児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ生中継、男逮捕=女子中生に脱がせた容疑−大阪府警

 有体物を陳列したというには、ミリセコンドじゃだめだという裁判例があります。岡山レディースナイト事件
 とりあえず新潟県青少年条例(わいせつな行為を教える)くらいでいけばどうか?

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012101500793
児童ポルノ生中継、男逮捕=女子中生に脱がせた容疑−大阪府警
 インターネット電話を使い、女子中学生が服を脱ぐ様子を生中継したとして、大阪府警サイバー犯罪対策室は15日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反(公然陳列)の疑いでを逮捕した。容疑を認めているという。
 逮捕容疑は、7月23日夜、新潟県の中学2年の女子生徒(14)の裸の映像をネット動画配信サイトを通じて不特定多数に生中継した疑い。
 同室によると、容疑者は同日午後10時40分ごろから約45分間、ネット電話「スカイプ」を通じて女子生徒と会話。開始約10分で、服を脱ぐよう言葉巧みに誘導していたという。(2012/10/15-18:53)

岡山レディースナイト事件
岡山地方裁判所、平成11年(わ)第524号わいせつ図画公然陳列被告事件、平成12年6月30日判決(確定)

平成一二年六月三〇日宣告
(本位的訴因を認定せず予備的訴因を認定した理由)

一 本件の本位的訴因は、「被告人四名は、いわゆるインターネット上に「レディースナイト」と称するホームページを開設するものであるが、わいせつ映像を不特定多数のインターネット利用者に有料で閲覧させようと企て、別紙犯罪行為一覧表出演女性欄記載の雛子ことXほか五名と共謀の上、同表犯行年月日時欄記載のとおり、平成一一年七月二二日午後九時四〇分ころから同年九月四日午前零時五九分ころまでの間、前後七回にわたり、福岡県*****所在の***二〇一号室において、女性が陰部を露出する映像データを同所に設置されたサーバーコンピューターの記憶装置内に、順次、記憶・蔵置させ、インターネットの設備を有する不特定多数のインターネット利用者が、電話回線を使用し、右データを受信した上、「リアルプレーヤー」と称する映像再生ソフトを使用すればわいせつ映像を再生閲覧することが可能な状況を設定し、右サーバーコンピューターにアクセスしてきたIら不特定多数の者に対して右データを送信して、右わいせつ映像のデータを再生閲覧させ、もって、わいせつ映像を公然と陳列したものである」というのであるが、当裁判所は、以下に説示するとおり、本件犯行は、本位的訴因であるわいせつ図画公然陳列罪には該当せず、予備的訴因である公然わいせつ罪に該当すると判断した。

 二 関係証拠によれば、被告人らが開設したホームページ「レディースナイト」からインターネット利用者に映像が配信される仕組みは、以下のとおりであることが認められる。

 1 判示***二〇一号室内には、コンピューターが数台設置され、スタジオが設けられており。そのスタジオで、女性が、陰部を露出するなどの演技をする。

 2 女性が演技している状況は、CCDカメラで撮影され、その映像データが、リアルキャプチャーステーションでパケット化されて、リアルーサーバーコンピューターに送り込まれる。この映像は動画であり、データはデジタル化されている。リアルサーバーコンピューターのメモリ上には、バッファ領域が作成されており、パケット化されたデータは、そのバッファ領域に順次送り込まれる。そして、メモリ上に送り込まれたデータは、後から新しいデータが送り込まれるのにつれて、順次上書きされて消去される。データがメモリ上のバッファ領域に存在する時間は、数ミリセコンド(ミリセコンドは千分の一秒)である。

 3 インターネットの利用者は、レディースナイトの映像を見るためには、その会員になり、リアルプレーヤーというソフトを入手し、これを用いて、レデイースナイトから配信されたデータを復元して映像を観覧する。

 4 会員からレディースナイトに対し、配信要求がされない限り、リアルサーバーコンピューターのメモリ上のバッファ領域にあるデータは数ミリセコンドで消去されていくが、会員がレディースナイトのウェブサーバーコンピューターにアクセスして配信要求をすると、ウェブサーバーコンピューターからリアルサーバーコンピューターに会員のIPアドレスが通知され、それを受けて、映像データが、リアルサーバーコンピューターから送り出され、ウェブサーバーコンピューターを通じて会員に配信される。

 5 会員は、配信されてきた映像を見ながら、わいせつな演技をしている女性とチャットによる会話をすることもできるが、女性の演技と同時進行でしか、その演技の映像を観覧することはできない。また、配信されたデータをダウンロードし、後にその映像を観覧することは、通常人ではデータを復元することができないから不可能である。なお、バッファ領域の大きさや、電話回線の使用状況等により、女性がわいせつな演技をして、その映像を会員が観覧するまでの間には、最大二分間程度の時間差が生じる。

 三 刑法一七五条所定のわいせつ物であるというためには、少なくともわいせつ情報が化体された有体物であることを要すると解すべきであるところ、検察官は、前記システムにおいても、わいせつ情報がメモリ上に記憶蔵置されて存在しているから、わいせつ情報を記憶しているメモリは、わいせつ情報を化体した有体物である旨主張する。
 しかし、前記のとおり、リアルサーバーコンピューターのメモリ上にパケット化された個々のわいせつ映像のデータが存在する時間は、数ミリセコンドであって、人間の感覚では、時間として全く知覚できない程の極めて短い時間であることに照らせば、パケット化された個々のわいせつ映像のデータは、メモリ上に記憶蔵置されるのではなく、メモリ上を通過しているだけであると認定するのが相当である。この点について、検察官は、パケット化された映像データのみをみると、それがメモリ上に記憶されている時間はごく短時間であるとしても、女性がわいせつな演技をしている間は、その演技の時間だけ一連のわいせつな演技の映像データがメモリ上に順次記憶され続けており、演技時間だけのわいせつな映像を構成するデータがメモリ上に存在していたのであるから、その間、メモリは、わいせつ性を帯びた有体物である旨主張するのであるが、一連のわいせつな演技の映像データにおいても、リアルサーバーコンピューターのメモリ上のわいせつ情報は、データが送り込まれている場合にのみ存在し、リアルサーバーコンピューターに映像データが送り込まれない限り、そのメモリ上には何の情報も存在していないこと、メモリ上のわいせつ情報の中身は順次変容しており、そのデータが存在しているときに、その配信を受けなければ、数秒前の映像データすらも配信を受けることがでないことにかんがみると、個々のパケット化されたデータではなく、一連のわいせつな演技の映像データについて注目してみても、やはり、わいせつ映像のデータは、メモリ上に記憶蔵置されるのではなく、一時的に存在するのみで、メモリ上を通過しているだけであると認定するほかない。
 したがって、リアルサーバーコンピューターのメモリが、わいせつ情報を化体した有体物であるということはできないから、本件犯行は、本位的訴因であるわいせつ図画公然陳列罪には当たらない。
 そして、被告人らは、不特定の者に、女性のわいせつな演技を観覧させる意図のもとに、インターネットを利用して、女性にわいせつな行為をさせ、その映像を不特定の会員に観覧させたのであるから、本件犯行は、予備的訴因である公然わいせつ罪に該当する

追記10/27
 詳細が報道されていますが、この記事を見ても、犯人側で媒体に記録していたという事実は出てきません。
 こんなのは児童ポルノ罪にはなりませんから、被害者の富田林の方から連絡を頂ければ、無料で弁護します。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20121027/dms1210270911000-n1.htm
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/601857/
■脱がせる「ゲーム」生中継

 このやりとりがひそかにネット上で不特定多数にさらされていたことを、このとき女子中学生はまったく気付いていなかった。

 大阪府警によると、男は通話の途中から動画配信ソフト「ニコ生デスクトップキャプチャー」を立ち上げ、動画配信サイト「FC2ライブ」で、すべての映像を生中継したのだという。動画は約2500人が視聴していた。

 だが、視聴者はおもしろ半分のやじ馬ばかりではなかった。同サイトを利用していた静岡県の男性が、この生中継動画を児童ポルノの証拠としてダウンロードして保存。静岡県警と大阪府警に翌日相談したのだ。男性は男が以前にも女性とのスカイプ通話映像を勝手に生中継していたことを問題視、その動向に目を光らせていたという。結果、男は9月19日、府警に児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕された。

 意外だったのは、この男のPCに当時の映像が保存されていなかったことだ。実は男の目的は性的欲求を満たすことではなかった。

 府警によると、「女性としゃべるのが好きだったし、動画をみた視聴者からコメントが寄せられることが喜びだった」と動機について供述しているという。捜査関係者は「以前から、見知らぬ女性に住所や名前を聞き出すという行為を、ゲーム感覚で楽しんでいたようだ」と明かす。

 男はスカイプちゃんねるで女性の書き込みを見つけては手当たり次第にコンタクトをとり、30分以内に電話番号を聞き出せなかったら「負け」として、一方的に通話を終える自主ルールを定めていたという。

 これまでは個人情報を得る“勝負”だけで満足していたが、生中継が男の価値観を変えていく。

 「シナリオがなくて、この先どう展開するかわからないところがリアルだったし、コメントも盛り上がった」

 より大きな満足感を得るために自らハードルを上げ、「脱がせたら勝ち」という新たな“ゲーム”に挑んだとみられる。

■中高生に「セクスティング」が流行?

 府警によると、今回のように、動画サイトで生中継された児童ポルノ映像で発信者が摘発される例は、全国的にも珍しいという。

 というのも「サイバーパトロールはしているが、生中継のようにデータとして残らないものだと、発見や摘発が難しい」(捜査関係者)からだ。

 今回のケースでも、男が動画に付けていたタイトルは「スカイプちゃんねるで女の子としゃべり中」という当たり障りないもの。最初のうちは女子中学生と話しているだけで、法に抵触する内容ではなかった。

 その後女子中学生が胸を見せて児童ポルノ映像となったのはほんの数秒。たまたま視聴者が証拠として動画をダウンロードしていたため、立件にこぎ着けられた格好だ。

 「こうした犯罪は今後増えていくのではないか」と指摘するのは、ネット犯罪に詳しい甲南大学法科大学院園田寿教授(刑法)だ。その背景には互いの意思で裸体を見せ合ったり、写真に撮って送り合ったりする行為「セクスティング」の流行がある。

 スマートフォンスカイプなどを通じたセクスティングは米国などで社会問題になっている現象だが、園田教授によると「数年前から日本でも中高生を中心に広がっている」という。

 だが、恋人同士だけでやりとりするはずだった映像や写真がネット上に流出したり、脅迫の材料に使われたりする例は枚挙にいとまがない。園田教授は「見知らぬ相手はもちろん、恋人同士であっても、安易に性的な映像や写真を発信することは控えるべきだ」と警鐘を鳴らしている。



 児童ポルノについてもわいせつ図画についても有体物であることが要件です。

札幌高等裁判所判決平成21年6月16日
【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成21年317頁
 論旨に対する判断に先立ち,職権で原審記録を調査して検討するに,原判決には次のような法令の解釈適用の誤りがある。
 すなわち,本件訴因変更後の公訴事実中,わいせつ図画販売目的所持罪に係る公訴事実の要旨は,「被告人は,インターネット上に開設したホームページを利用して,不特定又は多数のインターネット利用者を対象として」「わいせつ図画を販売」「しようと企て,」「男女の性交場面等を露骨に撮影記録したわいせつ図画である動画ファイルを記憶・蔵置させたファイルサーバー2台及びハードディスク3台を,これらの動画ファイルを不特定又は多数の者に」「販売する目的で所持した。」というものであるが,同罪の「販売目的」の対象となる「わいせつな文書,図画その他の物」(刑法175条前段)とは有体物であって,単なる電子データそのものや「電磁的記録その他の記録」(法7条1項参照)はこれに含まれないと解されるから,有体物ではない「動画ファイル」を販売する目的でファイルサーバー等を所持したとの上記公訴事実自体がわいせつ図画販売目的所持罪を構成しないというべきである。(なお,関係証拠を検討しても,被告人が,わいせつな画像データを記憶,蔵置させたファイルサーバー及びハードディスクを所持し,このわいせつな画像データをインターネット等の電気通信回線を通じて第三者にダウンロードさせてその対償を得ていたことは認められるが,このファイルサーバー及びハードディスク自体を販売したり,わいせつな画像データをCDやDVDなどの有体物に記憶させてこれを販売したりする目的を有していたことを認めるに足りる証拠は存在しない。)
 したがって,上記公訴事実と同一の事実を「犯罪事実」の項の2において認定し,刑法175条後段を適用してわいせつ図画販売目的所持罪の成立を認めた原判決は,同罪に関する法令の解釈適用を誤っており,この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れないところ,原判決は,「犯罪事実」の項の2の事実について,わいせつ図画販売目的所持罪と児童ポルノ提供目的所持罪が成立して両罪は観念的競合であるとし,さらに,同項の1と2の事実を包括一罪として1個の刑を科しているので,原判決は結局その全部について破棄を免れない。

       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
大阪高等裁判所平成15年9月18日
【掲載誌】  高等裁判所刑事判例集56巻3号1頁
       LLI/DB 判例秘書登載
(6) 原判示第2の事実についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第1,第2)について
所論は,原判示第2の事実について,有体物に化体しない画像データそのものは児童買春児童ポルノ禁止法2条所定の児童ポルノに該当せず(控訴理由第1),また,有償の譲渡行為といえるためには現実の交付を伴うことが必要であるところ,本件ではこれがない(控訴理由第2)にもかかわらず,それぞれ児童ポルノである画像データを販売したと認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
そこで,検討するに,原判示第2の事実は,被告人が,各購入者に対して,自己がサーバーコンピューター上に開設したホームページのアドレス及びパスワードをメールで送信し,B及びCに対してはそれぞれの自宅に設置されたパーソナルコンピューター内のハードディスクにダウンロードさせる方法で(原判示第2の1及び2の各事実),Dに対してはその自宅に設置されたパーソナルコンピューター内のフロッピーディスクにダウンロードさせる方法で(同3の事実),児童ポルノである画像データを販売した事実を認定していることが明らかである。ところで,【要旨】児童買春児童ポルノ禁止法2条3項は,「『児童ポルノ』とは,写真,ビデオテープその他の物であって,次の各号のいずれかに該当するものをいう。」と規定しており,「その他の物」については,その例示として掲げられている物が写真,ビデオテープであることからすれば,文理解釈上,これらと同様に同条項各号に掲げられた視覚により認識することができる方法により描写した情報が化体された有体物をいうものと解すべきであるところ,関係各証拠によれば,本件において児童ポルノに該当するとされている画像データは,被告人において,契約を結んだ東京都千代田区a町b丁目c番地d所在の株式会社E管理のサーバーコンピューターにホームページを開設し,同コンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた電磁的記録であり,このような電磁的記録そのものは有体物に当たらないことは明らかである。そして,児童買春児童ポルノ禁止法7条の児童ポルノ販売,頒布罪における販売ないしは頒布は,不特定又は多数の人に対する有償の所有権の移転を伴う譲渡行為ないしそれ以外の方法による交付行為をいうものであるところ,本件において,上記B,C及びDは,それぞれ,被告人から教示されたホームページアドレス等を自己のパーソナルコンピューターにおいて入力することにより,被告人が開設した上記会社管理のサーバーコンピューター内のホームページにアクセスし,同サーバーコンピューターのディスクアレイに記憶,蔵置された本件の画像データをそれぞれ自己のパーソナルコンピューターにダウンロードし,ハードディスクないしはフロッピーディスクにその画像データを記憶,蔵置させて画像データを入手していることが認められるが,上記サーバーコンピューターのディスクアレイ上に記憶,蔵置された画像データそのものは上記Bらのダウンロードによってもその電磁的記録としては何らの変化は生じていないのであり,画像データの入手者であるBらに上記サーバーコンピューターに記憶,蔵置された電磁的記録そのものの占有支配が移転したと見る余地もなく,この点で原判示第2に認定された事実のもとでは児童ポルノの販売に該当する事実もないというべきである。
そうすると,原判決には児童買春児童ポルノ禁止法7条所定の児童ポルノ販売罪に該当しない事実を同罪に該当するとして有罪とした法令の解釈適用の誤りがあり,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
論旨は理由がある。
1 破棄自判