜査機関は,本件犯行による火災が鎮火した後,本件家屋内の2か所に,床の炭化や新聞紙の束の焼損が認められたこと,これら2か所の直近に火元が存在しなかったことから,上記火災が何者かの放火によるものであると判断していたのであるから,遅くとも被告人が警察署に出頭した平成24年5月30日午後6時25分の時点までには,合理的な根拠に基づいて,上記火災が何者かの放火によるものであると判断していたものと認められる。
次に,捜査機関は,焼損箇所がいずれも本件家屋内であること,本件家屋で唯一施錠されていなかった車庫奥の出入口から被告人と夫以外の第三者が侵入し,放火したとは考えにくいこと,被告人が出火後所在不明であること,夫が火災発生時には稼働先にいた事実が夫の同僚の供述により裏付けられたこと,夫が「妻は何日か前からしんどいと頻繁に言っていたので,もしかしたら妻が火を点けたのかもしれない」などと供述していることなどから,被告人が本件犯行を行ったと判断したと認められるから,遅くとも被告人が警察署に出頭した時点までには,合理的な根拠に基づき被告人が犯人であると特定していたということができる。
したがって,被告人に自首は成立しない。
【量刑の理由】
このほかに,被告人が,本件犯行当日に警察署に出頭し,本件犯行を反省していること,被告人の夫が被告人を許し,今後,被告人と夫の田舎で同居して監督を続け,妄想性人格障害適応障害について病院に通わせる旨法廷で約束しており,被告人もそれを受け入れる意思があることなどを考慮すれば,被告人に対しては,主文の刑を科し,その執行を4年間猶予して保護観察に付するのが相当である。
(検察官石垣麗子及び同菊池昌晴並びに弁護人田本捷太郎各出席。検察官の求刑:
懲役4年,没収,弁護人の科刑意見:懲役2年6月,執行猶予3年,付保護観察)
平成24年9月26日
高知地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 平 出 喜 一
裁判官 大 橋 弘 治
裁判官 佃 良 平