児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事関係 1.児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数 2.児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した行為が,全体として一罪とされた事例[平成21.7.7第二小法廷決定]2012-07 (最高裁判所判例解説 : 平成21年1,3,4,7,9,12月分 平成22年6月分)

 児童ポルノ・児童買春について、こういう判例が出たということは、弁護人は逆の主張をしたことがわかります。しかも被告人に有利な主張として。

(注2) 公訴事実の同一性がないにもかかわらず訴因変更の許可がなされた場合,審理途中であれば訴因変更を取り消して,追起訴手続をとればよいが(最一小判昭和62年12月3日刑集41巻8号323頁).判決に至った場合には,当該判決は,請求を受けない事件について判決をした違法があるものとされる(最二小判昭和33年2月21日刑集12巻2号288頁)。弁護人の主張は,第一審判決において包括ー罪と認定された事実を併合罪であると主張するものであるところ,併合罪は刑が加重されるのであるから,一般的にはこのような主張は被告人に不利益な主張として許されないのであるが,本件においては上記訴因変更手続の問題がからんだために被告人に利益な主張ということになり,適法な上告理由ではないものの,下級審への指針として職権判示の対象とされたものと思われる。

 これで破棄されれば大幅な減軽と未決算入が見込めるんですよ。訴因変更で追加された公訴事実の大半が飛んじゃうわけで。

 数回の提供行為の罪数処理についても、みじん切り説で従来からの奥村説そのものですね。

ウ複数回の提供について
以上のとおり,本決定は,児童ポルノの所持と提供とが併合罪の関係にある旨の判断を示したので、あるが,さらに. 「提供」という行為類型の中でこれが複数回なされた場合の罪数の問題が残っている。本決定は,結論として後記のとおり全体を一罪としたため,必ずしもこの点についての判断を示す必要がなくなっており,判文をみても,何ら判断を示していないといわざるを得ない。
考え方としては下記①ないし③があるように思われる
① 複数回の提供行為がー罪となるとする説
構成要件が「児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供」となっており,もともと多数への提供行為を予定して作られているといえるのであるから,児童ポルノを多数回提供する行為は,単一の意思に基づく限りは一罪と考えるものである。

② 被害児童が異なれば別罪とした上,同一被害児童に関する行為につき何らかの基準である程度のー罪性を認める説
罪数判断においては,保護法益の個別性が重要な要素であるところ,
前記のとおり,児童ポルノ罪が当該児童の権利保護をも目的とする個人的法益に対する罪であることから,被害児童が異なれば別に犯罪が成立するとした上,同一被害児童に係る複数の行為がなされた場合には,①と同様にその犯罪意思の単一性によるか,製造段階における個別性によるか(同一機会に製造された児童ポルノに関する行為をひとまとめにするなど。).製造された児童ポルノの個別性によるかなどの基準によりー罪性を認めようと考えるものである。もちろん,この基準でー罪とならないものも,自然的観察により行為が一個と認められるときに一般的な観念的競合を認めることは当然である。
③ 被害児童が異なれば別罪とするのはもちろん,個別行為ごとにー罪となるとする説
児童ポルノの提供,所持行為は, 日時・場所や提供の相手方を異にする場合には,それぞれの行為の度に被害児童に対する新たな性的侵害が存在するものとして,同じ被害児童でも各行為ごとに犯罪が成立すると考えるものである。
①は,前記(2)の裁判例福岡高裁那覇支部平成17年3月1日判決が採用した考え方である。しかしながら,前述のとおり,児童ポルノ法は,この種犯罪を児童保護の目的から厳しく規制しようとするものであるから,このような法の趣旨に照らせば,①のような解釈は相当ではないと思われる。確かに①の考え方は,児童ポルノ法7条4項の「不特定若しくは多数」とし、う文言の解釈としては自然であるともいえる。しかし.「提供」とは,当該児童ポルノ又は電磁的記録その他の記録を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいうのであって,刑法175条とほぼ同様の規定ぶりであった改正前の児童ポルノ法が用いていた「頒布」「販売」「業としての貸与」とは異なり,必ずしも相手方が現に受領することまでは必要ではないから,不特定又は多数への提供で、あるから多数回が予定されているとは必ずしもいえなし、。条文の文言も,②や③の解釈を採用する妨げにはならないであろう。そして,②と③は,②が何らかの基準である程度の一罪性を認めようとするのに対し,③が原則として行為ごとに併合罪となるとする点で異なっているが,上記法の趣旨からすれば,基本的には③の解釈が相当なように思われる。