児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

わいせつ目的誘拐罪の「わいせつ目的」

 強制わいせつ罪よりも広く、姦淫も含みます。
 3項製造罪を含むとした裁判例もあります。
 とすると、強制わいせつ罪・強姦罪と3項製造罪を併合罪にしても、誘拐すれば、科刑上一罪になるわけです。

第225条(営利目的等略取及び誘拐)
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
〔平一七法六六本条改正〕

判例コンメンタール刑法
(2) わいせつ目的
「わいせつ目的」とは、被拐取者に対して自らわいせつ行為をし、若しくは第三者をしてわいせつ行為をさせる目的、又は被拐取者自身にわいせつ行為をさせる目的をいう。
(2) わいせつ目的で人を略取した者が強制わいせつ行為をした場合は、両罪は牽連犯となるとする裁判例がある(東京高判昭45 ・12 ・3)

(イ)わいせつ目的
被拐取者に対して自らわいせつ行為をし.又は第三者をしてわいせつ行為をさせる目的,あるいは被拐取者にわいせつ行為をさせる目的をいう。
わいせつ行為の意義については. 174条注3. 176条注4参照。ただし. 176条と異なり.わいせつ行為には姦淫も含まれる(名古屋高金沢支判昭32・3・12高集10-2-157)。
したがって,被拐取者に売春をさせる目的もわいせつ目的に当たる。

東京高等裁判所判決平成20年12月16日
【掲載誌】  判例タイムズ1303号57頁
       LLI/DB 判例秘書登載
(当裁判所が新たに認定した事実についての補足説明)
 第1部の第6「検察官の控訴趣意について」において判示したとおり,吸入麻酔薬であるクロロホルム等を摂取させてA1を心神喪失の状態に陥れ,姦淫の目的を遂げたとの点,摂取させた薬物の作用により同女を死亡させたとの点はいずれも立証不十分である。なお,本件においては,A1の母I3が検察官により告訴権者と指定され,親告罪であるわいせつ誘拐について告訴しているが,同告訴人の捜査機関に対する捜査協力の姿勢などからうかがえる訴追意思等にもかんがみれば,上記告訴の効力は,牽連犯として科刑上一罪の関係にある準強姦未遂にも及ぶものと解される。
(法令の適用)
1 罰条
  (1) 当裁判所の認定した第1の所為のうち
   ア わいせつ誘拐の点
    刑法225条
   イ 準強姦未遂の点
     行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法179条,178条,177条前段(刑の長期については同改正前の刑法12条1項)
     裁判時においてはその改正後の刑法179条,178条2項,177条前段(刑の長期については同改正後の刑法12条1項)
     刑法6条,10条(軽い行為時法の刑)
  (2) 当裁判所の認定した第2の所為
    包括して刑法190条
  (3) 原判示第1の所為
    行為時においては平成7年法律第91号附則2条1項本文により同法による改正前の刑法181条(178条)(有期懲役刑の長期については同改正前の刑法12条1項)
    裁判時においては平成16年法律第156号による改正後の刑法181条2項(178条2項)(有期懲役刑の長期については同改正後の刑法12条1項)
    刑法6条,10条(軽い行為時法の刑)
  (4) 原判示第2ないし第5,第8及び第9の各所為
    行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法178条,177条前段(刑の長期については同改正前の刑法12条1項)
    裁判時においては同改正後の刑法178条2項,177条前段(刑の長期については同改正後の刑法12条1項)
    刑法6条,10条(軽い行為時法の刑)
  (5) 原判示第6及び第7の各所為
    行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法181条(178条)(有期懲役刑の長期については同改正前の刑法12条1項)
    裁判時においては同改正後の刑法181条2項(178条2項)(有期懲役刑の長期については同改正後の刑法12条1項)
    刑法6条,10条(軽い行為時法の刑)
2 科刑上一罪の処理
  当裁判所の認定した第1の所為について刑法54条1項後段,10条(わいせつ誘拐と準強姦未遂との間には手段結果の関係があるので,一罪として重い準強姦未遂の罪の刑で処断)

山口地裁H21.2.4
(法令の適用)
罰条
 判示第1
  児童ポルノ製造の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条 3項,1項 (2条3項3号)
  強制わいせつの点  刑法176条後段
 判示第2
  わいせつ目的誘拐の点 刑法225条
  児童ポルノ製造の点  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及ひや児童の保護等に関する法律7条 3項, 1項 (2条3項3号)
  強制わいせつの点   刑法 176条後段
科刑上一罪の処理
 判示第1   刑法54条1項前段, 1 0条(重い強制わいせつ罪の刑で処断)
 判示第2   刑法54条1項前段,後段,1 0条(児童ポルノ製造と強制わいせつは, 1個の行為が 2個の罪名に触れる場合であり,わいせつ目的誘拐と児童ポルノ製造及びわいせつ目的誘拐と強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として最も重いわいせつ目的誘拐罪の刑で処断)
併合罪の処理  刑法45条前段,47条本文, 10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
平成21年2月4日