児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「全員20歳以上に見えた」ので児童買春罪は立件しません(北海道警)

 北海道に居る人は、北海道青少年健全育成条例65条により身分証明書で淫行する際には年齢確認する義務があって、そもそも13歳16歳と「年齢を知らずに」淫行することはないはずです。

 客観面で児童買春罪を満たしていれば逮捕状が出ますので普通は児童買春で逮捕して、当初「年齢を知らなかった」という弁解をしていても、長期の勾留や公判請求をちらつかせて「児童だと知ってました」と「任意」供述させて罰金にするところですが、「慎重に」捜査しているようです。
 「対償供与約束」をマスクして、青少年条例の知情条項で過失で有罪にするという方法もよく見かけましたが、判例が出たらしく、それもできなくなりました。
 淫行について「年齢を知らなかった」と弁解する際に「対償供与・対償供与約束があった」と付け加えれば、無罪になるというのです。

北海道青少年健全育成条例の解説H19
(淫行等の禁止)
第38条
1何人も、青少年に対し、淫行文はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年にわいせつな行為をさせてはならない。
3 何人も、青少年に対し、淫行文はわいせつな行為を教え、又は見せてはならない。


第65条
第34条、第38条文は第39条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第57条、第58条、第60条又は第61条(第3号に係る部分に限る。)の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

【趣旨】
第57条から第65条までは、この条例が確実に守られ、その目的が達成されることを担保するため、違反した者に対する罰則を規定したものである。
また、第65条は、条文の各規定に違反した者は、青少年の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることができない旨を規定したもので、相手方が青少年であるか否かの確認を義務付けたものである。

2 第65条中「過失がないとき」とは、青少年に年齢、生年月日を尋ね、身分証明書、学生証の提示を求めるなど、客観的に妥当な年齢確認を行ったにもかかわらず、当該青少年が年齢を偽ったり、虚偽の身分証明書を提示し、しかも客観的に18歳以上の者として誤認されるような状態である場合など、違反者の側に過失がないと認められる場合をいう。
なお、この場合の過失がないことの証明の挙証責任は、違反者が負うことになる。

東京高裁平成24年7月17日
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書(添付資料を除く。)及び控訴趣意補充書各記載のとおりであるから,これらを引用する。
第1法令適用の誤りの論旨(控訴理由第1ないし第7)について
1 論旨は,要するに,
(1)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ等処罰法」という。)の施行により,県青少年健全育成条例(以下,単に「条例」という。)の淫行処罰規定は当然に失効したにもかかわらず,原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点
(2)原判示第5の児童と被告人との間には対償供与の約束があったのであるから,条例を適用する余地がないにもかかわらず,同第5の所為に対して条例を適用した点
(3)原判示第5の所為は「みだらな性行為」に当たらないにもかかわらず,それに当たるとした点,
・・・で,原判決には法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討すると/原判決に所論のような法令適用の誤りは認められない。
以下,順次説明する。
(1)原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点について
所論は,18歳未満の者との性行為については,国法である児童買春・児童ポルノ等処罰法のみで全国一律に有償の場合のみを規制する趣旨であるとして,同法の施行により条例の淫行処罰規定は当然に失効しかと主張する。
そこで検討すると,児童買春・児童ポルノ等処罰法が,対償を伴う児童との性交等のみを児童買春として処罰することとし,対償を伴わない児童との性交等を規律する明文の規定を置いていないのは,後者につき,いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されず,それぞれの普通地方公共団体において,その地方の実情に応じて,別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される。
そうすると,青少年に対するみだらな性行為等を禁止し,これに違反した者を処罰することとした条例35条1項,53条のいわゆる淫行処罰規定は,児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって,児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失ったが,それ以外の部分については,なお効力を有するものと解される(平成11年法律第52号附則2条1項参照)。
したがって,児童買春に該当しない原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して原判決が上記条例の規定を適用したことに誤りはない。
所論は採用できない。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121026/crm12102601370002-n1.htm
刑事の買春容疑立件せず 北海道警「証拠不十分」
2012.10.26 01:36
 北海道警が18歳未満の複数の少女と性行為をした疑いがある本部薬物銃器対策課の40代の男性警部補について、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑などでの立件を見送っていたことが25日、分かった。被害に遭った中には13歳の中学生も含まれていたが、「全員20歳以上に見えた」などと説明したという。

 道警は警部補を25日付で停職3カ月の懲戒処分とした。立件見送りについては「証拠が不十分」としている。警部補は退職の意向を示しているという。

 道警監察官室によると、警部補には今年3月から7月までの間、出会い系サイトで知り合った中学2年の女子生徒(13)や無職の少女(16)ら数人に金を渡し、札幌市内のホテルで性行為をした疑いがあり、道警が事情聴取していた。少女らは出会い系サイトには成人と自己紹介しており、監察官室が任意で行った少女らへの事情聴取でも立件に足りる情報は出なかったという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121025-00000138-jij-soci
道警監察官室によると、警部補は3月以降、出会い系サイトで知り合った女性4人に金を払い、いかがわしい行為をした。うち2人は中学2年の女子生徒(13)と無職の少女(16)だった。
 別の事件で取り調べを受けた少女が「援助交際している」と供述し発覚。道警は、警部補は少女2人が18歳未満とは分からなかったとして、立件しない方針。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/414562.html
少女と関係 警部補処分 道警 児童買春容疑立件見送り(10/26 06:40)
 道警刑事部の40代の男性警部補が18歳未満の少女にいかがわしい行為をしたなどとして、道警は25日、警部補を停職3カ月の懲戒処分とした。ただ、相手が18歳未満だと知らなかったとみて児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑での立件は見送った。警部補は26日付で辞職する。

 道警監察官室によると、警部補は今年3〜7月、札幌市内のホテルで、出会い系サイトで知り合った無職の少女(16)と中学2年の女子生徒(13)に現金を渡し、いかがわしい行為をするなどした。調べに対し、警部補は「20歳以上にしか見えなかった」などと説明。少女2人も年齢を偽っていたという。<北海道新聞10月26日朝刊掲載>