児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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強姦被告事件の私選弁護人に対して、慰謝料等33万円が認容された事例(富山地裁h23.12.14)

富山地方裁判所平成23年12月14日
       主   文

 1 被告Y1は,原告に対し,550万円及びこれに対する平成15年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告Y2は,原告に対し,33万円及びこれに対する平成22年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 原告の被告Y1,被告Y2に対するその余の請求及び被告Y4,被告Y3に対する請求をいずれも棄却する。
 4 訴訟費用は,原告と被告らに生じた費用を25分し,原告と被告Y1との間においては,その14を被告Y1の,その1を原告の各負担とし,原告と被告Y2との間においては,その1を被告Y2の,その4を原告の各負担とし,原告と被告Y4,被告Y3との間においては,その5を原告の負担とする。
 5 この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
 1 被告Y1に対する請求
   主文1項と同旨
 2 被告Y2に対する請求
   被告Y2は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成22年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告Y4及び被告Y3に対する請求
   被告Y4及び被告Y3は,原告に対し,連帯して110万円及びこれに対する平成22年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 被告Y1,被告Y4及び被告Y3に対する請求
   被告Y1,被告Y4及び被告Y3は,原告に対し,自ら又は第三者を介するなどいかなる方法によっても,電話をかけ,面会を要求し,又は書面を送付してはならない。
第2 事案の概要
 1 本件は,後記本件事件の被害者である原告が,
  (1) 後記本件被告事件につき有罪判決を受けた被告Y1に対し,同被告による強姦の被害を受けたことなどによって著しい精神的苦痛を被ったなどと主張して,不法行為に基づく損害金550万円及びこれに対する不法行為の日である平成15年11月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,
  (2) 後記本件被告事件の私選弁護人であった被告Y2に対し,原告の意向に反して示談に応じるよう繰り返し連絡したり,被告Y1の両親である被告Y4及び被告Y3(以下,被告Y4と被告Y3を合わせて「被告Y4ら」という。)に原告の住所を教えたりした被告Y2の違法行為によって精神的苦痛を被ったなどと主張して,不法行為に基づく損害金220万円及びこれに対する不法行為後の日である平成22年10月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,
  (3) 被告Y4らに対し,原告の意向に反して原告宅を訪問し,示談を求めた被告Y4らの違法行為によって精神的苦痛を被ったなどと主張して,不法行為に基づく損害金110万円及び不法行為後の日である平成22年10月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,
  (4) 被告Y1及び被告Y4らに対し,被告Y1及び被告Y4らからの接触を受けると平穏な生活を害されるなどと主張して,人格権に基づき原告に対する電話,面会の要求又は書面の送付の禁止を,
  それぞれ求めた事案である。
 2 前提事実
  (1) 被告ら
   ア 被告Y2は,富山県弁護士会所属の弁護士である。
   イ 被告Y1は,被告Y4及び被告Y3の子である。
   (以上,弁論の全趣旨)
  (2) 本件事件
   ア ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
   イ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
  (3) 本件被告事件の弁護人には,当初,国選弁護人として弁護士越後雅俊(以下「越後弁護士」という。)が選任されたが,その後の平成22年6月16日,被告Y1は,被告Y2を私選弁護人として選任し,越後弁護士は解任された。同日から本件被告事件の判決確定までの間の本件被告事件の弁護活動はすべて被告Y2が行った。(争いのない事実,甲11,弁論の全趣旨)
  (4) 被告Y2は,被告Y1を代理して,平成22年6月21日,高岡簡易裁判所に対し,被告Y1を申立人,原告を相手方とし,申立人である被告Y1が相手方である原告に対して相当額の不法行為に基づく損害金を支払うことの調停を求めて調停を申し立てた(同庁平成22年(ノ)第158号債務弁済協定調停事件。以下「本件調停事件」という。)。(乙3,弁論の全趣旨)
 3 争点
  (1) 被告Y2による不法行為の成否(争点1)
  (2) 被告Y4らによる不法行為の成否(争点2)
  (3) 損害の額(争点3)
  (4) 被告Y1及び被告Y4らに対する差止請求権の存否(争点4)
 4 争点に対する当事者の主張
  (1) 争点1(被告Y2による不法行為の成否)について
  【原告の主張】
   ア 被告Y2の示談要求
    (ア) 原告は,被告Y1の逮捕後,担当の警察官及び検察官(以下「担当検察官」という。)に対し,被告Y1やその家族に自らの住所を知られたくないこと及び示談に応じる意思はないことを申し入れ,担当検察官は,越後弁護士に対し,原告からの申入れの内容を伝えた。
    (イ) 越後弁護士は,その後,本件被告事件の弁護人となった被告Y2に対し,本件被告事件に係る書類等を引き継ぐ際,原告の上記申入れの内容も伝えた。
    (ウ) それにもかかわらず,被告Y2は,原告に対し,平成22年6月21日付け,同年7月5日付け,同月14日付けの各書面をもって繰り返し示談を求め,被告Y4らに助言し,同月29日,被告Y4らをして原告宅を突然訪問して示談の要求をさせ,さらに,原告の夫である■■■(以下「夫■」という。)に対し,夫■と直接話をしたいので原告に内密で連絡をしてほしいなどと記載された同年8月27日付け「お願い」と題する書面を送付した。
   イ 被告Y4らに対する原告住所の開示
     被告Y2は,原告の担当検察官に対する上記申入れの内容を認識していたにもかかわらず,原告の意に反して原告の住所を調査し,被告Y4らに対し,原告の住所を教示した。
   ウ 被害者の利益を尊重する必要性
     犯罪被害者等基本法6条が犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害さないように配慮することが国民の責務であると定めていること,刑事訴訟法299条の3が被害者特定事項の秘匿措置について定めていることなどからすれば,刑事弁護人は,特に本件事件のような性犯罪の弁護活動の一環として被害者との面談,示談交渉をする際には,被害者の名誉又は生活の平穏を害さないようにその意向を尊重しなければならない。
   エ まとめ
    (ア) 被告Y2は,上記アのとおり,原告に対し,その意向を無視して示談を要求しているが,これは原告の人格権を侵害する違法行為を構成する。そして,被告Y2は,故意又は過失により上記違法行為に及んだものである。
    (イ) また,被告Y2は,上記イのとおり,原告の意向を無視して被告Y4らに対して原告の住所を教示しているが,これも原告の人格権を侵害する違法行為を構成する。そして,被告Y2は,故意又は過失により上記違法行為に及んだものである。
  【被告Y2の主張】
   ア 被告Y2の示談要求
    (ア) 被告Y2は,平成22年6月17日,越後弁護士から,本件事件に関する書類等の引継ぎを受けた際には,原告の意向等について説明を受けておらず,同年7月21日,原告から,担当検察官を介し,示談はしない,話すこともない旨被告Y1からの示談の提案に対する原告の回答を記載した書面(乙1。以下「本件回答書」という。)を受け取り,初めて原告の意向を知ったものであり,本件回答書の受領後は,原告に対して一切連絡していない。
    (イ) 被告Y2が本件回答書の受領以前に原告に対して送付した各書面の文面は,原告の被害感情に配慮して言葉を選んで作成された丁重なものであり,内容も,原告に対する謝罪の気持ちを伝えることを重点としたものや,調停期日の出頭義務について原告が誤解を抱かないように調停期日の呼出しに関する経緯などを説明したものであった。
      また,被告Y4らは,平成22年7月29日に原告宅を訪問しているが,最終的には自らの判断で,被告Y1に代わって原告に対して謝罪するために原告宅を訪問したものであり,原告に対して示談を求めるために原告宅を訪問したものではない。
      さらに,被告Y2が夫■に対して平成22年8月27日付け「お願い」と題する書面を送付したのは,被告Y1が原告との示談に替えて夫■に対して原告に対する不法行為に基づく損害金相当の金銭を贈与することを希望したためであり,原告に対して示談を求めるためではなかった。
   イ 被告Y4らに対する原告住所の開示
     被告Y2は,被告Y4らがその経歴等にかんがみ原告の住所を知っても適切に取り扱うことができる人物であると判断した上,被告Y4らとの間の本件調停事件の申立てに関する委任契約に基づく報告義務の履行として,原告の住所が記載された本件調停事件の申立書の写しを被告Y4らに送付したものであり,被告Y4らに対して原告の住所を教示することを目的として上記申立書の写しを交付したものではない。
   ウ 示談成立の重要性
     被害者の感情に配慮することは当然であるが,被害弁償や示談の成立のために極力努力すべきというのが現在の一般的な刑事弁護実務のあり方である。
   エ まとめ
    (ア) 被告Y2は,本件回答書を受け取って初めて示談に応じるつもりがないとの原告の意向を知ったものであり,それ以前に被告Y2が原告に対して示談を要求した行為は本件被告事件に係る正当な弁護活動であって何ら違法性はない。また,被告Y2は,本件回答書の受領以降,原告に対し,示談を要求していない。
    (イ) 民事調停の申立てを受任した弁護士がその申立てに先立ち,相手方の住所を調査した上,これを当事者の表示として記載して申し立て,その申立ての結果を依頼者に報告することは委任契約の履行として行う必要のあるものであり,弁護士と依頼者との間の協議や連絡の方法及び内容が第三者の意向によって制約を受けたりすることはないというべきであるから,被告Y2が被告Y4らに対して本件調停事件の申立書の写しを交付して原告の住所を知り得る状態に置いた行為には違法性はない。
  (2) 争点2(被告Y4らによる不法行為の成否)について
  【原告の主張】
   ア 被告Y4らは,平成22年7月29日以前,原告が被告Y4らに住所を知られたくないと考えていること,被告Y1との間で示談をする意向がないことを認識していた。それにもかかわらず,被告Y4らは,原告の意向に反し,もっぱら原告と被告Y1の間の示談を要求することを目的で,同日,原告宅を突然訪問し,原告に対して被告Y1にも住所を知られ,訪問を受けるかもしれないとの不安を抱かせたものであり,原告宅を訪問した被告Y4らの行為は違法である。
   イ 被告Y4らは,故意又は過失により上記違法行為に及んだものであり,原告宅を訪問した被告Y4らの行為は共同不法行為を構成する。
  【被告Y4らの主張】
   ア 被告Y4らは,勾留中の被告Y1に代わって原告に対して本件事件につき謝罪することを目的として原告宅を訪問したものであり,もっぱら示談を要求することを目的としていたものではなかった。
   イ 原告は,被告Y4らの訪問を受けた際,動揺したり,取り乱したり,泣き出したり,怖がったりしたことも,また被告Y4らに対して怒ったりしたこともなかったものである。
   ウ 原告宅を訪問した被告Y4らの行為は,本件事件の加害者である被告Y1の両親として,息子の行為を原告に対して謝罪したいとの自然な心情の発露であるから,違法と評価されるべきものではない。
  (3) 争点3(原告の損害)について
  【原告の主張】
   ア 被告Y1について
    (ア) 本件事件は,深夜,原告が自室にいたところを突然襲われ,かつ包丁を突き付けられて,恐怖のあまり抵抗できないでいたところ,強いて執ように姦淫されたというものであり,原告は,その後約6年半もの間,犯人が捕まらないという状況の下で不安な日々を送ってきたものである。原告は,その間,自宅であっても一人でいることが非常に怖く,何か物音がすると気になって仕方がなく,包丁を持って見回りに行かずにはいられない心理状態が続き,不安のために夜一人で寝ることもできなかった。そして,原告は,被告Y1の逮捕後においても,このような不安な心理状態から逃れられないでいる。原告が被った精神的苦痛はこのように著しく大きいものであり,これを慰謝するのに相当な額は500万円を下らない。
    (イ) 原告は,本訴訟の追行を原告代理人に委任し,その報酬を支払うことを約束しているが,被告Y1の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当の損害の額は50万円を下らない。
   イ 被告Y2について
    (ア) 原告は,執ように示談を要求するなどの被告Y2の違法行為によって,被告Y2に対して強い憤りや不安感を抱いたものであり,原告が被ったこの精神的苦痛を慰謝するのに相当な額は200万円を下らない。
    (イ) 原告は,本訴訟の追行を原告代理人に委任し,その報酬を支払うことを約束しているが,被告Y2の不法行為と担当因果関係がある弁護士費用相当の損害の額は20万円を下らない。
   ウ 被告Y4らについて
    (ア) 原告は,原告の意向を無視して原告宅を訪問した被告Y4らの違法行為によって,自己の住所を知られたことに対する強い恐怖感を抱くとともに,今後も被告Y4らが接触を図ってくるのではないかという不安を抱いたものであり,原告が被ったこの精神的苦痛を慰謝するのに相当な額は100万円を下らない。
    (イ) 原告は,本訴訟の追行を原告代理人に委任し,その報酬を支払うことを約束しているが,被告Y4らの不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当の損害の額は10万円を下らない。
  【被告Y1の主張】
    原告の主張アは否認する。
  【被告Y2の主張】
    原告の主張イは否認する。
  【被告Y4らの主張】
    原告の主張ウは否認する。
  (4) 争点4(被告Y1及び被告Y4らに対する差止請求の存否)について
  【原告の主張】
    原告は,その意思に反して第三者からの架電,面会要求,又は書面の送付を受けることなく,平穏な生活を送る人格権を有しているところ,被告Y1及び被告Y4らは,自ら又は被告Y2を介し,執ように示談を求めるなどした。被告Y1は,本件被告事件につき有罪判決を受けて刑事施設に収容中であるが,仮釈放の処分を受けるにつき有利な事情とするために原告と示談することを望み,被告Y4,被告Y3又は第三者を介して,原告との接触を図ろうとする可能性があるし,刑期の満了後においても,同様の接触を図る可能性がある。
    よって,原告は,被告Y1及び被告Y4らに対し,人格権に基づき原告に対する電話,面会の要求又は書面の送付の禁止を求める。
  【被告Y1及び被告Y4らの主張】
    被告Y1及び被告Y4らは,今後,原告に対し,連絡し,又は面会を求めるなどする意思はない。
第3 当裁判所の判断
 1 争点1(被告Y2による不法行為の成否)について
  (1) 事実認定
    争いのない事実,証拠(各項掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
   ア 被告Y1の国選弁護人である越後弁護士は,平成22年5月7日,担当検察官に対し,原告にあてた「お詫び」と題する書面及び示談書案を「御連絡」と題する送信書に添付してファクシミリで送信するとともに,示談を希望するので示談書を示して原告の意向を確認してほしい旨依頼した。「お詫び」と題する書面は,要旨,越後弁護士が被告Y1に代わって原告に対して深くお詫び申し上げる,被告Y1は原告との間で示談を成立させることを希望しているので示談書案を提示させていただく,示談書には原告の現住所を記載することになるが,被告Y1及びその関係者には原告の住所を絶対に知られないように配慮するなどという内容であり,示談書案は,示談金を150万円とすることなど示談に係る取り決めを定める内容であった。(甲26,乙19の1〜3,弁論の全趣旨)
   イ 担当検察官は,平成22年5月8日,原告に対し,越後弁護士からの依頼内容を口頭で伝えるとともに,上記示談書案を示したところ,原告は,担当検察官に対し,弁護人からの依頼であっても示談の話をするつもりも,聞くつもりもないので,示談の話は断ってほしい旨伝えた。これを受け,担当検察官は,同月10日,越後弁護士に対し電話をかけて,原告の意向を伝えた。(甲26,弁論の全趣旨)
   ウ 被告Y2は,平成22年6月16日,被告Y1により,本件被告事件の私選弁護人に選任され,越後弁護士は,同日,国選弁護人を解任された。(争いのない事実,甲11)
   エ 被告Y2は,平成22年6月17日,越後弁護士から,本件被告事件に関する書類等の引継ぎを受けた。被告Y2が越後弁護士から受け取った書類の中には,上記アの「御連絡」と題する送信書,「お詫び」と題する書面及び示談書案があった。(甲26,乙16,弁論の全趣旨)
   オ 被告Y2は,原告に対し,平成22年6月21日ころ,同日付け「申入書」と題する書面を送付した。同書面は,要旨,被告Y2は,被告Y1の弁護人に選任されたので被告Y1に代わって連絡するものである,被告Y1に代わって本件事件により原告に甚だしい精神的苦痛を与えたことを深くお詫びを申し上げ,それとともに示談の交渉を希望することを申し入れるという内容であった。(甲1の1・2,弁論の全趣旨)
   カ 被告Y2は,平成22年6月21日,本件調停事件を申し立て,同月22日ころ,被告Y4に対し,本件調停事件の申立書の写しを送付した。本件調停事件の申立書の写しの当事者の表示には原告の住所が記載されていた。(乙3,弁論の全趣旨)
   キ 原告は,平成22年6月22日ころ,担当検察官に対し電話をかけ,泣きながら,被害者である原告がなぜ裁判所に出頭しなければならないのか,調停期日への出頭義務の記載があるが出頭したくないなどと訴えたところ,担当検察官は,調停期日には出頭する必要はない旨回答した。(甲12,26)
   ク 被告Y2は,原告に対し,平成22年7月5日ころ,同日付け「申入書」と題する書面を送付した。同書面は,要旨,被告Y2は,被告Y1に代わって重ねて深くお詫び申し上げる,示談金として200万円を支払うことで示談することをお願いしたい,原告の意向は承知しているが,解決することを考えてほしい,原告に安心して話合いに臨んでもらうため,本件調停事件を申し立てたので調停期日に出頭してほしいという内容であった。(甲2の1・2,弁論の全趣旨)
   ケ 高岡簡易裁判所は,原告に対し,本件調停事件の調停期日の通知はしたが,呼出しはしなかった。被告Y2は,同月13日,原告が調停期日への呼出しを受けていないことを知り,原告に対し,同日付け「火急のご連絡」と題する書面を送付した。同書面は,要旨,被告Y2は,原告に対し,同月5日付けの「申入書」と題する書面を送付し,同書面に原告に誤解を与えかねない記述があったが,原告は裁判所の不手際で調停期日への呼出しを受けていないので調停期日への出頭義務はない,被告Y2は裁判官及び書記官に対して改めて原告に対する調停期日への呼出しをするようしっかりと申しつけておいたという内容であった。(甲3の1・2,26,乙5)
   コ 被告Y2は,平成22年7月14日,本件調停事件の調停委員から,原告が調停期日に出頭するつもりがないことを告げられた。これを受け,被告Y2は,同日ころ,原告に対し,同日付け「ご連絡」と題する書面を送付した。同書面は,要旨,本件調停事件は,これ以上,調停は行わないということで終了した,裁判所は,原告と被告Y2との間において示談交渉を行っていくべきだという見解である,同月5日付けの「申入書」と題する書面記載の示談の提案に対する原告の考えを聞かせてほしい,原告と話合いをしたいので同月20日午後6時に被告Y2の事務所を訪問してほしい,被告Y2と直接話し合うことを希望しない場合には,被告Y2が議員や会社経営者等を人選し,第三者に仲裁役を依頼することもできるので,その旨申し付けてほしいという内容であった。(甲4の1・2,乙5)
   サ 原告は,平成22年7月17日ころ,自身の意向を被告Y2に対して伝え,それまでに被告Y2から受け取った書面を適切に保管及び処分してもらうため,担当検察官に対し,勝手に住所を調べて手紙を送ってくることだけでも不快で怖いのに,封筒に犯人の名前を書いてくることが苦痛でたまらないなどと記載したメモ書きを添えて,示談はしない,話すこともない旨記載のある本件回答書,同年6月21日付けの「申入書」と題する書面,同年7月5日付けの「申入書」と題する書面,同月13日付けの「火急のご連絡」と題する書面及び同月14日付けの「ご連絡」と題する書面を郵送した。(甲1の1ないし4の2,13,26,乙1)
     担当検察官は,同月21日,被告Y2に対し,本件回答書を郵送した。(甲26,弁論の全趣旨)
   シ 被告Y2は,平成22年7月22日ころ,被告Y4に対し,原告から本件回答書を受け取ったことを報告し,本件回答書の写しを送付した。(弁論の全趣旨)
   ス 被告Y4らは,被告Y2の助言を受け,平成22年7月29日,原告宅を訪問し,玄関へ応対に出た原告に対して謝罪をするとともに示談の申入れをしたが,原告はこれを拒否した。被告Y4らは,原告宅玄関前で原告との会話を終えるとすぐに帰宅したが,その会話の時間は10分足らずであった。なお,原告は,被告Y4らが原告宅を訪問することをあらかじめ知らされていなかった。(甲9,12,弁論の全趣旨)
   セ 被告Y2は,あて名を夫■とし,郵便物の送付先を夫■の勤務先として,平成22年8月27日付けの「お願い」と題する書面を送付した。同書面は,要旨,本件事件について夫■と直接話をしたい,原告は,現在,検察官に頼り切っており,検察官もこれを裁判のために都合良く利用しているが,裁判が終わるや,検察官はまるで不要品を捨て去るように原告のことを相手にしない態度に必ず変わるであろう,それでは原告があまりに気の毒なので,被告Y2は,夫■と話合いをしたいという内容であった。また,上記書面には,同書面を送付したことは原告には内密にしてほしい旨記載があったが,夫■は,同書面の受領後間もなく,原告に対し,同書面を受領したことを伝えた。(甲5の1・2,12,乙5,弁論の全趣旨)
  (2) 原告の意向を認識した時期
    上記認定のとおり,被告Y2は,平成22年6月16日,被告Y1により本件被告事件の私選弁護人に選任されたところ,上記前提事実のとおり,本件被告事件が第1回公判期日で終結していることからすると,犯行事実については争いのない事件であったと認められる。そして,上記認定の被告Y2の原告に対する示談交渉の経緯を考慮すると,被告Y2は,本件被告事件においては,被告Y1の量刑に有利となるよう原告との示談成立を非常に重視していたと認められる。
    そして,被告Y2は,平成22年6月17日に越後弁護士から本件被告事件に関する書類等の引継ぎを受けたが,引継ぎ書類の中には,越後弁護士が作成して担当検察官に対して送った同年5月7日付けの「御連絡」と題する送信書,「お詫び」と題する書面及び示談書案が含まれており,上記「お詫び」と題する書面には示談書には原告の現住所を記載することになるが,被告Y1及びその関係者には原告の住所を絶対に知られないように配慮するといった記載があることや,上記示談書案に対する原告の回答が引き継いだ書類に含まれていないこと,被告Y2が検察官を通じて原告に対し示談の意向を確認していないことなどによれば,原告の示談成立を重視していた被告Y2は,越後弁護士から原告に対する示談申入れの結果を聞いたと考えるのが自然である。また,被告Y2は,原告から本件回答書を受け取る前に送付した同年7月5日付けの「申入書」と題する書面に,原告の意向を承知しているが,解決することを考えてほしい旨記載があり,これは,原告に示談する意思がないことを承知しながら,改めて示談による解決を申し入れたものというべきである。
    そうすると,甲第26号証にある,越後弁護人は,本件被告事件の引継ぎの際,被告Y2に対し,原告は自己の住所を知られることを嫌がっており,示談にも応じる気はないとして拒否している旨伝えたとの記載は信用できるというべきである。したがって,被告Y2は,同年6月17日ころ,原告が自己の住所を知られたくないとの意向を有しており,示談に応じるつもりもないことを知っていたものと認められる。
    これに対し,被告Y2は,越後弁護士から,本件被告事件の引継ぎの際,原告の意向について説明を受けたことがなく,同年7月21日ころに本件回答書を受領して初めて原告の意向を知った旨主張し,これに沿う旨の被告Y2の供述(乙5,16)があるが,被告Y2は,本件被告事件の私選弁護人となってから,原告に対し,示談を求めて書面を送付し,又は本件調停事件を申し立てたものであることは前記前提事実及び前記(1)認定のとおりであり,本件被告事件の弁護活動において原告との示談交渉を重視していたのであるから,越後弁護士から原告との示談交渉の経過を聞いていないものとは考え難く,被告Y2の上記供述は採用できない。よって,被告の上記主張は採用できない。
  (3) 不法行為の成否の検討
   ア 被告Y2の示談要求
    (ア) 上記認定事実によれば,被告Y2は,原告が示談に応じるつもりがないことを知りながら,平成22年6月21日付けの「申入書」と題する書面で原告に対する謝罪とともに示談の要求を行い,本件調停事件を申し立て,本件調停事件の調停期日の前後に同期日への出頭を要請するなどの書面を送付したものと認められる。
      被害者との示談の成立が本件被告事件のような性犯罪の刑事事件において重要な量刑事実として考慮されることなどからすれば,被告Y2が,原告が示談に応じるつもりがないことを知りながらも,被告Y1から選任を受けた弁護人として,改めて自ら示談による解決の可能性の有無を検討したことが,直ちに不当なものであるとはいえない。
      そして,被害者が検察官を通じて示談に応じるつもりがないとの意向を伝えていた場合には,改めて検察官を介して謝罪と示談の申入れの書面を被害者に渡して読んでもらうという方法では,被害者が受取り自体を拒否する可能性があるので,被害者に書面を読んでもらうために,検察官を介さずに被害者に対して示談を申し入れる書面を直接送付したことが,正当な弁護活動を逸脱した違法なものであるとはいえない。したがって,上記「申入書」と題する書面を原告に対して送付したことは,違法とはいえない。
      また,本件調停事件を申し立て,本件調停事件の調停期日の前後に同期日への出頭を要請したことは,調停委員会を通じた説得による示談解決を期待したものであり,正当な弁護活動を逸脱した違法なものであるとはいえない。
    (イ) 上記認定のとおり,被告Y2は,原告から示談はしない,話すこともない旨の記載のある本件回答書を受け取ったところ,その後,被告Y4らに対し,原告宅を訪問して謝罪するとともに示談のお願いもするよう助言したものであり,被告Y2の助言を受けて,被告Y4らは原告宅を訪れて原告に対して謝罪をするとともに示談の申入れをしている。
      上記Y2の助言の違法性について検討するに,上記認定のとおり,被告Y2は,原告が示談には応じるつもりがないことを知りながら,原告に対し書面の送付あるいは調停申立てによる示談を試みたが,いずれも奏功せず,原告から回答は得られず,調停期日にも出頭してもらえず,その後,本件回答書により,原告から示談には応じない旨の通告を受けたものである。
      かかる交渉経緯に鑑みると,示談に応じないとの原告の意向は極めて明確かつ堅固であり,接触することも嫌悪しており,これを拒否するとの意向も明確であり,これ以上,原告に対し示談交渉をしても,これに応じてもらうことは不可能であることは客観的に明らかであったと認められる。そして,犯罪被害者等基本法6条が犯罪者被害者等の名誉又は生活の平穏を害さないように配慮することが国民の責務であると定めていることや,刑事訴訟法290条の2及び同法299条の3が被害者特定事項の秘匿について定め,同法316条の33は強姦の罪を含む一定の罪の被害者等による刑事手続への参加について定めていることなどは,犯罪被害者の権利や利益に配慮する必要性が高いことの表れであるが,原告は,その中でも性犯罪という特に被害者に対する配慮を必要とする類型の犯罪の被害者であることなどを併せて考慮すると,原告の意向が明確で,示談交渉に応じる余地がないことは明白になったにもかかわらず,原告宅を訪問して,謝罪及び示談の申入れをするという直接交渉の方法を助言したことは,原告の感情をいたずらに刺激し,その安定を損ない,苦しめるだけであって,上記法の趣旨を損なうものであり,正当な弁護活動を逸脱する違法なものであるというべきである。
      そして,上記違法行為の態様によれば,被告Y2には,上記違法行為に及ぶにつき過失があったものと認められる。
      この点について,被告Y2は,被告Y4らは,最終的には自らの判断で,被告Y1に代わって原告に対して謝罪するために原告宅を訪問したものであり,原告に対して示談を求めるために原告宅を訪問したものではない旨主張する。
      しかし,示談の成否が量刑上重要な要素である以上,原告に対し謝罪するだけでなく示談の申入れもあわせてするようにと助言するのが自然であること,被告Y1の両親である被告Y4らとしては,被告Y1の弁護人である被告Y2から,原告宅を訪問し,原告に対し謝罪と示談の申入れをするよう助言されれば,これに従うのが通常であることからすると,被告Y2の上記主張は理由がないというべきである。
    (ウ) また,上記認定のとおり,被告Y2は,平成22年8月27日付けの「お願い」と題する書面を原告の夫■の勤務先に送付したものである。
      上記書面について,被告Y2は,被告Y1が原告との示談に替えて夫■に対して原告に対する不法行為に基づく損害金相当の金銭を贈与することを希望したためであり,原告に対して示談を求めるためではなかった旨主張し,被告Y2作成の陳述書(乙5)にはこれに沿う部分がある。
      しかし,上記書面が送付された当時,本件被告事件はすでに終結しているところ,このような段階で,夫■に対して原告を翻意させるよう依頼するのではなく,夫■に対して損害金相当の金銭を贈与するという解決としてはそれほど意味があるとは考えられない方法を目指していたというのは不合理であって,被告Y2の上記供述は採用できない。
      むしろ,上記書面には,原告は検察官に裁判のために都合良く利用されているなどと記載されていることからすると,被告Y2は,夫■を通じて原告の誤解を解き,示談に応じてもらうことを目的として上記書面を送付したものと考えるのが合理的である。なお,上記書面には,原告には内密にして欲しい旨の記載があるが,夫■がこれを守る理由も必要もなく,実際,間もなく原告に伝えているのであるから,被告Y2は,上記書面の内容が原告に伝わることは容認していたと考えられる。
      上記のとおり,本件回答書により原告は示談に応じるつもりはないことを明確にし,示談は不可能となり,上記書面を送付した平成22年8月27日当時も,その状況に変化がないにもかかわらず,上記書面を送付したことは,原告の感情をさらに傷つけ,苦しめるだけであり,犯罪被害者等基本法の趣旨を損なうものであって,正当な弁護活動を逸脱する違法なものであるというべきである。
      そして,上記違法行為の態様によれば,被告Y2は,上記違法行為に及ぶにつき過失があったものと認められる。
   イ 被告Y4らに対する原告住所の開示
    (ア) 上記認定事実によれば,被告Y2は,原告が被告Y1及び被告Y4らに住所を知られたくないとの意向を有していることを知りながら,原告の住所の記載がある本件調停事件の申立書の写しを交付したものであることが認められるが,他方,弁論の全趣旨によれば,本件調停事件の実質的な依頼者は被告Y4らであり,被告Y2は,打ち合わせなどを通じて被告Y4らの人物像等を検討していたことが認められ,本件全証拠を検討しても,被告Y4らが原告の住所を知れば原告に対して危害を加えるおそれがあるなどの事情はうかがわれない。したがって,被告Y2は,被告Y4らに本件調停事件の申立書の写しを交付することの当否を検討した上で,実質的な依頼者である被告Y4らに対する報告義務の履行として本件調停事件の申立書の写しを交付したものであるから,本件調停事件の申立書の写しのうち原告の住所記載部分を抹消して交付してもその目的を達することができることからすれば適切さを欠いていたとはいえるが,違法であるとまではいえない。
    (イ) これに反する,被告Y2の上記行為は違法である旨の原告の主張は採用できない。
 2 争点2(被告Y4らによる不法行為の成否)について
   上記認定事実によれば,被告Y4らは,平成22年7月29日,被告Y2の助言を受けて,原告宅を訪問し,応対に出た原告に対して謝罪するとともに示談の申入れをしたことは認められるところ,本件全証拠を検討しても,原告宅を訪問した被告Y4らの原告に対する言動等に不相当なものがあったとは認められない。
   そして,上記認定のとおり,被告Y4らは,示談に応じるつもりはないとの原告の意向を事前に認識していたものであるが,被告Y4らは,被告Y1の両親にすぎず,被告Y2のような法律的な知識を十分有しているわけでもなく,当時,被告人の両親と被害者の交渉についてどの程度まで許されるのかについて,一般的な基準や共通認識があったとはいえないこと,被告Y1の弁護人である被告Y2の助言を受けて行ったものであることを考慮すると,被告Y4らは,上記訪問が違法なものであると認識しておらず,そのように認識しなかったことに過失があるとはいえない。
 3 争点3(損害の額)について
  (1) 被告Y1について
   ア 前提事実のとおり認められる本件事件の内容及びその後被告Y1が逮捕されるまでの期間(6年余り)等によれば,原告が本件事件により被った精神的苦痛は極めて大きいものであったというべきであり,被告Y1の不法行為により原告が被った精神的苦痛を慰謝するための金額としては500万円が相当である。
   イ また,弁論の全趣旨によれば,原告は,本訴訟の追行を原告代理人に委任し,報酬を支払うことを約束したものと認められ,被告Y1の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当の損害の額は50万円が相当である。
  (2) 被告Y2について
   ア 前記1において判断した被告Y2の原告に対する示談要求に係る不法行為によって原告が被った精神的苦痛を慰謝するための金額としては,違法行為の態様等を考慮すれば30万円が相当である。
   イ 原告が本訴訟の追行を原告代理人に委任して報酬を支払うことを約束したものと認められることは上記(1)イのとおりであり,被告Y2の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当の損害の額は3万円が相当である。
 4 争点4(被告Y1及び被告Y4らに対する差止請求権の存否)
   原告は,被告Y1及び被告Y4らは,自ら又は被告Y2を介し,執ように示談を求めるなどしており,被告Y1は,本件被告事件につき有罪判決を受けて刑事施設に収容中であるが,仮釈放の処分を受けるにつき有利な事情とするために原告と示談することを望み,被告Y4,被告Y3又は第三者を介して,原告との接触を図ろうとする可能性があるし,刑期の満了後においても,同様の接触を図る可能性があるから,被告Y1及び被告Y4らに対して人格権に基づき原告に対する電話,面会の要求又は書面の送付の禁止を求めることができる旨主張する。
   しかしながら,被告Y4らの原告に対する示談要求の態様は前記1(1)認定のとおりであるが,その示談要求の態様によっても,被告Y4らが今後も電話,面会の要求又は書面の送付の方法により原告との接触を図る具体的なおそれがあるとは認められない。
   また,被告Y1が原告との接触を図る具体的なおそれについても,原告の主張する被告Y1が仮釈放の有利な事情を得るために原告と接触を図るとの動機等は本訴訟の終了後においても存続し続けるものではなく,本件全証拠を検討しても,その他に被告Y1が原告との接触を図るおそれを基礎付ける事実は認められない。
   よって,原告の上記主張は採用できない。
 5 なお,原告は,被告らが平成23年8月29日の第2回口頭弁論期日において,本件回答書を受け取る前に原告が被告Y4らに住所を知られたくないと考えていること及び被告Y1との間で示談をする意向がないことを認識していなかったことの証拠として提出した乙第17号証ないし第24号証について,いずれも故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたものであり,訴訟の完結を遅延させることとなる旨主張し,上記各証拠の却下を求めるが,上記各証拠の内容,本訴訟の審理の内容及び経過によれば,いまだ時機に後れた証拠の提出であるとまではいえないから,原告の申立ては理由がない。
 6 まとめ
   以上によれば,原告の請求は,被告Y1に対し,不法行為に基づく損害金550万円及びこれに対する不法行為の日である平成15年11月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,被告Y2に対し,不法行為に基づく損害金33万円及びこれに対する不法行為後の日である平成22年10月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,被告Y1,被告Y2に対するその余の請求及び被告Y4,被告Y3に対する請求は,いずれも理由がないから棄却すべきものである。
第4 結論
   よって,主文のとおり判決する。
    富山地方裁判所民事部
        裁判長裁判官  田邊浩典
           裁判官  高嶋 卓
           裁判官  山口貴央